コスタリカ(Costa Rica)

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※ 以下の概要については,作成時期が古く,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

1 根拠法

(1) 根拠法

 コスタリカの競争法は,競争促進及び消費者の実効的保護法(Ley de Promocion de la Competencia y Defensa Efectiva de Consumidor:1995年法律第7472号)であり,1994年12月20日に制定され,翌1995年1月から施行されている。本法は,独占,独占的行為及びその他の市場の効率的な機能を制限する行為の禁止及び防止,並びに経済活動に対する不必要な規制の撤廃によって,消費者の正当な権利及び利益を有効に保護し,競争過程及び自由な競争を保護し促進することを目的としている(1条)。

(2) 法適用範囲

 本法は,次のような例外を除き,すべての経済的事業者に対して適用される。適用除外の対象とされるのは,公益事業や,特別法に基づく,保険・金融・アルコールの蒸留及び販売・燃料供給・電気通信等の分野である(9条)。

2 執行機関

(1) 競争促進委員会

ア コスタリカの競争当局は,競争促進委員会(Comision para Promover la Competencia,略称:COPROCOM)であり,組織的には経済商工業省に属し,自由な競争及び市場の流動性を不当に妨害するすべての行為に対して,職権により又は申立てに基づいて,手続に従って審理し,制裁的措置を命じる。また,不正競争行為に対する訴えを除いては,司法審査に訴える前に,必ず委員会の行政審査を経なければならないとされている(18条)。
イ 委員会は,経済商工業省の推薦に基づいて行政府が任命する5人の正委員と5人の補欠委員からなる。委員の任期は4年で,再任は妨げられない(19条)。委員会は,本法違反行為の審査のために,専門部門(Unidad Tecnica de Apoyo)を置かなければならない(23条)。
ウ 競争促進委員会は,規制緩和の監視に関すること,例外的な場合における価格規制に関すること以外に,競争の促進に関する権限として,違反行為の審査を行うこと,違反行為がある場合に制裁的措置を命じることができる権限が認められている(24条)。

3 規制の概要

(1) 禁止事項

 競争促進及び消費者の実効的保護法では,公的又は私的な独占,及び競争又は競争事業者の市場参入を阻害若しくは制限する,又は競争事業者の市場からの退出を助長する独占的行為の禁止が一般的に定められるとともに(10条),絶対的独占行為(11条)及び相対的独占行為(12条)の禁止が定められている。また,競争促進委員会が審理する権限は認められていないが,不正競争行為の禁止も定められている(17条)。

ア 絶対的独占行為

 次の(i)から(iv)のいずれかの目的をもつ競争経済事業者間の行為,契約,協定,取決め又は結合が絶対的独占行為とされる(11条)。
(i)価格の決定,引上げ,取決め若しくは操作。又は同様の目的・効果をもつ情報交換
(ii)財物・役務の供給制限
(iii)市場分割
(iv)入札談合

イ 相対的独占行為

 次の(i)から(vii)に掲げる場合における,市場の他の事業者の不当な排除,他の事業者の市場参入の実質的な妨害,又は一若しくは複数の者のための排他的利益の設定をする若しくはしうる目的又は効果をもつ行為,契約,協定,取り決め又は結合は相対的独占行為とされる(12条)。
(i)市場の垂直的分割
(ii)再販売価格の制限又はその他の拘束条件の強制
(iii)抱き合わせ取引
(iv)排他条件付き取引
(v)強圧行為の取決め又はその誘引
(vi)不当な低価格での生産又は商品化
(vii)競争事業者の市場からの退出の誘発又は参入妨害行為一般

ウ 不正競争行為

 次の(i)から(iv)に掲げる場合で,競争事業者間における,市場システムにおいて一般に受容されている公正さ及び善良な商慣行の規範(las normas de correccion y buenos usos mercantiles)に反し,現実の損害又は明らかな損害のおそれを生じさせる競争行為が,不正競争行為として禁止されている (17条)。
(i)混同行為
(ii)信用毀損行為
(iii)景品等の提供行為
(iv)模倣行為

(2) 集中規制

 コスタリカにおいては,企業集中は多くの場合経済性及び効率性の達成に結びつくものであり,場合によっては反競争的効果を生じさせる市場における力を形成することにもなるとの観点から,集中規制についての扱いは大きくない。自由な競争を減殺する目的又は効果をもって行われる経済事業者間における合併,支配権の獲得又はその他のいかなる行為も集中と解されるものとすると定めているだけであり(16条),これまでの規制例もわずか1件だけであるとされている。

4 法執行手続

(1) 審査手続

 競争促進委員会は,職権又は申立てに基づいて,自由な競争を妨害若しくは阻害し,市場の流動性を不当に妨害するすべての行為を,手続に従って審理し制裁的措置を命じるものとする。委員会における行政審理は,不正競争行為に対するものを除いて,義務づけられており,司法手続に訴える前に尽くされなけれなければならない(18条)。
 手続の詳細は,規則において定められている。端緒となる申立て又は職権に基づき,競争促進委員会の専門部門が,予備審査を開始する。その結果に基づいて,専門部門は,競争促進委員会に対し,勧告を伴った予備的報告書を提出する。これを受けて,同委員会は,違反行為の存在を十分に示す証拠がなければ不問処分に付し,その反対の場合には,排除措置をとるために行政手続を開始する。その過程においては,被審人の出頭を求め,必要な証拠や陳述の開示を認めて非公開で審理が行われる。当該審理(審理は2回まで行える)が終結すると,同委員会は,15日以内に最終的な措置を命じなければならない。この最終的な措置の命令によって,行政手続は,事件の端緒から2か月以内に終結されなければならないが,場合によっては,さらに2か月延長可能である。同委員会の最終的な審決は,通知されてから執行されることになる(61条)。

(2) 違反行為に対する制裁的措置

 競争促進委員会は,違反行為を行った経済事業者に対して,その支払い能力を考慮に入れながら,審決において次のアからクの制裁的措置を命じることができる(25条)。
ア 違法行為又は集中の差止,改善,若しくは禁止
イ 不当な集中の,部分的又は全体的な分割
ウ 競争促進委員会に対して虚偽の申告を行ったこと又は虚偽の情報の提供を行ったことによる最低月決め賃金の総額の65倍までの制裁金の支払い
エ 競争促進委員会が求めた情報の提供を遅らせたことによる最低月決め賃金の総額の50倍までの制裁金の支払い
オ 絶対的独占行為を行ったことによる最低月決め賃金の総額の680倍までの制裁金の支払い
カ 相対的独占行為のいずれかの行為を行ったことによる最低月決め賃金の総額の410倍までの制裁金の支払い
キ 禁止された集中を行ったことによる最低月決め賃金の総額の410倍までの制裁金の支払い
ク 法人若しくは事実上の組織の代表として,又はその名義及び命令によって,独占的行為又は禁止された集中に直接的に関与した自然人に対する最低月決め賃金の総額の75倍までの制裁金の支払い
 オからクに定める違反行為であって特別な重大性を有する場合,競争促進委員会の判断によって,違反者の前事業会計年度において獲得した年間売上高の10%に相当する額又は違反者の資産価額の10%までの額の内,高い方を制裁金として課すことができる。
 また,競争促進委員会の審決に従わない場合には,刑法第295条に定める犯罪行為を犯したものとされる(65条)。

(3) 不服申立て

 競争促進委員会の最終的な審決に対しては,再審査のための不服申立て又は,審決の違法性による行政訴訟裁判所に対する不服申立てを行うことができる(61条)。
 

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