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事業者団体とのオンライン会議「各地の商工会議所・商工会」

事業者団体とのオンライン会議「各地の商工会議所・商工会」

事業者団体とのオンライン会議「各地の商工会議所・商工会 -WEB会議システムを使って意見交換を再開-」

令和2年9月3日

 令和元年度は,36の商工会議所・商工会を訪問し意見交換をさせていただきました。今年度は,新型コロナウイルス感染症の発生により中断していましたが,9月から,WEB会議システムにより再開しました。今回は,新型コロナウイルス感染症発生後の足下の経済情勢についてお話を伺っています。我々からは中部事務所に寄せられた相談件数の推移を御紹介し,独占禁止法や下請法についての問題意識を投げかけます。一般に,経済情勢の厳しさが増せば優越的地位の濫用等への警戒が高まります。

中部経済の情勢

 意見交換に当たっては,差し当たり,令和2年4-6月期までの統計データを使って,中部地区の経済情勢について次のような整理をしてみました。今後,意見交換によって得られた知見や最新の統計データ等を用いて随時考察を加え,中部経済への理解を深めていきたいと考えています。(ここでは,東海地方は岐阜県,静岡県,愛知県,三重県。北陸地方は新潟県,富山県,石川県,福井県。)

  •  家計調査1によれば,令和2年4-6月期の消費支出2(前年同月比)は,東海地方ではマイナス10%,北陸地方ではマイナス17%。特に,選択的支出3が大幅に減少(東海地方ではマイナス20%,北陸地方ではマイナス30%)。ちなみに,基礎的支出4は小幅な減少に止まる(東海地方ではマイナス1%,北陸地方ではマイナス6%)。
  •  生産サイドの動きを製造工業稼働率指数5(全国)でみてみると,中部経済において相対的に大きなウェイトを占める輸送機械工業及び生産用機械工業で大きな落ち込み(令和2年6月の実績値は同年1月と比較してそれぞれ39%減,24%減)。その一方で,電子部品・デバイス工業や化学工業での低下幅は相対的に小さい(それぞれ6%減,14%減)。
  •  雇用に関しては,東海・北陸地方ともに,景気の先行的な指標とされる「新規求人数」6が目立った形で低下(令和2年4-6月期の新規求人数(前期比)は,東海地方,北陸地方ともにマイナス17%)。一方,完全失業者数7には大きな変化はみられない(東海地方では令和2年1-3月期17万人,4-6月期18万人。北陸地方ではともに6万人)。ただし,世界金融危機当時は,新規求人倍率が急落し,この後を追うような形で完全失業者数が大きく増加。
  •  勤め先収入8は,東海・北陸地方ともに4月及び5月は前年同月比プラスとなったが,6月はマイナスに転換。賞与が大幅に減少(東海地方ではマイナス9%,北陸地方ではマイナス21%)。一方,定期収入には大きな変化はみられない(東海地方ではプラス0.2%,北陸地方ではマイナス1%)。
  •  おおまかに言えば,消費の落ち込みを受けて生産活動が低下。そして,採用の手控えや賞与の抑制へとつながる。しかし,本格的な賃金・雇用調整には至っていないようだ。今後,雇用情勢はどのように推移していくのか。重要な時期に差し掛かろうとしているのではないだろうか。

1 [総務省]
2 二人以上の世帯。
3 支出弾力性が1.00以上の支出項目(贅沢品的なもの)[総務省]。二人以上の世帯。
4 支出弾力性が1.00未満の支出項目(必需品的なもの)[総務省]。二人以上の世帯。
5 総合季節調整済指数[経済産業省]。
6 一般職業紹介状況(職業安定業務統計)[厚生労働省]。季節調整値。
7 労働力調査[総務省]。季節調整値。
8 家計調査[総務省]。二人以上の世帯のうち勤労者世帯。

中小企業の廃業

 中部経済の今後の見通しについては,中小企業の廃業の動向に十分注意を払う必要があると考えています。

 まず,中小企業は中部経済においても大きな位置を占めています。中小企業庁の統計9によれば,東海地方には中小企業が約45万者あり,そこでは約400万人の従業員が生計を営んでいます。また,北陸地方でも中小企業数が約18万者,従業員数は約150万人となっています。東海・北陸地方では従業員全体の約8割が中小企業で従事していることになります。

 そして,中小企業の課題として,経営者の高齢化が従来から提起されてきました。改めて,東海・北陸地方の個人経営事業所(製造業)の事業主の年齢についてみてみました10。70歳以上の占める割合は,東海地方では平成20年には3割強でしたが,平成30年になると5割弱まで上昇しています。北陸地方では3割弱から5割超へと倍増しています。

 こうした経営者の高齢化により廃業が従来よりも生じやすくなっています。「中小企業白書」(2014年版)によれば,廃業した中小企業経営者がその可能性を感じたきっかけとして,「経営者の高齢化,健康(体力・気力)の問題」が全体の約4割を占めています。この次に多かったのは「売上の減少」(約3割)です。また,経営者が廃業を決断した理由については,「経営者の高齢化,健康(体力・気力)の問題」が約5割を占め,「事業の先行きに対する不安」(約1割)がこれに続いています。そして,廃業を決断するときに心配したこととして,経営者の約4割が「顧客や販売・受注先への影響」をあげ,約2割が「従業員の失業」としています。

 高齢の中小企業経営者の方々は,今回の新型コロナウイルス感染症の発生のもとで,事業の存続を含め今後の企業経営についてどのように考えていらっしゃるのでしょうか。廃業ラッシュとはならないと考えてもいいのでしょうか。中部経済の行方を左右する重要なポイントではないかと思われます。

 ちなみに,株式会社東京商工リサーチが公表した『「廃業に関するアンケート」調査(速報)』(2020年8月3日)によれば,『「新型コロナ」終息が長引くと「廃業を検討する可能性がある」と回答した中小企業の割合が7.7%にのぼった。』とのことです。そして,『廃業検討の可能性を示した中小企業のうち,廃棄時期を「1年以内」とした回答が約半数(45.1%)を占めた。』としています。

 

  9 都道府県・大都市別企業数,常用雇用者数,従業者数(民営,非一次産業,2016年)。
10 個人企業経済調査[総務省]。

新しいコミュニケーション手段

 商工会議所・商工会は中小企業等を会員とし,これら企業に寄り添いながら支援に当たっておられます。本件の場合,従来であれば,訪問の上お時間をいただきたい旨打診していたと思います。メールや電話によるやりとりだけでは十分な意見交換は難しいのではないかと考えられるからです。今回はWEB会議の開催をお願いしました。果たして,コミュニケーション手段の選択肢をもう一つ増やすことができるのか,その可能性も探求していきたいと考えています。

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