スロバキア(Slovak)

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※ 以下の概要については,作成時期が古く,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

1 根拠法

 スロヴァキアにおいては,旧チェコ・スロヴァキア連邦共和国時代の1991年に,経済の市場経済化に対応する観点から,独占禁止法(The Antimonopoly Law)が制定されたことに始まる。
 その後チェコ共和国と分離した以降も上記独占禁止法が施行されていたが,教条的な傾向が見られたため,1994年にスロヴァキア共和国において,「経済競争の保護に関する法律(1994年法律第188号):Act on Protection of the Economic Competition」が新たに制定され,同法に基づき同国の競争政策が行われている。
 同法の構成は以下のとおりである。
 第1章 導入規定
 第2章 競争と集中に関する違法な行為の類型
 第3章 執行当局
 第4章 手続
 第5章 事業者の義務及び秘密
 第6章 違法な競争制限に対する民事訴訟
 第7章 国の規制当局及び自治体による干渉
 第8章 民営化を通じた経済競争の支援
 第9章 最終規定

2 執行機関

 省庁及びその他の中央規制機関の組織に関する法律(1990年法律第347号)第20条及び第23条の規定に基づき設立されたスロヴァキア共和国反独占局(The Antimonopoly Office of the Slovak Republic)が,「経済競争の保護に関する法律」の規定に基づき競争法の執行に当たっている。
 反独占局は1官房7課からなり,うち4課が事件審査を担当する。Banska Bystrica(中央スロヴァキア担当)とKosice(東スロヴァキア担当)に地方事務所が置かれている。

3 規制の概要

(1)競争制限的協定の禁止

ア 競争を制限する目的で,又はそのような効果を持つ事業者間の合意又は共同行為及び団体による決定は禁止されている。禁止される協定の例としては以下のとおり(第3条2項)。
(i) 直接又は間接の価格の拘束
(ii) 生産,販売,技術発展又は投資を制限し,又は操作しようとする約束
(iii) 市場又は供給される資源の分割
(iv) 同様の商品について異なった条件で取引をし,特定の取引当事者を競争上不利な立場に置くこと。
(v) 契約の結果,その性質から若しくは慣習からして契約の目的とは関わりない追加的な義務を課すること。
イ これらの契約は,法律上無効である(第3条3項)。
ウ 特許,意匠,商標等の知的財産権の権利移転又はライセンス取得に関する契約に当たっては,その競争に与える制限が権利の保護に必要な範囲を超えている場合に禁止され,無効となる(第4条)。
エ アに該当する協定であっても,以下の条件を満たすことを当事者が反独占局に対して証明した場合には,違反とならない(第5条1項)。
(i) 商品の生産又は流通の改善に寄与し,又は技術的又は経済的な進歩を促すものであること。
(ii) 消費者に利益の適正な分配が与えられるものであること。
(iii) 競争を制限する協定の当事者に,その目的の達成に必要不可欠でない競争制限を当事者に課すものでないこと。
(iv) 競争を制限する協定の当事者に,当該商品の実質的な部分に関して競争を排除する可能性を与えないこと。
オ 協定が競争法に違反するか否かの判断を反独占局に求めるネガティブ・クリアランスの制度がある(第5条2項)。

(2)支配的地位の濫用の禁止(第7条)

ア 支配的地位にあるとは,1又は複数の事業者が,市場において実質的な競争にさらされることなく,又はその経済的強大さの故に他の事業者及び消費者から独立して行動し,競争を制限することができる場合をいう。
 具体的には,反証がない限り市場における当該事業者のシェアが40%を超える場合には実質的な競争は行われていないと推定する。
イ このような地位にある事業者がその地位を濫用する以下のような行為を行うことは禁止されている。
(i) 直接又は間接に不均衡な取引条件を強制すること。
(ii) 消費者にとって有害な製造,販売又は商品の技術的発展を制限すること。
(iii) 同じ条件の取引に関して異なる取引条件を設定し,相手方を競争上不利な立場に置くこと。
(iv) 契約の一方当事者が契約の目的と関係のない追加的条件を受け入れることを契約を結ぶ条件とすること。

(3)事業集中規制(第8条~第10条)

ア 合併,事業統合,営業譲渡,買収,ジョイントベンテャー等の事業集中は,以下のいずれかの条件を満たす場合に,反独占局の規制に服する。
(i) 事業集中に参加する事業者(同社が株式の過半数を所持している事業者のものを含む)の直近の会計年度の売上の合計が3億スロヴァキア・クラウンを超え,かつ参加者のうち少なくとも2社の売上高がそれぞれ1億スロヴァキア・クラウンを超える場合
(ii) 事業集中に参加する事業者のスロヴァキア国内におけるシェアの合計が20%を超える場合。
イ この条件に該当する事業集中の当事者は,公開買付の開始か合意のあった日から15日以内に反独占局に,以下の事項について届出を行う必要がある。
(i) 事業集中の発生を示す書面による合意文書
(ii) 商業登記簿に掲載されている範囲で事業者の概要を示す文書
(iii) 事業集中に参加する当事者の資産及び人的つながりに関するデータ
(iv) 直近の会計期間における,事業集中に参加する事業者の関連市場におけるシェアの計算,バランスシート及び金融状況を示す資料
(v) 事業集中の理由と効果,及び市場に与える影響
(vi) 関連市場における,取引先及び競争者のリスト
ウ 届出に従い,反独占局は,届出から1か月以内に,当該事業集中に関して判断を行うか,あるいは審査期間を延長する予備的決定を行う。予備的決定が行われた場合,その決定から3か月以内に判断が行われる。
エ 反独占局は,当事者が,当該事業集中によって得られる経済的利点に比べて競争の制限が採るに足りないものであることを立証しない限り,市場における支配的地位を強化する合併を禁止する。
オ 届出を行わずに事業集中を行った場合に,当該事業集中が禁止される合併である場合には,反独占局は,事業の分割を含む措置を命ずることができる。

(4)政府規制との関係

 規制官庁は,自ら競争制限的な行為を行ってはならない。反独占局はこの状況を監視し,証拠及び効果の評価に基づき,反独占局は,規制当局又は地方自治体に対して,状況を改善するよう求める(require)ことができる。
 また,規制当局による民営化プロジェクトに当たっては,規制当局に対して意見を提出することができる。

4 法執行手続

(1) 事件審査手続(第11条)

ア 反独占局の担当官は,事業者に対して,反独占局の活動に必要なすべての物品及び情報の提供を求めることができる。この情報の中には,事業の記録及び法的証拠を含み,特定の事項について口頭又は文書で説明を求めることができる。
イ 法の目的を達成するため,反独占局担当官は,事業者の建物,土地及び移動手段に立ち入ることができる。

(2) 措置(第12条)

ア 反独占局は,事案の性質に応じて,関係者に対して聴聞(hearing)を行う。聴聞においては,手続に従い,反独占局の行った審査に基づく結果に対して従うよう当事者に求める必要がある。
イ 手続の開始に当たって,正当な利益を保護する必要があり,又は最終決定の履行がそうでなければ妨害されるおそれがある場合は,反独占局は,最終決定が出るまでの法的関係を一時的に決定する予備的決定を発する権限が与えられている。

(3) 不服申立て(第13条)

 反独占局の出した最終決定に不服がある場合,決定が当事者に届けられた日から30日以内に,当事者は決定の見直しを求めて最高裁判所に訴訟を提起することができる。

(4) 制裁金(第14条)

ア 反独占局は,法に違反した事業者に対して,直前の会計年度の売上高の10%か,売上高が計算できない場合は最高1,000万スロヴァキア・クラウンの制裁金を課することができる。
 違反行為者が得た利得を計算できる場合には,最低でもその利得額と同額の制裁金が課される。
イ 事業者が定められた期間内に資料の提出に応じず,又は検査妨害を行った場合には,最大100万スロヴァキア・クラウンの制裁金が課される。
ウ 正当な理由なく,聴聞に出席しなかった者,又はその者によって手続の進行が困難となった者に対しては,最大10万スロヴァキアイ・クラウンの制裁金を課することができる。
エ 反独占局の最終決定を履行しなかった事業者に対しては,直前の会計年度の売上高の10%か,最大1,000万スロヴァキア・クラウンの制裁金を課することができる。
オ 制裁金の時効は,違法状態の発生から3年,違反の事実が発見されてから1年である。

(5)私訴(第17条)

 事業者の不当な競争制限行為によって損害を受けた消費者は,違反を行った当事者に対して,違反行為を停止し,違反を改善することを求めることができる。
 

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