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下請法 知っておきたい豆情報 その15

下請法 知っておきたい豆情報 その15

下請法 知っておきたい豆情報 その15

【不当なやり直しの禁止について】

 Q 下請法では「不当なやり直し」を禁止していると聞いています。しかし、どのような場合が「不当なやり直し」となるのかよく分かりません。具体例をいくつか教えてください。

 A 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、親事業者が、下請事業者の給付の受領後に給付のやり直しをさせることにより、下請事業者の利益を不当に害すると本法違反となります。

  ※「不当なやり直し」と同じ条文(下請法 第4条第2項第4号)で「不当な給付内容の変更」も規定されていますので、こちらも一緒に解説します。

    どっきんの画像    

 

不当なやり直しの禁止について

 第4条第2項 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあっては、第1号を除く。)に掲げる行為をすることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
  
  四  下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。

●この規定が設けられたねらい
 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、親事業者が下請事業者に対して、費用を負担せずに(=下請事業者の負担で)給付の内容の変更を行い、又はやり直しをさせることは、下請事業者に当初委託された内容からすれば必要ない作業を行わせることとなり、それにより下請事業者の利益が損なわれるので、これを防止するためです。

●「下請事業者の責に帰すべき理由」がある場合とは
 「下請事業者の責めに帰すべき理由」があるとして、親事業者が費用を全く負担することなく、下請事業者に対して「給付の内容の変更」又は「やり直し」をさせることが認められるのは、以下の場合に限られます。
 (ア) 給付を受領する前に、下請事業者の要請により給付の内容を変更する場合
 (イ) 給付を受領する前に下請事業者の給付の内容を確認したところ、受領する前の時点において、給付の内容が3条書面に明記された委託内容とは異なるであろうこと又は下請事業者の給付に瑕疵等が生じるであろうことが明らかなことから、給付の内容を変更させる場合
 (ウ) 下請事業者の給付の受領後、下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なるため又は下請事業者の給付に瑕疵等があるため、やり直しをさせる場合

●「不当なやり直し」の具体例
 ・親事業者が、定期的に放送されるテレビCMの作成を下請事業者に委託したところ、完成品が納入された後、完成品が3条書面に明記された委託内容とは異なっておらず、瑕疵等はなかったのにもかかわらず、放映されたテレビCMを見た広告主の担当役員から修正するよう指示があったことを理由として、親事業者は、下請事業者に対して、いったん広告主の担当まで了解を得て納入されたテレビCMについて修正を行わせ、それに要した追加費用を負担しなかった。
 ・親事業者は、ダイレクトメールの封入等を委託するに当たり、下請事業者に十分な説明をしないまま作業を行わせ、後日、自社の都合で作業のやり直しをさせたにもかかわらず、変更に要した費用を負担しなかった。
 ・親事業者は、下請事業者に対して金型の製造を委託しているところ、従来の基準では合格していた金型について、検査基準を一方的に変更し、下請事業者に無償でやり直しを求めた。

●「不当な給付内容の変更」の具体例
 ・親事業者は、下請事業者に対してデザインの作成を委託したところ、親事業者の担当者が人事異動により交代し、新しい担当者の指示により委託内容が変更され追加の作業が発生したが、それに要した追加費用を負担しなかった。
 ・親事業者は、広告物の制作等を下請事業者に委託しているところ、販売予測の見込み違いを理由に発注内容の変更を行ったが、下請事業者が当該発注内容の変更のために要した費用を全額負担しなかった。
 ・親事業者は、貨物の運送等を委託していた下請事業者に対して、取引先からの発注内容の変更を理由として、下請事業者に対する発注内容を変更したが、下請事業者が当該発注内容の変更のために要した費用を全額負担しなかった。


どっきんの画像

 さて、「下請法 知っておきたい豆情報」は、第1回から第15回(今回)にわたり、下請法が規定している親事業者の義務と禁止事項について紹介してきました。
 下請法第4条の親事業者の禁止事項は全部で11項目ありますが、その中に「報復措置の禁止」という項目があります。これは、下請事業者が親事業者の本法違反行為を公正取引委員会等に知らせたことを理由として、親事業者がその下請事業者に対して取引数量を減じたり、取引を停止したり、その他不利益な取扱いをすることを禁止するものです。
 親事業者は、下請事業者に対し報復措置を行うことがないよう、また、下請法に違反する行為を行わないよう十分に注意してください。

 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。

七 親事業者が第1号若しくは第2号に掲げる行為をしている場合若しくは第3号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。

 今回をもちまして「下請法 知っておきたい豆情報」の連載は終了します。御覧いただきありがとうございました。  今後とも下請法のコンプライアンスをよろしくお願いいたします。また、下請法に関する相談・質問は、中部事務所下請課(電話:052-961-9424)までお気軽にお問い合わせください。

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