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環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 本体協定

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 本体協定

(正本とは形式面で異なります。)

第一条 環太平洋パートナーシップ協定の取込み

1 締約国は、二千十六年二月四日にオークランドで作成された環太平洋パートナーシップ協定(TPP)(第三十・四条(加入)、第三十・五条(効力発生)、第三十・六条(脱退)及び第三十・八条(正文)を除く。)の規定が、この協定の規定に従い、必要な変更を加えた上で、この協定に組み込まれ、この協定の一部を成すことをここに合意する(注)。
注 この協定の規定は、この協定の非締約国に対していかなる権利も与えるものではない。

環太平洋パートナーシップ協定(TPP)

第十六章 競争章

第十六・一条 競争法令及び競争当局並びに反競争的な事業行為(注)

注 この条の規定は、附属書十六-A(第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用)の規定に従って適用される。

1 各締約国は、経済効率及び消費者の福祉を促進することを目的として、反競争的な事業行為を禁止する競争に関する国の法令(以下この章において「国の競争法令」という。)を制定し、又は維持し、並びに反競争的な事業行為に関連して適当な手段をとる。国の競争法令については、千九百九十九年九月十三日にオークランドで作成された競争及び規制改革を強化するためのAPECの原則を考慮すべきである。
2 各締約国は、自国の領域における全ての商業活動について自国の国の競争法令を適用するよう努める(注)。もっとも、各締約国は、自国の国の競争法令の適用除外について、当該適用除外が透明性を有し、かつ、公共政策又は公共の利益に基づくものである場合には、これを定めることができる。
注  この2のいかなる規定も、締約国が自国の国境の外における商業活動であって、自国の管轄内で反競争的な効果を有するものについて自国の競争法令を適用することを妨げるものと解してはならない。
3 各締約国は、自国の国の競争法令の執行について責任を負う一又は二以上の当局(以下この章において「国の競争当局」という。)を維持する。各締約国は、1に規定する目的に従って行動すること及び国籍に基づく差別を行わないことが自国の国の競争当局の執行政策であることを定める。

第十六・二条 競争法令の執行における手続の公正な実施(注)

注 この条の規定は、附属書十六-A(第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用)の規定に従って適用される。

1  各締約国は、自国の国の競争法令に違反した者に対し、制裁を科し、又は是正措置をとる前に、次のことを確保する。
(a)  自国の国の競争当局が有する競争上の懸念について情報を提供すること。
(b)  弁護人により代理される合理的な機会を与えること。
(c)  自己の防御のために陳述し、かつ、証拠を提出する合理的な機会を与えること。もっとも、締約国
は、当該者に対し、暫定的な制裁を科し、又は暫定的な是正措置をとった後合理的な期間内に、陳述
し、かつ、証拠を提出する機会を与えることができる。
特に、各締約国は、当該者に対し、自己の防御のために証拠又は証言を提出する合理的な機会(適当な場合には適切な資格を有する専門家による分析の提供及び証言する証人に対する反対尋問の実施の機会並びに執行の手続(注)において提出される証拠に関する検討及び反証の機会を含む。)を与える。
注  この条の規定の適用上、「執行の手続」とは、国の競争法令の違反の疑いに関する審査又は捜査に続いて行われる司法上又は行政上の手続をいう。
2  各締約国は、自国の国の競争法令に係る審査又は捜査を行う際に従うべき手続を書面により採用し、又は維持する。各締約国の国の競争当局は、審査又は捜査に確定的な期限が定められていない場合には、合理的な期間内に審査又は捜査を行うよう努める。
3  各締約国は、自国の国の競争法令の違反の疑い並びに当該国の競争法令に基づく制裁及び是正措置の決定に関して行われる執行の手続について適用される規則であって手続及び証拠に関するものを採用し、又は維持する。この規則は、証拠(適当な場合には、専門家によるものを含む。)の提出に関する手続を含むものとし、手続の全ての当事者についてひとしく適用する。
4  各締約国は、自国の国の競争法令の違反について、制裁又は是正措置の対象となる者に対し、裁判所又は当該締約国の法令に基づいて設置される他の独立した審判所において、当該制裁又は是正措置に関する再審理(実体的な又は手続上の誤りがあると申し立てられる場合の再審理を含む。)を求める機会を与える。
5  各締約国は、自国の国の競争当局に対し、違反の疑いについて、当該国の競争当局とその執行の活動の対象となる者との間の合意により自主的に解決する権限を与える。締約国は、その自主的な解決が確定する前に、当該解決について司法裁判所若しくは独立した審判所による承認又は一定の期間の公衆による意見提出の対象とすることを定めることができる。
6  締約国の国の競争当局は、進行中の審査又は捜査の存在を明らかにする公告を行う場合には、当該公告において、当該公告に掲載されている者が疑いの対象となる行為に従事したこと又は当該締約国の国の競争法令に違反したことを意味することを避ける。
7  締約国の国の競争当局は、自国の国の競争法令の違反がある旨の主張を行う場合には、執行の手続において当該違反の法的根拠及び根拠とされる事実を立証する責任を負う(注)。
注  この7のいかなる規定も、締約国が、当該主張を擁護するために、当該主張の対象となる者に対し、一定の要件について立証する責任を負うことを求めることを妨げるものではない。
8 各締約国は、自国の国の競争当局が審査又は捜査の過程において入手する事業上の秘密の情報及び自国の法令により秘密として取り扱われるその他の情報の保護について定める。締約国は、自国の国の競争当局が執行の手続においてそれらの情報を使用する場合又は使用する意図を有する場合において、その使用が自国の法令によって許容され、かつ、適当なときは、審査又は捜査の対象となる者が当該国の競争当局の主張に対して適切な防御の準備を行うために必要な情報を適時に入手することを認めるための手続を定める。
9  各締約国は、自国の国の競争当局が、自国の国の競争法令の違反の可能性に関する審査又は捜査の対象となる者に対し、当該審査又は捜査において生ずる重要な法律上、事実上又は手続上の問題について当該国の競争当局と協議する適当な機会を与えることを確保する。

第十六・三条 私訴に係る権利(注)

注 この条の規定は、附属書十六-A(第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用)の規定に従って適用される。

1  この条の規定の適用上、「私訴に係る権利」とは、国の競争法令の違反により自己の事業又は財産に損害を受けた者が、独自に又は国の競争当局による当該違反の認定の後に、裁判所又は他の独立した審判所による救済(差止め、金銭的救済その他の救済を含む。)を求める権利をいう。
2  各締約国は、私訴に係る権利が国の競争法令の公的な執行を補完する重要なものであることを認め、独自に行使される私訴に係る権利について定める法令その他の措置を採用し、又は維持すべきである。
3  締約国は、独自に行使される私訴に係る権利について定める法令その他の措置を採用せず、又は維持しない場合には、1に規定する者に対して次のことを認める権利を定める法令その他の措置を採用し、又は維持する。
(a)  国の競争当局が国の競争法令の違反の疑いに関する審査又は捜査を開始するよう要請すること。
(b)  国の競争当局による違反の認定の後、裁判所又は他の独立した審判所に救済を求めること。
4 各締約国は、2又は3の規定に従って定める権利について、自国の者に与えられる条件よりも不利でない条件で他の締約国の者が行使することができることを確保する。
5  締約国は、この条の規定に基づいて創設し、又は維持する権利を行使するための合理的な基準を定めることができる。

第十六・四条 協力

1  締約国は、自由貿易地域における競争法令の効果的な執行を促進するための国の競争当局の間の協力及び調整の重要性を認める。したがって、各締約国は、次のことを行う。
(a)  競争政策の策定に関する情報を交換することにより競争政策の分野において協力すること。
(b)  適当な場合には、競争法令の執行に関する問題について協力すること(通報、協議及び情報の交換を通じて協力することを含む。)。
2  締約国の国の競争当局は、他の締約国の競争当局との間で、相互に合意する協力の条件を定める協力に関する取決め又は合意を行うことを検討することができる。
3  締約国は、自国の法令及び重要な利益に適合する態様により、かつ、自国の合理的に利用可能な資源の範囲内で協力することに合意する。

第十六・五条 技術協力

締約国は、競争法令の策定、適用及び執行並びに競争政策の策定及び実施における多様な経験を共有することにより締約国が利益を享受し得ることを認め、利用可能な資源の範囲内で、次の活動を含む相互に合意する技術協力を行うことを検討する。
(a) 関連する問題についての助言又は訓練の提供(職員の交流によるものを含む。)
(b) 競争に関する啓発についての情報及び経験の交換(競争的な文化を促進するための方法についてのものを含む。)
(c) 新たな国の競争法令を実施する締約国に対する支援

第十六・六条 消費者の保護

1  締約国は、自由貿易地域において効率的かつ競争的な市場を創設し、及び消費者の福祉を向上させる上での消費者の保護に関する政策及びその執行の重要性を認める。
2  この条の規定の適用上、詐欺的又は欺まん的な商業活動とは、消費者に現実の害をもたらし、又は防止されない場合に現実の害をもたらす急迫したおそれがある詐欺的又は欺まん的な商業行為をいい、次の行為を含む。
(a)  重要な事実に関して誤った表示(その暗示を含む。)を行う行為であって、誤認した消費者の経済的
利益に重大な損失をもたらすもの
(b)  消費者による代金の支払の後、当該消費者に商品を引き渡さず、又はサービスを提供しない行為
(c)  許可なく、消費者の金融口座、電話料金のための口座その他の口座に請求をし、又はこれらの口座から引落としをする行為
3  各締約国は、消費者の保護に関する法律その他詐欺的又は欺まん的な商業活動を禁止する法令を制定し、又は維持する(注)。
注  詐欺的又は欺まん的な商業活動を禁止するために締約国が制定し、又は維持する法令は、民事又は刑事のものとすることができる。
4  締約国は、国境を越える詐欺的又は欺まん的な商業活動が増大していること並びにこのような活動に効果的に対処するために締約国間の協力及び調整が望ましいことを認める。
5  締約国は、適当な場合には、詐欺的又は欺まん的な商業活動に関して相互に関心を有する事項について協力及び調整(消費者の保護に関する法律の執行における協力及び調整を含む。)を促進する。
6  各締約国は、自国が決定する消費者の保護に関する政策、法律又はこれらの執行について責任を負う国の関連する公的機関又はその職員を通じ、この条に規定する事項であって自国の法令及び重要な利益に適合するものについて、自国の合理的に利用可能な資源の範囲内で協力し、及び調整するよう努める。

第十六・七条 透明性

1  締約国は、自国の競争に関する執行政策をできる限り透明性のあるものとすることの価値を認める。
2  各締約国は、国の競争法令並びに競争に関する国の政策及び執行活動の透明性を向上させる上でAPECの競争法及び競争政策に関するデータベースが有する価値を認め、当該データベースにおける自国の情報を維持し、及び更新するよう努める。
3 締約国は、他の締約国からの要請があった場合には、当該要請を行った他の締約国に対し、次の事項に関する公開情報を入手可能なものとする。
(a) 自国の競争法令の執行に関する政策及び実務
(b) 自国の国の競争法令の適用除外及び免除。ただし、当該要請において、関心のある物品又はサービス及び市場が特定され、かつ、当該適用除外又は免除がどのように締約国間の貿易又は投資を妨げるおそれがあるかについて説明する情報が含まれる場合に限る。
4 各締約国は、自国の国の競争法令の違反を認定する最終的な決定が書面によって行われること並びに刑事事件でない場合には当該決定にその基礎となった事実認定及び論拠(法的分析及び適当な場合には経済的分析を含む。)を記載することを確保する。
5 各締約国は、更に、4に規定する最終的な決定及び当該決定を実施する命令を公表すること又はその公表が可能でない場合には利害関係者及び他の締約国が知ることができるような他の方法によりこれらを公に入手可能なものとすることを確保する。各締約国は、公に入手可能なものとされる当該決定又は当該命令が、自国の法令により公への開示から保護されている秘密の情報を含まないことを確保する。

第十六・八条 協議

締約国は、他の締約国からの要請があった場合には、締約国間の理解を促進し、又はこの章の規定の下で生ずる特定の問題に対処するため、当該要請を行った他の締約国と協議する。当該要請を行った他の締約国は、当該要請において、適当な場合には、その問題がどのように締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼすかについて明示する。当該要請を受けた締約国は、当該要請を行った他の締約国の懸念に対して十分かつ好意的な考慮を払う。

第十六・九条 紛争解決の不適用

いずれの締約国も、この章の規定の下で生ずる事項について、第二十八章(紛争解決)の規定による紛争解決を求めてはならない。

附属書十六-A 第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定のブルネイ・ダルサラーム国についての適用

1 第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定は、ブルネイ・ダルサラーム国がこの協定の効力発生の日に有効な国の競争法令を有せず、又は国の競争当局を設置していない場合には、当該効力発生の日の後十年を超えない期間、同国については、適用しない。
2 ブルネイ・ダルサラーム国が1に定める十年の期間の満了前に一又は二以上の国の競争当局を設置する場合には、第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定は、その設置の日から同国について適用する。
3 ブルネイ・ダルサラーム国は、1に定める十年の期間の間に、当該十年の期間の満了の時点において同国が第十六・二条(競争法令の執行における手続の公正な実施)、第十六・三条(私訴に係る権利)及び第十六・四条(協力)の規定を遵守していることを確保するために必要な手段をとるものとし、当該十年の期間の満了の時点までにこれらの義務を履行するよう努める。同国は、いずれかの締約国からの要請があった場合には、全ての締約国に対し、適当な国の競争法令の策定及び実施並びに一又は二以上の国の競争当局の設置に係るこの協定の効力発生以後の進捗状況を通報する。

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