チェコ(Czech)

(2007年5月現在)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。
※ 以下の概要については,2007年に作成したものであり,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

 

1 根拠法

(1) 根拠法

 「競争保護法(Act on the Protection of Competition)(法第143/2001号)」
 施行:2001年7月1日
 改正:2004年,2005年
 ※これ以前は,1991年に施行された「経済競争の保護に関する法律(Act on the Protection of Economic Competition(No.63/1991))」が運用されていた。

(2) 適用範囲(1条)

ア 本法は,特別法における規定を妨げない限りにおいて,一般的な経済活動を行うすべての事業者(自然人及び法人)に対して適用される。
イ 本法は,EC条約第81条及び第82条に基づく加盟国間の取引に影響を与えうる事業者に対する手続において適用される。
ウ 本法は,チェコ市場における競争を歪曲する又はその恐れのある,国外で生じた事業者の行為に対しても適用される。
エ 本法は,チェコが拘束を受ける国際条約において規定される場合を除き,国外市場のみに影響を与えうる行為に対しては適用されない。
オ 本法は,EU法の規定に従った農業生産物の生産及び取引の分野における事業者の行為に対しては適用されない。
カ 本法は,電気通信事業法の規定又は同法に基づく決定に従った事業者の行為に対しては適用されない。

2 執行機関

 チェコにおける現在の競争当局は,「競争保護庁(Office for the Protection of Competition)」である。
 競争法が同国で導入された当時の競争当局は,「経済競争省(Ministry of Economic Competition)」であり,1991年に設立された。その後,1996年11月に法第273/1996号(競争保護庁の権限に関する法律)に基づき競争保護庁が設立され,競争当局としてその役割が引き継がれた。同庁は,競争保護法を執行する独立した行政機関である。
 競争保護庁の長官(Chairman)は,政府の推薦に基づき,大統領により任命される。任期は6年であり,2回まで再任が可能である。
 2005年11月現在の職員数は112名である(組織図参照)。

3 規制の概要

(1) カルテル

ア カルテルの禁止(第3条)

 競争を排除,制限,歪曲又は危険にさらす,若しくはその恐れのある,事業者間のすべての協定,事業者団体によるすべての決定,すべての協調的行為は禁止され,無効とされる。特に,以下の行為は禁止される。
[1] 価格の固定又は取引条件の固定
[2] 製造,販売,技術開発又は投資を制限又は統制
[3] 市場又は購入元の分割
[4] 取引相手に対する当該契約と関連性のない義務を課す契約の締結
[5] 取引相手に対し,同一又は同等の取引について異なる取引条件を課し,それにより特定の取引相手を不利な状況に置くもの
[6] 当該協定に参加していない者との取引又は経済的協力を制限し,損害を与えることを義務付けるもの(共同ボイコット)

イ 適用除外

(ア) 個別の適用除外(第3条第4項)
[1] 商品の生産又は流通の促進,技術又は経済的進展の推進を構築し,消費者利益をもたらすもの
[2] 協定の目的の達成に必要不可欠ではない制限を事業者に課すもの
[3] 協定の目的を成す市場の実質的な部分における競争を排除する可能性のないもの
(イ) 一括適用除外(第4条)
[1] EC条約の一括適用免除規定に基づき承認されている協定
[2] 競争の歪曲が,消費者利益に勝るものであることを証明できる協定

(2) 市場支配的地位の濫用

ア 市場支配的地位(第10条)

[1] 一の事業者による独占又は一以上の事業者による共同の独占は,その力の影響が他の事業者の独立性にまで著しく及ぶ者である場合,当該事業者は関連市場において支配的地位にあると見なされる。
[2] 市場支配的地位の認定に当たっては,当該事業者の関連市場における市場占有率,事業者の経済及び財政力,当該市場への他の事業者の参入障壁,事業者の垂直的統合の程度,市場構造,現在の競争者の市場占有率の大きさ等の指標に基づき判断する。
[3] [2]の指標に反することなく,かつ審査期間中の関連市場における市場占有率が40%を超えない場合は,当該事業者は市場支配的地位にないと見なされる。

イ 市場支配的地位の濫用の禁止(第11条)

 他の事業者又は消費者に損害を与える市場支配的地位の濫用は,禁止される。特に,以下の行為は禁止される。
[1] 取引の相手方との契約に際し,不公正な条件の直接的・間接的な強要。特に,契約締結によって相手から課される義務に比べ不均衡な義務を課するなど,不利な条件の強要
[2] 契約締結の際に,相手方に対し,事業の性質や商慣習に照らし合わせて契約の条項と関連性のない義務の強要
[3] 特定の事業者を競争上不利な立場に立たせることとなる,同一又は類似性のある取引に対する相手方によって異なる取引条件の賦課
[4] 消費者の利益を害することとなる,生産,販売,研究又は技術の発展の禁止又は制限
[5] 競争を歪曲する結果となる,商品の不当に低い価格での提案又は販売
[6] 自らが保有する送電設備又はその他のインフラ設備への他の事業者のアクセスの不当な拒絶

(3) 企業結合

ア 競争保護庁による承認が前提となる企業結合(第13条)

[1] 国内市場における,当該事業者らの直近の会計年度の合計純売上高が15億CZKを超え,かつ,少なくとも2の当該事業者のそれぞれの直近の会計年度の純売上高が2億5000万CZKを超える場合,又は,
[2] 合併の場合又は共同事業の設立の場合はその当事者のうち少なくとも1社,買収の場合は買収される事業者又は買収される事業部分の,国内市場における直近の会計年度の純売上高が,15億CZKを超え,かつ,その他の当事者の直近の会計年度の世界規模の売上高が15億CZKを超える場合

イ 企業結合の禁止(第17条)

 届出がなされた企業結合が達成されることにより,当事者が関連市場において市場支配力を形成又は強化し,競争を実質的に制限する恐れがある場合,当該企業結合は禁止される。
 競争保護庁は,効果的な競争の保護及び更なる発展,影響を受けるすべての市場の構造,当該市場における当事者の市場占有率,当事者の経済・財政力,当該市場への他の事業者の法的・その他の参入障壁,当事者の供給者及び顧客の代替可能性,影響を受ける市場の需要及び供給の発展性,消費者の必要性及び利益,効果的競争を妨げず消費者利益となる研究及び開発などを評価した上で,決定を下す。
 なお,すべての企業結合当事者の,関連市場における合計市場占有率が25%を超えない場合は,競争を実質的に制限する恐れがないと見なされる。

ウ 企業結合審査手続(第15条,第16条)

[1] 当事者による届出に基づき,競争保護庁は審査を開始する。届出資料が不完全である場合は,審査は開始されない。
[2] 競争保護庁による承認が前提とならない企業結合である場合,及び同庁による承認が前提となるものの競争を実質的に制限する恐れがないと判断される場合,同庁は審査開始から30日以内にその旨を通知する。
[3] 競争保護庁は,競争を実質的に制限する恐れが考えられる場合は,当事者に対しその旨通知した上で審査を継続し,審査開始から5か月以内に決定を下す。5か月を過ぎても決定が下されない場合は,当該企業結合は承認されたものと見なされる。
[4] 審査中,当事者はいかなる企業結合手続も進めてはならない。これに違反する場合,最大1000万CZK又は直近の会計年度における売上高の最大10%の制裁金が課される。

4 法執行手続

(1) 事件審査(第21条)

ア 事件の開始

 競争保護法への違反の可能性があると考える競争事業者や第三者は,競争保護庁に申告することができる。申告があった場合,同庁はまず,当該申告の受領,拒絶,他の機関への委託等の選定を行い,その後,予備審査を経て,違反が疑われる十分な証拠があると見なす事案について正式審査を開始する決定を行う。同庁は,正式審査が開始された旨を,審査対象となる事業者に通知する。

イ 審査権限

[1] 競争保護庁の審査手続の対象となる事業者は,同庁の審査に服従しなければならない。
[2] 競争保護庁は,関係する事業者及び特別法に規定がない限り公的機関に対して,同庁の審査活動及び事実の解明に必要な資料や情報の提供を要請することができる。事業者及び公的機関は,この要請に対して,完全,正確かつ真実の文書及び情報を,競争保護庁が既定する期日までに提供しなければならない。
[3] 競争保護庁は,審査対象となる事業者が事業活動に用いているあらゆる土地,建物,部屋及び移動手段に立ち入り,書類及びその他の事業記録を検査し,写し又は抜粋を取得し,その場での口頭の弁明を問う権限を持つ。また,個人の自宅等,事業上の建物以外の場所に資料等が保管されていることが合理的に疑われる場合は,裁判所による事前の承認の下,それらの場所についても検査することができる。

ウ 聴聞の機会

 聴聞は,必ず行われるものではない。
競争保護庁は,対象となる事業者の要請に基づき,必要と見なされる場合,口頭による非公開の聴聞を命令することができる。また,同庁は聴聞において,証人を呼ぶことができる。

(2) 確約手続(第7条,第11条)

 競争保護庁は,カルテル及び支配的地位の濫用事件において,審査対象事業者が自主的な是正措置を提案し,もしその措置が競争の保護に十分であり,その遂行により阻害状況が排除される場合は,当該事業者に措置を履行する義務を課し,審査手続を終結することができる(確約)。提案された是正措置では不十分であると判断した場合は,その判断の理由を当該事業者に書面により通知し,審査手続を継続する。
 事業者は,審査開始の通知の送達日から原則として15日以内に,確約の申し出を行うことができる。
 また,確約決定後に,(1)市場の状況が実質的に変化した,(2)事業者が確約に反する行為を行った,(3)不正確又は不完全な資料に基づき確約が決定されたことが判明した場合,競争保護庁は審査手続を再開することができる。

(3) 制裁金及び是正措置

 競争保護庁は,下記の制裁金及び是正措置を,(1)禁止事項の違反又は義務の不履行を競争保護庁が知った日から3年までの間,(2)禁止事項の違反又は義務の不履行が起こってから10年までの間のみ,課すことができる。

ア 制裁金(第22条)

[1] 違反行為に対する制裁金
 競争保護庁は,競争保護法に違反するカルテル,支配的地位の濫用又は企業結合,確約違反,企業結合の審査待機期間中の実施を行った事業者に対し,最大1000万CZK又は直近の会計年度における売上高の最大10%の制裁金を課すことができる。
[2] 競争保護庁による審査への妨害等に対する制裁金
 競争保護庁は,同庁に要請された資料,情報等を期日内に提供しなかった者,不完全,不正確な資料及び情報を提供した者,立入検査の実施を妨害した者,同庁の審査への服従を拒んだ者,立入検査時の保全のための封鎖を破った者に対し,最大30万CZK又は直近の会計年度における事業者の売上高の最大1%の制裁金を課すことができる。
[3] 競争保護庁による決定の不履行に対する制裁金
 競争保護庁は,同庁の決定を履行しない事業者に対し,最大100万CZKの制裁金を課すことができる。

イ 是正措置(第23条)

 競争保護庁は,禁止事項の違反又は義務の不履行に対し,是正措置を課し,それを履行するための合理的な期限の設定をする決定を行うことができる。

(4) 控訴

 競争保護庁の決定に不服がある事業者は,競争保護庁長官に対して不服申出を行うことができる。同長官は,同庁の決定の再検討を行う。
 同長官の決定に不服がある事業者は,同長官の決定発出から2か月以内に,行政裁判所に控訴することができる。

(5) 刑事罰

 自らの利益を増す目的で違反行為に関与した自然人は,最大2年間の禁固刑又はその専門的活動の禁止,若しくは罰金が課される可能性がある。

5 リーニエンシー

(1) 根拠

 「リーニエンシー・プログラム」(2001年導入)

(2) 対象行為

 競争保護法第3条(カルテルの禁止)に違反する行為

(3) 概要

[1] 制裁金の免除
 次のすべての条件を満たす事業者は,制裁金の全額免除を付与される可能性がある。
a 競争保護庁が認知していない,又は認知しているものの正式審査を開始するまでの証拠を持っていない違法なカルテル行為ついて,同庁に最初に情報提供した事業者
b 当該カルテル行為への参加を既にやめている事業者
c 関連するすべての情報,資料,その他の証拠を競争保護庁に提出し,審査手続の全期間にわたり同庁に協力を行った事業者
d 他の事業者に対し,当該カルテル行為への参加を強要していない事業者
[2] 制裁金の減額
 競争保護庁に情報,資料等の提出を行い,同庁の審査手続に協力を行う事業者は,次の各範囲において制裁金の減額を付与される可能性がある。
a 競争保護庁が既に証拠を保有する事件について,最初に申請した事業者:30~50%
b 2番目に申請した事業者:20~30%
c 上記以外の事業者:最大20%


競争保護庁組織図
 

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