ペルー(Peru)

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1.根拠法

(1) 根拠法
 ペルーにおける競争法は,「独占行為,統制行為及び自由競争制限行為に対する法律(1991年 法令第701号:Decreto Legislativo N 701 Conta Las Practicas Monopolicas, Controlistas Y Restrictiv as De La Libre Competencia)(以下「独占・統制禁止法」という。)である。

(2) 法適用範囲
 独占・統制禁止法は,公的又は私的な経済活動を行うすべての自然人又は法人に適用される。制裁措置の対象としては,事業者,団体若しくは会社の監督者又は代理人にも適用される。

(3) 不公正競争に関しては,不公正競争抑止法(Unfair Competition Repression Law:1992年No.26122)が制定されている。

2.執行機関

(1) 全国競争保護及び知的財産権保護機関

 競争法の運用に当たるのは,「全国競争保護及び知的財産権保護機関(Indecopi)」である。本機関は,司法的機関と経済政策部門に分かれており,司法的機関は更に自由競争部門と知的財産部門に分かれており,自由競争部門には7つの委員会が置かれている。

(2) 自由競争委員会

 国機関のうち競争政策について中心的役割を果たすのは専門的かつ行政上独立の機関である「自由競争委員会」(Comision de Libre Competencia)である。
 自由競争委員会には事務局(Secretaria)が置かれており,現実の違反事件審査活動等を行う。

(3) 不公正競争抑止委員会

 不公正競争に関しては,「不公正競争抑止委員会」が存在し,違反事件の審査等を行っている。

(4) 審判所

 Indecopiの司法的機関には審判所(Tribunal)が置かれており,Indecopiの委員会が行ったすべての決定について上訴を受け付ける。審判所の決定についての更なる上訴はペルー最高裁においてのみ受け付ける。

3.規制の概要

(1) 市場支配的地位の濫用(独占・統制禁止法第4条,第5条)

ア 市場支配的地位とは,一又は複数の事業者が,各市場における事業者のシェア,財・サービスの供給又は需要の特質,流通網への競争事業者のアクセス等によって,その競争事業者,購入者,顧客又は供給者と関係なく行動することができる場合をいう。
イ 市場支配的地位にある事業者が以下のような行為を行うことは禁止されている。
(i) 商品の購入,販売又は提供の要求を満たすことの不当な拒絶
(ii) 同等の給付に関して,競争事業者を他の事業者に対して不利な立場に置くこととなる異なる条件を適用すること。
(iii) 契約の相手方に,本来の契約の対象とはその性質又は商慣習上関係のない追加的給付を受け入れさせること。
(iv) その他同様の効果を有する行為。

(2) 自由競争の制限行為(独占・統制禁止法第6条)

 競争を制限・阻害し又は歪曲する効果を有するまたはそのおそれのある,以下のような事業者間の合意,決定又は共同行為は禁止される。
(i) 競争時業者間における,直接又は間接の取引若しくは役務の価格若しくはその他の条件の共同決定
(ii) 市場又は供給源の分割
(iii) 生産割当ての配分
(iv) 国内又は国際的技術基準に達せず,消費者に不利な影響を与える場合の商品の品質の取決め
(v) 同等の給付に対して,競争事業者を他の事業者に対して不利な立場に置くこととなる異なる取引条件の適用
(vi) 契約の相手方を,本来の契約の対象とはその性質上又は商慣習上関係のない追加的給付を受け入れさせること
(vii) 商品の購入,販売又は提供の要求を満たすことの不当な拒絶
(viii) 生産,流通,技術開発又は投資の共同の制限又は規制
(ix) 競売又は公売における入札又は入札の棄権の決定,取決め又は調整
(x) 同様の効果を持つその他の行為

(3) 不公正競争(不公正競争抑止法第7条~第19条)

 第三者の商品及び基盤について混同を引き起こし,模倣し,信用を毀損することや,商業条の秘密を侵害し,第三者の評判に不当に便乗する等の行為は禁止されている。
(i) 第三者の商品等との混同を引き起こす行為
(ii) 第三者の商品,信用等について誤解を引き起こす情報等を流布すること
(iii) 商品の原産国について誤解を招く表現を行うこと
(iv) 第三者の商品,職員等についてその信用を既存する行為を行うこと
(v) 誤った根拠に基づいて第三者の商品と自社の商品を比較すること
(vi) 第三者の商品を,その優位性を失わしめることを目的として模倣すること
(vii) 第三者が市場で得た評判を利用すること
(viii) 第三者の承認を得ることなく,事業上の秘密を入手し,公開すること
(ix) 競争者とその従業員,顧客等との契約を妨害すること
(x) 違法な競争上の優位性を利用すること
(xi) 価格その他の取引条件について消費者を差別すること
(xii) 工業所有権,著作権その他の法令で保護された商品を模倣すること

(4) 企業結合規制

 企業結合一般については,特にこれを規制する条文は存在しないが,電力事業分野についてのみ,合併に際して事前届出制が採られており,自由競争委員会が審査を行うこととされている(電力事業分野反トラスト法:The Antitrust Act, applicable in the Electricity Sector)。

4.法執行手続

 独占・統制禁止法の法執行手続は次のとおりである。

(1) 審査手続(第15条,第16条及び第17条)

 審査は,自由競争委員会の事前の承認を得てから職権に基づいて事務局により,又は当事者の申立てにより開始される。
 事務局は,違反の可能性について合理的根拠が存在すると認めた場合,違反すると仮定される事実を列挙して審査を受ける当事者に通知する。
 これに対して審査を受ける事業者は15日以内に証拠とともに答弁を提出することができる。法律上の利害を有する者は当事者となることができる。
 答弁期間内においては,審査を受ける当事者は審査対象行為の停止及び修正を含む遵守事項を提案することができ,事務局によって適切であると認められた場合には,委員会にその遵守事項が提出され,委員会がその遵守事項についての提案を受け入れるか否かを決定する。
 答弁期間の経過後,30日間が証拠審査期間に当てられ,証拠審査後,事務局は制裁措置を含む報告を自由競争委員会に提出する。
 自由競争委員会は,事務局からの報告の受領後5日間以内に措置の決定を行う。

(2) 不服申立て(第18条)

 自由競争委員会の決定についての不服申立ては,「全国競争保護及び知的財産権保護機関(Indecopi)」の審判所に対して行うことができ,同審判所の決定についての上訴は最高司法裁判所民事部(the Civil Division of the Supreme Court of Justice)に対して行うことができる。

(3) 制裁措置(第23条)

 市場支配的地位の濫用及び自由競争の制限行為を行った行為者に対しては,自由競争委員会は以下の制裁金を課すことができる。
(i) 違反が軽微又は重大であると判断される場合は,委員会決定の直前の会計年度の当該事業者の売上高の10%を超えない1,000UITまで。
(ii) 違反が極めて重大であると判断される場合は,委員会決定の直前の会計年度の当該事業者の売高の10%を超えない1,000UIT以上。
(iii) 企業又は事業体に関連する違反行為を行った場合,経営機関の有責の構成者に対して100UITまで。

(4) 損害賠償(第25条)

 違反行為によって損害を受けたいかなる者も,損害賠償請求のための民事訴訟を提起できるものとする。
 虚偽に自由競争委員会に対する申立てを起こされた者も当該訴訟を提起することができる。
 

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