下請法 知っておきたい豆情報 その9
【受領拒否の禁止について】
Q 当社は精密機械の販売を行っており,その部品の製造を下請事業者に委託しています。当社が得意先から受注した精密機械について,昨日,納期を3か月延期するように要請がありました。これに伴い,当社も下請事業者に対し,部品の納期を3か月先にするよう連絡しようかと思っています。下請法の観点から注意すべき点はありますか?
A 親事業者が下請事業者に対して委託をした場合,親事業者は,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに下請事業者の給付(この場合は製造委託した部品)の受領を拒むと下請法違反となります。納期に受け取らない場合のみならず,納期を延期する場合(将来的には受け取る意思がある場合)も同様に「受領を拒むこと」に該当します。
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受領拒否の禁止について
第4条第1項 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号及び第4号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
(受領拒否の禁止)
一 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに,下請事業者の給付の受領を拒むこと。
親事業者は,下請事業者に発注した際には発注時に約束した取引条件等を誠実に履行することが必要です。あらかじめ定められた納期に親事業者が受け取らない場合(納期を延期する場合を含む。)は,下請事業者の利益が著しく損なわれるので,これを防止するため受領拒否の規定が設けられています。
●「給付の受領」とは,製造委託の場合であれば,給付の内容について検査をするかどうかを問わず,親事業者が下請事業者の給付の目的物を受け取り,自己の占有下に置くことです。
●「受領を拒む」とは,下請事業者の給付の全部又は一部を納期に受け取らないことですが,それ以外に,以下の行為も含まれます。
・発注を取り消すこと(契約の解除)により,下請事業者の給付の全部又は一部を発注時に定められた納期に受け取らないこと
・納期を延期することにより,下請事業者の給付の全部又は一部を発注時に定められた納期に受け取らないこと(納期を延期する期間の長短にかかわらない。)
●「下請事業者の責めに帰すべき理由」があるとして,下請事業者の給付の受領を拒むことができるのは以下の場合に限られ,いずれの場合も,親事業者が交付している「3条書面」(注)に委託内容や納期が明記されていることが前提になります。
・下請事業者の給付の内容が3条書面に明記された委託内容と異なる場合又は下請事業者の給付に瑕疵(かし)等がある場合(→したがって,3条書面に委託内容が明確に記載されていなかったために,下請事業者の給付の内容が委託内容と異なることが明らかでない場合には,それを理由に受領を拒むことは認められません。)
・下請事業者の給付が,3条書面に明記された納期までに行われなかったため,そのものが不要になった場合(→したがって,3条書面に納期が明記されておらず,納期遅れであることが明らかでない場合には,納期遅れを理由として受領を拒むことは認められません。)
(注)3条書面とは,下請法第3条の規定に基づき,親事業者が下請事業者に対して,発注時に交付しなければならない書面のこと。より詳しく知りたい方は,下請法の運用基準(第4-1 受領拒否)(クリックで詳細情報へ移動します。)をご覧ください。