オランダ(Netherlands)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。
※ 以下の概要については,作成時期が古く,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

 

1 根拠法

 オランダの競争法は,競争法(Competition Act)である。同法は,これまでの経済競争法(Economic Competition Act)に代わるものであり,1998年1月1日から施行された。
 同法は,欧州市場の統合を進めるために,基本的にはEU競争法の規定に倣って規定されている。新法制定により,従来の競争制限的協定及び市場支配的地位の濫用に対する規制に加えて企業結合規制規定が導入されたほか,これまでの刑事法に基づく法執行は,オランダ競争庁による行政的法執行に置き換えられた。

2 執行機関

 競争法の執行に当たるオランダ競争庁(Dutch Competition Authority)(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます)は,1998年1月1日に設置された独立した機関である。
 2005年7月1日からは,従前の長官ポストが廃止され,意思決定機関として,3名からなる委員会が設置された。委員会は独立しており,経済大臣から任命される。委員長の任期は最長6年,残る2名の委員の任期は最長4年で,4年を限度として1回まで再任が可能である。
 同庁は,5つの局及び4つの部から構成され,300名以上の職員が配置されている。
 同庁は,競争法に基づく制裁金及び命令に関する決定を行う権限を有しており,決定のために必要な情報収集を行っている。
 経済大臣(Minister of Economic Affairs)は,一般的な政策ルールを策定する権限を有し,一般的なEC及び国際的な競争事項について行動を取るように競争庁の委員会に対し指示することができるが,従前有していた個別事件への関与の権限は失った。競争庁と経済大臣の間には,相互関係や情報交換について規定したプロトコールが定められている。

3 規制の概要

(1) 事業者

 競争法は,EC条約第81条及び第82条の意味での事業者に適用される。事業者は,その法的形態又は資本の調達方法及び営利目的を有するか否かを問わない。

(2) 競争制限的協定(第6条~)

ア 禁止規定

 オランダ市場又はその一部における競争を阻害,制限又は歪曲する目的又は効果を有する事業者間の協定,事業者団体による決定及び事業者による協調的行為は禁止される(第6条)。

イ 適用除外

 商品の生産・販売の改善又は技術的・経済的進歩の促進に役立ち,かつ,消費者に対しその結果として生じる利益の公平な分配を行うものであって,次の各号の一に該当しない協定等については,第6条の不適用を宣言することができる(第15条3項)。
[1] 前記の目的達成のために必要不可欠ではない制限を参加事業者に課すこと。
[2] 当該商品の実質的部分について,競争を排除する可能性を参加事業者に与えること。

 また,個別分野における一括適用免除として,一般行政命令(general administrative order)により,次のものが認められている。

  • 特定のコンソーシアム協定
  • 新規ショッピングセンター内の事業者を一時的に競争から保護するための協定
  • 小売業界における特定の協力協定

(3) 市場支配的地位の濫用(第24条~)

ア 市場支配的地位にある事業者

 「支配的地位」の定義は,EC条約82条に係る欧州司法裁判所の判例に沿ったものとなっており,「ある一以上の事業者が,競争者,供給者,顧客,そして消費者に対し,相当程度独自の行動を採る力を与えられることにより,オランダ市場又はその一部における有効な競争の維持を阻害することを可能にする地位」としている(第1条(i))。

イ 市場支配的地位の濫用の禁止

 事業者は,市場支配的地位を濫用することは禁止される(第24条第1項)。
 しかし,オランダ競争庁は,要請に基づき,第24条第1項を適用することが,法律又は官庁により委任された事業者が一般的な経済利益のサービスを供給することを阻害する場合には,当該行為が市場支配的地位の濫用に関する禁止規定の適用除外とすることを宣言できる(第25条第1項)。

(4) 企業結合規制(第26条~)

ア 企業結合の届出義務

 次の要件を満たす事業者間の企業結合は,オランダ競争庁に届け出なければならない(第29条,第34条)。
 (ア) 当事者の直近の会計年度の,世界規模の合計売上高が1億1345万ユーロを超える場合
 (イ) 当事者の少なくとも2社のオランダ国内での売上高がそれぞれ3000万ユーロを超える場合
 なお,保険会社,金融機関に対しては,上記と異なる基準が設定されている。
 (ウ) オランダ競争庁は,届出を受けてから4週間以内に,当該企業結合を承認するか,競争庁からの企業結合のための許可(ライセンス)を必要とするかの判断を届出事業者に対して通知しなければならない。
 オランダ競争庁によりライセンスの交付を必要とすると判断された場合,関係事業者は,再度,ライセンス交付のための届出を競争庁に出さなければならない。
 オランダ競争庁は,ライセンス交付の届出を受けてから13週間以内に決定を下さなければならない。

イ 企業結合の禁止

 (ア) 届出義務があるにも関わらず届出を行わなかった企業結合及び4週間の待機期間を待たずに実行した企業結合は禁止される(第34条)。
 (イ) 競争庁が企業結合のための許可(ライセンス)が必要であると判断したにも関わらず,ライセンスなしで実行した企業結合は禁止される(第41条1項)。
 (ウ) オランダ市場又はその一部における実質的な競争を著しく制限する市場支配的地位が生じ,又は強化される企業結合案に対するライセンスの交付は拒否される(第41条2項)。

4 法執行手続

(1) 審査権限

 委員会は,事業者が競争法に違反しているとの疑いに合理的な根拠を有している場合は,事件について必要な審査を行うため,関係事業者に対し,情報提供を命じることができ,競争庁の職員をして,建物に立ち入り,検査し,必要な書類のコピー又は留置を行うことができる。

(2) 違反行為に対する措置

ア 制裁金

 オランダ競争庁は,競争制限的協定(第6条)又は市場支配的地位の濫用(第24条)に違反した事業者に対して,45万ユーロ又は事業者の売上げの10%を上限とする制裁金を課すことができる(第57条)。
 制裁金の算定にあたり,オランダ競争庁は,違反行為の重大性や継続期間を考慮に入れる。

イ 罰金の対象となる命令

 オランダ競争庁は,同一事件に対して,制裁金に加え,罰金の対象となる命令も出すことができる(第58条)。
 当該命令は,違反行為の早期終了を目的とするものである。

(3) 不服申立て

競争庁の決定,命令に不服があるときは,次の手順により不服申し立てをおこなうことができる。

ア オランダ競争庁に対する不服申立て

 競争庁の決定の名宛人は,競争庁に対して行政不服審査を求めることができる。競争庁は,独立した委員会のアドバイスを得た上で,当初の担当官以外の職員が事件を再審査する。

イ 裁判所に対する不服申立て

 競争庁による再審査に対する不服申立ては,ロッテルダム地方裁判所に対して提起することができる。更なる上告は,商事控訴裁判所(Court of Appeal for Businesses)に対して提起することができる。

5 リーニエンシー・プログラム

(1) 根拠

 リーニエンシーガイドライン(2002年導入)

(2) 対象行為

 競争法第6条(競争制限的協定)の極めて重大な違反である事業者間の協定及び行為(カルテル)

(3) 概要

ア 競争当局がカルテルに対する審査を開始していない場合,当該カルテルの存在を競争当局に最初に知らせた事業者は,制裁金の全額免除を保証される。
イ 競争当局が審査を開始した後であっても,カルテルについての情報を最初に提供した事業者は,制裁金の免除を受けられる可能性があり,少なくとも50%の制裁金の減額が保証される。

 上記の制裁金の免除又は50%以上の減額を受けるためには,事業者は,他の事業者にカルテルへの参加を強要したことがあってはならない。また,事業者は,競争当局がオランダ競争法違反被疑行為の証拠をそろえることができる程度に十分な情報を競争当局に提供しなければならない。

ウ カルテルの存在を競争当局に知らせた最初の事業者ではない場合,又は,他の事業者にカルテルへの参加を強要したことがあった場合は,制裁金の10%から最大50%までの減額を受けることができる。
 

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