ベネズエラ(Venezuela)

最新の情報については,当局ウェブサイトを御確認ください。
※ 以下の概要については,作成時期が古く,その後更新は行っておりませんので,その旨御留意ください。

1 根拠法

(1)根拠法

 ベネズエラの競争法は,自由な競争の実践を促進及び保護するための法律(Ley para Promover y Proteger el Ejercicio de la Libre Competencia,1992年1月13日付け官報第34880号掲載)である(以下,自由競争促進法という)。本法は,自由な競争の実践及び生産者及び消費者の利益のための効率性を促進し保護すること,並びに,独占的及び寡占的行為及び行動,及びその他の自由な経済の享受を阻害する,制限する,歪曲する若しくは限定するおそれのある手段を禁止することを目的としている(第1条)。

(2)法適用範囲

 自由競争促進法は,国内において経済活動を行う自然人又は法人のすべてに対して適用される(第4条)。ただし,同法に基づいて共和国大統領が適用除外を定めることができるとされている(第18条)。

2 執行機関

(1)自由競争の促進及び保護監督庁

ア 概要

 ヴェネズエラの競争当局は,自由競争の促進及び保護監督庁(Superintendencia para la Promocion y Proteccion de la Libre Competencia)(以下,監督庁という)であり,組織的には勧業省に属し,自由な競争を阻害又は制限する行為の監視及び監督を行うために,職権により又は関係当事者の申立てに基づいて,手続に従って審理を行い,制裁的措置を課す(第19条,29条)。
 監督庁は,共和国大統領の任命に基づく長官1名及び副長官1名の下に置かれる(第21条)。両者とも,任期は4年で,再任は妨げられない(第22条)。監督庁は,違反行為の迅速な審理を行うために,審理室(Sala de Sustanciacion)を置くこととされている(第25条)。

イ 権限

 監督庁は,次のような職務を有する(第29条)。

  • 競争制限行為等を審査するために必要な調査を行うこと
  • 禁止行為の存否を決定し,差止措置や制裁的措置を命じること
  • 自由競争促進法の適用のために必要となる法規を,行政府に対して提案すること
  • 内部規則等の必要規程を定めること
  • 司法機関又は行政機関に求められた場合,意見を出すこと等

3 規制の概要

(1)禁止事項

 自由競争促進法では,自由な競争を阻害する,制限する,歪曲する,若しくは限定する行為,行動,合意,協定,契約若しくは決定の一般的禁止が定められ(第5条),さらに以下のような禁止行為が個別に定められている。

ア 市場参入又は存続の妨害行為(第6条)
イ 直接又は間接の取引拒絶行為(第7条)
ウ 生産,販売,技術開発又は投資の諸要素を操作するおそれのある競争制限行為(第8条)
エ 事業者団体の競争制限行為(第9条)
オ 合意,共同決定若しくは共同推奨,又は協調行動
 次のための,合意,共同決定若しくは共同推奨,又は協調行動が禁止される(第10条)。

  • 直接又は間接の,価格その他の取引条件の決定
  • 生産,流通,及び技術若しくは技術投資の開発の制限
  • 競争事業者間における市場分割
  • 取引関係における差別的取扱い
  • 抱き合わせ取引

カ 再販売価格制限契約及び拘束条件付き契約(第12条)
キ 市場支配的地位の濫用行為
 国内市場の全部又は一部において,一若しくは複数による,特に次のような支配的地位の濫用行為が禁止される(第13条)。

  • 価格その他の取引条件の差別的設定
  • 事業者若しくは消費者を侵害する,生産,流通,又は技術開発の不当な制限
  • 不当な供給拒絶
  • 取引関係における差別的取扱い
  • 抱き合わせ取引
  • その他同様の効果をもつ行為

ク 不正競争行為
 特に次のような不正競争行為によって競争事業者を排除するおそれのある競争戦略を展開することが禁止される(第17条)。

  • 欺まん的表示又は虚偽表示
  • 競争事業者の商品又は役務に関する虚偽の言明に基づいた販売促進
  • 贈賄,企業秘密の侵犯,及び商品の模倣

(2)企業集中規制

 経済集中は,その結果として,市場の全部又は一部において支配的地位を生じさせるか又は自由な競争の制限効果を生じさせる場合に禁止される(第11条)。

4 法執行手続

(1) 審査手続

 監督庁は,関係当事者の申立又は職権により,手続を開始する。違反行為が行われたと推定される場合には,監督庁長官は,適切な手続の開始を命じ,それが妥当な場合審理室を介して,事件の調査又は審理を開始する(第32条)。審理室は,次のような広範な権限を行使して,必要な審理を行う(第34条)。

  • いずれの関係者に対しても陳述を行うようにさせること
  • 関連しうる資料又は情報の提供をいかなる者に対しても求めること
  • 調査の過程で,帳簿及び帳簿書類を調べること
  • 全国紙を通じて,関係する情報を提供しうるいかなる者も召還すること

 審理室は,調査の過程で違反行為を構成しうる事実が現れた場合,被審人に対して,調査した事実を示し,被審人側の証拠及び主張を明らかにするための15日の期間を与えて,それぞれの行政審の開始を通知する(第36条)。当該期間の経過後,監督庁は30日以内に審決を下さなければならない(第37条)。

(2) 違反行為に対する措置

ア 行政上の措置

 行政上の制裁的措置は,監督庁の審決によって課されることになる(第43条)。監督庁は違反行為に対しては,次のことを行うことができる(第38条)。

  • 一定期間内の禁止行為の中止を命じること
  • 違反者に対して,一定の条件又は義務を課すこと
  • 禁止行為の効果の除去を命じること

 さらに,前述の禁止行為を行った者には,監督庁により,違反行為者の前事業年度の売上高の10%相当額から20%相当額までの制裁金が課される。なお,違反行為の繰り返しの場合には,制裁金は40%相当額まで引き上げられる(第49条)。
 それ以外の明示的でない違反行為に対しては,監督庁の判断により,違反行為の程度に応じて300万ボリーヴァルまでの制裁金が課される(第52条)。

イ 民事上の措置

 前述の禁止行為のうち,不正競争行為を除く禁止行為を原因又は目的としている法的行為等は,適用除外とされていない限り,絶対的無効とされる(第57条)。
 また,禁止行為により損害を被った者は,監督庁の審決確定後に,損害賠償請求の訴えを提起することができる(第55条)。

(3) 不服申立て

 監督庁の審決に対しては,45日以内に,相当する法律に従って,行政訴訟による不服申立てを行うことができる(第53条)。
 

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