専門家の方々とのオンライン会議「日本公認会計士協会 東海会に対するWEB下請法研修会 -公認会計士から親事業者に対する下請法コンプライアンスの督励のために-」
令和3年2月15日
公正取引委員会中部事務所は,2月3日,日本公認会計士協会 東海会(以下「東海会」といいます。)に所属する公認会計士のうち,有志の方に対して下請法の研修会を行いました。
当日は,中部事務所の職員が東海会の事務局を訪問し,東海会のWEB研修システムを利用して研修を行いました。
研修会には30名ほどの公認会計士の方に御登録・御参加いただき,講師から70分程度説明を行った後,質疑応答を行いました。
このWEB下請法研修会の開催に至った経緯等を紹介します。
公認会計士との協力関係の必要性について
いうまでもなく,下請法で定められているルールがきちんと守られることが何よりです。
しかし,下請法違反被疑事件の処理件数は年々増加傾向にあり,最近5年間の状況(全国)は下表のとおりとなっています。
H27年度 |
H28年度 |
H29年度 |
H30年度 |
H31・ |
|
勧告・指導の |
5,984 |
6,313 |
6,761 |
7,717 |
8,023 |
下請法違反の未然防止のためには,親事業者自らコンプライアンス(法令等遵守)の強化に取り組むことが重要であると認識しています。公正取引委員会(中部事務所)では下請法講習会の開催や事業者団体の研修会への講師派遣等により支援に当たっています。
この点については,さらに,事業者の周りの専門家の中には事業者(親事業者)のコンプライアンス強化に関与している方々がいらっしゃいます。こうした専門家から下請法についても遵守徹底を督励していただくことができれば大変効果的ではないかと考えています。
ところで,公認会計士は,公認会計士法において,その使命として,監査及び会計の専門家として,独立した立場において,会社等の公正な事業活動,投資者及び債権者の保護等を図る旨が規定されています。
このように,公認会計士は,親事業者に対して独立した立場から,その公正な事業活動に関与することになっており,親事業者への下請法コンプライアンスの促し・助言という観点から御協力をいただくことはできないかと考えました。
中部事務所のこのような認識を東海会にお伝えしたところ,幸いにも東海会から御理解をいただくことができました。
そして,まずは東海会に所属する公認会計士に下請法について理解を深めていただくため研修会を行うこととなったものです。
研修会当日は,下請法の制定の経緯,適用範囲,親事業者の義務・禁止事項につき,具体例を交えながら70分程度の説明を行いましたが,中でも,下請法の適用範囲についての説明に時間を多く割きました。
その理由は,公認会計士が監査対象の企業に下請法コンプライアンスの促し・助言を行うに当たり,当該企業が行っている取引が,下請法の適用対象に該当するか否かの見極めが重要となるためです。
特に,製造業が盛んな東海地方において活躍する東海会の公認会計士には,下請法の製造委託の箇所について正確な知識を持っていただく必要があるため,重点的に説明を行ったものです。
また,親事業者の禁止事項については,たとえ下請事業者の了解を得ていても,下請事業者の責めに帰すべき事由がない限りは,これらの規定に触れるときには違反となるというポイントも繰り返し説明しました。
公認会計士は,法令により一事業年度につき40単位以上の研修受講が必要とされていますが,今回の研修に先立ち東海会の御担当者からお聞きしたところによれば,今回の下請法の研修は,法令に基づく研修のうちの任意科目の1つに位置付けられるものとなるとのことです。
また,研修の最後には,受講者に対し,親事業者向けの下請法違反発見チェックシートの配布を依頼しました。
これは,監査対象の企業が下請取引を行う親事業者である場合に,公認会計士が当該親事業者にコンプライアンス活動を促すために用いる資料であり,中部事務所管内で多く発生している下請法違反行為(違反が特に多い6つの行為)をまとめたものです。
このページをお読みの方の中には,公認会計士,親事業者の役員・従業員の方もいらっしゃると思いますので,下のリンク先をクリックし,是非このチェックシートを利用して,自主点検いただければと思います。
そして,下請法上の問題点が見つかれば,速やかな自主改善をお願いいたします。
・下請法違反発見チェックシートへのリンク
https://www.jftc.go.jp/regional_office/chubu/shitauke_checksheets.html
※ このリンク先には,下請事業者向けのチェックシートも掲載しています。下請事業者の方も是非クリックをしてみてください。
今後の活動予定
今後は,今回受講いただけなかった東海会の公認会計士の方々にも下請法研修を是非受講していただくようお願いするとともに,公認会計士が親事業者にコンプライアンスの促し・助言をした結果,実際に親事業者が自主点検・自主改善を図ったという優良事例の収集とその紹介等を行いたいと考えています。
このような活動を通じ,公認会計士による下請法コンプライアンスの促し・助言,そして親事業者による自主点検・自主改善という枠組みが継続するよう努めていきたいと考えています。
関連ファイル
(本文)「日本公認会計士協会 東海会に対するWEB下請法研修会 -公認会計士から親事業者に対する下請法コンプライアンスの督励のために-」(PDF:156KB)