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下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項

下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項

平成13年3月30日
公正取引委員会
改正:平成22年1月1日
改正:平成23年6月23日
改正:令和元年5月14日
改正:令和5年12月25日

 平成12年11月に成立した「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」によって下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)が改正された(平成13年4月1日施行)。この改正に伴い、「下請代金支払遅延等防止法施行令」を制定するとともに、「下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則」及び「下請代金支払遅延等防止法第5条の書類の作成及び保存に関する規則」を改正したところである。
 今般の下請法の改正に伴い、下請法第3条第1項の書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うことが可能となるなど、下請法の適用を受ける取引(以下「下請取引」という。)において情報通信の技術を利用した受注及び発注(以下「電子受発注」という。)ができることが下請法上明確になったことから、下請取引において電子受発注が活用されることが予想されるところである。このため、下請法第3条第1項の書面の交付に代えて行うことができる電磁的記録の提供の方法に関する留意事項を取りまとめた。
 また、例えば、親事業者が下請事業者に一方的に電子受発注を押し付けたり、親事業者から下請事業者に不当な費用負担を押し付けられるのではないかとの懸念がある。このため、電子受発注に伴って、下請事業者の利益を害するような行為その他下請法の趣旨に反する行為が行われることのないよう、下請法及び独占禁止法上の留意事項を取りまとめた。
 なお、本留意事項の策定に伴い、「親事業者が磁気記録媒体等の交付等によって発注を行う場合及び下請取引の経緯を磁気記録媒体等に記録し保存する場合の指導方針について」(昭和60年12月25日取引部長通知)は廃止する。

第1 電磁的記録の提供の方法に関する留意事項

1 電磁的記録の提供の方法

 下請法第3条第1項の書面の交付に代えて行うことができる電磁的記録の提供の方法は、以下のいずれかの方法であって、下請事業者がファイルへの記録を出力することによって書面を作成することができるものをいう。

(1) 電気通信回線を通じて送信し、下請事業者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル(以下「下請事業者のファイル」という。)に記録する方法(例えば、電子メール、取引データをまとめてファイルとして一括送信する方法(EDI等)、電磁的記録をファイルに記録する機能を有するファックス等に送信する方法等)
 (注1)受信と同時に書面により出力されるファックスへ送信する方法は、書面の交付に該当する。
 (注2)電子計算機とは、内部にCPU(中央演算装置)やメモリーを有し、電気通信回線を通じて電磁的記録を受信できるものをいう。

(2) 電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し、当該下請事業者のファイルに記録する方法(例えば、ウェッブのホームページを利用する方法等)

(3) 下請事業者に電磁的記録媒体(電磁的記録に係る記録媒体をいう。)を交付する方法

2 電子メール等による電磁的記録の提供に係る留意事項

(1) 書面の交付に代えて電子メールにより電磁的記録の提供を行う場合は、下請事業者の使用に係るメールボックスに送信しただけでは提供したとはいえず、下請事業者がメールを自己の使用に係る電子計算機に記録しなければ提供したことにはならない。例えば、通常の電子メールであれば、少なくとも、下請事業者が当該メールを受信していることが必要となる。また、携帯電話に電子メールを送信する方法は、電磁的記録が下請事業者のファイルに記録されないので、下請法で認められる電磁的記録の提供に該当しない。

(2) 書面の交付に代えてウェブのホームページを閲覧させる場合は、下請事業者がブラウザ等で閲覧しただけでは、下請事業者のファイルに記録したことにはならず、下請事業者が閲覧した事項について、別途、電子メールで送信するか、ホームページにダウンロード機能を持たせるなどして下請事業者のファイルに記録できるような方策等の対応が必要となる。

第2 下請取引における電子受発注に伴う下請法及び独占禁止法上の留意事項

1 下請事業者の承諾
 親事業者が書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行う場合、事前に、下請事業者の承諾を得ることが必要となるが、親事業者が下請事業者に対して、承諾しない場合には、取引の数量を減じ、取引を停止し、取引の条件又は実施について不利益な取扱いをすること等を示唆するなど承諾を余儀なくさせることも懸念される。このような場合には、下請法及び独占禁止法上の問題が生じ得ることから、下請事業者の承諾を得るに当たっては、費用負担の内容、電磁的記録の提供を受けない旨の申出を行うことができることも併せて提示することが必要となる。
 なお、親事業者が今後の下請取引について書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うことを下請事業者から一括して承諾を得た場合には、製造委託又は修理委託をする都度承諾を得る必要はない。

2 費用負担

(1) 電磁的記録の提供に係るシステム開発費等
 親事業者が下請事業者に電磁的記録の提供を行うため、システム開発費等親事業者が負担すべき費用を下請事業者に負担させることは、下請法第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)又は独占禁止法第19条(同法第二条第九項第五号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし、下請事業者の利用に応じて追加的に発生する費用については、下請事業者が得る利益の範囲内での負担を求めることはこの限りでない。

(2) 電子情報機器等の購入等
 下請事業者が電磁的記録の提供を受けるために必要な通信機器、電子計算機等の機器、ソフトウェア等を購入することやインターネットプロバイダ、システムサービス事業者等からの役務の提供を受けることとなっても、親事業者が下請事業者に対して、書面の交付に代えて電磁的記録の提供を求めること自体は、直ちに、下請法又は独占禁止法上問題となるものではない。しかしながら、親事業者が下請事業者に対して、次のような行為を行う場合は、下請法第4条第1項第6号(購入強制の禁止)又は独占禁止法第19条(同法第二条第九項第五号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。

ア 正当な理由がないのに、自己の指定する通信機器、電子計算機等の機器、ソフトウェア等を購入させ、又は自己の指定するインターネットプロバイダ、システムサービス事業者等からの役務の提供を受けさせること。

イ 親事業者が提供するシステムの一部の機能しか下請事業者が利用しないにもかかわらず、そのほとんどの機能を利用することを前提とした費用の負担を求めること

(3) 通信費用等の負担
 親事業者が下請事業者に書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うために要する通信費用を下請代金から減額するなどして下請事業者に負担させることは、下請法第4条第1項第3号(減額の禁止)又は独占禁止法第19条(同法第二条第九項第五号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。ただし、下請事業者が親事業者から送信された電磁的記録を受信するために要する通信費用について、あらかじめ下請事業者の承諾を受けたときは、この限りでない。

3 電磁的記録の提供を承諾しない下請事業者等への不利益な取扱い
 書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うことを承諾しない下請事業者又は書面の交付に代えて電磁的記録の提供を受けない旨の申出をした下請事業者に対し、正常な商慣習に照らして不当に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施する場合には、独占禁止法第19条(同法第二条第九項第五号 優越的地位の濫用)に違反するおそれがある。

4 電磁的記録の提供を行うことができなかったときの措置
 親事業者がシステムの故障等により下請事業者に対して、直ちに書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うことができない場合は、当該下請事業者に書面を交付する必要がある。また、親事業者が書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うに当たって、電磁的記録を送信し又は下請事業者が閲覧した場合であっても、下請事業者のファイルに記録されなかったときは、下請法第3条に違反することとなるので、親事業者において下請事業者のファイルに記録されたか否かを確認することが必要となる。
 また、書面の交付に代えて電磁的記録の提供を行うに当たって、当該電磁的記録が下請事業者のファイルに記録されなかった場合において、下請事業者が納期までに納品できないこと等を理由に、受領を拒否したり、下請代金を減じることは、下請法第4条第1項第1号(受領拒否の禁止)及び第3号(減額の禁止)に違反する。

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