独占禁止政策協力委員会議で出された主な意見について

平成21年7月15日
公正取引委員会

 公正取引委員会は,平成11年度から,各地域の経済実態等に通じた有識者150名を独占禁止政策協力委員として委嘱している。
 今般,平成21年5月29日から同年6月12日までの間,地域ブロックごとに独占禁止政策協力委員会議が開催された(開催状況は別紙1のとおり)。同会議において,独占禁止政策協力委員から競争政策や独占禁止法等の運用に関して出された主な意見等の概要は,別紙2のとおりである。
 なお,主な意見等を集約すると,以下のとおりである。

1 独占禁止法改正関係

  •  入札談合やカルテル等の違反事件を減らしていくために,抑止力を高めていくことが必要である。(北海道,関東)
  •  今回の法改正において,EU型制裁金制度(※違反企業の全世界の売上高の10%を上限として裁量で制裁金を課す制度)のように公正取引委員会の裁量により課徴金を増減することができたり,課徴金減免制度についても貢献度に応じて減免するといった仕組みが導入されれば良かったのではと考える。
     また、今後の課題として,課徴金算定率の更なる引上げを検討していく必要があると思う。(中部,中国)
  •  独占禁止法が改正され,不当廉売や優越的地位の濫用といった不公正な取引方法について,課徴金が課せられるようになったことから,運用方針において違反の判断基準を明確にしてもらいたい。(東北,近畿)

2 独占禁止法関係

  •  今回の独占禁止法改正により新たに導入された不当廉売に対する課徴金制度の下,今後,当該行為の規制に当たっては,事業者間の競争の活力を削がないような形で運用されるということが重要であると考える。(九州)
  •  高知市内のガソリンの価格は,公正取引委員会が不当廉売として警告して以降,高止まりしているが,カルテルといった問題もあり得るのではないか。(四国)

3 中小企業問題・公正な取引慣行の促進

 ○ 下請法違反行為等の中小企業問題について引き続き監視の目を光らせて厳正な対応を行ってほしい。(東北,関東,近畿,九州)

4 不当表示の規制等・消費者問題への対応

 ○ 景品表示法違反に係る調査については,消費者庁設置後も公正取引委員会の地方事務所において行うとのことなので,消費者庁と連携を密にして,円滑に業務を行ってほしい。(近畿)

5 広報

  •  広報用DVDは分かりやすいので広く配布すれば良いと考える。(中部)
  •  独占禁止法相談ネットワークにより全国の商工会議所,商工会と公正取引委員会とのネットワークを作っているのは,大変良いことだと思う。中小零細企業の声をどのように吸い上げるのかについて,一層の工夫を期待する。(近畿)
  •  中学生向けの独占禁止法教室で教材にしているパンフレットは,一般消費者にとっても独占禁止法等の仕組みが容易に理解できるなどとても良い教材である。
     量販店の店頭に置いておくなど,消費者向けにもPRして競争政策の啓蒙を図っていただきたい。(九州)

6 公正取引委員会の組織・体制

  •  今後,公正取引委員会の役割はますます大きくなっていくと思うので,増員して厳しく監視してもらいたい。(関東)
  •  審判制度の抜本的な見直しは,公正取引委員会の独立性を損なうのではないか。(関東)
  •  公正取引委員会の定員は,まだ十分ではない。公正取引委員会は経済の番人とも呼ばれており,一定の人数が配置されなければ,独占禁止法等の運用が不十分となる場面が多々出てくると思う。(中国)

7 その他

 ○ 冷蔵庫の断熱材のリサイクル表示に関する不当表示事件等,消費者では内容が分からないものもあるので,措置後,企業のコンプライアンス体制をそのまま信じるのではなく,追跡調査を行ってもらいたい。(関東)

別紙1 平成21年度の独占禁止政策協力委員会議の開催状況

地区 開催日 主催者 出席協力委員(定員)
北海道(札幌) 6月4日(木曜) 神垣委員 5名(6名)
東北(盛岡) 6月2日(火曜) 神垣委員 14名(18名)
関東 甲信越(東京) 5月29日(金曜) 竹島委員長 23名(32名)
中部(名古屋) 6月3日(水曜) 濱崎委員 15名(19名)
近畿(大阪) 6月4日(木曜) 濱崎委員 14名(23名)
中国(広島) 6月4日(木曜) 浜田委員 13名(15名)
四国(高松) 6月2日(火曜) 後藤委員 9名(12名)
九州(福岡) 6月5日(金曜) 浜田委員 18名(22名)
沖縄(那覇) 6月12日(金曜) 松山事務総長 3名(3名)
123名(150名)

別紙2 第1 北海道ブロック(札幌市)

1 独占禁止法改正関係

 ・ 入札談合やカルテルは根絶されなければならないものであり,抑止力を高めるためには,更なる厳罰化が必要である。

2 中小企業問題・公正な取引慣行の促進

  •  公共工事の減少により地元建設業者が疲弊しているところ,本州の大手業者による安値受注に対抗することができず,地元建設業者が更に衰退している状況である。競争入札の原則は分かるが,地元業者育成の観点から,優先発注や予定価格に対する適正な利益が確保されるよう配慮することはできないか。
  •  地元業者の育成強化のためには,道外業者を外して入札を行うのも一つの方法かと思うが,このような場合にはどのような問題があるのか。

3 不当表示の規制等・消費者問題への対応

  •  健康食品等において,注意書き表示の文字が余りに小さいものが見受けられるが,注意表示さえしておけば景品表示法上問題にならないという認識を事業者が持っているのではないかと懸念している。
  •  食品添加物に関する表示が一切ないにもかかわらず,実際には食品添加物が含まれているような場合には,景品表示法上問題とならないのか。

4 広報

 ・ 公正取引委員会の知名度を更に上げるためには,公表文等の記載がより分かりやすくなるよう工夫することも必要ではないか。

5 その他

 ・ 消費者庁の全体像がいまだにつかめない状況にあり,北海道のような広域の地方の住民にとっては,政府がきちんと事情を把握し対応してくれるかどうか不安である。

第2 東北ブロック(盛岡市)

1 独占禁止法改正関係

  •  独占禁止法が改正され,優越的地位の濫用についても課徴金が課せられるようになるが,優越的地位の濫用については様々な学説があるので,公正取引委員会の運用方針を早く明確にしてもらいたい。
  •  今回の独占禁止法の改正は,審判制度の見直しを避けて厳罰化のみ行っているが,これはいかがなものかと思う。

2 独占禁止法関係

 ・ 独占禁止法等のガイドラインは非常に分かりやすく記載されていると思う。

3 中小企業問題・公正な取引慣行の促進

 ・ 中核都市の公共入札では,ダンピングが横行しており,そのしわ寄せを孫請事業者などが受けている。公正取引委員会は,下請事業者だけでなく孫請事業者の実態も調べるべきではないか。

4 不当表示の規制等・消費者問題への対応

 ・ 消費者庁が発足しても,地方自治体に配分される消費者関連予算が少ないと折角の新しい消費者行政システムが機能しないのではないか。

5 広報

 ・ 公正取引委員会に対して電話で意見を言うことは,一般消費者にとっては難しい。市役所などに目安箱のようなものを設置してはどうか。

6 公益事業・規制改革

 ・ 最近は,一般競争入札が正しいという風潮があるが,必ずしも一般競争入札がすべて良いわけではないと思う。

第3 関東甲信越ブロック(東京都)

1 独占禁止法改正関係

 ・ 罰則が重くならないと違反事件はなくなっていかないので,課徴金についても割に合わないというものにしてもらいたい。

2 独占禁止法関係

 ・ 不当廉売については,安いからということだけで動くべきではなく,競争事業者を追い出して,値上げなどして利益を回収するという段階で問題にしても遅くはないのではないか。安く販売したから問題だとするのは,経済学的にはおかしいと思う。

3 中小企業問題・公正な取引慣行の促進

 ・ お菓子屋からは,メーカーやスーパーが大きくなることは困るので,公正取引委員会に期待しているという意見がある。下請法や優越的地位の濫用規制について,期待にこたえられるような運用をお願いしたい。

4 広報

 ・ 広報用DVDを消費者団体等に配布・貸出しを行っているということだが,商工会議所において独占禁止法に関する話題が皆無である。「税を考える週間」のように独占禁止法や景品表示法を考える期間が1週間から10日くらいあってもよいのではないか。

5 公正取引委員会の組織・体制

  •  今後,公正取引委員会の役割はますます大きくなっていくと思うので,増員して厳しく監視してもらいたい。
  •  審判制度の抜本的な見直しは,公正取引委員会の独立性を損なうのではないか。

6 その他

 ・ 冷蔵庫の断熱材のリサイクル表示の不当表示事件など,消費者では中身が分からないものもあるので,措置後,企業のコンプライアンス体制をそのまま信じるのではなく,追跡調査を行ってもらいたい。

第4 中部ブロック(名古屋市)

1 独占禁止法改正関係

 ・ 今回の法改正において,EU型制裁金制度(※違反企業の全世界の売上高の10%を上限として裁量で制裁金を課す制度)のように公正取引委員会の裁量により課徴金を増減することができる制度や公正取引委員会の審査に対する貢献度に応じて課徴金を減免するといった制度が導入されれば良かったのではないかと考える。

2 独占禁止法関係

  •  大手スーパーは納入業者に対して手伝い派遣や値引き,支払延期といった要請を行っているが,納入業者はなかなか苦情を言えないという状況にある。かかる状況を踏まえて,公正取引委員会は厳正に対処してほしい。
  •  国立大学など新たな独立行政法人化では独占禁止法のコンプライアンスの意識が十分ではない。

3 不当表示の規制等・消費者問題への対応

  •  消費者庁には大いに期待している。景品表示法,JAS法,食品衛生法等が総合的に機能するよう連携をお願いしたい。
  •  事業者の表示に対する認識として,公正取引協議会のインサイダーとアウトサイダーの差が激しい。アウトサイダーについては比較的規模の大きな事業者であっても適正表示に対する認識不足を感じる。

4 広報

  •  中学生向けの独占禁止法教室について,生徒に対して普及・啓発を行うことも良いが,教師に対して,公正取引委員会の役割等の生徒に必ず伝えてほしい部分を周知する取組をすることが良いのではないか。
  •  広報用DVDは分かりやすいので広く配布したら良いと考える。

第5 近畿ブロック(大阪市)

1 独占禁止法改正関係

  •  独占禁止法改正によって,不当廉売に係る規制が強化されている。どのような場合に違反となるのか,不当廉売の判断基準を示してほしい。
  •  独占禁止法改正によって,公正取引委員会は強い権限を持つことになるが,経済情勢が厳しい時期なので,事業の萎縮,妨げにならないような法運用をお願いしたい。

2 中小企業問題・公正な取引慣行の促進

 ・ 大企業においても昨年からの経済状況の激変の影響を大きく受けている状況下にあっては,下請法違反が発生し易い状況にあると思われるので,下請法違反行為への厳正な対応等,監視の目を光らせてほしい。

3 不当表示の規制等・消費者問題への対応

  •  景品表示法違反に係る調査については,地方事務所において行うとのことなので,消費者庁と連携を密にして,円滑に業務を行ってほしい。
  •  消費者は商品を購入する際,表示やブランドに頼って安心感を求める傾向にある。表示やブランドが実際と異なることになると,消費者が安心感を失うことにつながることから,表示については厳しく取り締まってほしい。

4 広報

  •  所属する商工会議所は,電機,自動車関係の下請,孫請事業者の会員が多い。昨年からの不況により,親事業者との取引が厳しいという話がこれら会員間の日常の会話の中から聞き取ることができる。公正取引委員会は商工会議所や商工会議所の会員との距離が縮まるような広報を行ってほしい。
  •  独占禁止法相談ネットワークにより全国の商工会議所,商工会と公正取引委員会とのネットワークを作っているのは,大変良いことだと思う。中小零細企業の声をどのように吸い上げるのかについて,一層の工夫を期待する。

5 公正取引委員会の組織・体制

 ・ 公正取引委員会における事件の取扱件数が増えている中,消費者庁ができるわけであるが,今後,公正取引委員会の人員がきちんと確保できるのか,これまで同様人員が純増していくのだろうかという懸念がある。

第6 中国ブロック(広島市)

1 独占禁止法改正関係

  •  課徴金の算定率は企業規模や業種といった客観的な指標に基づき一律に決められているが,違法行為の悪質性によって算定率に軽重の差を設けるべきである。国民生活に重大な影響を与えるような違法行為と,そこまでは言えないような違法行為について,中身の違いを考慮されずに一律の算定率が適用されるのは疑問だ。
  •  今後の課題として,課徴金算定率の更なる引上げや課徴金算定に当たって公正取引委員会に裁量を持たせる制度の導入等を検討していく必要があると思う。

2 独占禁止法関係

 ・ 公正取引委員会はベトナム等に対して技術研修を実施しているが,このような場を通じ,我が国の競争政策がアジアの中でスタンダードとなることを期待する。

3 不当表示の規制等・消費者問題への対応

 ・ 経済がグローバル化する中,表示の在り方について国際的な取組が大事である。

4 公正取引委員会の組織・体制

 ・ 公正取引委員会の定員は,まだ十分ではない。公正取引委員会は経済の番人とも呼ばれており,一定の人数が配置されなければ,独占禁止法等の運用が不十分となる場面が多々出てくると思う。

5 その他

 ・ 建設工事の入札における過度な価格競争について,何らかの歯止めができないものかと感じる。入札談合は良くないことだが,困っている分野には,何らかの激変緩和措置を講じることが必要ではないか。

第7 四国ブロック(高松市)

1 独占禁止法関係

  •  公正取引委員会が高知市内のガソリンスタンドの安売りを不当廉売として警告したために当該地域のガソリン価格が高くなってしまい,消費者にとって望ましくない事態となっているが,不当廉売となる基準を教えてほしい。
  •  公正取引委員会が四国管内においてホテルによる優越的地位の濫用行為に対し警告を行ったことは大変評価する。一方で,似たような行為は,程度の差はあれ社会的に多く見られることであり,具体的にどういった行為が優越的地位の濫用に当たるのか明確にしない限り,計画している行為が違法であるのかそうでないのかの判断が難しい。
  •  高知市内のガソリンの価格は,公正取引委員会が不当廉売として警告して以降,高止まりしているが,カルテルといった問題もあり得るのではないか。

2 公益事業・規制改革

  •  政府の経済対策により,この4月から高速道路料金が土日1,000円となったおかげで,高知県内への観光客が増え,商店街の売上げが伸びる等のメリットはあるが,この反面,高速道路と競合するフェリー業者は圧倒的に不利な条件となり事業の継続が難しいところもあると聞いている。競争政策上どのように考えられるか。
  •  政府の規制緩和により,数年前から,高知県内にも全国規模の大型量販店が参入し,この影響を受けて地元商店街は廃れてきている。競争政策により,何らかの対応はできないのか。

第8 九州ブロック(福岡市)

1 独占禁止法改正関係

 ・ 今回の独占禁止法改正により新たに導入された不当廉売に対する課徴金制度の下,今後,当該行為の規制に当たっては,事業者間の競争の活力を削がないような形で運用されていくということが重要であると考える。

2 中小企業問題・公正な取引慣行の促進

 ・ 北部九州は自動車産業が盛んな地域であり,最近においては,生産台数が戻ってきつつあるなど不況から脱してきている一方,下請業者に対する親事業者からの様々な圧力がかかっているとの声が聞こえてくる。公正取引委員会は,今後とも下請法の運用をより一層厳格に行ってもらいたい。

3 不当表示の規制等・消費者問題への対応

  •  小売業界では,最近,不当表示の防止等法令遵守に努めているが,インターネットショッピング等の新たな分野では,行政側の指導が追いついていないのか,かなり問題のある表示等が見受けられる。このような新たな分野における不当表示に対しても,公正取引委員会は積極的に取り締まってもらいたい。
  •  生協や大手家電メーカーの製品については,ブランドを信じて商品を購入しているが,生協や大手家電メーカーによる不当表示事件が発生しており,失望している。公正取引委員会は,このような不当表示に対して厳正に対処してもらいたい。

4 広報

  •  公正取引委員会の活動は非常に多岐にわたっているが,今もなお一般に公正取引委員会の存在・仕組みが国民に十分に理解されていないように感じる。テレビ媒体は国民にも伝わりやすい手段であると思われるので,テレビ媒体を活用した広報を検討してほしい。
  •  中学生向けの独占禁止法教室で教材にしているパンフレットは,一般消費者にとっても独占禁止法等の仕組みが容易に理解できるなどとても良い教材である。量販店の店頭に置いておくなど消費者向けにもPRして競争政策の啓蒙を図っていただきたい。

5 その他

 ・ 公共調達で導入されている総合評価方式については,価格以外の品質要素等において,発注者の意向等が入り,恣意的との印象を受ける。公正取引委員会において,公正性・透明性を確保できる方法を示していただきたい。

第9 沖縄ブロック(那覇市)

1 独占禁止法関係

 ・ 平成20年度の課徴金対象事業者数は減っているが,逆に課徴金額は増えており,これは悪質な事件が増えているなどの質的な変化が影響しているのではないか。

2 公正取引委員会の組織・体制

  •  消費者庁が発足するに伴って,景品表示法が消費者庁に移管されるが,独占禁止法から切り離されることで,公正取引委員会の消費者行政機能が低下する懸念がある。
  •  消費者に近い位置にある公正取引委員会から消費者庁へ移管される人員が思ったより少ないという印象がある。

3 公益事業・規制改革

 ・ これまで地元経済団体が中心となって,国や県に対して公共事業における地元建設業者に対する優先発注を要請しているが,効果が上がらない。実効性を上げるために大手ゼネコンが受注した工事について,地元業者を下請事業者として用いるよう交渉していくことを考えている。

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