モンゴル(Mongolia)

(2012年3月現在)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。

1 根拠法

(1) 名称

 モンゴル競争法(THE LAW OF MONGOLIA ON COMPETITION,2010年6月成立,2010年8月施行)(※1993年に制定されたTHE LAW ON PROHIBITION OF UNFAIR COMPETITIONは,本法の施行に伴い廃止された。)

(2) 構成

 第1章 総則(第1条~第5条)
 第2章 競争制限(第6条~第13条)
 第3章 公正競争・消費者保護庁の法的地位(第14条~第21条
 第4章 違反行為の調査(第22条~第25条)
 第5章 雑則(第26条~第29条)

(3) 適用範囲

 モンゴル競争法の適用範囲は,国に登録した事業者(営利若しくは非営利を目的とする法人,団体又は経済活動を行う個人)及び国等の行政機関とする(第3条第1項)。モンゴル国外において,事業者が本法により禁止されている行為を行い,その活動がモンゴル国内の市場に影響を与えると認められる場合は,本法が適用されることとなる(同条第2項)。

2 執行機関

(1) AFCCPの組織

ア 公正競争・消費者保護庁(AFCCP : Authority for Fair Competition and Consumer Protection)は,競争法を執行し,国家レベルで競争政策を適用し,事業者及び消費者の権利及び利益を守る責務を負う(第14条第1項)
イ AFCCPに,総括調査官,上級調査官,調査官及び地方調査官を置く(同条第4項)。
ウ AFCCPは毎年,その業務について政府に報告を行う(同条第7項)。
エ AFCCPに,委員長及び8名の委員を置く。8名の委員のうち2名はAFCCPの職員,6名は非職員とし,委員会は合議制により運営される(第17条第1項)。
オ 副首相は,AFCCPの委員長,2名の職員出身の委員及び,3名の非職員出身の委員を任命する。残る3名の委員については,それぞれ商工会議所,労働組合,消費者団体の推薦に基づき,政府が任免する(同条第2項)。
カ AFCCPの委員長及び委員の任期は4年であり,一回に限り再任されることができる(第18条第1項)。

(2) AFCCPの権限

ア AFCCPは,その職務について,主として以下の権限を有する(第15条第1項)。
(ア) 競争環境を整備し,同環境を保護する政策を立案し実行すること(同項第2号)。
(イ) 競争法の執行について,事業者及び組織の調査を行い,決定を下し,行政制裁の免除を行うこと(同項第4号)。
(ウ) 調査の過程で明らかになった違法な活動について,権限の範囲が及ばない場合については,権限のある機関に関係書類を引き渡し,対処を申し入れること(同項第5号)。
(エ) 自然独占の地位にある事業者及び支配的地位にある事業者を定め,その監督を行うこと(同項第6号)。
(オ) 競争法に違反した国等の行政機関の決定を破棄するよう,関連する上位機関,当局,行政裁判所に申入れを行うこと(同項第7号)。
(カ) 競争環境の創出及び市場実態の調査に必要な,データ,情報,説明等を,事業者,国等の行政機関から自由かつ即時に得ること(同項第8号)。
(キ) 競争環境の創出に関する決定を公表し,周知すること(同項第9号)。

3 規制の概要

(1) 自然独占及び支配的地位

ア ある製品を一事業者のみが供給する場合に,平均社会的費用が最低となり得るような市場で事業者が活動しているとき,当該事業者は自然独占の地位にあると認められる(第5条第1項)。
イ ある事業者が,単独で又は他の事業者若しくは関連事業者と共同して,ある製品の製造販売において市場の三分の一以上のシェアを占める場合は,支配的地位にあると認められる(同条第2項)。
ウ イに定める場合以外で,他の事業者の市場への参入を抑制すること又は市場から退出させることができる事業者は,その製品の範囲,市場の地理的範囲,市場集中度及び市場支配力次第では,支配的地位にあると認められる(同条第3項)。

(2) 自然独占の地位にある事業者に対する規制

ア AFCCPは,自然独占にある事業者の行為に係る次の規制を所掌する(第6条第1項)。
(ア) 事業者が生産する製品の市場流通量の変更を規制すること(同項第1号)。
(イ) 実際のコストに応じて製品の販売価格の変更を許可すること(同項第2号)。
イ 自然独占の地位にある事業者は,3(ア)掲げる行為を行ってはならない(同条第2項)。

(3) 支配的地位の違法な利用

ア 支配的地位にある事業者は,以下の独占化行為をしてはならない(第7条第1項)。
(ア) 製造販売の停止又は数量の抑制により,人為的な品不足を引き起こすこと(同項第1号)。
(イ) 不当に高い製品価格を設定すること(同項第2号)。
(ウ) 事業者に追加的な製品の購入を要求すること,市場にある製品と同種の製品をその市場価格と異なる価格で販売すること及び不当に製品の販売を拒むこと。ただし,製品価格に,販売区域に応じた実際の輸送コストや,製造者及び供給者の卸売業者及び小売業者に対する報酬の差によって生じる価格差については,適用されない(同項第3号)。
(エ) 他の事業者の市場参入を阻害するか,又は市場から退出させる目的で,実際のコストを下回る価格で製品を販売すること(同項第4号)。
(オ) 経済的又は技術的な正当化理由がないのに,経済的関係を結ぶことを拒むこと及び不当な基準を設けること(同項第5号)。
(カ) 製品の再販売価格や再販売地域を設定すること(同項第6号)。
(キ) 製品の販売に当たり,競争者の製品を購入しないことを強要すること(同項第7号)。
(ク) 他の事業者に対し,製品の製造販売の縮小をもたらす可能性のある条件での販売を要求すること(同項第8号)。
(ケ) 事業者に,金融商品,資産並びにその保有する権利及び労働力を,自社に移転するよう不当に要求すること(同項第9号)。
(コ) 競争者に対し,自社との合併,統合,分割及び分離を通じた組織再編を要求すること(同項第10号)。
(サ) ある製品の契約書及び合意書に,その契約及び合意と関係のない条項を含めるよう要求し,また,他の事業者と比べて差別的な条件を付けること(同項第11号)。
(シ) 製品を販売するに当たり,当該製品に含まれない製品を付加すること(同項第12号)。
イ 支配的地位にある事業者による,非常に高い製品価格設定に関しては,政府は国際的なベストプラクティスに基づく規制を採用する(第7条第2項)。

(4) 支配的地位にある事業者による企業結合

ア 支配的地位にある事業者は,合併によって組織再編を行う場合であって,競争者の普通株式の20%若しくは優先株式の15%以上を取得するとき又は関連事業者と合併するときには,事前にAFCCPに申請しなければならない(第8条第1項)。
イ AFCCPはアに規定された申請の内容を審査し,受領した日から30日以内にその結果を通知することとする。この期間は,必要に応じて30日以内の範囲で延長することができ,また,AFCCPは追加の情報を提供させることができる(同条第2項)。
ウ AFCCPは,申請内容を審査した結果,競争制限的な状況が生じると考えられる場合には,申請を却下する(同条第3項)。
エ AFCCPによる却下の決定は,その法人の国への登録の却下事由となる(同条第4項)。
オ 第8条第3項は,その企業結合による国民経済への利益が,競争への悪影響を上回る場合は,適用されない場合がある(同条第5項)。

(5) 競争関係にある法人の経営に関わることの禁止

 支配的地位にある法人の経営者は,競争関係にある法人を経営する地位を兼任してはならない(第9条)。

(6) 支配的地位にある法人の分割及び分離

 支配的地位にある法人が独占化行為を年に2回以上行い,かつ,その行為に対し法的制裁が課されたにもかかわらず,当該行為を繰り返し行ったと認める場合には,AFCCPの請求に基づき,裁判所は,当該支配的地位にある法人に対し,分割又は分離によって再編成を行う旨の判決を行う(第10条)。

(7) 競争制限的な契約及び合意の禁止

ア 事業者は,競争制限を目的とする,以下に掲げる内容の契約及び合意を結んではならない(第11条第1項)。
(ア) 価格協定(同項第1号)。
(イ) 販売区域,製品,サービス,売上,商標,種類及び需要者によって,市場を分割すること(同項第2号)。
(ウ) 製造,供給,販売,出荷,輸送,市場へのアクセス可能性,投資及び技術革新を制限すること(同項第3号)。
(エ) 入札又は競売による製品,労務及びサービスの調達に当たり,また,国又は地方の財産を調達するに当たり,事前に,製品価格又は他の条件若しくは基準について合意すること(同項第4号)。
イ 公共の利益に反する,又は競争制限的な状況をもたらす,以下に掲げる内容の契約や合意を事業者間で結んではならない(第11条第2項)。
(ア) 経済的又は技術的な正当化理由がないのに,経済的関係を結ぶことを拒むこと(同項第1号)。
(イ) 第三者による製品の販売及び購入を制限すること(同項第2号)。
(ウ) 共同して,競争する上で重要な取引及び合意への参加を拒むこと(同項第3号)。
(エ) 競争者が事業上の利益となる活動のために団体の構成員となることを妨げること(同項第4号)。
ウ 事業者は,いかなる形でもア及びイに掲げる契約及び同意を支持し,これに参加してはならない(第11条第3項)。
エ ア若しくはイに該当するおそれのある契約や合意に加入した,又は加入する決定を行った事業者に係る真性の情報や関係する証拠をAFCCPに提出した事業者は,違反事業者に課された制裁金総額の5%の金銭的報酬を受け取る(同条第4項)。

(8) 競争制限的行為

 事業者は,以下の競争制限的行為をしてはならない(第12条第1項)。
ア 競争者とその製品の評判をおとしめること及び競争者に損害を与える虚偽,不実又は歪曲した情報を流布すること(同項第1号)。
イ 自らの製品について虚偽又は不実の情報を流布すること,及び事実を歪め,他者を混乱させること(同項第2号)。
ウ 競争に負の効果をもたらす広告を行うこと(同項第3号)。
エ 他の事業者が使用している商標,ロゴ,名称等を意図的に使用すること。また,製品の名称及びパッケージを模倣すること(同項第4号)。
オ 特許権者又は著作者の許可なく,科学,技術,産業及び商業に関する情報を販売,公表又は頒布すること(同項第5号)。
カ 人々の生命及び健康並びに環境に害を及ぼす製品並びに品質の欠陥を隠蔽すること(同項第6号)。
キ 自らの製品を販売するに当たり,競争者の製品を購入しないことを要求すること(同項第7号)。
ク ある製品の販売において,割引又は報酬があるという虚偽の情報を流布すること(同項第8号)。
ケ 入札又は競売による製品,労務及びサービスの調達に当たり,また,国又は地方の財産を調達するに当たり,競争者に圧力をかけ,排除すること(同項第9号)。
コ 違法であって,かつ消費者に不法に損害を与える営業方法を用いること(同項第10号)。

(9) 国家機関等の行政機関による競争制限行為の禁止

ア 国家機関等の行政機関は,事業活動に関し,法で定められたものを除き,免許及び権利の付与,登記の保持並びに謝礼及び金銭の受領を行ってはならない(第13条第1項)。
イ 国家機関等の行政機関は,法に定められた場合を除き,以下の活動を行ってはならない(同条第2項)。
(ア) 事業者が,特定の活動,製品の製造若しくは販売を行うことを禁止又は制限すること(同項第1号)。
(イ) 事業者が,ある地域で販売していた製品を別の地域で販売することを禁止又は制限すること(同項第2号)。
(ウ) 市場における競争を禁止又は制限すること及び競争を市場から排除すること(同項第3号)。
(エ) 市場を販売区域,製品等によって分割すること(同項第5号)。
(オ) 特定の事業者を優遇すること(同項第7号)。
ウ 政府は,公共の利益,国家の安全及び効果的な競争を実現するために,一定期間特定の種類の活動を制限することができる(第13条第4項)。

4 法執行手続

(1) 調査官の権限と義務

 第14条第4項に定められた調査官は,以下の権限及び義務に基づき調査を行う(第20条第3項)。
ア 調査及び検査に必要な,データ,情報,供述,説明,書類等を,関係組織,職員,地方機関及び事業者から得ること(同項第2号)。
イ 行った検査に対する正確性につき,全責任を負うこと(同項第3号)。
ウ 調査過程で違反の事実及び証拠を探し出すこと。違反調査対象者の身体,オフィス,工場,倉庫,書類,コンピュータ及び品目を違反の状況を特定するために調べること。必要な物品,書類及び品目を押収すること(同項第4号)。
エ 調査を行う間,召喚状によって関係者を召喚すること(同項第7号)。

(2) 違反行為に対する調査の端緒

 競争法違反行為に対する調査は,以下に基づいて行われる(第22条第1項)。
ア 事業者,組織及び市民からの申請及び申立て(同項第1号)
イ 新聞及びメディアの情報(同項第2号)
ウ 職権探知(同項第3号)
エ 法で定めるその他の根拠(同項第4号)

(3) 違反行為に対する調査

ア 調査官は,60日以内に違反行為に対する調査を行う(第23条第1項)。
イ AFCCPの委員長は,第23条第1項に定める期間内に違反行為に対する調査が終えられない場合,その期間を30日以内の範囲で延長することができる(同条第2項)。
ウ 調査官は調査終了後,その結果について5営業日以内にAFCCPの委員長に報告する(同条第4項)。

(4) 違反行為の認定

ア 違反行為の調査を行った調査官は,以下に示すいずれかの決定を行う(第24条第1項)。
(ア) 違反行為を行ったことが立証された者に,行政制裁を課すこと(同項第1号)。
(イ)第28条(後記6参照)に相当する状況の発生が認められた場合,関係者への行政制裁を免除すること(同項第2号)。
(ウ)違反行為が犯罪的性質を持つ場合,捜査機関に全ての関係書類を移送すること(同項第3号)。
イ AFCCPは,調査官が行った決定への不服申立てに係る再調査について,必要があれば,独立した外部の監査機関から意見及び結論を得ることができる(第24条第2項)。

5 競争法違反者に対する法的責任

(1)刑事責任の対象とならない競争法違反行為に対し,調査官は以下の行政制裁を課す(第27条第1項)。
ア 第11条第1項から第3項に違反した事業者については,前年の当該製品の販売に係る収入の6パーセント以下の制裁金を課し,不法に得た収入及び品目は没収する(同項第1号)。
イ 第6条第2項及び第7条第1項に違反した事業者については,前年の当該製品の販売に係る収入の3パーセント以下の制裁金を課し,不法に得た収入及び品目は没収する(同項第2号)。
ウ 第12条第1項に違反した事業者については,2,000万トゥグルグ以下の制裁金を課し,不法に得た収入及び品目は没収する(同項第3号)。
エ 第6条第1項第1号及び第2号に係る製品価格及び数量の変更につき,AFCCPに報告せず,その許可を得なかった事業者については,前年の当該違反行為対象製品の販売に係る収入の3パーセント以下の制裁金を課し,不法に得た収入及び品目は没収する(同項第4号)。
オ 第8条第1項に規定された法人株式の取得を行いながら,AFCCPに報告を行わなかった事業者については,2,000万トゥグルグの制裁金を課す(同項第5号)。
カ 第9条第1項,第13条第1項及び第13条第2項に違反した職員については,最低賃金の2倍以上5倍以下の額の制裁金を課す(同項第6号)。
キ 調査を逃れた事業者については,最低賃金の2倍以上5倍以下の額の制裁金を課す(同項第7号)。
ク 調査官の要求に従わず,定められた時間内に対応せず,要求に対する対応の報告を怠った職員については,最低賃金の2倍以上5倍以下の額の制裁金を課す(同項第8号)。
ケ 調査を妨げ,調査官の決定及び意見に影響を及ぼそうとした事業者については,最低賃金の2倍以上5倍以下の額の制裁金を課す(同項第9号)。
コ 第26条第1項第2号に違反した者又は文書を損傷,損壊若しくは偽造した者については,最低賃金の2倍以上5倍以下の額の制裁金を課す(同項第10号)。
サ 要求された文書に係る報告を行わなかった者又は一時的にそれらの提供を拒んだ者については,最低賃金の2倍以上5倍以下の額の制裁金を課す(同項第11号)。
(2)前年及び当該年の製品の売上げに係る収入を算出できないこと又は売上げがないことにより,第27条第1項第1号,第2号及び第4号に係る制裁を課すことができない場合は,各号に定められた事業者に対し,その純資産の額の5%以下の制裁金を課す(第27条第2項)。

6 行政制裁の免除

(1)第11条第1項及び第2項に係る違反行為を自発的に開示した事業者は,行政制裁の免除を受けることができる(第28条第1項)。
(2)第11条第1項から第3項に規定された違反行為を自発的に開示した事業者は,行政制裁の50パーセントの免除を受けることができ,また,第23条第1項に規定された違反行為に係る審査の開始後,30日以内に違反行為を認めた事業者は,行政制裁の20パーセントの免除を受けることができる(同条第2項)。
(3)第28条第1項の適用を受けた違反行為者は,AFCCPに対し,以下の要件を満たす免除申請を行うものとする(同条第3項)。
ア 違反に係る十分な証拠を示すこと(同項第1号)。
イ 調査期間中,必要な書類及び資料を提出する義務を受け入れること(同項第2号)。
 

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