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ウズベキスタン(Uzbekistan)

ウズベキスタン(Uzbekistan)

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1 根拠法

(1)根拠法

 「商品市場における競争及び独占活動の制限に関する法律」(以下、「独占禁止法」という。1996年12月制定)

(2)法適用範囲

 独占禁止法は,独占的行為及び不公正な競争を禁止し,商品市場(注:サービス市場も含む)における競争が有効に機能する条件を維持するための組織上及び法的な基礎を規定する。法適用地域は,ウズベキスタン共和国の領域全体であり,領域内においては,ウズベキスタン共和国と外国の法人・自然人及び国営企業を含む政府機関に対して適用される。同法はまた,海外における行為や協定であって,ウズベキスタン共和国の競争市場に悪影響を及ぼす又は及ぼし得るものに対しても適用される。
 他方,特許,意匠,商標,回路配置及び著作権の保護については,競争を意図的に制限する結果をもたらす場合を除き,正当化される。労働・証券・金融サービス市場における独占的行為及び不公正な競争については,その他の商品市場における競争に影響を与える場合を除き,ウズベキスタン共和国の別の法律が適用される。自然独占的事業に関しては,直接的に政府規制が規定され,独占禁止法は,自然独占事業の目的・機能を損なわない範囲内で適用される。(自然独占とされる分野は,石油・濃縮ガス・天然ガス・石炭の生産,石油・石油製品・ガスのパイプライン上の輸送,電気・熱エネルギーの製造・輸送,鉄道輸送,港湾事業,航空事業,電気通信事業,上・下水処理サービス業である。)
 なお,ウズベキスタン共和国の参加する国際協定が,独占禁止法と異なるルールを定めた場合は,国際協定の規定が適用される。

2 執行機関

 独占禁止法の執行機関は,ウズベキスタン反独占・競争促進委員会(以下,「反独占委員会」という)である。反独占委員会は1996年5月,財務省の「反独占・競争促進・価格政策局」を改組する形で,ウズベキスタン共和国大統領令に基づき設置された。反独占委員会は行政組織的には引き続き財務省に所属するが,その業務は他の政府機関から独立して遂行される。
 委員会は委員長と第一副議長及び副議長から構成される。事務局は,本庁(管理局,独占禁止法・消費者保護監督局,商品市場分析・登録局,地方支局関係局,競争監督局)及び14の地方支局から構成される。1998年11月現在の全職員数は487名である。

ア 反独占委員会の基本的役割

 反独占委員会は,商品市場における競争を促進し,事業主体及び政府機関による独占的活動及び不公正な競争を禁止・除去する任務を担う。反独占委員会は,以下の基本的機能を履行する。
(ア) 反独占法令及び消費者保護法制を遵守させるための監督
(イ) 国有事業を行う政府機関とともに,商品市場における競争的な環境を創設し,地方レベルで反独占に向けた協力を進めるための統一的なアプローチの維持
(ウ) 競争促進を基礎とした市場関係の構築支援
(エ) 独占的地位の濫用行為,不正競争,消費者利益の侵害行為の阻止
(オ) 独占事業主体の登録
(カ) マス・メディア,定期刊行物等を通じた施策の広報
(キ) 諸外国の経験の分析

イ 反独占委員会の権限

 反独占委員会は,以下の権限を有する。
(ア) 事業主体に対し,独占禁止法違反の終結,違反結果の排除,当初の競争状態の回復,独占禁止法に違反する協定の排除,他の事業主体との協定の終結,独占禁止法に違反した結果得られた不当利得の国家予算への返還を命じること。
(イ) 政府機関に対し,独占禁止法違反行為の撤廃・変更を命じること。
(ウ) 事業主体及びその経営者の独占禁止法違反並びに反独占委員会の職員の職務不履行に関する決定を行うこと。
(エ) 独占禁止法に違反する契約の全部又は一部を無効とすることを含め,同法違反に関する告発状を添えて裁判所に訴えること。また,裁判所の審理に参加すること。
(オ) 独占禁止法違反に関連した犯罪の立証問題解決のために,政府機関に対し関連資料の提出を命ずること。
(カ) 政府機関に対して,許可制度や数量割当制度の改廃,関税水準の変更,税制優遇措置や融資その他政府支援措置の導入・廃止に関する要求を提出すること。
(キ) 独占禁止法の適用に関する透明性を高めること。
(ク) 独占的事業主体の登録方法を指定すること。
(ケ) その他独占禁止法に規定されている権限を行使すること。
 反独占委員会の職員は,事業主体や政府機関に対し,必要な書類・情報へのアクセスを妨害されない権利を有する。

ウ 守秘義務

 反独占委員会は,独占禁止法の規定に基づき得た事業上の秘密に関する情報を漏洩してはならない。漏洩の結果生じた損失は,独占禁止法に従って補償される。

3 規制の概要

(1)基本概念の定義(第3条)

商品

 販売(交換)を目的として供される,財,サービス

代替可能な商品

 機能、用途,質的・技術的特質,価格その他の指標の点から同等とみなされる商品群

商品市場

 ウズベキスタン共和国内又はその一部地域における商品流通の範囲

事業主体

 商品の生産,購入やサービスの提供に従事するあらゆる法人(外国の事業主体を含む),その団体及び自然人

不公正な競争

 事業活動における優越性を得るための事業主体の行為で,独占禁止法や取引慣行に反するものであり,事業主体間の競争を排除し,当該行為により,ある商品市場での商品の取引の一般的条件に影響を与える機会が,当該事業主体に生じるようなもの。

独占的地位

 代替可能な商品が存在しない商品市場において,競争に決定的な影響を及ぼし,他の事業主体のアクセスを困難にし,経済活動の自由を制限するような,単独又は複数の事業主体の排他的地位。特定商品市場におけるシェアが65%以上の場合、その事業者は独占的地位にあるとみなされる。特定商品市場におけるシェアが35%以上65%未満の場合,当該事業主体シェアの安定性,相対的なシェア,新規競争者の参入可能性,その他の基準に照らし,その地位が独占的であるとみなされることがある。

独占的活動

 独占禁止法に違反する,競争の不許可,制限又は排除に係る事業主体,国家機関(国営企業を含む)の作為又は不作為

人的集合

 以下の条件を1つ以上満たす法人,自然人の総体。独占禁止法は人的集合にも適用される。

(ア) 一個人が又は複数人が合意により共同で,直接・間接に,販売・信託・共同事業・委任・賃貸・売買に関する契約による場合も含めて,決定的な影響力を及ぼすに十分な議決権付き株式を保有又は監督する権利を有する場合。法人における議決権の間接的指示は,第三者を通じた実際の支配と解される。
(イ) 2以上の個人が協定を結び,それにより企業活動の運営条件や役員会の機能を規定する権利を有する場合。
(ウ) 個人が,法人の役員の50%以上を指名する権利を有する場合。
(エ) 自然人のグループが,複数の法人役員の50%以上を構成する場合。

(2)独占的活動の禁止

ア 事業主体による独占的地位の濫用(第5条)

 独占的地位にある事業主体の行為が,競争を制限し,又はその他の事業主体の利益を侵害する結果をもたらす,あるいはもたらしうる場合,当該行為は禁止される(例:供給制限,著しく高く又は低い価格,契約外の利益の強要,取引条件の差別的取扱い,排他条件付取引,拘束条件付取引,不当な取引拒絶,取引妨害)。例外的に,当該行為の社会経済的な側面を含めたプラスの効果がマイナスの効果を上回ることを,当該事業主体が立証する場合,その協定は合法とみなされる。

イ 競争を制限する事業主体間の協定(共同行為)(第6条)

 特定商品市場で合計35%以上のシェアを持つ,競争関係にある事業主体(潜在的な競争者も含む)間の協定であって,競争制限効果を持つ,あるいは持ちうる協定は,全体として又は部分的に違法とみなされる(例:価格制限,数量・製品・設備の制限,価格差別,市場分割,他事業主体の市場アクセスの制限等)。競争関係にない事業主体間の協定で,一方が独占的地位にあり,他方がその供給者又は需要者である場合,当該協定が競争制限効果を持つ,又は持ちうるならば,当該協定は禁止され,全体として又は部分的に違法とみなされる。例外的に,当該協定のプラスの効果(例:市場の取引条件の改善,商品の競争力強化,他の需要者への適切な利益供与等)が,マイナスの効果を上回ることを事業主体が立証する場合,その協定は合法とみなされる。事業者団体が,競争制限的効果を持つよう企業活動に介入することは禁止される。この規定に違反する場合,反独占委員会の要請に基づき,当該事業者団体が解散させられることがある。

ウ 政府機関による競争制限的行為(第7条)

 政府機関が事業主体に対して,設立の制限,事業活動の制約(法令で定められている場合を除く),特定の消費者に対する物資の優先的な送達指示,特定の事業主体への税制上の不当な優遇措置やその他特典の付与,株式の監督,差別的・特権的条件の設定を行うことは禁止される。ただし,自然災害,事故,疫病に対処するために,これらの行為をとることは認められる。
 政府機関とその他の政府機関又は事業主体との協定であって,市場の正常な機能や競争の発展を阻害したり,法律で認められた消費者の利益を制約する協定は,全体として又は部分的に違法とされる(例:価格操作,市場分割,他の事業主体の市場アクセスの制限等)。
 商品の生産,販売を独占化する目的で政府機関を設立し,既存の政府機関に競争制限的な権限や事業主体と重複する機能を付与し,又は特定の事業主体に政府機関の機能や権限を譲与することは,禁止される。

(3)不公正な競争に対する規制(第8条)

 不公正な競争は禁止される(例:他の事業者の誹謗中傷,虚偽情報の流布,企業秘密の侵害,知的活動の不正利用,不正確な比較広告等)。

(4)国家監督の形態

ア 事業主体の設立,再編成及び解散に関する国家規制(第14条)反独占委員会は以下の規制を行う。

(ア) 事業者団体の設立,合併,合同
(イ) 金融・産業集団,持株会社の形態をとる事業主体の合併,合同
(ウ) 独占的地位を占める事業主体の解散,分割
 事業主体は反独占委員会に対し,設立・再編成・解散の承認を得るための申請書を提出し,自らの主要な経済活動や市場におけるシェアに関する情報を提出する。反独占委員会は,審決に必要なその他の情報を要求することができる。反独占委員会は,必要な書類の受領後30日以内に結果を書面にて通知する。
 反独占委員会は,申請に承認することが事業主体の独占的地位の強化や競争制限につながる場合,又は提出された重要書類の情報が疑わしい場合には,申請を拒絶する権利を有する。申請に承認する場合には,実施に当たっての条件と実施できる内容を,審決に含めなければならない。
 設立・再編成・解散を行う事業主体が,その行為が市場の取引条件を改善し,需要者に相当の利益をもたらすものであることを証明した場合,反独占委員会は申請を承認する権利を有する。
 登記当局による事業主体の登録又は登録抹消については,反独占委員会がこれに事前に承認してはじめて有効なものとなる。反独占委員会の承認を得ずに設立・再編された事業主体の登録は,反独占委員会の要請の後,司法裁判所により無効とされる。

イ 株式の購入等における独占禁止法の遵守についての国家規制(第15条)

 事業主体からの申請及び反独占委員会の事前承認により,以下の行為に規制が課される。
(ア) 人物(人的集合)による,所有資産の議決付き株式の35%を超える取得。これは,金融・産業集団又は持株会社を除く事業主体の創立時の発起人には適用されない。
(イ) 人物(人的集合)による,事業主体の企業活動を決定することができる権利の獲得(例:合意、契約、役員会の運営等の手段による)。
 人物の総資産が法定最低賃金額の4,000倍を超える場合,又は人物の一人が独占的地位を占めるものとして国家登録・監督下におかれている事業主体に属する場合にも,株式の取得等の行為を行うに当たり,反独占委員会の事前承認が必要となる。
 申請人は反独占委員会に承認を得るための申請書を提出し,審決を下すのに必要な情報を提供しなければならない。
 競争が制限される行為であっても,事業主体が当該行為のプラスの効果(取引条件の改善,商品の競争力強化、需要者への相当の利益等)がマイナスの効果を上回ることを証明すれば,反独占委員会は申請に承認する権利を有する。
 総資産が法定最低賃金額の2,000倍を超える事業主体,同じ商品群に登録されている事業主体,又は同じ製品のさまざまな製造段階あるいは流通過程に存在する事業主体の複数の役員会に対して,自然人が参加している場合,当該人物はそれらの事業主体の複数の役員会メンバーとなった日から15日以内に,反独占委員会に届出を行う。
 既に行われた行為であって,本条の規定を侵害し独占的地位の強化や競争の制限につながるものがあれば,反独占委員会はその行為を無効とみなすことができる。

ウ 事業主体の強制分割(第16条)

 企業活動を行う事業主体が支配的地位を占め,独占禁止法に違反した場合,競争を促進するために,反独占委員会は裁判所に対して,当該事業主体の強制分割,又は1あるいは複数の法人組織の分離を要求する権限を有する。
 事業主体の強制分割(分離)の措置は,次の状態に合致した場合,行うことができる。
(ア) その組織の構造上,組織的,地域的に分離することが可能であること。
(イ) その組織間に密接な技術的関連性がないこと。
(ウ) 再編成の結果,個々の法人が各商品市場で独立して経営できること。

4 法執行手続

(1)制裁規定(第18条)

 反独占委員会は,事業主体又は政府機関の以下の独占禁止法違反行為に対して制裁金を課すことができる。
(ア) 違反行為の撤廃・当初ルールの回復・契約の破棄等に関する命令を実施しなかったり,遅延して実施した場合

  •  法人は法定最低賃金額の100倍から500倍までの制裁金
  •  自然人は法定最低賃金額の5倍から7倍までの制裁金

(イ) 反独占委員会に情報を提供しなかったり,明らかに虚偽の情報を提供した場合

  •  法人は法定最低賃金額の40倍から50倍までの制裁金
  •  自然人は法定最低賃金額の5倍から7倍までの制裁金

 制裁金は,決定通知を受けた時点から30日以内に支払われなくてはならない。制裁金は国庫に納付される。
 制裁金を期限内に支払うことにより事業主体又は国営企業が破産するおそれがあると認める場合は,反独占委員会又は裁判所は,制裁金を分割払いする機会を与える権限を有する。
 制裁金の支払いは,反独占委員会の審決事項の履行義務を免除するものではない。

(2)損害賠償規定(第19条)

 反独占委員会を含む政府機関による独占禁止法違反行為が,事業主体あるいは他の人物に損失を与えた場合,その損失は独占禁止法に基づき補償される。事業主体の行為が独占禁止法に違反し,他の事業主体あるいは他の人物に損失を与えた場合,その損失は独占禁止法に基づき、違反した事業主体が補償する。

(3)審査処理規定

 反独占委員会は,その権限の範囲内で独占禁止法違反事実を審査し,審決を出す。独占禁止法違反事件は,反独占委員会の独自の調査,又は,事業主体・政府機関・検察官からの申請に基づき審査される(第20条)。
 審査処理手続は,ウズベキスタン共和国の内閣により決定される。反独占委員会による審決は,それを出した日から5日以内に,関係者に書面にて通知される(第21条)。

(4)不服申立規定(第23条)

 反独占委員会の審決に対して不服のある事業主体又は政府機関は,裁判所に対してその審決の全部又は一部の無効若しくは制裁金の取消し又は変更を申し立てる権利を有する。

(5)公共による独占禁止法の監督(第24条)

 公益団体は,その与えられた任務に基づき,競争促進・消費者利益の保護のため,他の適切な団体と共同して,独占禁止法の監督を行う権利を有する。
 

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