アルゼンチン(Argentina)

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※ 以下の概要については,作成時期が古く,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

1 根拠法

(1)根拠法

 アルゼンティンの競争法は,競争保護法(Ley de Defensa de la Competencia:1999年法律第25156号)である。本法は,1980年に制定された競争保護法第22262号を廃止して,新しく1999年に制定されたものである。

(2)法適用範囲

 本法は,営利目的を有すると否とを問わず,国内の全領域又は一部において経済的事業活動を行っている公的又は私的なすべての自然人又は法人に対して適用される。さらに,その行為等が国内市場に影響を及ぼしうるような外国事業者も本法の規定に服する(3条)。

2 執行機関

(1)概要

 アルゼンティンの競争当局は,国家競争保護審判所(Tribunal Nacional de Defensa de la Competencia)であり,国家経済・事業・公共事業省に属する独立の機関として競争保護法の適用及び遵守の監督を行うために創設されている(17条)。
 同審判所は,一定の者によって構成される審査会における選考を経た上で国家行政府によって任命され(19条),7人の構成員によって構成される(18条)。その任期は6年であり,再任は妨げられない(20条)。

(2)権限

 国家競争保護審判所は,次のような職務及び権限を有する(24条)。

  • 市場の研究及び調査,並びにそのために必要な資料及び協力を求めること
  • 聴聞会を開催すること
  • 制裁的措置を課すこと
  • 競争事項についての研究及び調査を促進すること
  • 自由競争についての意見を表明すること
  • 競争政策について国際協定等の交渉を行うこと
  • 内部規則を作成すること
  • 国家競争保護登録簿を維持すること
  • 司法審に対して訴訟を提起すること
  • 立ち入り調査を行うこと,等

3 規制の概要

(1)禁止事項

 競争保護法では,財及び役務の生産又は交換についていかなる形で表されたものであれ,競争又は市場へのアクセスを制限する目的又は効果を有し,又は一定の市場における支配的地位の濫用になり,一般経済利益に結果として損害をもたらすことになる行為の禁止が一般的に定められ(1条),具体的な禁止行為が以下のように例示されている(2条)。
a) 直接又は間接の価格の決定,並びに同様の目的又は効果を有する情報交換
b) 一定数量のみに制限された財物の生産等,又は一定数量若しくは頻度に制限された役務の提供の義務づけ
c) 水平的な地域,市場,顧客又は供給源の分配
d) 入札談合
e) 技術開発又は投資の制限の取決め
f) 第三者の新規参入若しくは事業活動の継続の妨害,又は第三者の市場からの排除
g) 直接又は間接の価格及び取引条件の共同又は一方的な決定
h) 研究及び技術開発の合意又は投資の合意を通じた市場の統制
i) 抱き合わせ販売
j) 排他条件付取引
k) 差別的取扱い
l) 不当な取引拒絶
m) 支配的独占的な公益サービスの提供の停止
n) 略奪的コスト割れ販売

(2)集中規制

 アルゼンティンにおいては,従来企業集中は規制の対象とされてこなかったが,今回の法律改正に伴ってその対象とされるようになり,規制手続も整備されている。競争減殺の目的又は効果を有する,従って一般経済利益に結果として損害をもたらすことになる経済的集中が禁止される(7条)。経済的集中とは,以下の行為の実行によって,一若しくは複数の事業者の支配権を取得することとされている(6条)。
a) 事業者間の合併
b) 資本金の移転
c) 資産,株式若しくは資本参加に関するその他の種類の権利又は如何なる種類の権利であれ,株式若しくは資本参加に転換される,若しくはその表明を行う者の決定においていかなる形であれ影響力を持つ債務証書の取得であって,当該取得が取得者に支配権又は実質的な影響力を移譲するものである場合
d) 一定の者又は経済的団体に人為的若しくは法的に一事業者の資産を譲渡する,又は一事業者の通常の若しくは特別の経営上の決定の採用に際して決定的な影響力を与えるその他のいかなる合意又は行為
 企業集中規制の手続としては,関係事業者の国内総取引高の合計額が2億ペソを超える場合,又は関係事業者の世界レベルでの総取引高の合計額が25億ペソを超える場合に,事前届出に基づく事前審査制が導入されている(8条)。届出された企業集中行為は,競争保護審判所の審決によって,承認若しくは条件付きで承認又は否認されることになる。

4 法執行手続

(1)審査手続

 国家競争保護審判所は,職権又は如何なる者を問わず申立に基づいて手続を開始する(26条)。審判所が申立を適当と判断する場合,被審人に陳述を行う機会が与えられるように通知され,又は手続が職権によって開始された場合には,その事実及び根拠の説示が通知される(29条)。手続の打切り処分となる場合を除いて(31条),予備調査の終了後,被審人の主張・立証期間を経て審判所が最長60日以内に審決を下して,行政上の手続が終結する(32条、34条)。
 なお,被審人は審決が下されるまでの間に,自ら審査の対象となった行為の停止や修正等を約定し,当該約定に対する競争保護審判所からの承認を経て,手続を停止させることができる(36条)。

(2)違反行為に対する制裁的措置

ア 行政上の措置
 国家競争保護審判所は,違反行為を行った自然人又は法人に対して,以下のような制裁的措置を課すことができる(46条)。
a) 競争制限的行為及び支配的地位の濫用行為の停止及びその効果の除去
b) 競争制限的行為,支配的地位の濫用行為及び届け出られた集中計画に関する審判所の決定への不遵守に対する1万ペソから1500万ペソまでの制裁金。違反行為が反復されて行われた場合には,制裁金の総額は2倍になる。
c) 支配的地位の濫用を構成する行為,又は本法の規定に違反する独占的若しくは寡占的地位の獲得若しくは強化する行為について,競争歪曲効果を相殺する条件の履行。又は所管裁判所判事に対する違反事業者の解散,清算,分離若しくは分割の要請。
d) 集中規制に関する届出義務に関する違反行為に対する100万ペソを上限とする日毎の制裁金。
 法人は,当該法人の名において,その利益のために行動した自然人によって実行された行為の責任を負うことができると規定され(47条),違反行為が法人によって行われた場合,当該法人の法定代理人等に対して連帯して制裁金が同様に課される(48条)。また,1年から10年の事業停止という補完的な制裁的措置が課される。
イ 民事上の措置
 禁止行為によって損害を受けた自然人又は法人は,一般法(derecho comun)の規定に従って,当該事項に関する所管裁判所において損害賠償請求訴訟を提起できる(51条)。

(3)不服申立て

 制裁的措置を命ずる審決や企業集中行為に対する反対若しくは条件付承認を行った国家競争保護審判所の審決に対しては,不服申立を行うことができる(52条)。不服申立は,審決が通知されてから15日以内に国家競争保護審判所に対して行われなければならず,これを受けた当該審判所は,5日以内に一件書類を,相当する全国裁判所(Camara Federal)に上げなければならない(53条)。

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