インド(India)

(2020年6月現在)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。

1 根拠法:2002年競争法(The Competition Act, 2002)

 インドでは,1969年に制定された「独占及び制限的取引慣行法(The Monopolies and Restrictive Trade Practice Act)」により競争制限行為が規制されてきたが,2003年1月に新たな競争法として「2002年競争法(The Competition Act, 2002)」(以下「競争法」という。以下,特段の記載がない限り,条番号は競争法のものを意味する。)が制定され,2003年10月に同法の執行機関としてインド競争委員会(Competition Commission of India)(以下「委員会」という。)が設立された(注1)。
 その後,2007年に競争法が一部改正され(競争審判所(注2)の設立等),2009年5月から反競争的協定及び支配的地位の濫用行為に対する規制の運用が開始された。また,委員会は,2011年5月に企業結合に係る規則(以下「企業結合規則」という。)を公表した(同年6月から施行)。
 なお,「独占及び制限的取引慣行法」は,2009年9月に廃止された。
 
(注1)競争法に対して訴訟が提起され,最高裁まで争われたため,制定後,直ちに競争法の施行はなされなかった(2007年の競争法改正時の趣旨説明書(Statement of Objects and Reasons)の第2段落参照)。
(注2)競争審判所は2017年に廃止され,同審判所の機能は全国会社法不服審判所(National Company Law Appellate Tribunal)に移管された。

2 執行機関

 委員会は,委員長及び2名以上6名以下の委員で構成され(第8条),委員会の下に事務局が置かれる。委員長及び各委員は,政府機関の職員及び経済学,法学等の専門家により構成される選考委員会が推薦した者の中から,中央政府によって任命される(第9条)。委員長及び委員の任期は5年で,再任が可能だが,65歳以上の者は在職できない(第10条)。
 委員会の2019年末時点における職員数は197名,2019年度予算は,約15億1560万インドルピー(日本円で約25億7600万円)である。
 ※ 1インドルピー=1.7円で換算。

3 規制の概要

(1) 反競争的協定の禁止(第3条)

ア 反競争的協定の禁止

 競争法第3条は,事業者,事業者団体等による,インド国内における競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがある商品の生産,供給,流通,保管,取得若しくは管理,又は役務の提供に関する協定を禁止しており,これらに該当する協定は無効であるとしている。

イ 水平的協定

 競争関係にある事業者間による次に掲げる内容の協定や行為は,競争に相当な悪影響を及ぼすと推定される。
(ア) 直接又は間接に購入価格又は販売価格を決定するもの
(イ) 商品の生産,供給,市場,技術開発,投資又は役務の提供を制限又は支配するもの
(ウ) 市場の地理的範囲,商品若しくは役務の種類又は顧客の数を割当てること等により,市場又は原材料若しくは役務提供を分割するもの
(エ) 直接又は間接に入札談合をもたらすもの

 ただし,商品の生産,供給,流通,保管,取得若しくは管理又は役務の提供に係る効率性を向上させるジョイントベンチャーに係る協定は,競争に相当な悪影響を及ぼすとは推定されない。

ウ 垂直的協定

 取引段階の異なる事業者間の抱き合わせ取引,排他的供給契約,排他的流通契約,取引拒絶及び再販売価格維持行為であって,インド国内の競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがあるものは,禁止される。

エ 競争に相当な悪影響を及ぼすか否かの判断要素

 委員会は,①新規参入者への参入障壁の形成,②既存の競争者の排除,③参入妨害による競争制限,④消費者に対する利益の発生,⑤商品の生産若しくは流通又は役務の提供の改善,⑥商品の生産若しくは流通又は役務の提供による技術的,科学的又は経済的な発展の促進を考慮して,協定が競争に対して相当な悪影響を及ぼすかどうかを判断する(第19条第3項)。

オ 知的財産権・輸出権との関係

 著作権法,特許法,商標法等の法律により与えられる知的財産権の保護のために必要な範囲内で,権利者が権利侵害を抑止する,又は合理的な条件を設定することは,反競争的協定の禁止決定による制限を受けない。また,インドからの商品の輸出権についても,当該輸出のための商品の生産,供給,流通又は役務の提供にのみ関連する協定である限りは,反競争的協定の禁止決定による制限を受けない。

(2) 支配的地位の濫用の禁止(第4条)

ア 支配的地位の濫用の禁止

 競争法第4条は,インド国内の関連市場で支配的地位を有する事業者又は事業者集団(注3)による支配的地位の濫用を禁止している。
(注3)直接又は間接に,①他の事業者に対して26%以上の議決権を行使できる,②他の事業者の取締役会の構成員を過半数以上任命できる,又は③他の事業者の経営や業務を支配できる,2以上の事業者の集団のこと(第5条 説明 (b))。

イ 支配的地位の認定

 支配的地位とは,インド国内の関連市場において事業者が享受する地位であり,①関連市場に及ぶ競争力から独立して活動する,又は②自己に有利に競争事業者,消費者又は関連市場に影響を及ぼすことを可能にする地位のことである。
 具体的には,委員会は,①行為者の市場シェア,規模及び資源,②競争者の規模及び重要性,③市場構造及び市場規模,④社会的責任及び社会的費用等を考慮して支配的地位を有するか否かを判断する(第19条第4項)。

ウ 濫用行為

 支配的地位を有する事業者又は事業者集団による次の行為は,支配的地位の濫用とされる。
(ア) 直接又は間接に不公正又は差別的な取引条件又は価格(略奪的価格を含む。)を課すこと
(イ) 商品の生産若しくは役務の提供又は消費者利益を損なうように商品又は役務に係る技術的又は科学的な開発を制限すること
(ウ) 市場への参入の拒絶につながるような取引方法を採ること
(エ) 契約内容と無関係の付随的義務を契約の相手方が負うことを契約締結の条件とすること
(オ) ある関連市場における支配的地位を他の関連市場に参入するため又は他の関連市場を守るために行使すること

(3) 企業結合規制(第5条~第6条)

ア 競争制限的な企業結合の禁止

 競争法第6条は,インド国内の関連市場における競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがある企業結合を禁止しており,そのような企業結合は無効であるとしている。
 競争法における企業結合には,①ある企業の支配権,株式,議決権又は資産の取得,②既に被取得企業と類似する商品の生産等を行っているか,又は類似するサービスを提供する他の企業を直接又は間接に支配している場合の当該企業の支配権の取得,③合併の3種類がある(第5条)。

イ 届出制度

 下記(ア)~(エ)のいずれかの基準を満たす企業結合の当事会社は,合併に係る事業者の取締役会による合併の承認の日又は買収若しくは支配権の獲得のための合意文書の締結日から30日以内に,企業結合の詳細を委員会に届出なければならない(第6条第2項)。ただし,2017年3月27日付企業省通達により,被取得企業の資産が35億ルピーを超えない又は売上げが100億ルピーを超えない場合,届出は免除されることとなった(ただし,同通達が官報に掲載された日から5年間に限る。)。
 
2017年3月27日付企業省通達:
https://www.cci.gov.in/sites/default/files/notification/S.O.%20988%20%28E%29%20and%20S.O.%20989%28E%29.pdf
 
 期限内に届出が行われなかった場合は,当該企業結合の当事会社の売上高又は総資産の1%のいずれか高い方の制裁金が課される(第43 A条)ただし,当該規制は,2017年6月29日付企業省通達により,免除されることとなった(ただし,同通達が官報に掲載された日から5年間に限る。)。
 
2017年6月29日付企業省通達:
https://www.cci.gov.in/sites/default/files/notification/S.O.%202039%20%28E%29%20-%2029th%20June%202017.pdf

(ア) 取得企業と被取得企業が,合算して,インド国内において,200億ルピーを超える資産又は600億ルピーを超える売上げを有する場合
(イ) 取得企業と被取得企業が,合算して,インド国内外において,合計して10億米ドルを超える資産(少なくとも100億ルピーがインド国内のもの)又は30億米ドルを超える売上げ(少なくとも300億ルピーがインド国内のもの)を有する場合
(ウ) 被取得企業が企業結合後に属することとなる事業者集団(50%以上の議決権を有する場合に限る。)が,全体として,インド国内において,800億ルピーを超える資産又は2400億ルピーを超える売上げを有する場合
(エ) 被取得企業が企業結合後に属することとなる事業者集団(50%以上の議決権を有する場合に限る。)が,全体として,インド国内において,合計して40億米ドルを超える資産(少なくとも100億ルピーがインド国内のもの)又は120億米ドルを超える売上げ(少なくとも300億ルピーがインド国内のもの)を有する場合

(注4)上記基準については,2年に1度,卸売物価指数,ルピーの交換レート等を基にして企業結合の届出が必要となる数値を見直すこととされており(第20条第3項),2016年4月に数値が変更された。

 <企業結合の届出基準>

  インド国内
(億ルピー)
インド国内及び国外
(億米ドル)
資産 売上げ 資産 売上げ
当事会社 200超 600超 10(注5)超 30(注6)超
事業者集団 800超 2400超 40(注5)超 120(注6)超

(注5)うちインド国内で100億ルピー以上
(注6)うちインド国内で300億ルピー以上

最新の企業結合届出基準:
https://www.cci.gov.in/sites/default/files/quick_link_document/Revised%20thresholds.pdf

 企業結合の届出様式としては,簡易な内容の届出を求めるフォームⅠと,詳細な内容の届出を求めるフォームⅡが規定されている。通常は,フォームⅠによる届出が求められるが,下記の企業結合の第一次審査において,フォームⅡに記載する情報を必要と判断した場合,委員会は,企業結合の当事会社に対し,フォームⅡの提出を指示する(企業結合規則第5条第5項)。
 なお,フォームⅠの届出手数料は150万ルピー,フォームⅡの届出手数料は500万ルピーである(同規則第11条)。

ウ 届出が不要となる場合

 企業結合規則別紙1に記載されている範疇に属する企業結合については,競争への相当な悪影響を及ぼさないと考えられ,通常は届出が不要となっている(同規則第4条)。例えば,下記(ア)~(カ)の企業結合が挙げられる。
(ア) 単なる投資目的又は通常業務の範囲内の25%未満の株式又は議決権の取得であって,対象会社の支配権を取得しないもの
(イ) 取得者又はそのグループが取得前に既に25%以上50%未満の株式又は議決権を保有する場合であって,取得後も50%未満の株式又は議決権を保有する場合の株式又は議決権の取得
(ウ) 取得前に,既に対象会社の50%以上の株式又は議決権を有している場合の株式又は議決権の取得であって,当該取引により共同支配から単独支配とならないもの
(エ) 事業に直接関係しない,又は単なる投資目的若しくは通常業務の範囲内での資産の取得であって,会社の支配に至らないもの
(オ) 通常の事業過程における在庫品,原材料,売掛金及びその他類似の流動資産の取得
(カ) 同一グループ内の株式又は議決権の取得

エ 待機期間

 企業結合に係る届出が委員会に提出されたとき,又は委員会が第31条に規定された命令を発したときのうち,いずれか早い日から210日を経過する日まで企業結合は効力を生じない(第6条第2A項)。

オ 事前相談

 委員会は,ウェブサイトにおいて企業結合に係る事前相談を受け付ける旨を明らかにしている。この事前相談は,口頭による非公式なもので,相談に対する回答は委員会の公式見解ではなく,委員会を拘束するものではない。

カ 簡易手続

 2019年8月13日付け官報によると,同月15日から,改正企業結合規則が施行され,同規則別紙3に列挙されたカテゴリーに属する企業結合(類似,同一又は代替可能な商品の生産又は役務の提供を行っていない当事会社同士の企業結合等)については,同規則別紙4の様式による申告書とともにフォームIを提出することで,簡易的な承認手続(Green Channel)を利用することが可能となった。これにより,届出の受領と同時に委員会による承認が得られたものとみなされる。
 
2019年8月13日付け官報
https://www.cci.gov.in/sites/default/files/notification/210553.pdf 

 

4 執行手続

(1) 第3条(反競争的協定)違反及び第4条(支配的地位の濫用)違反に対する執行手続

ア 委員会による調査

 委員会は,第3条又は第4条に違反する疑いのある行為に対し,自発的に,又は事業者,消費者等から受理した情報若しくは中央政府,州政府等からの照会に基づき,調査することができる(第19条第1項)。
委員会は,第19条の規定に基づき入手した情報について,第3条又は第4条に違反するとの一応の(prima facie)証拠が存在すると判断した場合,事務局長に当該事件の調査を指示しなければならない(第26条第1項)。調査の指示を受けた事務局長は,委員会が指定した期間内に調査結果を報告しなければならず(同条第3項),調査結果が違反を示すものであり,委員会が更なる調査が必要と判断した場合は,詳細な調査が開始される(同条8項)。
 委員会には,以下の権限が認められている(第36条第2項)。
(ア) 関係者を召喚して出頭させ,宣誓の上で尋問する権限
(イ) 文書類の開示及び作成を要求する権限
(ウ) 宣誓供述書に関する証拠を受領する権限
(エ) 証人の尋問又は文書の検証のために命令を発する権限
(オ) インドの証拠法(Indian Evidence Act)第123条及び第124条の規定に基づき,公的な記録,書類又はそれらの写しを要請する権限

 事務局長には,上記第36条第2項に基づく権限が認められている(第41条第1項及び第2項)。事務局長及び同人の権限の下で調査を行う者は,捜索や差押えを行う権限が与えられている(第41条第3項)。

イ 委員会による措置

 委員会は,調査の結果,第3条又は第4条違反を認定した場合,次に掲げる内容の全部又は一部を命令することができる(第27条)。
(ア) 当該違反行為をやめるように,又は再び行わないように指示すること
(イ) 直近3会計年度の売上高の平均の10%を超えない範囲で適当と考えられる額の制裁金を課すこと(第3条違反の場合,委員会は,違反行為が継続している期間における各年の利益の3倍の額又は当該期間における各年の売上高の10%に相当する額のうち,いずれか高い方を制裁金として課すことができる。)
(ウ) 委員会が指定した方法及び範囲で協定の内容を変更するように指示すること
(エ) 委員会が発する他の命令に従い,費用の支払い等についての指示に従うように指示すること
(オ) その他適切と思われる命令又は指示をすること

 なお,第4条違反の場合,委員会は,支配的地位を有する事業者が濫用行為を再び行わないようにするため,当該事業者の分割を命じることができる(第28条)。

(2) 第6条(企業結合規制)に関する執行手続

ア 委員会による調査

(ア) 第一次審査
 委員会は,自己が有する企業結合に係る情報に基づき,当該企業結合がインド国内の競争に与える影響を調査することができる。ただし,当該企業結合の実施から1年を経過した場合はこの限りではない(第20条第1項)。
 また,委員会は,第6条第2項に基づく届出を受理した場合は,届け出られた企業結合がインド国内の競争に与える影響を調査しなければならず(第20条第2項),届出を受理してから30営業日以内に当該企業結合がインド国内の関連市場に相当な悪影響を及ぼすおそれがある,又は既に及ぼしているかどうかについて一応の(prima facie)見解を形成し,当事会社に通知しなければならない(第29条第1項,企業結合規則第19条第1項)。
 具体的には,①輸入を含めた実際の及び潜在的な競争状況,②参入障壁の程度,③市場の集中度,④市場における対抗力の有無,⑤当事会社が価格及び利潤を有意に相当程度引き上げる能力を持つこととなる可能性,⑥効果的な競争が持続する程度,⑦代替商品の可能性,⑧当事会社の単独及び合算シェア等の要素が考慮される(第20条4項)。 
 届出された企業結合について,委員会がインド国内の関連市場における競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがあると一応の(prima facie)見解を形成した場合,第二次審査が開始される。

(イ) 第二次審査
 第二次審査は,次の手続で進められる。
a 委員会は,届け出られた企業結合が競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがあると一応の(prima facie)見解を形成した場合,当該企業結合の当事会社に対し,上記(ア)による通知を受領してから30日以内に,委員会が調査を行うべきでない理由を釈明するように求めなければならない。また,委員会は,企業結合の当事会社から釈明を受理した後,事務局長に対し,指定した期間内に当該企業結合に対する考え方を報告するよう求めることができる(第29条第1項及び1(A)項)。
b 委員会は,届け出られた企業結合が競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがあると一応の(prima facie)見解を形成した場合には,当該企業結合の当事会社から釈明を受けた日又は事務局長から報告を受けた日のうち,いずれか遅い日から7営業日以内に,当該企業結合の当事会社に対し,10営業日以内に,当該企業結合の詳細を公表するよう指示しなければならない(同条第2項)。
c 当該企業結合により影響を受ける,又はそのおそれがある者は,当該企業結合の詳細が公表されてから15営業日の間,書面により反対意見を委員会に提出することができる(同条第3項)。
d 委員会は,上記cで指定した期間の満了から15営業日以内であれば,企業結合の当事会社に対し,追加情報を求めることができる(同条第4項)。
e 企業結合の当事会社は,上記dで指定した期間の満了から15日以内に,委員会から求められた追加情報を提出しなければならない(同条第5項)。
f 委員会は,全情報を受理した後,上記eで指定した期間の満了から45営業日以内に,当該企業結合事案を処理しなければならない(同条第6項)。

イ 委員会による措置

(ア) 企業結合を承認する場合
 委員会は,届け出られた企業結合が競争に相当な悪影響を及ぼしていない,又はそのおそれがないと判断した場合,当該企業結合を承認しなければならない(第31条第1項)。
(イ) 企業結合を承認しない場合
 委員会は,届け出られた企業結合が相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがあると判断したときは,当該企業結合が効力を有しない旨を指示しなければならない(同条第2項)。
(ウ) 委員会が企業結合の修正案を提示する場合
 委員会は,企業結合が競争に相当な悪影響を及ぼす,又はそのおそれがある場合であって,その内容を適切に修正することで当該悪影響を除去できると判断したときは,当該企業結合の当事会社に対し,企業結合の修正案を提示することができる(同条第3項)。
 委員会による修正案を受け入れる場合,当事会社は,委員会が指定した期間内に企業結合の内容を修正しなければならず(同条第4項),受け入れない場合,30営業日以内に委員会による提案に対する修正案を提出しなければならない(同条第6項)。
 最終的に委員会による企業結合の修正案を当事会社が受け入れない場合,当該企業結合は,競争に対する相当な悪影響を及ぼすとみなされ,効力を生じないこととなる(同条第9項及び第10項)。
(エ) 最大待機期間(210日)が経過した場合
 委員会が,届出を受領してから最大待機期間である210日以内に何ら命令や指示を出さない場合は,当該企業結合事案は委員会に承認されたものとみなされる(第31条第11項)。

(3) 不服申立手続

 委員会による命令等に対する不服申立て,競争法違反により生じた損害等に対する賠償請求は,全国会社法不服審判所(National Company Law  Appellate Tribunal 以下「審判所」という。)において審理される。
 委員会による指示,決定又は命令によって権利を侵害された者は,審判所に提訴することができる(第53B条第1項)。この提訴は,委員会による指示,決定又は命令の写しを受領した日から60日以内に,指定の様式を用いて,手数料を支払って行わなければならない(同条第2項)。
 審判所は,審理の結果,提訴の対象となった委員会による指示等を確認,修正又は破棄する内容の命令をすることができる(同条第3項)。
 審判所への提訴は可能な限り迅速に処理されなければならず,審判所は提訴を受領した日から6か月以内に処理するよう努力しなければならない(同条第5項)。
 審判所による決定又は命令により権利を侵害された者は,当該決定又は命令が通知された日から60日以内に,最高裁判所に不服申立てを行うことができる(第53T条)。

5 罰則

(1) 合理的な理由なく,委員会による命令又は指示に従わない者は,1日ごとに最高10万ルピー,総額で最高1億ルピーの罰金が科せられる。この罰金を支払わない者は,最高3年の禁錮若しくは最高2億5000万ルピーの罰金に処され,又はこれらが併科される(第42条)。
(2) 企業結合の当事会社が,重要な事項について虚偽の報告を行った場合,又は重要な事項について,それが重要であると知りながら報告しなかった場合,500万ルピー以上1000万ルピー以下の罰金が課せられる(第44条)。
(3) 合理的な理由なく,審判所の命令に違反した者は,3年以下の禁錮若しくは1000万ルピー以下の罰金に処され,又はこれらが併科される(第53Q条)。

6 その他

(1) リーニエンシー制度

 委員会は,第3条(反競争的協定)違反の自主申告者に対して制裁金を減免することができる(第46条)。
 リーニエンシーの申請者が
ア リーニエンシーの申請以降,当該カルテルに参加しない
イ 当該カルテルに関する重要な情報を委員会に提出する
ウ 委員会によって要求された全ての情報,文書,証拠を提出する
エ 委員会による調査,その他の手続に協力する
オ 当該カルテルの立証に資する文書を隠匿,廃棄,改ざん又は持ち去らない
カ 申請者が企業の場合,その企業を代表してカルテルに参加した個人の名前を提出する
という条件の下で,最初にカルテルの立証に重要な情報を提供したリニエンシーの申請者には最大で100%まで,重要な追加情報を提供した2位のリニエンシーの申請者には最大で50%まで,3位以下のリニエンシーの申請者には最大で30%まで制裁金が減免される。ただし,第26条に基づく事務局長からの報告書が委員会に提出された後は,リニエンシーの申請は認められない(制裁金の減免に係る規則(The Competition Commission of India (Lesser Penalty) Regulations)第3条及び第4条)。

(2) 政策調整及び競争唱導

 中央政府及び州政府は,競争に関連する政策を策定する場合(中央政府が競争に関連する法律を見直す場合も含む。),当該政策により生じ得る影響について,委員会に意見照会することができる。委員会は,当該照会を受けた場合,60日以内に,中央政府又は州政府に対し意見を述べなければならない。ただし,委員会の意見は,中央政府又は州政府を拘束しない。
 また,委員会は,競争唱導の推進,競争問題に係る認知の向上及び研修の実施のために適切な措置を採らなければならない(第49条)。
 

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