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1 根拠法
ギリシャの競争法は,1977年に制定された「独占及び寡占の規制並びに自由競争の保護に関する法律」("Act 703/77 on the Control of Monopolies and Oligopolies and the Protection of Free Competition",以下「ギリシャ競争法」という。)である。同法は,水平的・垂直的協定,合併等を適用対象とし,基本的にはEU競争法の規定に従っている。
同法は,1991年及び1995年に改正されている。
(注) 同法の構成は,以下のとおりである。
第1章 目的
第2章 特別規定及び適用免除
第3章 競争委員会
第4章 法的保護
第5章 登録及び届出
第6章 申告及び審査
第7章 制裁・支払義務
第8章 経過措置
2 執行機関
(1) 競争委員会(Competition Commission)
競争委員会は,競争法の独立した法執行機関である。同委員会は,裁判官,産業界,消費者,大学等から選任された委員長及び8名の委員により構成されている。任期は3年である。また,同委員会には,40名以下の職員から構成される事務局が設置されている。
同委員会は,次の権限を有している。
ア カルテル,市場支配的地位の濫用等違反行為の仮差止め,差止め,制裁金の賦課
イ 協定の届出の受理・登録,ネガティブ・クリアランス若しくは適用免除の許可
ウ 合併の禁止その他の排除措置,届出の受理,違反に係る制裁金の賦課
エ 商業大臣による第1条第1項のカルテルの定義及び同条第3項のカルテルの適用除外に関する決定等に対する意見提出
(2) 商業大臣(Minister of Commerce)
商業大臣は,競争法・政策の立案,競争委員会も委員長及び委員並びに事務局長の任命,第1条第1項のカルテルの定義及び同条第3項のカルテルの適用除外に関する決定を行う。
3 規制の概要
(1) カルテル
ア 禁止規定の概要
競争法第1条第1項は,カルテルの禁止について次のように規定している。
競争を妨害し,制限し又は歪曲する目的又は結果をもたらす事業者間のすべての協定,事業者団体の決定及びあらゆる種類の協調的取引慣行であって,特に次の各号の一に該当する事項を内容とするものを禁止する。
(ア) 購入若しくは販売価格その他の取引条件の直接又は間接の決定
(イ) 生産,販売,技術開発若しくは投資に関する制限又は規制
(ウ) 市場又は供給源の分割
(エ) 取引の相手方に対し,同種の給付に対して異なる条件を適用し,これにより,特に有効な正当事由なしに販売,購入又は取引契約の締結を拒絶することによって,競争を妨害すること
(オ) 商品の性質上又は商慣行上,契約と関連のない追加給付を相手方が受諾することを契約締結の条件とすること
同項を適用するには,次の2つの要件を満たさなければならない。
a 事業者間又は事業者団体の協定,決定又は協調的取引慣行が存在すること
b 競争の妨害,制限又は歪曲の目的を有し又は結果を生じること
イ 適用免除(第1条第3項)
競争法第1条第1項が適用対象である協定,決定及び協調的取引慣行については,次の条件に該当する場合は競争委員会に申請して個別の適用免除の認可を受けることができる。
(ア) 消費者が当該協定等によりもたらされる利益の公正な配分を受ける限りにおいて,当該協定等が,商品の生産若しくは流通の改善又は技術的若しくは経済的進展に寄与すること
(イ) 前記の目的を達成するために必要不可欠とされない制限を関係事業者に課すものではないこと
(ウ) 協定の対象となった関連市場の実質的部分に係る競争を関係事業者が排除する可能性を助長するものではないこと
ウ 一括適用免除
競争法第8a条によれば,そのような決定は行うことができることとなっているが,現在のところ一括適用免除は採択されていない。EUの一括適用免除規則は,ギリシャ競争委員会の決定に係るガイドライン又は枠組みとして適用されている。
エ ネガティブ・クリアランス(第11条)
競争委員会は,関係事業者又は事業者団体の申請があるときは,同委員会の知った事実に基づいて,同法第2条の規定に違反していないことを認することができる。
(2) 市場支配的地位の濫用
ア 禁止規定の概要
競争法は,国内市場の全体又はその実質的部分における事業者による市場支配的地位の濫用を禁止している。当該濫用として,次の行為を掲げている(第2条)。
(ア) 固定された購入又は販売価格その他の不公正な取引条件を課すこと
(イ) 消費者の不利となるように生産,販売又は技術開発を制限すること
(ウ) 取引の相手方に対し,同等の取引に対して異なる条件を適用して,特に,正当な理由なく販売,購入又は取引契約の締結を拒否し,これにより,その相手方を競争上不利な立場に置くこと。
(エ) 商品の性格上又は商慣習上,契約の対象と関連のない追加的給付を相手方が受諾することを契約締結の条件とすること。
イ ネガティブ・クリアランス(第11条)
競争委員会は,関係事業者又は事業者団体の申請があるときは,同委員会の知った事実に基づいて,同法第2条の規定に違反していないことを認することができる。
(3) 合併等企業結合規制
すべての経済分野を対象とした総合的合併規制手続を設けている。この制度の下において,届け出られた企業結合が,事前届出の対象となる企業結合であり,市場支配的地位の形成又は強化により国内市場の全体又はその実質的部分における競争を著しく阻害する場合は,競争委員会の決定によって禁止される。
競争委員会は,当該企業結合が競争の阻害,制限又は歪曲をもたらすか否かの法的判断基準を示したリストに基づき決定することになっている。
なお,禁止された集中は,公共性及び総合的経済利益の観点から商業大臣の正当化決定によって承認することができる(第4c条)。
届出基準は以下のとおりである。
ア 事後届出(第4a条)
次の場合に該当するすべての事業者の集中は,その実施から1か月以内に競争委員会に届け出なければならない。
(ア) 国内市場又はその実質的部分におけるシェアの合計が当該関係製品市場の合計売上高の少なくとも10%を占める場合
(イ) 参加事業者の売上高の合計が少なくともギリシャ・ドラクマに関し1,000万ECU相当の額となる場合
イ 事前届出(第4b条)
すべての事業者の集中は,次の場合には合意から10日以内に競争委員会に届け出られなければならない。
(ア) 国内市場又はその実質的部分におけるシェアの合計が当該関係製品市場の合計売上高の少なくとも25%を占める場合
(イ) 参加事業者の売上高の合計が少なくともギリシャ・ドラクマに関し5,000万ECU相当の額となる場合,参加事業者のうち少なくとも2社のそれぞれの国内における売上高がギリシャ・ドラクマに関し500万ECU相当の額となる場合
4 法執行手続
(1) 事務処理手続
ア 申告
事業者は,違反行為があると思料するときは,競争委員会に申告することができる。申告は,法的代理人(法律家)を通じて行わなければならない(第21条)。
イ 審査
競争委員会は,関係人に対し必要な情報を求めること(報告・提出命令)ができ,これを拒絶,妨害等したものに対し制裁を課すことができる(第25条)。
また,競争委員会において査察の権限を有する審査官は,競争委員会委員長又は事務局長が発行した文書に基づき,関係人が保有するすべての書籍,記録及び文書を検査し,その写し又は抜粋を留置し,関係人の事務所その他の事務所内において審査し,憲法第9条の規定に基づく家宅捜査を行い,適当と思料したときは証拠を留置することができる。
ウ 決定
競争委員会は,違反行為があると判断するときは,違反行為の差止めその他の措置(第4c条,第4d条,第9条)及び制裁金の賦課(第8a条)決定を行うことができる。
エ 不服申立て
競争委員会の決定に不服があるものは,アテネ行政裁判所に申し立てることができる(第14条)。さらに,同裁判所の判決に不服のあるものは,誤審令状(writ of error)により国家評議会(Council of State)に控訴できる(第15条)。
(2) 排除措置又は制裁
ア 競争委員会による措置
(ア) 違反行為の差止めその他の排除措置(上記(1)ウ参照)
(イ) 制裁金
a カルテル・市場支配的地位の濫用
違反行為を行った会計年度又は前年度の収入にの15%を上限とする制裁金(違反行為の悪質性・期間を考慮する。)及び納付遅延に対しては1日当り200万ドラクマの延滞金
b 合併届出義務違反
- 事後届出合併:関係事業者の合計売上高の5%以下の制裁金
- 事前届出合併:関係事業者の合計売上高の7%以下の制裁金
c 提出・報告命令違反(25条)及び立入検査等の妨害(第26条)300万ドラクマ以下の制裁金
イ 刑事制裁
a カルテル・市場支配的地位の濫用
100万ドラクマ以上500万ドラクマ以下の罰金(再犯はその2倍)
b 提出・報告命令違反及び立入検査等の妨害
3か月以内の禁錮及び100万ドラマク以上300万ドラクマ以下の罰金