ルーマニア(Romania)

(2007年3月現在)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。
※ 以下の概要については,2007年に作成したものであり,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

1 根拠法

(1) 根拠法

 「競争法」(The Competition Law)
 制定:1996年(施行:1997年2月)
 改正:2003年,2004年

(2) 法適用範囲(法第2条)

ア 競争法は,国内外にかかわらず自然人及び法人に適用される。また,行政組織に対しても他の法律で取り扱われる行為や公共の利益を保護するために採られる行為を除いて,適用される。
イ 競争法は,労働市場と労働組合,金融・証券市場には適用されない。

2 執行機関

(1) 競争評議会(The Competition Council)

ア 構成等

 競争評議会は,競争法第4条に基づき1996年9月に設立された。同評議会は独立行政法人であり制裁金を課す等の司法的役割も有している。
 1人の議長,2人の副議長と4人の競争担当参事から構成される。同評議会メンバーの任命は大統領が行い,任期は5年である。また,1回のみ再任可能である(法第18条)。
 競争評議会は,全体会議及び委員会により審議,決定が行われる。委員会は,事件ごとに議長から指名された競争担当参事2名から構成され,副議長がその長となる。評議会の決定は全体会議において多数決により行われる(法第21条)。
 なお,2005年度における競争評議会の職員数は283名である(組織図参照)。

イ 競争評議会の所掌業務

 競争法制定以来,競争評議会の独立した下部組織として審査等を担当していた競争庁(Competition Office)は,2003年に解体され,その業務,職員等は競争評議会及び国家財政省(後記(2)参照)に吸収統合された(2003年改正法第2条)。
 競争評議会の権限は次のとおりである(法第27条)。
[1] 職権探知又は申告に基づく審査の実施
[2] 審査に基づく違反行為に対する決定
[3] 収集証拠に基づき違法性がないと見なされる件につき,関係人からの要請がある場合の当該行為の承認
[4] 適用免除規定に基づく認可の決定及び企業結合の認可の決定
[5] 自らの決定の効果的執行の実施
[6] 自らのイニシアチブに基づく,市場の更なる把握を目的とした調査の実施
[7] 独占及び価格統制の状況についての政府への報告,障害の是正に必要と考える措置についての政府への提案
[8] 裁判所に対するその権限に該当する事件の通報
[9] 本法の対象に関連する規定,規準の運用管理
[10] 本法の運用における中央,地方行政の妨害に関する政府への報告
[11] 反競争的効果のある政府法案に対する助言及び反競争的効果のある政府法案の修正の提案
[12] 政府及び地方行政組織に対する市場と競争の発展を促進する措置の採択の推奨
[13] 政府又は地方行政組織の職員に対する,競争評議会の審決に従わないその職員への懲戒措置の提案
[14] 評議会の活動分野に関する研究報告書の作成及び,政府や国際機関への紹介
[15] 国際機関との情報や経験の交換,外国競争当局及び加盟国競争当局との協力の促進
[16] 競争評議会の任務,一般戦略,検討課題の確立及び採択
[17] 本法に基づく責務を全うするためのその他の決定

(2) 国家財政省(Ministry of Public Finance)

 競争庁の解体に伴い,国家財政省は,一部の国家補助業務,広告規制等に関する業務を競争庁から引き継ぎ,執行している(2003年改正法第3条)。

(3) ブカレスト控訴裁判所(Bucharest Court of Appeals)

 競争評議会の決定に対する控訴を管轄する(法第60条第4項)。また,競争評議会が命じた措置の不履行に対し,競争評議会からの提訴に応じ,違反行為の停止,資産売却,事業分割等の命令を行う(法第7条)。

3 規制の概要

(1)反競争的行為

ア 以下の行為は反競争的行為として禁止される(法第5条第1項)。

[1] 直接又は間接に価格(売買,費用,リベート等)を協調して固定すること。
[2] 生産や技術的進歩又は投資の制限や調整を行うこと。
[3] 地域的基準や,売買量又は他の基準による市場や供給の割当を行うこと。
[4] 取引先に対し競争上不利益となるような不平等な条件を課すること。
[5] 契約締結に当たり,当該契約と関係の無い付加的なサービス条項の受入れを認めさせること。
[6] 入札に当たり協調的行為を行うこと。
[7] 正当な理由なしに競争者の排除を目的として,当該競争者との売買を規制する協定を結ぶこと。

イ 個別の適用免除(法第5条第2項)

 反競争的行為が以下の条件を累積的に満たす場合,競争評議会は,事業者からの要請に基づき,当該行為を承認することができる。
[1] 反競争的行為により生じるプラス効果が競争制限等のマイナス効果を十分に補う
[2] 消費者・顧客が,反競争的行為により生じる利益を確保される
[3] 反競争的行為がその目的達成のために必要ではない制限を参加事業者に課すものである
[4] 反競争的行為が当該市場の実質的競争を排除するものではない
[5] 反競争的行為が生産・販売の促進,品質の向上,中小企業の競争力の向上,消費者への実質的低価格の提供

ウ 一括適用免除(法第5条第4項,第5項)

 競争評議会は,第1項からの一括適用免除を行う分野について,規則において定めることができる。一括適用免除を受けた分野における行為は,競争評議会の承認なしに合法と見なされる。
 競争評議会は,当該規定に基づき,航空分野,保険分野,研究開発分野等の一括適用免除規則を定めている。

(2)支配的地位の濫用

 次の行為は支配的地位の濫用として禁止される(法第6条)。
[1] 直接又は間接的に購入価格を押し付け,又は特定の供給者又は特定の消費者との取引を拒絶すること。
[2] 消費者の不利益となるような商品の生産制限又は技術の開発制限
[3] 他の取引相手と比べ不平等に扱うことにより競争上の不利益を被らせること。
[4] 取引相手に対し追加的なサービスを要求する内容の契約を取引の条件とすること。
[5] 競争者を排除する目的で商品を不当な低価格で販売すること。

(3)合併(法第11条~第16条)

ア ルーマニア市場において支配的地位を形成し,競争を制限する合併は禁止される。ただし以下の条件がすべて満たされれば認められる。
[1] 当該合併が経済効率を増加や,生産や流通の改良,又は技術的進歩や輸出競争力の強化に貢献が見込まれる。
[2] 合併の積極的効果が競争を制限する効果を上回る。
[3] 合併が,とりわけ価格の実質的低下の面で消費者利益に貢献する。
イ 企業結合を行う企業の合計売上高が1000万ユーロ以下,かつ,少なくとも2企業のルーマニア国内の売上高がそれぞれ400万ユーロ以下である場合は,審査対象とならない。本基準を超える場合は,競争評議会に届出なければならない。競争庁が合併事案に対する決定を行うまで,関係事業者らは市場構造を変えてはいけない。

4 法執行手続

(1)審査

ア 反競争的行為,支配的地位の濫用に係る審査

[1] 端緒
 職権探知,法人又は自然人によりなされた申告,政府機関からの要請等により事件端緒が行われる(法第40条)。申告を受け付けた場合,競争評議会は,審査の必要の有無を検討する。必要ないと判断する場合,30日以内申告人に,理由を添えてその決定を通知する(法第46条)。
[2] 審査の開始
 競争評議会の議長は,各事件につき競争審査官(competition inspector)に審査実施の命令を行い,各審査の報告官(rapporteur)を指名する。報告官は,審査の結果に基づき,審査報告書を作成し,命令すべき措置の提案とともに,競争評議会の全体会議に報告する(法第47条)。
[3] 立入検査等
 競争審査官は,事業者又は事業者団体に対して,審査の遂行に必要な情報及び資料の要求,並びにその提出期限の設定をすることができる(法第41条)。
 競争審査官は,事業者又は事業者団体が所有する建物,敷地,車両に立ち入り,書類等を検査し,その写しを取得し,書類等に関連する人物から聴取を行う等の権限を持つ(法第42条)。
[4] 聴聞の機会
 審査打ち切りの場合(法第47?T条)を除き,関係する者に聴聞の機会が与えられる(法第48条)。聴聞を受ける者が違反行為に関与する者である場合,聴聞の30日前までに審査報告書が送付される。それ以外の者(専門家,申告人等)からの聴聞の場合は,議長の判断及び当人からの要求があった場合のみ審査報告書が送付される(法第49条)。

イ 企業結合に係る審査(法第51条)

[1] 競争法の対象とならない場合,又は対象となるものの競争に悪影響を与える疑いがないと見なす場合は,申告の受付から30日以内に,不干渉又は異議なしとする決定を行う。
[2] 競争に悪影響を与える疑いがあり審査を開始した件については,申告の受付から5か月以内に,市場支配力の形成又は強化の可能性に応じ,(a)承認,(b)反対,(c)義務又は条件付承認,のいずれかの決定を行う。
[3] 上記期限内に決定が行われない場合は,当該企業結合は実施することができる。

(2)制裁措置

 審査の結果,違反行為の事実が確認された場合,関係人からの聴聞後,違反行為の停止命令,勧告及び制裁の賦課を行う(法第50条)。

ア 制裁金

 制裁金は,下記の範囲内において,違反行為の深刻性及び期間,並びに競争上の重大性を考慮し決定される(法第57条)。
(ア) 以下の行為は,違反行為の前年の事業年度の総売上高の最大1%の制裁金が課せられる(法第55条)。
[1] 届出義務のある企業結合の届出を行わなかった場合。
[2] 競争評議会に対する適用除外の要請又は企業結合の届出に際し,不正若しくは不完全な情報を提出した場合。
[3] 審査活動を目的として,競争評議会又は競争庁によって要請された情報の提供を怠ったり,不正の情報を提出した場合。
[4] 競争評議会による調査の際に不完全な文書,記録,帳簿を提出した場合。
[5] 競争評議会による調査を拒絶した場合。
(イ) 以下の行為に対しては,違反行為の前年の事業年度の総売上高の最大10%の制裁金が課せられる(法第56条)。
[1] 第5条(反競争的行為),第6条(支配的地位の濫用),第13条(競争を制限する企業結合)に違反する場合。
[2] 競争評議会の決定前に企業結合が実行された場合。
[3] 競争評議会により禁止決定がなされた企業結合を実行した場合。
[4] 競争評議会の決定により課された義務や条件を遵守しなかった場合。

イ 措置の不履行に対する制裁

(ア) 競争評議会は,関係人が制裁措置の決定日から45日以内に措置の履行を行わない場合は,前記イに記載する最大限度の制裁金を課すこと又はブカレスト控訴裁判所に対して,行為の停止,資産売却,事業分割等の命令を要請することができる(法第58条)。
(イ) 競争評議会は,法律の遵守,措置の履行,完全かつ正確な情報提出,審査の受入を求め,1日につき違反行為の前事業年度の1日平均の売上高の最大5%の履行制裁金を課すことができる(法第59条)。

ウ 個人に対する刑事罰

 不正な意図を持ち,違反行為に関し重要な役割を果たした個人に対しては,刑事訴訟法214条に基づき,刑事告訴することができる。告発は,競争評議会が行わなければならず,当該個人は,4か月から6年の禁固刑,罰金が課され得る(法第39条2項,第63条)。

(3)リーニエンシー

ア 根拠

 競争法第56条第2項(2004年改正により導入)
 「リーニエンシーポリシーの条件及び適用基準に関するガイドライン」

イ 対象

 競争法第5条に規定する,価格カルテル,生産・販売割当,市場分割,入札談合等の反競争的行為

ウ 概要

[1] 制裁金の全額免除
 競争評議会は,審査を開始することができ,法第5条違反を証明することができる証拠を最初に提出した者に対し,制裁金の全額免除を認める。申請者は以下の条件を満たさなければならない。

  • 競争評議会への完全,継続的,迅速な協力
  • 証拠の提出日までに,違反行為への参加を止めていること
  • 他の事業者に対し違反行為への参加を強要する方策を取らなかったこと

[2] 制裁金の減額
 競争評議会は,協力を行う者に対し,以下の条件を満たす場合,制裁金の減額を認める。

  • 競争評議会が既に保有する証拠に対して,重要な付加価値を持つ証拠を提出
  • 証拠の提出日までに,違反行為への参加を止めていること

 減額率は,付加価値を持つ証拠を提出した順番により,(a)一番目30-50%,(b)二番目20-30%,(c)三番目以下0-20%,のいずれかが適用される。証拠提出の日付,付加価値の重要性を考慮して,各幅の中での適用率が決定される。

5 損害賠償

 競争評議会による制裁に関わらず,私人又は法人は,競争法により禁止される反競争的行為により被った損害の賠償を求め提訴する権限が留保される(法第64条)。

競争評議会組織図
 

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