(正本とは形式面で異なります。)
第十三章 競争
第十三・一条 目的
この章の規定は、反競争的行為を禁止する法令の制定及び維持を通じて、並びに競争法令の作成及び実施に関する締約国間の地域的な協力を通じて、市場における競争を促進し、並びに経済効率及び消費者の福祉を向上させることを目的とする。これらの目的の追求は、締約国がこの協定の利益(締約国間の貿易及び投資を円滑にすることを含む。)を確保することに寄与することとなる。
第十三・二条 基本原則
1 各締約国は、この章の目的に適合する態様でこの章の規定を実施する。
2 締約国は、この章の規定に基づく各締約国の権利及び義務を認めて、次の事項を認識する。
(a) 各締約国が自国の競争法令及び競争政策を作成し、制定し、運用し、及び執行する主権的権利
(b) 競争法令及び競争政策の分野における能力及び発展の水準に関する締約国間の相当の差異
第十三・三条 反競争的行為に対する適当な措置(注)
注 この条の規定は、次の附属書の規定に従って適用する。
(a) 附属書十三A(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用)
(b) 附属書十三B(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のカンボジアについての適用)
(c) 附属書十三C(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のラオスについての適用)
(d) 附属書十三D(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のミャンマーについての適用)
1 各締約国は、反競争的行為(注)を禁止する競争法令を制定し、又は維持し、及び当該競争法令を執行する。
注 例としては、反競争的な合意、支配的な地位の濫用及び反競争的な企業結合が挙げられる。
2 各締約国は、自国の競争法令を効果的に実施するため、一又は二以上の当局を設置し、又は維持する。
3 各締約国は、自国の競争法令の執行に関する自国の一又は二以上の当局による意思決定における独立性を確保する。
4 各締約国は、国籍に基づく差別を行うことなく、自国の競争法令を適用し、及び執行する。
5 各締約国は、商業活動に従事する全ての団体(所有者のいかんを問わない。)について自国の競争法令を適用する。各締約国の競争法令の適用に係る除外又は免除については、透明性があり、かつ、公共政策又は公共の利益に基づくものとする。
6 各締約国は、自国の競争法令、及びその運用に関して発出された指針(内部の運用手続を除く。)を公に利用可能なものとする。
7 各締約国は、次の(a)に規定するいずれかの事項又は(b)に規定するものに従う場合を除くほか、自国の競争法令に基づく制裁を科し、又は是正措置をとるための最終的な決定又は命令の根拠及び当該決定又は命令に対する不服申立てに関する決定又は命令の根拠を公表する。
(a)(i)自国の法令
(ii)秘密の情報を保護する必要性
(iii)公共政策又は公共の利益を根拠として情報を保護する必要性
(b) 最終的な決定又は命令に関し、(a)(i)から(iii)までに規定するいずれかの事項を根拠として行う編集
8 各締約国は、自国の競争法令に違反した者又は団体に対して制裁を科し、又は是正措置をとる前に、当該者又は団体に対し、自国の競争法令に対する違反があったとの主張の理由を示すこと(可能な場合には書面によるものとする。)並びに当該者又は団体が陳述し、及び証拠を提出するための公平な機会を与えることを確保する。
9 各締約国は、秘密の情報を保護するために必要な編集を行うことを条件として、自国の競争法令に基づく制裁を科し、又は是正措置をとるための最終的な決定又は命令の根拠及び当該決定又は命令に対する不服申立てに関する決定又は命令の根拠を当該制裁又は当該是正措置の対象となる者又は団体に利用可能なものとする。(注)
注 この9の規定は、刑事裁判における陪審員の評決については、適用しない。
10 各締約国は、自国の競争法令に基づく制裁又は是正措置の対象となる者又は団体が当該制裁又は是正措置に対する独立した審理又は不服申立てを利用することができることを確保する。
11 各締約国は、競争に関する事案の取扱いにおける適時性が重要であることを認識する。
第十三・四条 協力(注)
注 この条の規定は、次の附属書の規定に従って適用する。
(a) 附属書十三A(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用)
(b) 附属書十三B(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のカンボジアについての適用)
(c) 附属書十三C(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のラオスについての適用)
(d) 附属書十三D(第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のミャンマーについての適用)
締約国は、競争法令の効果的な執行を促進するためのそれぞれの競争当局の間における協力の重要性を認識する。このため、締約国は、それぞれの法令及び重要な利益に適合する態様により、かつ、それぞれの利用可能な資源の範囲内で、競争法令の執行に関する事項につきそれぞれの競争当局を通じて協力することができる。その協力の形態には、次のことを含めることができる。
(a) 締約国が、他の締約国に対し、競争法令の執行に係る自国の活動であって、当該他の締約国の重要な利益に実質的に影響を及ぼし得ると認めるものを合理的に可能な限り速やかに通報すること。(注)
注 この(a)の規定に従って日本国の競争当局に通報する場合には、その通報は、外交上の経路を通じて書面により確認されるべきである。その確認は、関係する通報が関係する締約国の競争当局の間で行われた後、可能な限り速やかに行われるべきである。
(b) 要請があった場合には、当該要請を行った締約国の重要な利益に実質的に影響を及ぼす競争法令の執行に関する問題について対処するために締約国間で討議すること。
(c) 要請があった場合には、理解を促進し、又は競争法令の効果的な執行を円滑にするために締約国間で情報を交換すること。
(d) 要請があった場合には、同一の又は関連する反競争的行為に関し、締約国間で執行活動における調整を行うこと。
第十三・五条 情報の秘密性
1 この章の規定は、締約国が自国の法令及び重要な利益に反して情報を共有することを要求するものではない。
2 締約国がこの章の規定に基づいて秘密の情報を要請する場合には、要請を行う締約国は、要請を受ける締約国に対して次の事項を通報する。
(a) 要請の目的
(b) 要請する情報の意図される使途
(c) 当該要請を行う締約国の法令であって、情報の秘密性に影響を及ぼし得るもの又は当該要請を受ける締約国が同意していない目的のための情報の使用を要求し得るもの
3 締約国間の秘密の情報の共有及び当該情報の使用は、関係する締約国が合意する条件に基づくものとする。
4 この章の規定に基づいて共有される情報が秘密のものとして共有される場合には、当該情報を受領する締約国は、自国の法令に従うときを除くほか、次のことを行う。
(a) 受領した当該情報の秘密性を保持すること。
(b) 当該情報を提供する締約国が別段の許可を与える場合を除くほか、要請の時に開示した目的のためにのみ受領した当該情報を使用すること。
(c) 受領した当該情報を裁判所又は裁判官の行う刑事手続において証拠として使用しないこと。ただし、当該情報が当該情報を受領する締約国の要請に基づき外交上の経路又は関係する締約国の法令に従って設けられた他の経路を通じて刑事手続における証拠としての使用のために提供される場合は、この限りでない。
(d) 当該情報を提供する締約国が許可を与えていない当局、団体又は者に対して受領した当該情報を開示しないこと。
(e) 当該情報を提供する締約国が要求する他の条件に従うこと。
第十三・六条 技術協力及び能力開発
締約国は、その資源の利用可能性を考慮しつつ、競争政策の作成及び競争法令の執行を強化するために必要な能力を開発するための技術協力に関する活動において多数国間又は二国間で協力することが共通の利益であることに合意する。技術協力に関する活動には、次の事項を含めることができる。
(a) 競争法令及び競争政策の作成及び実施についての関連する経験及び秘密でない情報の共有
(b) 競争法令及び競争政策に関するコンサルタント及び専門家の交流
(c) 研修のための競争当局の職員の交流
(d) 啓発のためのプログラムへの競争当局の職員の参加
(e) 締約国が合意する他の活動
第十三・七条 消費者の保護
1 締約国は、この章の目的を達成するため、消費者の保護に関する法令及びその執行並びに消費者の保護に関連する事項に関する締約国間の協力の重要性を認識する。
2 各締約国は、誤認させる慣行又は虚偽の若しくは誤認させる記載を取引において使用することを禁止する法令を制定し、又は維持する。
3 各締約国は、また、消費者の救済の仕組みについての意識及びその仕組みを利用する機会を改善することの重要性を認識する。
4 締約国は、消費者の保護に関する相互に関心を有する事項について協力することができる。その協力については、各締約国の法令に適合する態様により、かつ、自国の利用可能な資源の範囲内で行う。
第十三・八条 協議
締約国の要請があった場合には、当該要請を受けた締約国は、締約国間の理解を促進し、又はこの章の規定の下で生ずる特定の問題に対処するため、当該要請を行った締約国と協議を開始する。当該要請を行った締約国は、適当な場合には、当該要請において、当該問題がどのように自国の重要な利益(関係する締約国との間の貿易及び投資を含む。)に影響を及ぼすかについて明示する。当該要請を受けた締約国は、当該要請を行った締約国の懸念に対して十分かつ好意的な考慮を払う。
第十三・九条 紛争解決の不適用
いずれの締約国も、この章の規定の下で生ずる問題について、第十九章(紛争解決)の規定による紛争解決を求めてはならない。
附属書十三A 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用
1 ブルネイ・ダルサラーム国は、この協定が効力を生ずる日に第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行していない場合には、同日後三年以内に当該義務を履行する。
2 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)3から11まで及び第十三・四条(協力)の規定は、ブルネイ・ダルサラーム国が第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行した後直ちに同国について適用するものとし、いかなる場合にも、この協定が効力を生ずる日の後三年以内に同国について適用する。
3 ブルネイ・ダルサラーム国は、1及び2に定める三年の経過期間中に、同国が当該経過期間の満了までに第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定を遵守していることを確保するために必要な措置をとるものとし、当該経過期間の満了前にこれらの条の規定に基づく義務を履行するよう努める。
4 ブルネイ・ダルサラーム国は、締約国の要請があった場合には、全ての締約国に対し、第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定に基づく義務の1及び2に定める三年の経過期間の満了までの履行におけるこの協定が効力を生ずる日以後の進捗状況を通報する。
附属書十三B 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のカンボジアについての適用
1 カンボジアは、この協定が効力を生ずる日に第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行していない場合には、同日後五年以内に当該義務を履行する。
2 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)3から11まで及び第十三・四条(協力)の規定は、カンボジアが第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行した後直ちに同国について適用するものとし、いかなる場合にも、この協定が効力を生ずる日の後五年以内に同国について適用する。
3 カンボジアは、1及び2に定める五年の経過期間中に、同国が当該経過期間の満了までに第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定を遵守していることを確保するために必要な措置をとるものとし、当該経過期間の満了前にこれらの条の規定に基づく義務を履行するよう努める。
4 カンボジアは、締約国の要請があった場合には、全ての締約国に対し、第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定に基づく義務の1及び2に定める五年の経過期間の満了までの履行におけるこの協定が効力を生ずる日以後の進捗状況を通報する。
附属書十三C 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のラオスについての適用
1 ラオスは、この協定が効力を生ずる日に第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行していない場合には、同日後三年以内に当該義務を履行する。
2 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)3から11まで及び第十三・四条(協力)の規定は、ラオスが第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行した後直ちに同国について適用するものとし、いかなる場合にも、この協定が効力を生ずる日の後三年以内に同国について適用する。
3 ラオスは、1及び2に定める三年の経過期間中に、同国が当該経過期間の満了までに第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定を遵守していることを確保するために必要な措置をとるものとし、当該経過期間の満了前にこれらの条の規定に基づく義務を履行するよう努める。
4 ラオスは、締約国の要請があった場合には、全ての締約国に対し、適当な競争法令を作成し、及び制定すること並びに当該競争法令の効果的な実施のために一又は二以上の当局を設置することにおけるこの協定が効力を生ずる日以後の進捗状況を通報する。
附属書十三D 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定のミャンマーについての適用
1 ミャンマーは、この協定が効力を生ずる日に第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行していない場合には、同日後三年以内に当該義務を履行する。
2 第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)3から11まで及び第十三・四条(協力)の規定は、ミャンマーが第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)1及び2の規定に基づく義務を履行した後直ちに同国について適用するものとし、いかなる場合にも、この協定が効力を生ずる日の後三年以内に同国について適用する。
3 ミャンマーは、1及び2に定める三年の経過期間中に、同国が当該経過期間の満了までに第十三・三条(反競争的行為に対する適当な措置)及び第十三・四条(協力)の規定を遵守していることを確保するために必要な措置をとるものとし、当該経過期間の満了前にこれらの条の規定に基づく義務を履行するよう努める。
4 ミャンマーは、締約国の要請があった場合には、全ての締約国に対し、適当な競争法令を作成し、及び制定すること並びに当該競争法令の効果的な実施のために一又は二以上の当局を設置することにおけるこの協定が効力を生ずる日以後の進捗状況を通報する。