ウクライナ(Ukraine)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。
※ 以下の概要については,作成時期が古く,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

1.根拠法

 ウクライナにおける競争政策の根拠法は,1992年に制定された「独占の制限及び不当な競争の禁止に関する法律」(LAW OF UKRAINE on Limitation of Monopolism and Prevention of Unfair Competitionin Entreprenurial Activities)であり,1995年,1997年及び1998年に改正されている。また,不公正な競争に関して規制する「不公正な競争からの保護に関する法律」(LAW OF UKRINE on Protection against Unfair Competition)が1996年に制定されている。

2.執行機関

 ウクライナにおける競争政策の執行機関は「ウクライナ反独占委員会(The Antimonopoly Committee of Ukraine)」(以下「反独占委員会」と言う。)である。その組織については「ウクライナ反独占委員会に関する法律」においてこれを定めることとされている(第9条)。反独占委員会は,委員長及び10名の委員から構成され,スタッフ職員(The Working staff)については,議会から7年の任期で任命される。憲法上,委員長は議会の同意を得て大統領がこれを任命することとされている。委員は,反独占法令の遵守に関する規制及び違反事件の審査に関して権限を独立して行使することとされている。
 反独占委員会の任務は,反独占法令の遵守に関して国家の規制を行うこと,事業者及び消費者の法律上の利益を守ること,及び経済のあらゆる面において公正な競争の発展を促すことである。
 このため,反独占委員会は,経済主体並びに,政府機関,地方政府機関及び経済管理諸機関(以下「政府機関等」と言う。)に対して,反独占法令の遵守に関する規制を行う。
 各地方に24の州地方事務所,キエフ及びセヴァストポリに都市事務所,クリミア自治共和国に自治共和国地方事務所が置かれている。

3.規制の概要

(1)市場の独占的地位の濫用(第4条)

 特定の経済主体(その組織,法的地位及び所有形態に関わりない法人,又は生産,販売及び商品の取引その他の経済活動を行う自然人,及び経済主体を支配する法人又は自然人。以下同じ。)のある市場におけるシェアが35%を超えた場合,その経済主体は当該市場において独占的地位にあるとみなされる。シェアが35%に満たない場合であっても,何らかの理由によって競争を制限できる力を有する場合には,委員会の決定により独占的地位にあると認定される。
 競争を制限し,他の経済主体及び消費者の利益を侵害する以下のような行為は市場の独占的地位の濫用として禁止される。なお,独占的地位そのものは禁止の対象ではなく,その濫用及びそれを維持するための不法な行為が禁止されている。

  •  契約者にとって競争上不利な契約条件を強制すること,又は契約者にとって不要な製品の押し付けを含む契約の対象と関係のない取引条件を強制すること。
  •  商品の市場における欠乏を維持し又は引き起こし,独占的な価格設定を可能にする,商品の生産の制限又は停止,及びその流通からの回収
  •  商品の市場における欠乏を維持し又は引き起こし,独占的な価格設定を可能にする,他の購入・販売資源が存在しない場合の,製品の販売・購入の部分的又は全面的な拒絶
  •  他の経済主体に対して,市場への参入(又は退出)の障壁となり,又はそのおそれのある活動を行うこと。
  •  特定の消費者の権利を制限するような,差別的な価格設定
  •  消費者の権利を侵害し又はそのおそれのある,独占的高価格の設定
  •  消費者の権利を侵害し又はそのおそれのある,独占的低価格の設定

(2) 反競争的共同行為(第5条)

 経済主体による,以下の共同行為は禁止されている。

  •  独占的価格,リベート,追加支払い,価格引上げの決定
  •  当該経済主体による独占につながり,又はそのおそれのある,地域,製品,販売又は生産量,消費者の集団その他の基準に基づく市場の分割を行うこと。
  • 市場から販売者,購入者その他の経済主体を排除し,又は市場への参入を制限すること。

(3) 政府機関等による経済主体に対する差別的取扱い(第6条)

 以下のような,政府機関等によって行われる,経済主体に対する差別的取扱いは禁止されている。

  •  いかなる経済活動の側面においても,新しい会社又はその他の企業組織の設立を禁止すること,又は競争の制限につながり又はそのおそれのある,特定の商品の生産を含む,活動に従事することを制限すること。
  •  経済主体に対して,団体,財団その他の集合及び結合への加入を義務付け,契約の相手方を優先的に決めさせ,又は特定の消費者集団に優先的に供給させること。
  •  市場における独占的地位を引き起こし又はそのおそれのある,製品流通の一本化について決定を行うこと
  •  共和国内の一定の地域から他の地域への製品の販売を禁止すること。
  •  特定の経済主体に対して,特定の製品についての市場における独占を引き起こす又はそのおそれのある税制その他の優遇措置を付与し当該経済主体に市場における有利な地位を与えること。
  •  製品の売買に関する経済主体の権利を制限すること。

(4) 不公正な競争(第7条及び不公正競争法)

 以下のような,他の経済主体の事業上の評判を不法に利用する行為は禁止されている。

  •  他の経済主体の商標,名称,包装,技術の名称等の不法な利用
  •  他の製造者の商品を自分が製造したものであるかのように不法に利用すること。
  •  他の経済主体の商品の外観の模倣
  •  正しい情報に基づかない比較広告
  •  他の経済主体に特定の経済主体との取引をボイコットするようそそのかすこと。
  •  他の経済主体の従業員に対して,利益供与を行うことにより,本来従業員が果たすべき義務を果たさせないこと。
  •  不法に事業上の秘密を収集し,利用し,公表すること。

(5) 企業結合規制

ア 届出対象

 2又はそれ以上の発起人による経済主体の設立,合併,併合,株式の保有その他の手段による他の経済主体の買収等による企業結合であって,以下のものについては,結合に先立ち反独占委員会の同意が必要である(1994年11月11日ウクライナ政令第765号。1997年5月26日政令499号により改正)。

  •  当該結合に参加する経済主体の直前の会計年度における総資産額又は年間総売上高の合計が米ドル換算で$12,000,000を超える場合(既存の結合への参加を含む)。
  •  当該結合に参加する経済主体のいずれかの直前の会計年度における総資産額又は年間総売上高が,米ドル換算で$600,000を超える場合。
  •  2又はそれ以上の発起人による経済主体の設立については,発起人のいずれかが市場において支配的地位を占めているか,あるいは発起人のシェアの合計が当該市場で35%を超える場合(既存の経済主体への参加を含む)。
  •  市場シェアが35%を超える経済主体の設立。
  •  国の出資が50%を超える場合において,独占的地位を形成する結合の形成。
  •  株式等の議決権の25%又は50%を超えて,議決権を取得すること,又は経営への参加を求めて,米ドル換算で$100,000を超える額の議決権を取得すること。

イ 審査手続

 結合の合意等から30日以内に届出を行う必要があり,反独占委員会においては,届出から1か月以内(必要な場合は2か月延長可能)に,当該結合に同意を与えるか,当該競争を禁止する。禁止する場合は,反独占委員会は,同意が与えられるための条件を示すことができる。
 当該結合が独占を形成せず,及び競争を実質的に制限することのない場合には同意が与えられる。競争を実質的に制限する結合であっても,生産を改善し,技術 発展を促進し,製品の輸出を増加させるなど,当該結合の肯定的な効果が市場の独占による否定的な効果を上回る場合は,同意を与えることができる。

4.執行手続

(1) 端緒

 反独占委員会が違反事件について審査を開始する端緒は,反独占委員会が自ら開始するか,他の政府機関から寄せられた情報に基づくか,又は経済主体,政府機関等,私的団体及び市民からの申告に基づくものである。申告に際しては,申告人,相手方の氏名住所,当事者を取り巻く状況,希望する措置について書面で提出する必要がある。
 申告は30日以内に審査されるが,上記の資料が十分でない場合は反独占局は審査を中止し追加資料を要求することができ,追加資料の提出がない場合は審査を打ち切る。申告が反独占委員会の権能外の場合は申告を却下するが,却下に不満のある申告人は普通裁判所又は仲裁裁判所に訴え出ることができる。

(2) 審査手続(第13条)

 経済主体及び政府機関等は,反独占委員会の国家委員会又は地方事務所長からの要求に基づき,法令の定める職務を執行するために反独占委員会に必要な書面,口頭その他の情報を提供する義務を負う。

(3) 制裁措置(第19条,第20条)

ア 経済主体に対する制裁金

(ア)市場の支配的地位の濫用,反競争的共同行為,政府機関による経済主体の差別的取扱い及び反独占委員会の決定に違反した場合,反独占委員会は前会計年度の対象商品の売上高の5%を上限とする制裁金を課すことができる(売上高が計算できないときは市民の税引き前最低収入10,000人分)。
(イ)反独占委員会の同意が必要な企業結合について,同意を得ることなく結合を実施した場合,反独占委員会は,前会計年度の対象商品の売上高の5%を上限とする制裁金を課すことができる(売上高が計算できないときは市民の税引き前最低収入10,000人分)。
(ウ)反独占委員会の必要とする情報を提出しなかった又は虚偽の情報を提出した場合,反独占委員会は,前会計年度の対象商品の売上高の0.5%を上限とする制裁金を課すことができる(売上高が計算できないときは市民の税引き前最低収入200人分)。
(エ)制裁金のうち半額は国庫に,半額は競争の発展と防衛を目的とする反独占委員会内に設けられた基金に配分される。

イ 個人に対する制裁

 違反行為を行った経済主体,政府機関等の職員は,行政上の責任を有するほか,裁判所の手続に従って罰金を科せられる。

(4) 損害賠償(第22条)

 独占的地位の濫用,反競争的共同行為,政府機関による経済主体の差別的取扱いによって損害が発生した場合には,民事法制の定めるところにより賠償される。

(5) 不当な利益の没収(第21条)

 独占的地位の濫用及び反競争的共同行為によって発生した不当な利得については,裁判所又は仲裁裁判所の手続に基づき,国庫に没収される。

(6) 不服申立て

 反独占委員会の決定に不服のある経済主体,政府機関等及び利害関係を有する個人は,裁判所又は仲裁裁判所に対して,取り消し又は変更を求めて訴 え出ることができる。当該決定が不法なものであると認められた場合には,その決定を原因として発生した損害は国庫から補償される。


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