大韓民国(Korea)

(2023年7月現在)

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1 根拠法

 独占規制及び公正取引に関する法律(以下「公正取引法」又は単に「法」という。)
 
 ○ 制定 1980年12月31日公布(1981年4月1日施行)
 ○ 最近の改正 2020年12月29日公布(2021年12月30日施行又は2022年12月30日施行)

2 執行機関-韓国公正取引委員会(法第8章)

(1) 組織上の位置付け

 韓国公正取引委員会(以下「韓国公取委」という。)は、国務総理(大統領を補佐する機関・官職)の所轄に属する中央行政機関である(法第54条第1項)。

(2) 委員会の構成等

 韓国公取委は、委員長1名、副委員長1名、常勤委員3名及び非常勤委員4名の9名により構成される(法第57条第1項)。委員長及び副委員長は国務総理の提言により大統領が任命し、その他の委員は委員長の提言により大統領が任命(非常勤委員に対しては委嘱)する。委員長の任命に当たっては、国会の人事聴聞を経なければならない(同条第2項)。
 
 委員長、委員等の資格要件は、独占規制及び公正取引又は消費者分野についての経験又は専門知識を有し、かつ、次のうちいずれか一つを満たすことである(法第57条第2項)。
① 2級(日本における本府省の局長に相当)以上の公務員の職にあった者
② 判事、検事又は弁護士の職に15年以上あった者
③ 法律学、経済学、経営学又は消費者関連分野の学問を専攻し、大学又は公認された研究機関において、副教授(日本における准教授に相当)以上の職又はこれに相当する職に15年以上従事した者
④ 企業経営又は消費者保護活動に15年以上従事した経歴のある者
 
 委員長、委員等の任期は3年であり、1度に限り再任することができる(法第61条)。
 
 委員長、委員等は、①禁錮以上の刑の宣告を受けたとき又は②長期間の心身衰弱により職務を遂行することができなくなったときを除き、その意思に反して罷免されることはない(法第62条第1号及び第2号)。

(3) 会議の区分及び審議の公開

 韓国公取委の会議には、メンバー全員をもって構成する会議(以下「全員会議」という。)と、常勤委員のうちの1名を含む委員3名をもって構成する会議(以下「小会議」という。)がある(法第58条)。
 全員会議は、次の事項を審議し、議決する(法第59条)。
① 法令等の解釈・適用に関する事項
② 韓国公取委の処分に対する異議申立て
③ 小会議において議決されない、又は小会議が全員会議で処理するよう決定した事項
④ 規則又は告示の制定又は変更
⑤ 経済的波及効果が重大な事項等
⑥ その他全員会議において自ら処理することが必要と認める事項
 
 小会議は、前記の事項以外の事項を審議し、議決する(同条第2項)。
 
 韓国公取委は、審議を公開する。ただし、事業者又は事業者団体の事業上の秘密を保護する必要があると認めるときは、この限りでない(法第65条第1項)。

(4) 韓国公取委の所管事務

 韓国公取委の所管事務については 、公正取引法に以下の事項が定められている(法第55条)。
① 市場支配的地位の濫用行為の規制に関する事項(法第2章)
② 企業結合の規制及び経済力集中の抑制に関する事項(法第3章及び第4章)
③ 不当な共同行為及び事業者団体の競争制限行為の規制に関する事項(法第5章及び第7章)
④ 不公正取引行為、再販売価格維持行為及び特殊関係人に対する不当な利益提供の禁止行為の規制に関する事項(法第6章)
⑤ 競争制限的な法令及び行政処分に係る協議、調整等の競争促進政策に関する事項(法第120条及び第121条)
⑥ その他法令により韓国公取委の所管とされた事項
 
 韓国公取委は、公正取引法のほか、表示及び広告の公正化に関する法律(1999年公布)、約款の規制に関する法律(1986年公布)、訪問販売に関する法律(1995年公布)、下請取引の公正化に関する法律(1984年公布)、加盟事業取引の公正化に関する法律(2002年公布)、大規模流通業における取引の公正化に関する法律(2011年公布)、代理店取引の公正化に関する法律(2015年公布)等を所管している。

(5) 韓国公取委の国際協力

 韓国政府は、大韓民国の法律及び利益に反しない範囲において、外国政府と公正取引法を執行するための協定を締結することができ、韓国公取委は、当該協定に従い、外国政府の法律の執行を支援することができる(法第56条第1項及び第2項)。
 
 韓国公取委は、前記の協定が締結されていない場合においても、外国政府から法律の執行について要請があるときは、同一又は類似の事項に関して、大韓民国の支援要請に従うとの要請国の保証があれば、これを支援することができる(同条第3項)。

(6) 韓国公取委の組織等

 韓国公取委の事務を処理する組織として、事務処(日本における事務総局に相当)が設置されている(法第70条)。
  韓国公取委組織図(PDF:59KB)

 

3 規制の概要

(1) 市場支配的地位の濫用規制(法第2章)

ア 市場支配的事業者の定義

 市場支配的事業者とは、一定の取引分野における供給者又は需要者であって、単独で又は他の事業者とともに、商品又は役務の価格、数量、品質その他の取引条件を決定、維持又は変更することができる地位を市場において有する事業者をいう。市場支配的事業者に該当するか否かを判断するに当たっては、市場占有率、参入障壁の有無及びその程度、競争事業者の相対的規模等が総合的に考慮される(法第2条第3号)。

 

イ 市場支配的事業者の推定

 一定の取引分野において、市場占有率が次のいずれかに該当する事業者は、「市場支配的事業者」と推定する(一定の取引分野における年間の売上額又は購入額が40億ウォン未満の事業者を除く。)(法第6条)。
① 単独の事業者の市場占有率が50%以上
② 市場占有率上位3社の市場占有率の合計が75%以上である場合の各事業者(市場占有率10%未満の事業者を除く。)

 

ウ 市場支配的地位の濫用の禁止

 市場支配的事業者は、次の行為をしてはならない(法第5条第1項)。
① 価格の不当な決定、維持又は変更(法第5条第1項第1号)
 正当な理由なく、商品又は役務の価格を、需給の変動又は供給コストの変動に比して、著しく上昇させ、又は僅少にしか下落させないこと(公正取引法施行令(以下「施行令」という。)第9条第1項)。
 
② 商品の販売又は役務の提供の不当な調節(法第5条第1項第2号)
(i)正当な理由なく、最近の動向に照らして商品又は役務の供給量を著しく減少させる行為
(ii)供給不足であるにもかかわらず商品又は役務の供給量を減少させる行為(施行令第9条第2項)
 
③ 他の事業者の事業活動の不当な妨害(法第5条第1項第3号)
 直接的又は間接的に以下のいずれかの行為を行うことにより、他の事業者の事業活動を困難にさせること(施行令第9条第3項)
(i)正当な理由なく、他の事業者の生産活動に必要な原材料の購入を妨害する行為
(ii)正常な慣行に照らして過度の経済上の利益を提供する、又は提供を約することにより、他の事業者の事業活動に必須の人材を採用する行為
(iii)正当な理由なく、他の事業者の商品又は役務の生産、供給又は販売において必須の要素の使用又は当該要素への接近を拒絶、中断又は制限する行為
(iv)その他告示で定める行為
 
④ 競争事業者の新規参入の不当な妨害(法第5条第1項第4号)
 直接的又は間接的に以下のいずれかの行為を行うことにより、新たな競争事業者の参入を困難にさせること(施行令第9条第4項)
(i)正当な理由なく、流通事業者と排他的取引契約を締結する行為
(ii)正当な理由なく、既存事業者の継続的事業活動に必要な権利等を購入する行為
(iii)正当な理由なく、新たな競争事業者の商品又は役務の生産、供給又は販売に必須の要素の使用又は当該要素への接近を拒絶又は制限する行為
(iv)その他告示で定める行為
 
⑤ 競争事業者の不当な排除のための取引(以下(i)又は(ii))又は消費者の利益を著しく害するおそれがある行為(法第5条第1項第5号)
(i)不当に、商品又は役務を通常の取引価格に比して低い対価で供給する、又は高い対価で購入することで、競争事業者を排除するおそれがある行為
(ii)不当に、取引の相手方が競争事業者と取引しないことを条件に、当該取引の相手方と取引する行為(施行令第9条第5項)

 

エ 独占的又は寡占的市場構造の改善等

 韓国公取委は、独占的又は寡占的市場構造が長期間維持されている商品又は役務の供給又は需要市場について、競争を促進するための施策を策定し、施行しなければならない(法第4条第1項)。また、当該施策の策定・施行のため、市場構造を調査し、その結果を公表することができる(同条第3項第1号)。

 

(2) 企業結合の制限(法第3章)

ア 一定の取引分野における競争を実質的に制限する企業結合の禁止

 何人も、自ら又は特殊関係人(注1)を通じて、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる(注2)(i)株式の取得又は保有(法第9条第1項第1号)、(ii)役員兼任(同第2号)(注3)、(iii)合併(同項第3号)、(iv)営業の譲受け(同項第4号)及び(v)新会社の設立への参加(同項第5号)をしてはならない(以下(i)から(v)までを総称して「企業結合」という。)。
 
(注1)「特殊関係人」とは、(i)当該会社を事実上支配している者、(ii)同一人(※ある企業集団を構成する各会社と事実上支配する自然人又は法人をいう。)の関連者(当該者の親族、当該者が影響力を行使している非営利法人、法人格なき社団・財団等)及び(iii)経営を支配しようとする共同の目的を有し当該企業結合に参加する者をいう(施行令第14条第1項)。
(注2)「一定の取引分野」とは、取引の客体別、段階別又は地域別に競争関係にある、又は競争関係が成立し得る分野をいう(法第2条第4号)。
(注3)役員兼任については、大規模会社(資産総額又は売上額が2兆ウォン以上(施行令第15条第3項))が行うもののみ、規制対象となる。

 

イ 「競争の実質的制限」の推定

 次のいずれかに該当する場合は、一定の取引分野における競争が実質的に制限されるものと推定する(法第9条第3項)。
① 市場占有率(系列会社(=同一企業集団に属する会社)の市場占有率を合計したものを含む。以下同じ。)の合計が、以下の基準を全て満たす場合(同項第1号)
  ・ 市場支配的事業者の推定基準に合致する。
  ・ 当該一定の取引分野において第1位となる。
  ・ 市場占有率第2位の会社の市場占有率との差が25ポイント以上となる。
 
② 大規模会社が自ら又は特殊関係人を通じて行う企業結合であって、以下の基準を全て満たす場合(同項第2号)
 ・ 中小企業基本法に基づく中小企業の市場占有率の合計が3分の2以上である取引分野における企業結合である。
 ・ 当該企業結合により、5%以上の市場占有率を有することとなる。

 

ウ 競争制限的な企業結合の禁止規定の適用除外

 次のいずれかに該当すると韓国公取委が認める場合には、競争制限的な企業結合の禁止規定(法第9条第1項)は適用されない。この場合、いずれかに該当することについての立証責任は、当事会社が負う(同条第2項)。
① 当該企業結合以外によっては達成することが困難な効率性の増大効果が、競争制限による弊害よりも大きい場合(同項第1号)
② 相当期間、貸借対照表上の資本の総計が、払込資本金より少ない状態にある等、再建不可能な会社との企業結合であって、当該企業結合なくしては会社の生産設備等が市場で継続して活用されることが困難な場合かつ当該企業結合よりも競争制限性が少ない他の企業結合を行うことが困難な場合(同項第2号及び施行令第16条)

 

エ 企業結合の届出

(ア) 届出基準

 届出会社(資産総額又は年間売上額が3000億ウォン以上の会社等)が、被取得会社(資産総額等が300億ウォン以上の会社等)に対して次の事項を行う場合、又は被取得会社の基準に該当する会社等が、届出会社の基準に該当する会社等に対して次の企業結合を行う場合には、韓国公取委に届出をしなければならない(法第11条第1項)。 
① 他の会社の発行済株式総数の20%(資本市場及び金融投資業に関する法律に基づく株式上場法人の場合は15%)以上を所有することとなる場合(同項第1号)
② 株式の追加取得により最多出資者となる場合(同項第2号)
③ 役員兼任の場合(系列会社の役員を兼任する場合は除く。)(同項第3号)
④ 他の会社と合併する場合又は他の会社から営業の譲受けをする場合(同項第4号)
⑤ 新たな会社の設立に参加し、その会社の最多出資者となる場合(同項第5号)

 なお、届出に係る手数料は設けられていない。

 
(イ) 小規模被取得会社に係る届出基準
 前記(ア)の被取得会社の資産総額又は年間売上額を満たさない会社に係る企業結合を行う場合には、次の要件全てに該当する場合にのみ、韓国公取委に届出をしなければならない(法第11条第2項並びに施行令第19条第1項及び同条第2項)。
① 企業結合の対価として支払又は出資する価値の総額が6000億ウォン以上(法第11条第2項第1号及び施行令第19条第1項)
② 直近3年間で、国内市場において商品若しくは役務を、月当たり100万人以上を対象に販売若しくは提供したことがある場合又は国内の研究施設若しくは研究人員を継続して保有若しくは活用してきており、国内の研究施設、研究人員若しくは研究活動に関する年間支出額が年間300億ウォン以上 であることがある場合(法第11条第2項第2号及び施行令第19条第2項第1号又は同項第2号)
③ その他前記②に準じるものとして韓国公取委が定めて告示する場合(法第11条第2項第2号及び施行令第19条第2項第3号)
 
(ウ)届出手続
 届出は、当該企業結合があった日から30日以内に行わなければならない(法第11条第6項本文)。ただし、前記(ア)①、②、④又は⑤に該当する企業結合であって、当事会社のうち、1以上の会社が大規模会社である企業結合又は前記(イ)の小規模被取得会社に係る企業結合については、契約締結日等から企業結合日前までに届け出なければならない(同項ただし書)。この場合、届出をした者は、韓国公取委の審査結果の通知を受けるまでは、株式所有、合併登記、営業譲受契約の履行又は株式引受行為をしてはならない(法第11条第8項)。
 韓国公取委は、届出があった日から30日以内に審査結果を届出者に通知しなければならない。ただし、韓国公取委が必要であると認めるときは、この期間を短縮又は90日を超えない範囲で延長できる(同条第7項)。

 

オ 届出前の対応

 企業結合をしようとする者は、届出前に、当該行為が競争を実質的に制限する行為に該当するか否かについて、韓国公取委に審査を求めることができる(法第11条第9項)。

 

(3) 経済力集中の抑制(法第4章)

ア 持株会社の制限

(ア) 持株会社の定義
 持株会社とは、株式(持分を含む。)の所有を通じて国内の会社の事業内容を支配することを主たる事業とする会社であって、資産総額5000億ウォン(ベンチャー会社の場合は300億ウォン)以上であり、当該会社が所有している子会社(当該会社により事業内容を支配される会社)の株式価額の合計額が、当該会社の資産総額の50%以上であるものをいう(法第2条第7号並びに施行令第3条第1項及び第2項)。
 
(イ) 持株会社の届出
 持株会社を設立し、又は持株会社に転換した者は、韓国公取委に届け出なければならない(法第17条)。届出期間は以下のとおり。
① 設立の場合:設立登記日から30日以内(施行令第26条第2項第1号)
② 他社との合併又は会社分割を通じて転換する場合:合併登記日又は分割登記日から30日以内(同項第2号)
③ 「資本市場と金融投資業に関する法律」第249条の19等、他の法律により法第17条の適用が除外される会社の場合:当該他の法律で定めている除外期間が過ぎた日から30日以内(同項第3号)
④ 他社の株式取得又は資産の増減等により転換する場合:当該事業年度の終了後4か月以内(同項第4号)
 
(ウ) 持株会社等の行為の制限
 持株会社は、以下のいずれかの行為をしてはならない(法第18条第2項)。
① 資本総額(資産総額から負債額を差し引いた額)の2倍を超える負債額を所有する行為(ただし、持株会社の設立又は転換時に、資本総額の2倍を超える負債額を所有している場合は、持株会社の設立又は転換時から2年間は、資本総額の2倍を超える負債額を所有することができる。)(同項第1号)
② 子会社の株式を50%未満(子会社が上場法人又は共同出資法人である場合は30%未満。ベンチャー持株会社の子会社である場合は20%未満。)で所有する行為(一定の場合に、1年ないし2年の猶予期間あり。)(同項第2号)
③ 系列会社でない国内の会社の株式を、当該会社の発行済株式総数の5%を超えて所有する行為又は子会社以外の国内の系列会社の株式を所有する行為(一定の場合に、1年ないし2年の猶予期間あり。)(同項第3号)
④ 金融持株会社(金融業又は保険業を営む子会社の株式を所有する持株会社)が、 金融業又は保険業を営む会社以外の国内会社の株式を所有する行為(ただし、金融持株会社に転換し、又は金融持株会社を設立したときに、金融業又は保険業を営んでいない国内会社の株式を所有している場合は、転換又は設立の日から2年間は、当該国内の会社の株式を所有することができる。)(同項第4号)
⑤ 一般持株会社(金融持株会社でない持株会社)が、金融業又は保険業を営む国内会社の株式を所有する行為(ただし、一般持株会社の設立又は転換時に、国内の金融業又は保険業を営む国内会社の株式を所有している場合は、一般持株会社の設立又は転換の日から2年間は、当該国内の会社の株式を所有することができる。)(同項第5号)
 
(エ) 一般持株会社による企業型ベンチャーキャピタル(Corporate Venture Capital)の所有の許可
 一般持株会社であっても、中小企業創業投資会社及び新技術事業金融専門会社(企業型ベンチャーキャピタル。以下「CVC」という。)の株式を所有できる(法第20条第1項)。この場合、原則として、発行株式の100%を所有しなければならない(同条第2項)。
 CVCは、資本総額の2倍を超える負債を有してはならず、投資業務以外の金融業又は保険業を兼業してはならない。また、CVCは、投資組合の設立及び投資対象に制限がある(同条第3項)。
 一般持株会社がCVCの株式を所有する場合、当該一般持株会社は、韓国公取委に届け出なければならず(同条第4項)、CVCは、自社及び自社が運営中の全ての投資組合の投資状況、出資者内訳等を韓国公取委に届け出なければならない(同条第5項)。

 

(オ) 一般持株会社の子会社の行為の制限
① 一般持株会社の子会社が、孫会社の株式を50%未満(孫会社が上場法人、国外上場法人又は共同出資法人である場合は30%未満。孫会社がベンチャー持株会社の子会社である場合は20%未満。)で所有することは禁止される(猶予期間の定めあり。)(法第18条第3項第1号)
② 一般持株会社の子会社が、孫会社でない国内の系列会社の株式を所有する行為は禁止される(猶予期間の定めあり)(同項第2号)
③ 金融業又は保険業を営む会社を孫会社として支配する行為(一定の場合に猶予期間の定めあり。)は禁止される(同項第3号)
 
(カ) 一般持株会社の孫会社及び曾孫会社の行為の制限
 一般持株会社の孫会社は、国内系列会社の株式を持つことが禁止される。ただし、当該国内系列会社の発行済株式の総数を所有する場合等は除く(法第18条第4項)。
 なお、当該国内系列会社(曾孫会社)は、違法状態解消のための猶予期間はあるものの、例外なく国内系列会社の株式を持つことが禁止される(同条第5項)。
 
(キ) 持株会社による報告義務
 持株会社は、当該持株会社、子会社、孫会社及び曾孫会社の株式所有状況、財務状況等事業内容に関する報告書を韓国公取委に提出しなければならない(法第18条第7項)。

 

イ 公示対象企業集団に対する規制

(ア) 相互出資制限企業集団等の指定
 韓国公取委は、資産総額が5兆ウォン以上の企業集団を公示対象企業集団に指定し、このうち資産総額が国内総生産額の1000分の5以上である企業集団を相互出資制限企業集団に指定し、これらの企業集団に属する会社に当該指定を通知しなければならない(法第31条第1項)。
 
(イ) 公示対象企業集団の状況等に関する情報公開
 韓国公取委は、過度な経済力の集中を防止し、企業集団の透明性を高めるため、公示対象企業集団に属する会社に係る次の情報を公開することができる(法第35条第1項)。
① 公示対象企業集団に属する会社の一般状況(名称、事業内容、主要株主、役員、財務状況、取締役会、委員会の構成・運営、株主総会での議決権行使方法その他支配構造の状況)(同項第1号並びに施行令第41条第1項第1号及び第2号)
② 公示対象企業集団に属する会社間又はこれらとその特殊関係人間の出資、債務保証及び取引関係に関する情報(株式所有状況等の出資に関連する状況、債務保証状況、資金、有価証券、資産、商品、役務その他の取引に関連した状況)(法第35条第1項第2号並びに施行令第41条第2項第1号ないし第3号)
 
(ウ) 相互出資の禁止
 相互出資制限企業集団に属する会社は、自己の株式を取得又は所有している系列会社の株式を取得又は所有してはならない(法第21条第1項本文)。この規定の趣旨は、大規模企業集団内系列会社の相互出資は、①実質的な出資がないのに資本金額を見かけ上増加させ、系列会社を拡張する手段となりやすいものであること、及び②特定の大株主が多数の系列会社を支配する手段として利用されるおそれがあることから、これを禁止するものとされる。
 
(エ) 循環出資の禁止及び循環出資に係る議決権の制限
 相互出資制限企業集団に属する会社は、循環出資を形成する系列出資を行ってはならず、循環出資関係にある国内系列会社は、系列出資対象会社に対する追加的な系列出資を行ってはならない(一定の場合を除く。)。系列出資を行った会社は、一定期間内に取得又は保有した株式を処分しなければ ならない(法第22条第1項)。
 系列出資を行った会社は、相互出資制限企業集団指定日時点で取得又は保有する系列出資対象会社の株式について議決権を行使できない(法第23条第1項)。
 
(オ) 系列会社に対する債務保証の禁止
 相互出資制限企業集団に属する国内会社(金融業又は保険業を営む会社を除く。)は、債務保証をしてはならない(一定の場合を除く。)(法第24条)。
 
(カ) 金融又は保険会社の議決権の制限
 相互出資制限企業集団に属する金融業又は保険業を営む会社は、取得又は保有している国内の系列会社の株式について議決権を行使することができない(法第25条第1項本文)。ただし、①金融業又は保険業を営むために株式を取得又は所有するとき、②保険資産の効率的な運用・管理のために保険業法等の規定による承認等を受けて株式を取得又は所有するとき、又は③当該国内系列会社の株主総会において、役員の選任、定款の変更等について決議するときは、この限りでない(同項ただし書)。
 
(キ) 公益法人の議決権の制限
 同一人の特殊関係人に該当する公益法人は、取得又は保有している株式のうち、その同一人が支配する当該国内系列会社の株式について議決権を行使することができない(法第25条第2項本文)。ただし、①公益法人が当該国内系列会社の発行済み株式の総数を保有しているとき、又は②当該国内系列会社の株主総会において、役員の選任、定款の変更等について決議するときは、この限りでない(同項ただし書)。
 
(ク) 大規模内部取引についての取締役会の議決及び公示
 公示対象企業集団に属する会社は、特殊関係人を相手方とし、又は特殊関係人のために、50億ウォン以上又は資本総額と資本金のうち大きい方の金額の5%以上の規模で、資金、有価証券、資産の提供若しくは取引又は系列会社を相手とする商品・役務の提供若しくは取引(これを「大規模内部取引」という。)をしようとするときは、あらかじめ、取締役会の決議を経た後、これを公示しなければならない(法第26条及び施行令第33条)。
 
(ケ) 非上場会社等の重要事項の公示
 公示対象企業集団に属する会社のうち、資産総額が100億ウォン以上の会社又は資産総額が100億ウォン未満で、特殊関係人(自然人である同一人及びその親族のみをいう。)が単独で若しくは他の特殊関係人と合わせて発行済株式総数の20%以上を所有する会社若しくは当該会社が単独で発行済株式総数の50%超を所有する会社(いずれも金融業又は保険業を営む会社を除く。)であって、上場法人を除く会社は、施行令に定められた範囲で、次に掲げる事項を公示しなければならない(法第27条第1項本文)。
① 会社の所有支配構造等の重要事項(筆頭株主及び主要株主の株式保有状況及びその変動事項等)(法第27条第1項第1号及び施行令第34条第3項)
② 会社の財務構造に重要な変動を及ぼす事項(資産又は株式の取得等)(法第27条第1項第2号及び施行令第34条第4項)
③ 会社の経営活動に関連する重要な事項(営業譲受、合併等)(法第27条第1項第3号及び施行令第34条第5項)
 
(コ) 企業集団状況等に関する公示
 公示対象企業集団に属する会社のうち資産総額が100億ウォン未満の会社は、その企業集団の一般的状況、株式所有状況、持株会社でない国内系列会社の状況等に該当する事項であって、次に掲げる事項を公示しなければならない(法第28条第1項及び施行令第35条第1項)。
① 公示対象企業集団に属する会社の名称、代表者の姓名、事業内容、財務状況、直近1年間の系列会社の変動状況、役員状況、取締役会運営状況その他韓国公取委が定めて告示する一般的状況(法第28条第1項第1号及び施行令第35条第2項第1号)
② 公示対象企業集団に属する会社の株式所有の状況(法第28条第1項第2号)(所属会社の株主の状況(施行令第35条第2項第2号)、所属会社間の出資状況(施行令第35条第2項第3号))
③ 公示対象企業集団に属する会社のうち、持株会社等ではない系列会社の状況[持株会社等の資産総額の合計額が企業集団所属国内会社の資産総額(金融業又は保険業を営む会社の場合には、資本総額又は資本金のうち大きい金額)合計額の100分の50以上の場合のみ](法第28条第1項第3号及び施行令第35条第2項第4号)
④ 公示対象企業集団に属する会社間の相互出資状況(法第28条第1項第4号及び施行令第35条第2項第5号)
⑤ 公示対象企業集団に属する会社間の循環出資状況(法第28条第1項第5号及び施行令第35条第2項第6号)
⑥ 公示対象企業集団に属する会社間の債務保証状況(法第28条第1項第6号及び施行令第35条第2項第7号)
⑦ 公示対象企業集団に属する会社に対する議決権行使の有無(金融業又は保険業を営む会社の株式に対する行使を除く。)(法第28条第1項第7号及び施行令第35条第2項第8号)
⑧ 公示対象企業集団に属する会社とその特殊関係人間の取引状況(法第28条第1項第8号)(資金・資産及び商品・役務を提供又は取引した状況(施行令第35条第2項第9号)、事業期間内の系列会社との商品・役務の取引の金額が当該事業期間の売上額の5%以上又は50億ウォン以上である場合、当該系列会社との商品・役務の取引内訳(施行令第35条第2項第10号))
 
 公示対象企業集団に属する会社を支配する同一人は、次の各号のいずれかに該当する事項を公示しなければならない(法第28条第2項及び施行令第35条第3項)。
① 特殊関係人が、単独で又は他の特殊関係人と合わせて、発行株式総数の20%以上を所有する国外系列会社の株主構成等の事項(会社の名称、代表者の氏名、所在国、事業内容、株主の状況、その他韓国公取委が公示に必要であるとして告示する事項)(法第28条第2項第1号及び施行令第35条第3項)
② 公示対象企業集団に属する国内会社の株式を、直接又は公示対象企業集団に属する国内会社の株式を直接所有している国外系列会社の株式を1以上の国外系列会社間の出資で連結して所有する方法により、所有している国外系列会社の株式所有状況等に関する事項(会社の名称、代表者の氏名、所在国、事業内容、株主の状況、国内系列会社又は他の国外系列会社に対する出資状況、その他韓国公取委が公示に必要であるとして告示する事項)及び当該国外系列会社が一つ以上含まれる循環出資の状況(法第28条第2項第2号及び施行令第35条第4項及び第5項)
 
(サ) 特殊関係人である公益法人の理事会議決と公示
 公示対象企業集団に属する会社を支配する同一人の特殊関係人に該当する公益法人は、①公示対象企業集団に属する国内会社の株式の取得若しくは処分又は②特殊関係人を相手方とし、若しくは特殊関係人のために、50億ウォン以上若しくは公益法人の純資産総額と基本純資産のうち大きい金額の5%以上の規模で、資金、有価証券、資産の提供若しくは取引や、系列会社を相手とする商品・役務の提供若しくは取引を行ったり、主要な内容を変更したりしようとする場合、理事会の議決を経て、これを公示しなければならない(法第29条第1項及び施行令第36条第1項)。
 
(シ) 株式所有状況等の届出
 公示対象企業集団に属する国内会社は、株主の株式所有状況、財務状況及び他の国内会社株式の所有状況を韓国公取委に届け出なければならない(法第30条第1項)。
 相互出資制限企業集団に属する国内会社は、債務保証の状況を韓国公取委に届け出なければならない(法第30条第2項)。

 

ウ 特殊関係人等に対する不当な支援行為及び特殊関係人に対する不当な利益提供

(ア) 不当な支援行為(不公正取引行為)
 事業者は、次に該当する行為であって、公正な取引を阻害するおそれがある行為をし、又は系列会社若しくは他の事業者をして、これを行わせてはならない(法第45条第1項第9号)。
 なお、不当な支援行為については、別途、不当な支援行為の審査指針(韓国公取委例規)が定められている。
○ 不当に、次の各項目のいずれかに該当する行為を通じて特殊関係人又は他の会社を支援する行為
・ 仮払金、貸与金、人材、不動産、有価証券、商品、役務、無体財産権等を提供し、又は相当に有利な条件で取引する行為
・ 他の事業者と直接商品・役務を取引すれば相当に有利であるにもかかわらず、取引上の実質的な役割がない特殊関係人又は他の会社を媒介として取引する行為
 
(イ) 特殊関係人に対する不当な利益提供等の禁止
 公示対象企業集団(同一人が自然人であるものに限る。)に属する国内会社は、特殊関係人(同一人又はその親族のみ。)、同一人が単独で若しくは他の特殊関係人と合わせて20%以上の株式を所有する系列会社又はその系列会社が単独で50%超の株式を所有する系列会社と、次の行為を通じて、特殊関係人に不当な利益を帰属させる行為をしてはならない(法第47条第1項)。
① 正常な取引において適用される又は適用されるであろうと判断される条件より相当に有利な条件で取引をする行為
② 会社が自ら又は自己が支配する会社を通じて遂行する場合、会社に相当な利益となるであろう事業機会を提供する行為
③ 特殊関係人と、現金又はその他金融商品を相当に有利な条件で取引する行為
④ 事業能力、財務状態、信用度、技術力、品質、価格、取引条件等に係る合理的な考慮や他の事業者との比較を行わず、相当な規模で取引する行為(一定の場合を除く。同条第2項並びに施行令第54条第2項及び別表4。)

 

(4) 不当な共同行為の規制(法第5章)

ア 不当な共同行為の禁止

 事業者は、契約、協定、決議その他いかなる方法によるかを問わず、他の事業者と共同して不当に競争を制限する次の行為について合意(以下「不当な共同行為」という。)し、又は他の事業者をしてこれをさせてはならない(法第40条第1項)。
① 価格を決定、維持又は変更する行為(同項第1号)
② 商品若しくは役務の取引条件又はその代金若しくは対価の支給条件を定める行為(同項第2号)
③ 商品の生産、出荷、輸送若しくは取引の制限又は役務の取引を制限する行為(同項第3号)
④ 取引地域又は取引の相手方を制限する行為(同項第4号)
⑤ 生産又は役務の取引のための、設備の新設若しくは増設又は装備の導入を、妨害又は制限する行為(同項第5号)
⑥ 商品又は役務の生産・取引に際し、その商品又は役務の種類又は規格を制限する行為(同項第6号)
⑦ 営業の主要部門を共同で、遂行又は管理したり、遂行又は管理するための会社等を設立したりする行為(同項第7号)
⑧ 入札又は競売の際に、落札者、競落者、入札価格、落札価格又は競落価格、設計又は施工の方法等を決定する行為(同項第8号及び施行令第44条第1項)
⑨ その他、他の事業者(行為者自身を含む。)の事業活動又は事業内容を妨害、制限したり、価格、生産量、原価、出荷量、在庫量、販売数量、取引条件又は代金・対価の支払条件をやり取りしたりすることにより、一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為(法第40条第1項第9号及び施行令第44条第2項)
 
 法第40条第1項に規定する不当な共同行為をすることを約定する契約等は、当該事業者間において、これを無効とする(法第40条第4項)。
 

イ 共同行為の推定

 法第40条第1項に列挙する行為を行う複数の事業者が、次のいずれかに該当する場合には、当該事業者間で、共同で当該行為を行うことを合意したものと推定する(法第40条第5項)。
① 当該取引分野、商品・役務の特性、当該行為の経済的な理由及び波及効果、事業者間の接触の回数・様態等の諸般の事情に照らして、当該行為を当該事業者が共同で行ったものとみなせる相当な蓋然性があるとき(同項第1号)
② 同条第1項各号の行為(同項第9号の行為のうち、情報をやり取りすることにより一定の取引分野において競争を実質的に制限する行為を除く。)に必要な情報をやりとりしたとき(同項第2号)
 

ウ 適用除外

 法第40条第1項で禁止される不当な共同行為が、①不況克服のための産業構造の調整、②研究・技術開発、③取引条件の合理化又は④中小企業の競争力の向上を目的として行われる場合であって、施行令に定める要件に該当し、韓国公取委の認可を受けたときは、同項の禁止規定は適用されない(法第40条第2項)。
 

エ 公共部門の入札に関連する不当な共同行為の防止のための措置

 韓国公取委は、国・地方自治団体又は「公共機関の運営に関する法律」に基づく公企業が発注する入札に係る不当な共同行為を摘発又は防止するために、中央行政機関、地方自治体及び公企業の長(以下「公共機関の長」という。)に対し、入札関連資料の提出やその他の協力を要請することができる(法第41条第1項)。
 公共機関の長は、入札公告を行った又は落札者が決定したときは、入札(参加事業者が20人以下の場合であって、その推定価格が「建設産業基本法」第2条第4号の建設工事に係る入札の場合は50億ウォン以上、その他の場合は5億ウォン以上に限る。)に関連する情報を韓国公取委に提出しなければならない(法第41条第2項、施行令第48条第2項)。
公共機関の長が入札に関連する情報を韓国公取委に提出する場合には、落札者の決定後30日以内に、施行令第48条第2項各号に定める事項について、「電子調達の利用及び促進に関する法律」第2条第4号による国家総合電子調達システムを通じて行わなければならない(施行令第48条第3項)。

 

(5) 不公正取引行為、再販売価格維持行為及び特殊関係人に対する不当な利益提供の禁止(法第6章)

ア 不公正取引行為の禁止

 事業者は、次の各号に該当する行為であって、公正な取引を阻害するおそれがある行為(以下「不公正取引行為」という。)をし、又は系列会社若しくは他の事業者をして、これをさせてはならない(法第45条第1項)。
 不公正取引行為については、次のとおり法第45条第1項各号に列挙されるとともに、その類型及び基準について施行令(第52条及び別表2)並びに不公正取引行為審査指針(韓国公取委例規)に定められている。
 なお、不当な支援行為(法第45条第1項第9号)については、別途、不当な支援行為審査指針(韓国公取委例規)が定められている。
① 不当に取引を拒絶する行為(同項第1号)
  共同の取引拒絶その他の取引拒絶
② 不当に取引の相手方を差別して取り扱う行為(同項第2号)
  価格差別、取引条件の差別、系列会社を有利にするための差別及び集団における差別
③ 不当に競争者を排除する行為(同項第3号)
  不当廉売及び不当高価購入
④ 不当に競争者の顧客を自己と取引するよう誘引する行為(同項第4号)
  不当な利益による顧客誘引、偽計による顧客誘引その他の不当な顧客誘引
⑤ 不当に競争者の顧客を自己と取引するよう強制する行為(同項第5号)
  抱き合せ販売、社員販売(自己又は系列会社の商品・役務の取引強制)その他の取引強制
⑥ 自己の取引上の地位を不当に利用して、相手方と取引する行為(同項第6号)
  購入強制、利益提供の強要、販売目標の強制、不利益の提供及び経営干渉
⑦ 取引の相手方の事業活動を不当に拘束する条件で取引する行為(同項第7号)
  排他条件付取引及び取引地域又は取引の相手方の制限
⑧ 不当に他の事業者の事業活動を妨害する行為(同項第8号)
  技術の不当な利用、人材の不当な誘引又は採用、取引先の移転の妨害その他の事業活動の妨害
⑨ 不当に、特殊関係人又は他の会社を支援する行為(3(3)ウ(ア)参照)(同項第9号)
⑩ その他の行為であって公正な取引を害するおそれがある行為(同項第10号)

 

イ 指針の策定

 韓国公取委は、不公正取引行為を予防するために必要なときは、事業者が遵守しなければならない指針を制定し、告示することができる(法第45条第4項)。

 

ウ 公正競争規約

 事業者又は事業者団体は、不当な顧客誘引を防止するため、自主的に規約(以下「公正競争規約」という。)を定めることができる(法第45条第5項)。また、当該公正競争規約について、韓国公取委に審査を求めることができる(同条第6項)。

 

エ 再販売価格維持行為の禁止

 事業者は、再販売価格維持行為を行ってはならない(法第46条本文)。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない(同条ただし書)。
① 効率性の増大による消費者厚生の増大効果が競争制限による弊害より大きい場合等、再販売価格維持行為に正当な理由がある場合(同条第1号)
② 著作物(著作物法第2条第1項による著作物のうち、関係中央行政機関との協議を経て韓国公取委が告示する出版された著作物(電子出版物を含む。)) である場合(同条第2号)

 

オ 報復措置の禁止

 事業者は、不公正取引行為及び再販売価格維持行為に関連して、次のいずれかに該当する行為をした事業者に対し、その行為をしたことを理由として、取引の停止、出荷量の縮小その他不利益を与える行為をし、又は系列会社若しくは他の事業者にこれをさせてはならない(法第48条)。
① 紛争調停の申請(同条第1号)
② 韓国公取委に対する違反事実の報告(同条第2号)
③ 韓国公取委の調査に対する協力(同条第3号)

 

(6) 事業者団体(第7章)

ア 事業者団体の禁止行為

 事業者団体は、次の行為をしてはならない(法第51条第1項)。
① 不当な共同行為(同項第1号)
② 一定の取引分野における現在又は将来の事業者数の制限(同項第2号)
③ 構成事業者の事業内容又は活動の不当な制限(同項第3号)
④ 事業者に不公正取引行為若しくは再販売価格維持行為をさせる又はこれを幇助する行為(同項第4号)

 

イ 指針の策定

 韓国公取委は、事業者団体の禁止行為を予防するために必要なときは、事業者団体が遵守しなければならない指針を制定し、告示することができる(法第51条第3項)。

 

(7) 適用除外(法第13章)

 法令に基づく正当な行為(法第116条)、無体財産権(著作権、特許等)の正当な行使と認められる行為(法第117条)及び一定の組合の行為(法第118条)については、法を適用しない。

 

(8) 競争制限的な法令、行政処分に係る調整(法第14章)

ア 競争制限的な法令に係る協議又は通知、行政処分に係る通知

 行政機関の長が、競争制限事項を内容とする法令を制定若しくは改正し、又は事業者・事業者団体に対して承認その他処分を行う場合には、あらかじめ韓国公取委と協議しなければならず(法第120条第1項)、また、競争制限事項を内容とする例規、告示等の制定又は改正を行う場合には、あらかじめ韓国公取委に通知しなければならず(同条第2項)、さらに、前記の承認その他の処分を行った場合には、当該承認その他の処分の内容を韓国公取委に通知しなければならない(同条第3項)。

 

イ 競争制限的な法令や行政処分に係る意見提示

 韓国公取委は、前記アによる通知を受けた例規、告示等に競争制限事項が含まれていると認められる場合に、行政機関の長に、その是正に関する意見を提示することができる(法第120条第4項)。前記アによる協議なく制定又は改正された法令、通知なく制定又は改正された例規、告示等、又は通知なく行った承認その他の処分に、競争制限事項が含まれていると認められる場合に、韓国公取委は、行政機関の長に是正に関する意見を提示することができる(同条第5項)。

 

4 法執行手続

(1) 調査等の手続(法第10章)

ア 違反行為の調査の端緒

 韓国公取委は、法の規定に違反する疑いがあると認めるときは、職権により必要な措置を行うことができる(法第80条第1項)。
 また、何人も、法の規定に違反する事実を韓国公取委に報告することができる(同条第2項)。
 韓国公取委は、調査の結果、処分を行う又は行わない場合には、その根拠、内容、事由等を記載した書面を事件の当事者に通知しなければならない。また、法第68条により議決書を作成する場合には、当該議決書の正本を送付する(法第80条第3項本文)。

 

イ 違反行為の調査等

 韓国公取委は、必要があると認めるときは、①当事者、利害関係人又は参考人の出頭及び意見聴取、②鑑定人の指定及び鑑定の委嘱、及び③事業者、事業者団体又はこれらの役職員に対し、原価及び経営状況に関する報告その他必要な資料や物件の提出を命じることができ、提出された資料又は物件の一時保管をすることができる(法第81条第1項)。
 また、韓国公取委は、その所属する公務員をして、事業者又は事業者団体の事務所又は事業場に立ち入らせ、業務及び経営の状況、帳簿・書類、電算資料・音声録音資料、画像資料その他資料又は物件を調査させることができる(同条第2項)。さらに、当該公務員は、指定された場所において、当事者、利害関係人又は参考人の陳述を聴取することができる(同条第3項)。加えて、事業等の事務所等の調査を行う公務員は、事業者、事業者団体又はこれらの役職員に対し、調査に必要な資料又は物件の提出を命じたり、提出された資料又は物件を一時保管したりすることができる(同条第6項)。この調査を行う際には、公務員は、その権限を示す証明書を関係人に提示し、調査目的、調査期間、調査方法等の事項が記載された文書を交付しなければならない(同条第9項)。
 調査公務員は、韓国公取委の審議・議決手続が進行中の場合には、立入調査や陳述聴取を行ってはならない(同条第4項)。
 法第81条第1項による処分や第2項による調査の当事者、利害関係人又は参考人は、意見を提出又は陳述することができる(同条第10項)。

 

ウ 助力を受ける権利

 韓国公取委から調査を受ける事業者、事業者団体又はこれらの役職員は、弁護人に、調査及び審議に参加させ又は意見を陳述させることができる(法第83条)。

 

(2) 是正措置

 違反行為に対する法的措置としては、「是正命令」と「是正勧告」がある。
 是正命令については、違反行為の類型別に各条文において是正措置の内容が定められている(下表右列にある条番号は是正命令の根拠の条番号。是正勧告の根拠の条番号は法第88条第1項。表中では「法」の記載を省略。)。

 

違反行為類型

是正措置の内容

市場支配的地位の濫用(第5条第1項)

価格の引下げ、違反行為の中止、是正命令を受けた事実の公表その他是正に必要な措置(第7条第1項)

企業結合の制限(第9条第1項又は第13条)

違反行為の中止、株式の全部又は一部の処分、役員の辞任、営業の譲渡、是正命令を受けた事実の公表、企業結合に伴う競争制限の弊害を防止できる営業方式又は営業範囲の制限その他是正に必要な措置(第14条第1項)

持株会社の行為の制限、相互出資制限企業集団の持株会社設立の制限、相互出資の禁止、循環出資の禁止等
(第18条第2項から第5項まで、第19条、第20条第2項から第5項、第21条から第30条まで又は第36条)

違反行為の中止、株式の全部又は一部の処分、役員の辞任、営業の譲渡、債務保証の取消し、是正命令を受けた事実の公表、公示義務の履行又は公示内容の訂正その他是正に必要な措置(第37条第1項)

不当な共同行為(第40条第1項)

違反行為の中止、是正命令を受けた事実の公表その他是正に必要な措置 (第42条第1項)

不公正取引行為(第45条第1項)、再販売価格維持行為(第46条)、特殊関係人に対する不当な利益提供(第47条)、報復措置(第48条)

違反行為の中止及び再発防止のための措置、報復措置の差止、契約条項の削除、是正命令を受けた事実の公表その他是正に必要な措置(第49条第1項)

事業者団体の禁止行為(第51条第1項)

違反行為の中止、是正命令を受けた事実の公表その他是正に必要な措置(第52条第1項)

 

 (3) 同意議決

 韓国公取委は、事業者が調査又は審議の対象となった行為に起因する競争制限状態の自発的解消、消費者被害救済等のための是正策を申請した場合に、審議手続を中断し、その是正策の同意議決を行うことができる。ただし、当該行為が、不当な共同行為(法第40条第1項)である場合、告発要件(法第129条第2項)に該当する場合又は同意議決前に申請人が申請を取り消す場合、韓国公取委は同意議決をしない(法第89条第1項)。
 
 韓国公取委は、同意議決を行う前に、30日以上の期間を定めて、利害関係人に通知し又は公告等の方法により意見を提出する機会を与えなければならず(法第90条第2項)、また、関係行政機関の長に通知し、意見を聴かなければならず、刑罰が適用される行為については検事総長と協議しなければならない(同条第3項)。
 
 韓国公取委は、市場状況等事実関係の著しい変更等により是正策が適切でなくなった場合や、正当な理由なく申請人が同意議決を履行しない場合等には、同意議決を取り消すことができ(法第91条)、正当な理由なく履行期限内に同意議決を履行しない者に対し、同意議決が履行される又は取り消されるまで、1日当たり200万ウォン以下の履行強制金を賦課することができる(法第92条)。

 

(4) 課徴金(法第11章)

ア 概要及び行為類型別の上限額

 韓国公取委は、特定の違反行為について、関係事業者又は事業者団体に課徴金を賦課することができる。課徴金の賦課及び金額算定には裁量が許されている。課徴金の額を決定するに当たっては、次の事項を参酌することとされている(法第102条第1項)。
① 違反行為の内容及び程度(同項第1号)
② 違反行為の期間及び回数(同項第2号)
③ 違反行為により取得した利益の規模等(同項第3号)

 

 違反行為類型別の課徴金の上限額は次のとおりである(※表中では「法」の記載を省略)。

違反行為類型

課徴金の上限額

市場支配的地位の濫用(第5条第1項)

関連売上額の6%(関連売上額がない又は関連売上額の算定が困難な場合であって、営業を開始していない、営業の中断等により営業実績がない場合、災害等により売上高算定資料が消滅した、毀損した等の理由により客観的な売上高の算定が困難な場合又は違反行為期間若しくは関連商品若しくは役務の範囲を確定できず、関連売上額の算定が困難な場合(施行令第13条第3項)(以下「売上額がない場合等」という。)には、20億ウォン)(第8条)

相互出資の禁止違反(第21条)、循環出資の禁止違反(第22条)

違反行為により取得又は所有した株式の取得価格の20%(第38条第1項)

系列会社に対する債務保証の禁止違反(第24条)

違反債務保証額の20%(第38条第2項) 

持株会社等の行為の制限違反(第18条第2項から第5項まで)

①資本総額の2倍を超える負債額を保有した場合(第18条第2項第1号)

貸借対照表上の資本総額の2倍を超えた負債額×20%(第38条第3項第1号)

②子会社の株式を50%未満(子会社が上場法人又は、共同出資法人である場合は30%未満、ベンチャー持株会社の子会社である場合はベンチャー持株会社の子会社である場合は20%未満)しか保有しない場合(第18条第2項第2号)

子会社の株式の貸借対照表上の帳簿価額×(50%又は30%又は20%-子会社の株式の保有比率)÷子会社の株式の保有比率×20%(第38条第3項第2号)

③持株会社等のその他の制限違反の場合(第18条第2項第3号から第5号まで、同条第3項第2号若しくは第3号、同条第4項第1号から第4号まで又は同条第5項)

違反して所有する株式の貸借対照表上の帳簿価額の合計額×20%(第38条第3項第3号)

④一般持株会社の子会社が孫会社の株式を50%未満(孫会社が上場法人又は共同出資法人である場合は30%未満、孫会社がベンチャー持株会社の子会社である場合は20%未満)しか保有しない場合(第18条第3項第1号)

孫会社の株式の貸借対照表上の帳簿価額×(30%(当該孫会社が上場法人、国外上場法人又は共同出資法人である場合)、20%(当該孫会社がベンチャー持株会社の場合)又は50%(当該孫会社が前記のいずれにも該当しない場合)-孫会社の株式の保有比率)÷孫会社の株式の保有比率×20%(第38条第3項第4号)

⑤孫会社であるベンチャー持株会社が国内系列会社の株式の50%未満しか保有しない場合(第18条第4項第5号)

国内系列会社の株式の貸借対照表上の帳簿価額×(50%-系列会社の株式の保有比率)÷国内系列会社の株式の保有比率×20%(第38条第3項第5号)

一般持株会社の金融会社株式所有の制限の特例関係(第20条第2項から同条第3項第6号まで)

一般持株会社が中小企業創業投資会社及び新技術事業金融専門会社の株式を所有する場合、発行株式の総数を所有しない場合(第20条第2項)

当該子会社株式の基準貸借対照表上の帳簿価額の合計額 ÷当該子会社株式の保有比率×当該子会社の発行済株式のうち自己の保有してない株式の比率×20%(第38条第3項第6号)

資本総額の2倍を超える負債額の保有(第20条第3項第1号)

基準貸借対照表上の資本総額の2倍を超える負債額×20%(第38条第3項第7号)

非系列会社の支配が及ぶベンチャー投資組合又は新技術事業投資組合の設立行為(第20条第3項第4号)

違反に該当する分の出資金額×20%(第38条第3項第8号)

投資行為(第20条第3項第5号)

違反して所有する株式、債権等の基準貸借対照表上の帳簿価額の合計額×20%(第38条第3項第9号)

子会社(投資会社)が、自己が投資した会社の株式、債権等を自己の特殊関係人及び特殊関係人が投資した会社であって持株会社等以外の系列会社が取得又は保有するようにする行為(第20条第3項第6号)

違反して所有するようにさせた株式、債権等の基準貸借対照表上の帳簿価額の合計額×20%(第38条第3項第10号)

不当な共同行為(第40条第1項)

関連売上額の20%(売上額がない場合等には、40億ウォン)(第43条)

不公正取引行為(第45条第1項(第9号は徐く。))
再販売価格維持行為(第46条)
報復措置の禁止(第48条)

関連売上額の4%(売上額がない場合等には、10億ウォン)(第50条第1項)

特殊関係人等を不当に支援する行為(第45条第1項第9号)
特殊関係人等が不当な支援を受ける行為(第45条第2項)
特殊関係人に対する不当な利益提供等(第47条第1項)
特殊関係人が第1項の取引や事業機会を受ける行為(第47条第3項)

当該事業者の直近の3事業年度の平均売上額(施行令第56条第2項本文)の10%(売上額がない場合等には、40億ウォン)(第50条第2項)

事業者団体の禁止行為

(事業者団体対象)
(第51条第1項)

(事業者団体)10億ウォン(第53条第1項)

(構成事業者対象)
不当な共同行為(第51条第1項第1号)

(構成事業者)関連売上額の20%(第53条第2項本文)
売上額がない場合等には、40億ウォン(第53条第2項ただし書))

(構成事業者対象)
現在又は将来の事業者数の制限、構成事業者の事業内容又は活動の不当な制限、不公正取引行為又は再販売価格維持行為(第51条第1項第2号から4号まで)

(構成事業者)関連売上額の10%(第53条第3項本文)
売上額がない場合等には、20億ウォン(第53条第3項ただし書))

 

イ 課徴金の具体的な算定方法

 課徴金の賦課は、(ア)違反行為の種類による基本算定基準額の算定、(イ)一次調整(違反行為の期間及び回数等による調整)、(ウ)二次調整(違反事業者の故意・過失等による調整)、(エ)賦課課徴金の算定(事業者の現実的な負担能力、市場に及ぼす効果、その他条件等を十分に反映できず過重である場合の減免(リニエンシー制度による減免含む。))の4段階を経て行われる(課徴金賦課の詳細基準等に関する告示(以下「課徴金賦課詳細基準告示」という。)Ⅱ1~4)。

(ア) 基本算定基準額の算定(例示:カルテル事案の場合)
 関連売上額に以下の基準率を乗じて算定する。
 違反行為の重大性の程度は、課徴金賦課詳細基準告示の別表に従って数値化され、非常に重大(2.6以上、2.2以上2.6未満の2類型)、重大(1.8以上2.2未満、1.4以上1.8未満の2類型)及び重大性が弱い(1.4未満)に分類される。その上で、違反行為が該当する重大性の程度ごとに定められた基準率を関連売上額に乗じて、基本算定基準額が算定される。

 

重大性

非常に重大

重大

重大性が弱い

算定点数

2.6以上

2.2以上
2.6未満

1.8以上
2.2未満

1.4以上
1.8未満

1.4未満

基準率

15%以上20%以下

10.5%以上
15%未満

6.5%以上
10.5%未満

3.0%以上6.5%未満

0.5%~3%未満

  

(イ) 一次調整
次の①、②の加重理由が認められる場合には、それぞれの加重比率の合計を算定基準額に乗じて算定された金額を、算定基準額に加える。ただし、加重される金額は算定基準額の100分の100の範囲内でなければならない。
① 違反行為の期間による調整
 算定基準額を定める過程で違反期間が考慮されなかった場合、短期(1年以下:基本算定基準額のまま)、中期(1年超2年以下:基本基準算定額に10%以上20%未満を加算。2年超3年以下:基本基準算定額に20%以上50%未満を加算)、長期(3年超:基本基準算定額に50%以上80%未満を加算)により、基本算定基準額を調整する。

② 違反行為の回数による調整
 過去5年間に1回以上法的措置(警告以上を含む。)を受け、違反回数加重値(警告=0.5、是正勧告=1.0、是正命令=2.0、課徴金=2.5、告発=3.0。一つの事件につき最も大きい値を適用)が2点以上である場合、2回目の法的措置からその値に応じて基本算定基準額の10%~80%が加算される。

 
(ウ) 二次調整
 前記(イ)で調整された額に対して、韓国公取委は、以下の要因を考慮し、算定基準額を増減することができる。ただし、増減額は前記(イ)で調整された算定基準額の50%を超えてはならない。

 

増額する要因

調整率

違反行為に応じない他社に対して、報復措置を採ったり、採らせたりした場合

10%以上30%以下
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3イ(原文나))

 

減額する要因

調整率

カルテルの合意を実行しなかった場合(事業者団体も含む)

50%以下
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3ウ(原文다)1))

韓国公取委の調査段階において、違法性判断に役立つ資料を提出するなど、積極的に協力した場合

10%以下
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3ウ(原文다 2)ア)(原文가)))

韓国公取委の審理の迅速かつ効率的な運営に積極的に協力し、審理終結時まで行為事実を認める場合

10%以下
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3ウ(原文다 2)イ)(原文나)))

小会議の略式審理の結果を受諾した場合

10%以下(この場合、前記「審理の迅速かつ効率的な運営に積極的に協力した場合」にも当たるとみて、10%以内の範囲内で追加減算する。)
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3ウ(原文다)3))

違反行為を自主的に是正(*)した場合
()違反行為の効果を積極的に除去すること

価格上昇幅分の価格を引き下げる等違反行為の効果を実質的に除去した場合

20%以上30%以下
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3ウ(原文다)4)ア)(原文가)))

価格上昇幅の50%以上を引き下げる又は違反行為の効果を相当部分除去した場合

10%以上20%以下
(課徴金賦課詳細基準告示Ⅳ3ウ(原文다)4)イ)(原文나)))

違反行為の効果の除去に積極的に努めたが、除去されなかった場合

10%以下

  

(エ)  賦課課徴金の算定
 二次調整後の算定基準額が、違反企業の負担能力、市場等の状況及び違反行為が市場に及ぼす効果や、違反行為により得た利益の規模を十分に反映しておらず、過度に高額であると思われる場合、韓国公取委は、二次調整後の算定基準額を減額調整して、賦課すべき課徴金額を算定することができる。この場合、違反事業者の現実的負担能力(資本の状態)、市場や経済条件(景気変動、為替変動、深刻な政治的要因等)、違反行為の市場に及ぼす効果及び違反行為により取得した利益の規模(市場シェア、価格引上げの要因及び程度、特定の経済状況、産業の構造的な特徴)、に基づき、二次調整後の算定基準額を50%まで減額して課徴金額を算定することができる。
 さらに、違反事業者の課徴金納付能力が著しく不足すると認められる場合に、課徴金額を、50%を超えて減額することや、破産等で違反事業者に客観的に課徴金の納付能力がないと認められる場合、課徴金を賦課しないことがあり得る。
 これらの課徴金額算定作業が行われた後に、リニエンシー制度に基づいた減免が適用される(後記(12)参照)。

 

(5) 除斥期間

 韓国公取委は、違反行為の終了日から7年が経過したときは、是正措置の命令及び課徴金の賦課をすることはできない(法第80条第4項)。ただし、不当な共同行為については、韓国公取委がその違反行為について調査を開始した場合、調査開始日から5年が経過したときには、調査を開始していない場合には、その違反行為の終了日から7年が経過したときには、前記命令及び課徴金の賦課をすることはできない(同条第5項)。

 

(6) 意見陳述の機会の付与

 韓国公取委は、違反行為に対して、是正措置又は課徴金の納付を命ずる前に、当事者又は利害関係人に意見を陳述する機会を与えなければならない(法第93条第1項)。当事者又は利害関係人は、韓国公取委の会議に出席して意見を陳述し、又は必要な資料を提出することができる(同条第2項)。

 

(7) 資料閲覧要求

 当事者、申告人等は、韓国公取委に、法に基づく処分に関連する資料の閲覧又は謄写を要求することができる。この場合、韓国公取委は、①営業秘密に係る資料、②自主申告者や調査等協力者(いずれも後記(12)参照)の身元・情報の内容等の関連資料、又は③他の法律による非公開資料を除き、当該要求に従わなければならない(法第95条)。

 

(8) 異議申立て

 韓国公取委の処分(是正勧告を含む。)に対して不服がある者は、その処分の通知を受けた日から30日以内に、韓国公取委に異議申立てをすることができる(法第96条第1項)。韓国公取委は、異議申立てに対し、60日以内に裁決をしなければならない(同条第2項本文)。ただし、やむを得ない場合は、30日の範囲内において、決定によりこの期間を延長することができる(同項ただし書)。

 

(9) 執行停止

 韓国公取委は、是正措置を命じられた者が異議申立てを行った場合であって、是正措置の履行又は手続の執行により生じ得る、回復が困難な損害を予防するために必要であると認めるときは、当事者の申請又は職権により、是正措置の履行又は手続の執行の停止を決定することができる(法第97条第1項)。

 

(10)文書の送達

 文書の送達には、行政手続法第14条から第16条までの規定(郵便、交付及び情報ネットワーク利用による。住所不明や送達不能の場合には公告)を準用する(法第98条第1項)。国外に住所、営業所又は事務所を置いている事業者又は事業者団体については、国内に代理人を指定させ、その代理人に送達する(同条第2項)。

 

(11) 訴えの提起

 韓国公取委の処分に対して不服の訴えを提起しようとする者は、処分の通知を受けた日又は異議申立てに対する裁決書の正本の送達を受けた日から30日以内に、これを提起しなければならない(法第99条第1項)。当該訴えは、ソウル高等法院(高等裁判所に相当)の専属管轄とされている(法第100条)。
 なお、前記(8)の異議の申立てを経ずに、ソウル高等法院に直接訴えの提起を行うこともできる。

 

(12) 自主申告者及び調査等協力者に対するリニエンシー制度

 韓国公取委は、①不当な共同行為の事実を自主申告した者(以下「自主申告者」という。)、又は②証拠の提供等により不当な共同行為に対する韓国公取委の調査並びに審議及び議決に協力した者(以下「調査協力者」という。)に対して、是正措置又は課徴金を減軽又は免除することができ、刑事告発を免除することができる(法第44条第1項)(以下、「自主申告者又は調査協力者を「自主申告者等」という。)。ただし、前記減軽又は免除を受けた日から5年以内に新たに不当な共同行為を行った場合には減軽又は免除をしない(同条第2項)。また、前記減軽又は免除を受けた者が、当該減軽又は免除の対象案件に関連する裁判において、調査過程における陳述内容と異なる陳述を行う等の場合には、減軽又は免除を取り消すことができる(同条第3項)。

 

ア リニエンシー制度の対象者等

(ア) 課徴金及び是正措置の免除
 韓国公取委の調査開始前の自主申告者であって、①不当な共同行為の立証に必要な証拠を単独で提供した最初の者である、②韓国公取委が不当な共同行為に関する情報を入手していない、又は不当な共同行為を立証する証拠を十分確保していない状態で自主申告した、③不当な共同行為に関する事実を全て陳述し、関連資料を提出するなど、調査並びに審議及び議決が終わるまで誠実に協力した、並びに④当該不当な共同行為を中止している、という条件に全て該当する場合は、課徴金及び是正措置が免除される(施行令第51条第1項第1号)。
 
(イ) 課徴金の免除及び是正措置の免除又は軽減
 韓国公取委の調査開始後の調査協力者であって、①韓国公取委が不当な共同行為に関する情報を入手していない、又は違反行為を立証するための情報を十分入手していない状態で調査に協力し、②前記(ア)①、③及び④の条件に全て該当する場合は、課徴金の免除及び是正措置の免除又は減軽を受けることができる(施行令第51条第1項第2号)。
 
(ウ) 課徴金の50%減額及び是正措置の軽減
 韓国公取委の調査開始前の自主申告者又は調査開始後の調査協力者であって、①不当な共同行為であることを立証するために必要な証拠を単独で2番目に提出し(不当な共同行為に参加した事業者が2名で、そのうちの1事業者である場合は除く。)、②前記(ア)③及び④の条件にいずれも該当し、かつ先行する最初の自主申告者又は調査協力者が申告等をしてから2年以内であれば、課徴金の50%減額及び是正措置の減軽を受けることができる(施行令第51条第1項第3号)。
 
(エ) 減免申請に係る守秘義務
 自主申告者等が委員会審議の終了前に、委員会の同意なく、減免申請及び行為の事実を第三者に漏洩した場合には、誠実に協力しなかったものとみなす。ただし、自主申告者等が減免申請及び行為の事実を法令により公開しなければならない、又は外国政府に知らせる場合には、この限りでない(不当な共同行為自主申告者等に対する是正措置等減免制度の運用告示(以下「減免制度運用告示」という。)第5条第2項)。
 

 

イ リニエンシー・プラス

 不当な共同行為により、課徴金又は是正措置の対象になった事業者が、自身が関連する「別の不当な共同行為」について前記ア(ア)又は(イ)の各要件を満たして自主申告又は調査協力をした場合、当該事業者は、元の不当な共同行為について課徴金の減額又は免除及び是正措置の減軽を受けることができる(施行令第51条第1項第4号)。
 なお、大規模の不当な共同行為における課徴金の減額又は免除を目的とした、小規模の不当な共同行為の申請を防止するために、調査を受けている不当な共同行為の減免率は、申請された別の不当な共同行為の規模によって異なる(減免制度運用告示第13条第2項)。
 
 下表注:
(A)別の不当な共同行為の関連売上高(全参加企業の売上高)
(B)調査を受けている不当な共同行為の関連売上高(全参加企業の売上高)

 

 

元の不当な共同行為の課徴金

(A)が(B)より小さいか同じ

20%の範囲内の減額

(A)が(B)より大きく2倍未満

30%減額

(A)が(B)の2倍以上4倍未満

50%減額

(A)が(B)の4倍以上

免除

  

ウ 欠格事由

 他の事業者にその意思に反して不当な共同行為に加わることを強要していた者若しくは当該行為を中止しないよう強要していた者又は一定期間に反復して不当な共同行為を行った者については、リニエンシー制度の対象者となることができない(施行令第51条第2項)。

 

エ 減免の取消し

 韓国公取委は、次のいずれかに該当する場合、是正措置・課徴金の減軽又は免除を取り消すことができる(法第44条第3項、施行令第51条第3号)。
① 韓国公取委の調査等の過程で行った陳述又は提出した資料の重要な内容を裁判で全部又は一部否定する場合
② 韓国公取委の調査等の過程で陳述した内容や提出した資料が裁判で虚偽であることが明らかになった場合
③ 正当な理由なく、裁判で共同行為事実に関する陳述を行わない場合
④ 正当な理由なく、裁判に出席しない場合
⑤ 自主申告した不当な共同行為の事実を否定する旨の訴えを提起する場合

 

オ リニエンシー申請の手続

 リニエンシーの申請者は、証拠とともに原則、書面により申請をする。申請は、韓国公取委への訪問、FAX又は電子メールで行うことが可能である(減免制度運用告示第7条第1項)。ただし、書面による申請が困難な場合、口頭(電話を除く。)による申請が認められる(減免制度運用告示第8条の2第1項)。口頭による申請の場合は、韓国公取委によって記録される(減免制度運用告示第8条の2第2項)。申請者は、証拠の収集に時間を要すると判断する場合、不当な共同行為の概要を記した簡単な申請書を提出し、その後15日以内(証拠収集に長期間を要するなど、正当な事由を疎明できる場合は75日以内。必要であると認められる場合、更に延長も可能。)に具体的な証拠を提出することもできる。この場合、その期間内は、当該申請者の地位は保持される(減免制度運用告示第8条第1項、第3項及び第4項)。
 複数の者が同一の共同行為についてリニエンシーの申請を行った場合、その順位については、申請が受理された日時により判断される(減免制度運用告示第9条第1項)。
 なお、複数の者が共同で減免申請を行った場合、当該申請は認められない(減免制度運用告示第9条第3項)。ただし、実質的支配関係にある系列会社等である場合等の要件を満たしている場合を除く。この場合、共同減免申請人に同一の順位を与える(減免制度運用告示第9条第4項)。

 

カ 自主申告者等の地位の決定、地位の不授与等

 審査官等は、減免申請者及び自主申告者等の地位決定のための審査報告書を別途作成し、委員会に提出しなければならない。この報告書は、減免申請者が同意した場合を除き、開示しない(減免制度運用告示第11条)。
 委員会は、減免に関する事項を審議・議決し(減免制度運用告示第12条第1項)、議決書を減免申請者に交付する(減免制度運用告示第12条第7項)、ただし、次のいずれかに該当する場合、自主申告者等の地位を付与しない(減免制度運用告示第12条第2項)。
① 不当な共同行為に関連する事実を全て陳述せず、関連資料を提出しないなど、委員会の審議が終わるまで誠実に協力しない場合
② 故意に虚偽の資料を提出した場合
③ 申請後直ちに又は審査官が定めた期間終了後直ちに共同行為を中断しなかった場合又は共同行為の中断状態を維持しなかった場合
④ 他の事業者に、その意思に反して、不当な共同行為に参加するよう強要したり、これを中断しないよう強要した​りした​事実が明らかになった場合
⑤ 提出された証拠資料が不当な共同行為の事実を立証するものと認められない場合
 
 委員会は、自主申告者等としての地位を認めない場合であっても、受理された証拠書類を返還せず、不当な共同行為の立証に必要な資料として活用することができる(減免制度運用告示第12条第3項)。
 複数の減免申請者がいる場合で、先の順位者が申請の取下げ又は地位の不認定により、自主申告者等の地位が認められない場合、次の順位の申請者が先順位者の受付順位を承継し、委員会が次の順位の申請者が承継した順位の要件を満たしているかを判断する(減免制度運用告示第12条第4項)。ただし、最初の減免申請時点で韓国公取委が不当な共同行為に関する情報を入手していなかった、又は立証に必要な証拠を十分に確保できていなかった状態であって、第2順位者が第1位順位者の要件(韓国公取委が不当な共同行為に関する情報を入手していない、又は立証に必要な証拠を十分に確保できていない状態で自主申告又は調査協力を行う)を満たしていない場合、受付順位を承継せず、第2順位者として減免を受ける(減免制度運用告示第12条第4項)。

 

キ その他

 自主申告者及び調査協力者(前職・現職の役職員を含む。)については、検察への告発が免除され得る(法第44条第1項)。

 

(13) 韓国公正取引調停院による不公正取引行為の調停制度(法第9章)

 韓国公正取引調停院(以下「調停院」という。)は、法に基づいて設立された法人であり、その院長は、韓国公取委の委員長によって任命される。調停院は、①不公正取引行為の禁止規定に違反する疑いがある行為に関連する紛争の調停、②他の法律において調停院に担当させると規定された紛争の調停、③市場又は産業の動向及び公正競争に関する調査及び分析、④事業者の取引慣行及び態様の調査及び分析、⑤韓国公取委から委託された同意議決の履行管理、⑥公正取引に関連する制度及び政策の研究・建議並びに⑦その他韓国公取委から委託を受けて行う事業を遂行する(法第72条第1項)。
 これらの遂行業務のうち、前記①の不公正取引行為の禁止規定に違反する疑いがある行為については、調停院内に置かれた公正取引紛争調停協議会(以下「協議会」という。)(法第73条第1項)が、調停申請から60日以内に調停を行う(法第77条第4項第2号)。協議会は、協議会委員長を含む7名以内の協議会委員によって構成され(法第73条第2項)、協議会委員長については、調停院長が兼任し(同条第3項)、その他の協議会委員については、協議会委員長の提言に基づいて韓国公取委の委員長が任命又は委嘱する(同条第4項)。
 協議会は、①韓国公取委による是正措置又は是正勧告によって処理することが適当である事件、②韓国公取委が調査中である事件等については、調停申請を受けない(法第77条第3項)。
 韓国公取委は、紛争調停事項については、調停手続が終了するときまで、紛争当事者に対し是正措置及び是正勧告をしてはならず(同条第6項)、協議会による調停が成立し、その内容が履行された場合、韓国公取委は是正措置及び是正勧告を行わない(法第78条第4項)。

 

5 罰則及び告発(法第15章)

(1) 罰則

 主な実体規定違反に対する罰則は、違反行為類型に応じ、以下のように定められている(※表中では「法」の記載を省略。)。
 なお、法人の代表者、使用人その他の従業員等が業務に関して法第124条から第126条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、当該法人等に対しても、各条の罰金刑を科す(両罰規定:法第128条)。

 

違反行為類型(主なもの)

罰則

・市場支配的地位の濫用(法第5条)
・持株会社の行為の制限違反(第18条の2第2項から第5項まで)
・CVCに係る一般持株会社の株式保有規制等(第20条第2項及び第3項)
・相互出資の禁止違反(第21条)
・循環出資の禁止違反(第22条)
・循環出資に係る議決権行使の制限違反(第23条)
・相互出資制限企業集団に属する国内会社による系列会社に対する債務保証の禁止違反(第24条)
・金融会社、保険会社及び公益法人の議決権行使の制限違反(第25条)
・不当な共同行為(第40条第1項)
・不公正取引行為のうち特殊関係人等に対する不当支援(第45条第1項第9号)
・特殊関係人への不当な利益提供(第47条第1項又は第4項)
・不公正取引行為の通報等に対する報復措置(第48条)
・事業者団体の不当な競争制限(第51条第1項第1号)
・暴言、暴行等による立入調査の拒否、妨害、忌避(第81条第2項)

3年以下の懲役若しくは2億ウォン以下の罰金、
又はこれらの併科(第124条第1項及び第2項)

・相互出資制限企業集団等の指定に係る資料提出要請に対する提出拒否、虚偽報告(第31条第4項)
・公示対象企業集団に属する国内会社の公認会計士による監査の不実施(第31条第5項)
・不公正取引行為(法第45条第1項)(ただし、取引拒絶、差別取扱、競争者排除、拘束条件付取引及び特殊関係人支援行為(第45条第1項第1号、第2号、第3号、第7号及び第9号)を除く。)
・事業者団体の構成事業者の事業活動又は活動の不当な制限(第51条第1項第3号)
・是正措置の不履行(第7条第1項、第14条第1項、第37条第1項、第42条第1項、第49条第1項及び第52条第1項)
・事業者、事業者団体、その役職員に対する報告・資料提出命令に対する提出拒否、虚偽報告(第81条第1項第3号及び同条第6項)
・資料の隠匿、廃棄、アクセス拒否、偽造、変造等による立入調査の拒否、妨害、忌避(第81条第2項)

2年以下の懲役又は1億5000万ウォン以下の罰金(第125条)

・持株会社の設立又は転換の届出の不実施又は虚偽届出(第17条)
・持株会社等の事業内容に関する報告書の不提出⼜は虚偽報告(第18条第7項)
・株式保有状況⼜は債務保証状況の届出の不実施又は虚偽届出(第30条第1項及び第2項)
・韓国公取委が違反行為の調査に際し指定、委嘱した鑑定人による虚偽の鑑定(第81条第1項第2号)

1億ウォン以下の罰金(第126条)
 

損害賠償請求訴訟に係る裁判所の営業秘密維持命令の違反(第112条第1項)

2年以下の懲役又は2000万ウォン以下の罰金(第127条)

 

(2) 告発

 法第124条及び第125条の罪については、韓国公取委の告発を待って、公訴を提起することができる(専属告発:法第129条第1項)。
 韓国公取委は、法第124条及び第125条の罪のうち、その違反の程度が客観的にみて明白かつ重大であり、競争秩序を著しく阻害すると認めるときは、検事総長に告発しなければならない(同条第2項)。
 検事総長は、法第129条第2項による告発要件に該当する事実があることを韓国公取委に通知して、告発を要請することができる(同条第3項)。
 韓国公取委が法第129条第2項による告発要件に該当しないと決定しても、監査院長、中小ベンチャー企業部長官及び調達庁長は、社会的波及効果、国家財政に及ぼした影響、中小企業に及ぼした被害の程度等、他の事情を理由に韓国公取委に告発を要請することができる(同条第4項)。
 韓国公取委は、法第129条第3項又は第4項の告発要請があるときは、検事総長に告発しなければならない(同条第5項)。韓国公取委は、公訴が提起された後に告発を取り消すことができない(同条第6項)。

 

6 差止請求及び損害賠償(法第12章)

(1)差止請求

 不公正取引行為及び再販売価格維持行為(事業者団体による強要・幇助を含む。)によって被害を受けている又は受けるおそれのある者は、違反行為を行っている又は違反行為を行うおそれのある事業者又は事業者団体に、自己に対する侵害行為の差止め又は予防を請求することができる(法第108条第1項)。

 

(2)損害賠償

 事業者又は事業者団体は、違反行為によって被害を受けた者に対して損害賠償の責任を負う(法第109条第1項本文)。ただし、事業者又は事業者団体が故意又は過失のないことを立証した場合には、この限りでない(同項ただし書)。
 事業者又は事業者団体は、不当な共同行為(法第40条又は第51条第1項第1号)又は報復措置(法第48条)により損害を受けた者に対して、損害の3倍を超えない範囲で、損害賠償の責任を負う(法第109条第2項本文)。

 

(3)損害額の算定に係る裁判所の資料提出命令 

 裁判所は、不当な共同行為(法第40条第1項)、不公正取引行為(法第45条第1項。ただし、特殊関係人支援行為(同項第9号)を除く。)又は事業者団体の不当な競争制限(法第51条第1項第1号)による損害賠償請求訴訟において、当事者の申請により、相手方当事者にその損害の証明又は損 害額の算定に必要な資料の提出を命じることができる(法第111条第1項)。
 資料が営業秘密に該当しても、損害の証明又は損害額の算定に必須である場合には、拒絶できない(同条第3項前段)。この場合、裁判所は閲覧可能な範囲や閲覧者を指定しなければならない(同項後段)。
 当事者が正当な理由なく資料提出命令に従わない場合には、相手方の主張を真実のものと認めることができる(同条第4項)。
 裁判所は、法第109条に基づく損害賠償請求訴訟において、当事者が保有する営業秘密について、訴訟により営業秘密を知ることとなった者に対して、当該営業秘密を訴訟の遂行以外の目的で使用又は第三者への公開をしないことを命じることができる(法第112条第1項本文)。

 

7 褒賞金の支給

 韓国公取委は、違反行為を申告又は情報提供し、これを立証できる証拠資料を最初に提出した者に対して、予算の範囲内で褒賞金を支給することができる。ただし、申告者又は情報提供者がその違反行為を行った事業者である場合を除く(施行令第91条第1項)。
 対象となる違反行為は次のとおり(施行令第91条第1項第1号~第9号に規定。表中では「法」の記載を省略。)。

 

支給対象行為の内容

関係法条

相互出資制限企業集団等の指定に係る資料の提出要請に対する企業集団所属会社に係る回答の欠落

第31条第4項

不当な共同行為(カルテル、入札談合等)

第40条第1項各号

不公正取引行為

不公正取引行為のうち、新聞業に係るもの

第45条第1項第1号から第8号

競争者の顧客の誘引行為

第45条第1項第4号

役・職員に対する自己又は系列会社の商品・役務の購入強制

第45条第1項第5号

取引上の優越的地位の濫用行為のうち大規模小売店業によるもの

第45条第1項第6号

特殊関係人に対する不当な利益提供行為

第47条第1項

事業者団体の禁止行為

第51条第1項第1号から第3号

 
 支給金額は、課徴金の水準に基づいて算出される支給基準額に申告資料の証拠水準(最上、上、中、下)別の支給率(100%から30%までの5段階)を乗じる等して算定する(公正取引法違反行為の申告者に対する褒賞金支給に関する規定)。
 これまでの褒賞金支給の最高額は、2021年に、製鋼会社による鉄スクラップ購入カルテルに係る情報提供者に対し、約17億5600万ウォンの支給がなされたものとされる。
 公正取引法の違反行為のほか、韓国公取委が所管する法律のうち、訪問販売法、大規模流通業法、下請法、代理店法及び加盟事業法(各法律名は略称。)に係る違反行為についても対象となり得る。
 

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