平成23年10月21日
公正取引委員会
公正取引委員会は,事業者等の活動に係る事前相談制度に基づく,全日本空輸株式会社からの相談の申出について,本日,下記のとおり回答を行った。
1 本件相談に係る行為の概要
本件は,スターアライアンスと称する航空会社の連合(以下「スターアライアンス」という。)に加盟する航空会社のうち,全日本空輸株式会社,ユナイテッド航空,ルフトハンザドイツ航空,スイスインターナショナルエアラインズ,エアカナダ,スカンジナビア航空,中国国際航空及びアシアナ航空の8社(以下「8社」という。)(注1)が,全日本空輸株式会社を窓口として,日本国内に営業所等を有する法人を対象に販売しているコーポレートプラス(注2) と称する法人向けサービスの販売実績データについて次の方法により共有しようとするものである。
(1) 8社が,ドイツに所在するスターアライアンスサービス有限会社(以下「サービス会社」という。)(注3)に対し,各社の契約法人(コーポレートプラスのサービスを提供する契約を締結している法人。以下同じ。)ごとの過去6か月間の販売合計額(航空路線ごとの運賃,販売数量等を含まない。)を任意に報告する。
(注1) 航空会社の名称は,相談者からの申出書による。
(注2) コーポレートプラスとは,スターアライアンスに加盟する航空会社の連絡窓口を全日本空輸株式会社に一本化し,同社が基本契約(運賃等を除く。)の締結及び管理を一元的に行うサービスである。
(注3) サービス会社は,スターアライアンスが提供するサービスの企画開発,スターアライアンスに加盟する航空会社のサポートを行う法人である。
(2) サービス会社は,8社から報告された前記(1)の販売合計額を合算(契約法人ごとではなく,8社それぞれの販売合計額を合算)し,その合算した額のみを8社に対して提供する。
なお,8社は,本件販売実績データの共有後も販売価格等競争に影響があると考えられる契約条件については独立して顧客と交渉を行い,8社の間で販売価格等に係る情報が共有されることのないよう措置を講ずるとしている。
2 本件相談に対する独占禁止法上の考え方
本件は,国際航空旅客運送事業において競争関係にある事業者間における情報共有であることから,独占禁止法第3条(不当な取引制限)の観点から検討する。
8社間の競争の状況及び当該情報の利用の方法によっては,8社の現在又は将来のコーポレートプラスの販売数量,販売価格(割引価格)等の競争が制限される可能性も考えられる。
しかし,次のことから,現在又は将来のコーポレートプラスの販売数量,販売価格等の競争が実質的に制限される状況が生じるものとは認められない。
(1) 8社は,サービス会社に対し,契約法人ごとの過去6か月間の販売合計額を報告するが,サービス会社は,8社から収集した情報を全て合算した情報のみを8社に対して提供するとしている。
(2) 8社のうち複数社は,サービス会社に職員を派遣しているが,各航空会社とサービス会社との間の契約において守秘義務条項が設けられている。また,サービス会社と出向者との間の契約においても守秘義務条項が設けられており,サービス会社が収集した8社それぞれの情報は,8社に還流しないようにするとしている。
3 結論
以上の点を前提とすれば,8社の行為は,独占禁止法上問題となるものではない。
なお,本回答に際しての判断の基礎となった事実に変更が生じた場合その他本回答を維持することが適当でないと認められる場合には,文書により本回答の全部又は一部を撤回することがある。この場合には,このような撤回をした後でなければ,本件相談の対象とされた行為について,法的措置を採ることはない。