(2026年5月現在)
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1 根拠法
1986年商業法(Commerce Act 1986 以下「商業法」という。)
制定:1986年
商業法の構成は以下のとおりである。
第1章 商務委員会
第2章 制限的取引慣行
第3章 企業結合
第3A章 実態調査
第4章 規制の対象となる商品又はサービス
第4A章 水道サービスに関する消費者保護
第5章 認可及び許可
第6章 執行、是正措置及び不服申立て
第7章 雑則
2 執行機関
(1) 商務委員会(Commerce Commission )(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます)
ア 概要
商務委員会は、商業法の執行を独立して行うこととされる、同国における独立した競争当局である(第8条)。
同委員会は、4人以上8人以下の委員からなる合議体である(第9条第1項)。
委員のうち1名は、担当大臣(現時点の担当大臣は後述する商務・消費者問題担当大臣。)の推薦に基づき、総督から委員長として任命され、もう1名は、副委員長として任命される(第12条第1項)。(注)
(注)総督(Governor-General)とは、ニュージーランドの国家元首であるイギリス国王の代理人として、国王に代わって儀礼的な役割を果たす人物をいう。
委員のうちの少なくとも1名は、5年以上の弁護士経験のある者でなければならない(第9条第2項)。また、 1名は「2001年電気通信法」に基づき、電気通信委員として任命を受ける(同条第3項)。また、1名は「2023年食料品産業競争法」に基づき、食料品委員として任命を受ける(同条第3A項)。また、担当大臣は準委員(associate members、任期は5年を超えない範囲(第11条第2項))を随時任命することができる(同条第1項)。
委員の任期は5年を越えない範囲において総督が任命する期間であり、再任が可能である(第13条第4項並びに 2004年政府機関法(Crown Entities Act 2004)第32条第1項第b号及び第2項)。 委員長には各部局に対する指揮権(第16条第1項)があり、各部局の構成は末尾の組織図のとおり。2024年末現在の職員数は、約500名(組織図参照)である。
イ 委員会の機能
委員会の主たる機能は以下のとおりである。
(ア) 商業法の執行に関連する事項について、事業者からの書面による確約(undertaking)の承認(accept)(第74A条)
(イ) 公共の利益に合致するー定の制限的取引慣行の認可(authorisation)(第58条)
(ウ) 特定のカルテルの事前承認(clearance)(第65A条)
(エ) 特定の企業結合の禁止(第47条)及び承認(第66条)
(オ) 市場調査の実施(第53ZD条)
(カ) 1986年公正取引法の施行(同法は、消費者保護を目的とした法律で、不正競争の防止、消費者への情報提供、製品の安全性確保等に関する事項を規定している。)
(2) 商務・消費者問題担当大臣(Minister of Commerce and Consumer Affairs)
ビジネス・イノベーション・雇用省には、同省が管轄する各分野を担当する複数の大臣がおり、そのうち、商務委員会に関しては商務・消費者問題担当大臣が責任を負っている。
同大臣は、競争政策の立案・策定のほか、商務委員会委員の任命に関する総督への推薦、準委員の任命などを行う。
(3) 高等裁判所(High Court)
高等裁判所は、制限的取引慣行及び企業結合案件に関する委員会による制裁金賦課訴訟、排除措置命令違反に対する制裁金賦課命令、委員会又は私人による差止請求訴訟、あらゆる者による損害賠償請求訴訟、委員会の決定に対する控訴事件等を管轄する(第75条)。
(4) 控訴裁判所( Court of Appeal)
控訴裁判所は、高等裁判所の判決に対する控訴事件を管轄する(第97条)。
(5) 地方裁判所(District Court)
地方裁判所は、守秘命令違反(第100条)、委員会による証拠提出命令違反(第103条)に関する事件の審理等を管轄する(第76条)。
3 規制の概要
(1) 協定(カルテル)
第27条第1項において、「いかなる者も、市場における競争を実質的に制限する目的を有し、又はそのような効果を有し、若しくは有し得るような内容を含む契約、協定を実施又は合意してはならない。」と規定し、競争を実質的に制限する行為(ニュージーランドにおける財・サービスの供給・購入に関する価格調整、生産調整、市場分割のうち1つ以上の意図・効果を有するあらゆる形態の合意)(第30条)を禁止している。
(2) 市場力の濫用(Misuse of market power)
「市場における実質的な力(substantial degree of power in a market)を有する者は、競争を実質的に減殺する目的を有する行為、そのような効果を有する行為、又はそのような効果を有する可能性のある行為を行ってはならない。」(第36条)と規定し、市場力を濫用した行為を禁止している。
また、ニュージーランド又はオーストラリア若しくは両国において実質的な力を有する事業者は競争を実質的に減殺する目的を有する行為、そのような効果を有する行為、又はそのような効果を有する可能性のある行為を行ってはならない(第36A条)。
(3) 再販売価格維持行為
「いかなる者も、再販売価格維持行為を行ってはならない。」(第37条第1項)と規定し、供給業者(メーカー、販売業者)が再販売価格維持行為を行うことを禁止している。
この違反行為類型には,次のような行為が含まれる。
ア 供給業者の定める再販売価格を下回る価格で販売しないことに合意しなければ取引しない旨を、供給業者が購入業者に通知すること(第37条第3項(a))。
イ 供給業者が、購入業者又は直接又は間接に自己の商品を仕入れた第三者に対して、供給業者の定める再販売価格を下回る価格で販売しないよう誘導すること、または、誘導を企図すること(同項(b))。
ウ 供給業者が、供給業者の定める再販売価格を下回る価格で販売しないという条件が付された契約を購入業者と締結すること、または締結するよう購入業者に申し入れること(同項(c))。
エ 供給業者が、購入業者又は直接・間接的に自己の商品を仕入れた第三者が供給業者の定める再販売価格を下回る価格で販売しないことに合意しなかったこと、または、再販売価格を下回る価格で販売した若しくは販売するおそれがあることを理由に、商品の供給を抑制すること(同項(d)及び(e))。
(4) 企業結合(Business Acquisition)
ア 「市場において実質的に競争を減殺させる効果を有する又はそのおそれがある」企業結合は禁止される(第47条第1項)。
イ 企業結合を計画中の事業者は、商務委員会に対し第66条に基づく承認及び第67条に基づく認可を求めることができる(事前届出義務はない。)。承認申請は、第47条に違反しないことの確認を求めるもので、商務委員会は、申請のあった日から40日以内又は申請者が商務委員会と合意した期間に可否の決定を行うこととされている。第67条に基づく申請は、当該計画を認めるに足る公共の利益があるとして認可を求めるもので、委員会は、申請のあった日から60日以内又は申請者が合意した期間に可否の決定を行うこととされている。
ウ 2017年の法改正により、外国事業者による買収の規制(第47A条)が追加された。具体的には、外国事業者がニュージーランド国外における買収によりニュージーランドにおける競争を実質的に減少させる支配的利益(controlling interest)を取得する場合に、商務委員会は、高等裁判所に対し事業の停止、関連株式・資産の売却、その他適切な措置の命令を求め申立てを行う権限を有する。
外国事業者が支配的利益を取得する場合とは、ニュージーランドの事業者について、①取締役会の構成を支配する権限、②20%を超える議決権を行使又は支配する権限、③20%の株式、④親会社の立場、又は⑤実質的に会社を支配する効果のある資産を取得する場合をいう。
(5) 認可
形式的には制限的取引慣行に該当するような行為であっても、商務委員会に申請を行い、認可(authorisation)を受けることによって、これを実施することができる(第58条)。
商務委員会は、カルテル行為について、「競争の減殺を上回る公共の利益をもたらす、またはその可能性が高い場合又は重要ではない競争の減殺が生じる場合」(第61条第6項及び第6A項)、再販売価格維持行為について、「あらゆる場合に公共の利益をもたらす、またはその可能性が高い場合」(第61条第8項)には、商業法の目的に反しないようにする条件及び委員会が適当と考える期間を付して、当該行為を認可することができる(第61条第1項及び第2項)。
4 市場調査(competition study)
商務委員会は、公共の利益になる(又は消費者の長期的な利益に資する可能性が高いと信じる理由がある)と判断した場合には、特定分野の商品又はサービスの競争条件に関する市場調査(competition study)を行うことができる(第50条第1項)。
担当大臣は、商務委員会に対し、市場調査を実施するよう求めることができる(第51条)。
商務委員会は、市場調査から得られた知見を記録する競争報告書を作成しなければならず(第51B条)、担当大臣に報告後、少なくとも5営業日以内に公開することが求められる(第51D条第1項)。また、商務委員会は、競争を強化するための見直しに関する勧告を行うことができる。担当大臣は、その報告書が公表された後、合理的な期間内にその報告書の勧告に対応することが求められる(第51E条)。
5 法執行手続
(1) 委員会の審査権限
ア 商務委員会は、同委員会が商業法に基づくその任務を遂行し、その権限を行使するために必要又は望ましいと考える場合、書面による通知により、情報、文書、証拠の提出を要求することができる(第98条第1項)。
イ 商務委員会は、事件について必要な調査をするため、地方裁判所裁判官に対し捜索令状の請求を行い、これにより商務委員会が指定した事務局職員に違反被疑事業者に対する立入検査等必要な処分を行わせることができる(第98A条)。
ウ 商務委員会は、前記ア及びイによって収集した陳述、書類、情報又は事項について、違反事実立証のための証拠とすることができる(第99条)。
(2) 確約(第74A条ないし第74C条)
商務委員会は、事業者から提出された書面による確約(undertaking)の内容が十分なものである場合には、これを受理し、事業者に確約どおり実行させることによって事案を解決することができる。事業者は、商務委員会の同意が得られれば、確約を撤回又は変更することができる。
商務委員会は、事業者が確約の内容に違反していると判断した場合には、高等裁判所に対し、確約違反を理由に提訴することができ、高等裁判所は、確約違反が認められた場合には、①事業者に確約の内容を遵守するよう命じる命令、②確約違反によって得た額を超えない額を国に納付させる命令、③確約違反によって他の者に与えた損害を賠償させる命令、④その他高等裁判所が適当と認める命令を行うことができる。
(3) 商務委員会の提訴に基づく裁判所の措置
ア 商務委員会は、一般からの申告又は委員会の探知に基づき、事件審査を行い、違反行為が行われていると思料する場合、高等裁判所に提訴する。
イ 同裁判所は、次のような制裁金(pecuniary penalty)、刑事罰及び差止命令を命じることができる。
(ア)制裁金
制限的取引慣行に対しては、法人の場合に1000万NZドル又は違反によって得た利益の3倍額(当該利益が容易に確認できない場合は売上高の10%)のいずれか大きい方を超えない額、個人の場合に50万NZドルを超えない額(第80条2B項)
企業結合規定違反に対しては、法人の場合に1000万NZドルを超えない額、個人の場合に50万NZドルを超えない額(第83条)
(イ) 刑事罰
制限的取引慣行に対しては、法人の場合に1000万NZドル又は違反によって得た利益の3倍額(当該利益が容易に確認できない場合は売上高の10%)のいずれか大きい方を超えない額の罰金、個人の場合に7年以下の禁固又は50万NZドルを超えない額の罰金、若しくはその両方(第82B条第2項)
(ウ)制裁金と罰金の関係
制裁金と罰金の関係は、次のとおりである。
① 刑事事件で有罪が確定すると、重ねて民事上の制裁金が課されることはない(第79B条第1項)。
② 民事上の制裁金が課されると、重ねて刑事上の罰金が課されることはない(第79B条第2項)。
③ 刑事手続が開始された場合には、民事上の制裁金賦課手続は停止する(第79B条第3項)。
(エ)差止命令(第81条、第84条)
(オ)企業結合規定違反の場合における既に取得した資産又は株式の分割命令(ただし、行為が行われてから2年以内に限る)(第85条1項及び第2項)
(4) 私訴
第2章[制限的取引慣行]及び第3章[企業結合]の違反については、何人も、次の措置を求めて高等裁判所に提訴できる。
ア 差止命令(第81条、第84条)
イ 損害賠償(第82条、第84A条)
6 リニエンシー・刑事免責プログラム
(1) 根拠
「カルテルのリニエンシー・刑事免責ポリシー」(2024年2月)
(2) 対象行為
商業法第2章に該当する価格カルテル、共同取引拒絶、共謀入札、談合、製品又は販売割当て、市場分割等
(3) 概要
最初にリニエンシー申請した者(法人又は個人)に対して、商務委員会により開始される民事上の手続(initiated proceedings)を免除する。また、最初に刑事免責を申請した者(法人又は個人)に対して、商務委員会は刑事免責を法務次官(Solicitor-General)に勧告する。1つのカルテルでリニエンシーと刑事免責を同時に申請することも可能である。なお、リニエンシー又は刑事免責が適用された場合でも、第三者による損害賠償、その他の救済措置を求める提訴は免除されない。
リニエンシー申請者又は刑事免責申請者は、商務委員会事務局長(General manager)に対し、直接申請を行う。Eメールによる申請も受け付けている。
リニエンシー申請者又は刑事免責申請者は、リニエンシー又は刑事免責の適用を受けるために、カルテル行為の存在、活動状況、実施状況、メンバー等に関する情報提供、委員会の審査への継続的、全面的、迅速な協力等の条件を満たさなければならない。
申請が行われた後、委員会は可能な限り速やかに当該申請者に対して最初の申請者か否かについて通知を行うと同時に、申請者は上記の免責条件を記した書面に署名する。
委員会の調査及び手続が全て終了した段階で、最終的に免責確定の通知が書面によりなされる。
なお、2番目以降にリニエンシー又は刑事免責を申請した者(法人又は個人)に対しては、「コーポレーション・ポリシー」が適用される。
リニエンシー・刑事免責ポリシーは、2024年2月に改正され、カルテル合意に至らない行為、すなわち他社をカルテルに誘引するといった違法行為に巻き込む提案をする行為を行ったものの、実際にカルテル合意がなされなかった場合にはリニエンシー制度の適用対象とならないことが明記された。
ニュー・ジーランド商務委員会の組織図
