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1 根拠法
イスラエルの競争法は,1959年反トラスト法(The Antitrust Law of1959)に代えて制定された1988年制限的取引慣行法(Trade Restriction Law of 1988,法律第5748号)である。同法は,1994年,1996年に改正されている。
2 執行機関
イスラエルの競争当局は取引制限庁(A Trade Restrictions Authority)であり,1994年に設立された。また,取引制限裁判所(Trade Restrictions Court)が,司法手続に基づいて審査を行う。
(1) 取引制限庁
ア 組織
取引制限庁は通商産業省(the Ministry of Industry and Trade)に属しているが,同省の下部行政機関ではなく独立の行政機関である。
取引制限庁長官は,通商産業大臣の助言を受けて政府により任命される。
取引制限庁は,長官,次長,5名の局長,1名の部長等から構成されている。
イ 権限
取引制限庁長官(以下長官)の権限は次のとおり。
(ア) 独占及びカルテルの監視
(イ) 違法な取引の審査及び未然防止
(ウ) 合併及び株式所有の認可
(エ) 事業者間の競争制限的な協定の登録・認可
(2) 取引制限裁判所(Trade Restrictions Court:以下「裁判所」という。)の組織及び権限は以下のとおり。
ア 組織
裁判所の裁判官の定員は17名以下であり,裁判所の長官及び副長官は,司法大臣が最高裁判所長官と協議を行った上で任命する。
長官及び副長官以外の裁判官は,通商産業大臣の推薦に基いて司法大臣により任命される。裁判官のうち3名は,消費者団体及び経済団体の代表者から選ばれ,公務員は,裁判所の定員の3分の1以下に限られる。
イ 権限
(ア) カルテル
裁判所は,制限的な合意の妥当性を決定し,長官が制限的な合意を登録し管理する。裁判所は,カルテルが半永久的に公共の利益に合致すると認められる場合にのみカルテルを承認している。
一方,裁判所から承認されない場合,カルテル合意の実施は,刑法上の犯罪になる。
(イ) 独占
裁判所は,長官又は承認された消費者団体からの要請により,生産高,品質,生産量及び価格制限を改善する命令を発出することができる。
3 規制の概要
(1) カルテル
裁判所はカルテル等の制限的な協定の妥当性を決定し,長官が当該協定を登録し管理する。裁判所は,付託された制限的協定を審査し,公共の利益に反する場合,禁止判決を行う。
(2) 合併及び株式所有
価格水準,数量又は品質を通じて実質的に競争又は公共の利益を侵害する合併は禁止される。長官へ事前届出が行われている。 以下の合併は取引制限庁の事前の同意を必要とする。
ア 売上高,生産量の50%を支配することとなる場合
イ 合計の売上高が15億セケル(shekel)を超える場合又は当事会社のうち2社の売上高が10億セケル以上の場合
ウ 一方の事業者が既に独占に該当している場合
(3) 独占
独占とは,単独で,国内の製造業又はサービス業市場において50%以上のシェアを占める商品又はサービスを購入し又は販売することと定義されている。
長官には,一定の状況において,様々な割合の市場占拠を禁止する権限が与えられている。長官は又は承認された消費者団体からの要請により,裁判所は,生産高,品質,生産量及び価格を改善する命令を発出することができる。
長官は,半年に一度,独占に該当する製品及びサービスのリストを公表する。1998年末においては,独占に該当するとして官報告示された製品及びサービスは67品目に上る。
(4) 適用除外
この法律の規定は,以下の協定には適用されない。
ア 国内で生産された数種の農産物(果物,青果物,穀物,牛乳,卵,蜂蜜,牛肉,ひつじ肉,鶏肉,魚)の生産・販売に係る協定
イ 国際海上運送又は国際航空運送に係る協定
ウ 公共の福祉に貢献する協定
4 法執行手続
(1) 刑事罰
違反者には2年以下の懲役又は罰金が科される。
(2) 登録を要する協定を登録せずに実施したことにより損害を被ったものは,損害賠償を請求できる。