雑誌に掲載されたクーポン券持参者に対する景品提供について

 公正取引委員会は,事業者等に係る事前相談に基づくサントリー株式会社からの相談の申出について,平成15年2月6日,下記のとおり回答を行った。

1 本件相談の概要

 サントリー株式会社(以下「サントリー」という。)は,酒類・食品の製造販売を業としている。
 サントリーは,コンビニエンスストアチェーンA(以下「A店」という。)で販売されている飲料B(通常販売価格350円)のクーポン券を雑誌に掲載し,同クーポン券をA店に持参した者を対象に飲料Bを提供するという,同社とA店との共同企画を考えており,同クーポン券の態様として以下のケースを想定している。
(1) 「無料引換券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを提供する。
(2) 「120円引券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを120円値引きする。
(3) 「見本引換券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを提供する。なお,飲料Bは容量が一種類のみのため最小容量のものであるが,飲料B自体に試供品である旨は表示しない。
 このような企画はそれぞれ,景品表示法上問題がないか。

2 相談に対する考え方

 本件は,サントリーがクーポン券を持参したA店への来店者を対象に,経済上の利益である飲料Bを提供する企画であることから,サントリーとA店が共同してA店へ顧客を誘引するための手段として行う企画であると認められる。また,本件飲料Bの提供については,「景品類等の指定の告示の運用基準について」(昭和52年4月1日事務局長通達第7号)4(2)ウ「小売業者又はサービス業者が,自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合(他の事業者が行う経済上の利益の提供の企画であっても,自己が当該他の事業者に対して協賛,後援等の特定の協力関係にあって共同して経済上の利益を提供していると認められる場合)」に該当することから,取引を条件としない場合であっても,A店の取引に附随するものである。
 したがって,本件企画は,景品表示法上の景品類の提供に該当するものであるところ,各相談のケースに応じて,以下のとおり景品規制の適用が異なる。

(1) 「無料引換券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを提供する場合

 小売業者が商品の無料引換券を発行し,自己の店舗に顧客の来店を誘引することは,来店時の取引に附随した景品類の提供となり,「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年3月1日公正取引委員会告示第5号)(以下「消費者制限告示」という。)による景品類の規制対象となる。
 この場合に提供できる景品類の上限額は,消費者制限告示第1項において,懸賞によらないで提供する景品類の価額が「景品類の提供に係る取引の価額の10分の1の金額(当該金額が100円未満の場合にあっては,100円)の範囲内であって,正常な商慣習に照らして適当と認められる限度を超えてはならない」と規定されており,また,「『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」(昭和52年4月1日事務局長通達第6号)(以下「消費者制限告示の運用基準」という。)1(3)において,「購入を条件とせずに,店舗への入店者に対して景品類を提供する場合の取引の価額は,原則として100円とする」と規定されていることから,100円を超えてはならない。

(2) 「120円引券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを120円値引きする場合

 消費者制限告示第2項において,「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であって,正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」は,景品類に該当する場合であっても,消費者制限告示第1項の規定を適用しないと規定されていることから,本件企画は,消費者制限告示の適用が除外される。

(3) 「見本引換券」とし,A店に持参した者全員に飲料Bを提供する場合。なお,飲料Bは容量が一種類のみのため最小容量のものであるが,飲料B自体に試供品である旨は表示しない場合

 消費者制限告示第2項において,「見本その他宣伝用の物品又はサービスであって,正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」は,景品類に該当する場合であっても,消費者制限告示第1項の規定を適用しないと規定されている。
 しかしながら,見本品を提供する場合にあっては,消費者制限告示の運用基準3(2)において,「自己の供給する商品又は役務について,その内容,特徴,風味,品質等を試食,試用等によって知らせ,購買を促すために提供する物品又はサービスで,適当な限度のものは,原則として,告示第2項第2号に当たる」と規定され,同規定中に「商品又は役務そのものを提供する場合には,最小取引単位のものであって,試食,試用等のためのものである旨が明確に表示されていなければならない」と例示されているところ,本件飲料Bの提供にあっては試供品であることが明記されていないことから,消費者制限告示が適用されることとなる。
 したがって,本件企画において提供できる景品類の最高価額は,100円を超えてはならない。

3 結論

(1) 「無料引換券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを提供する場合

 本件企画における景品類の価額は,消費者制限告示に定められた規制を超えることとなり,景品表示法上問題がある。

(2) 「120円引券」とし,これをA店に持参した者全員に飲料Bを120円値引きする場合

 本件企画は,消費者制限告示の適用が除外されるので,景品表示法上問題がない。

(3) 「見本引換券」とし,A店に持参した者全員に飲料Bを提供する場合。なお,飲料Bは容量が一種類のみのため最小容量のものであるが,飲料B自体に試供品である旨は表示しない場合

 本件企画における景品類の価額は,消費者制限告示に定められた規制を超えることとなり,景品表示法上問題がある。

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