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行政指導に関する独占禁止法上の考え方

行政指導に関する独占禁止法上の考え方

平成6年6月30日
公正取引委員会
改正:平成22年1月1日

はじめに

 我が国においては、広範な分野において様々な形で行政指導が実施されており、行政指導は、行政の中で大きな比重を占めている。このような行政指導は、行政需要への機敏な対応、行政の弾力性の確保、行政目的の円滑な達成等のために行われている。一方、行政運営の公正の確保と透明性の向上を図るため、行政手続法(外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます)(平成五年法律第八八号)が制定され、同法において、行政指導の濫用を防止するとともに、行政指導の明確性及び公平性を確保する観点から、行政機関が行政指導を行う場合に遵守すべき事項について一定の規定が設けられている。
 近年、消費者利益を確保することや我が国市場をより開かれたものとすることが内外から求められており、そのためには公正かつ自由な競争の維持・促進を図ることが重要となっている。また、公正かつ自由な競争を一層促進するとの観点からも規制緩和が積極的に進められているが、法令による規制が緩和又は廃止されたとしても仮に行政指導により事実上同様のことが行われれば、規制緩和の趣旨に反する結果となる。
 行政指導は、行政機関が多様な目的のために行っているが、その中で、事業者の参入・退出、商品又は役務の価格、数量、設備等に直接・間接に影響を及ぼすような行政指導は、その目的、内容、方法等によっては、公正かつ自由な競争を制限し、又は阻害するとともに、独占禁止法違反行為を誘発する場合さえあることに十分留意する必要がある。
 事業者又は事業者団体の行為については、たとえそれが行政機関の行政指導により誘発されたものであっても、独占禁止法の適用が妨げられるものではない。公正取引委員会は、当該事業者又は事業者団体の行為が独占禁止法違反行為の要件に該当するときは、当該行為を排除するための法的措置等を講じている。事業者又は事業者団体が行政指導に従って独占禁止法上問題のある行為を行った場合、当該行為について直接法的責任を問われるのは行政指導に従った事業者又は事業者団体となることから、行政機関は行政指導を行うに当たって、この観点からも慎重であることが求められるものである。また、このような場合、事業者又は事業者団体は、行政指導に従った行為であっても独占禁止法上問題となることを十分留意する必要がある。
 公正取引委員会は、独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがある行政指導については、従来、個々の事案ごとに事前に関係行政機関と調整を図り、問題点を指摘し、改善等を要望してきたところである。今般、公正取引委員会は、これまでの他の行政機関との調整事例や独占禁止法違反被疑事件の審査の過程等で認められた事例を踏まえて、行政指導に関する独占禁止法上の考え方を具体的に明らかにするため、「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」(以下「本考え方」という。)を作成・公表することとした。行政機関においては、本考え方に十分留意するとともに、本考え方で示したような独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがある行政指導を行うに当たって個々の事案ごとに事前に公正取引委員会と調整することを期待するものである。
 なお、本考え方の作成・公表に伴い、「独占禁止法と行政指導との関係についての考え方」(昭和五六年三月一六日公正取引委員会)を廃止する。
 本考え方においては、次の用語は、以下のような意味を持つものとする。

  •  行政指導
     行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。
  •  行政機関
     地方公共団体の機関を含む。
  •  法令
     法律、法律に基づく命令(告示を含む。)、条例及び地方公共団体の執行機関の規則(規程を含む。)をいう。
  •  許認可等
     法令に基づき許可、認可、免許その他事業者に対し何らかの利益を付与する処分をいう。
  •  事業者
     商業、工業、金融業その他の事業を行うものをいう。
  •  事業者団体
     事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいう。
  •  参入・退出
     既存事業分野への参入・退出のほか、新規事業分野、地域市場等への参入・退出等を含む。
  •  価格
     割戻し、値引等実質的に価格の構成要素となるものを含む。
  •  設備
     生産設備のほか、店舗等を含む。

1 行政指導と独占禁止法との関係についての基本的な考え方

(1) 法令に具体的な規定がある行政指導

 法令に助言、指導、勧告、指示等の具体的な規定がある行政指導の場合、当該行政指導の目的、内容、方法等は当該法令の規定に合致したものでなければならず、その相手方が個々に自主的に判断して、このような行政指導に従う限り、当該行政指導の相手方の行為は独占禁止法上問題とはならない。しかしながら、独占禁止法の適用除外規定がない限り、当該行政指導によって誘発された行為であっても独占禁止法違反行為の要件に該当する場合には、当該行為に対する同法の適用が妨げられるものではない。
 また、法令に命令、認可、勧告、指示等の規定が定められている場合であって、法令の運用として、その規定を発動することができる実体要件が存在するときに、その規定の発動の前段階又は代替として行われる行政指導についても、独占禁止法との関係についての考え方は法令に具体的な規定がある行政指導と同様である。
 なお、法令に具体的な規定があってもその目的、内容、方法等が当該法令の規定に合致しない行政指導又は各省庁設置法の規定若しくは事業法令上の一般的な監督権限を根拠とする行政指導は、ここでいう法令に具体的な規定がある行政指導とは言えない。

(2) 法令に具体的な規定がない行政指導

 法令に具体的な規定がない行政指導の場合、行政機関は、当該行政指導の中には、その目的、内容、方法等によっては、公正かつ自由な競争を制限し、又は阻害するとともに、独占禁止法違反行為を誘発する場合さえあることに、十分留意する必要がある。行政指導によって誘発された行為であっても独占禁止法違反行為の要件に該当する場合には、当該行為に対する同法の適用が妨げられるものではないことは言うまでもない。
 法令に具体的な規定がない行政指導の目的、内容及び方法と独占禁止法との関係についての考え方は、次のとおりである。

ア 行政指導の目的との関係

 行政指導は、物価の安定、国民生活の安定又は充実、取引の公正性・透明性の確保、環境保全、保健衛生の向上、安全性の向上、中小企業保護等多様な行政目的のために行われているが、その中で、過度の競争の防止、需給調整、価格低下の抑制、事業者間の利害調整、業界の秩序維持といった観点から行われる行政指導は、市場メカニズムに直接的な影響を及ぼすこととなる。

イ 行政指導の内容との関係

 行政指導は、その内容が多岐にわたり、また、その市場における競争に及ぼす影響も区々である。
 参入・退出、商品又は役務の価格、数量、設備等は、本来、市場における事業者の公正かつ自由な競争を通じて形成され、又は決められるべきものである。これらの事項についての事業者の自由な活動を制限するおそれのある行政指導は、市場メカニズムに直接的な影響を及ぼすこととなる。
 他方、営業方法、品質・規格、広告・表示等は、事業者の重要な競争手段ではあるが、参入・退出、価格、数量、設備等と比べ市場メカニズムに及ぼす影響が直接的であるとは必ずしも言えない。

ウ 行政指導の方法との関係

 内容に具体性のある行政指導は、事業者が他の事業者もこれに従うことを前提としてのみ従おうとする場合が多いので、事業者団体を通じて行う場合、独占禁止法違反行為を最も誘発しやすい。個別事業者に対する行政指導であっても、例えば、特定の事業分野における主導的な事業者に対して行う場合、特定の事業分野に属する相当数の事業者に対して画一的な基準を定める等の方法により行う場合、事業者間に競争制限について暗黙の了解又は共通の意思が形成されやすい状況において行う場合には、独占禁止法違反行為を誘発するおそれがある。

 (備考) 物価の抑制が最大の国民的課題となっているような事態において価格の抑制を目的として行われる行政指導については、第一次石油危機当時の政府統一見解(別添)がある。

2 行政指導の諸類型と独占禁止法

 法令に具体的な規定がない行政指導に関し、どのような行政指導が独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがあるかについての考え方を行政指導の諸類型ごとに具体的に示すと、次のとおりである。

(1)参入・退出に関する行政指導

 公正かつ自由な競争を維持・促進するためには、参入・退出の自由が保障されている必要があり、行政機関は、法令に具体的な規定がない参入・退出に関する行政指導により公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害されることのないよう十分留意する必要がある。例えば、次のような行政指導は、独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがある(独占禁止法第三条、第八条第一号・三号・四号)。

[1] 参入に当たり、当該事業分野の既存事業者若しくは事業者団体の同意を得ることを求め、又は参入の条件についてこれらのものと調整するよう指導すること。
 このような行政指導により、当該既存事業者が共同して、又は事業者団体が、参入の同意を拒否することにより新規参入を断念させ、当該事業分野の事業者の数を制限し、又は参入しようとする事業者の事業活動を不当に制限する条件を付すことになるおそれがある。

[2] 参入に当たり、既存事業者との利害調整の観点から、当該事業分野の事業者団体に加入するよう指導すること。
 このような行政指導により、当該事業者団体が、加入を拒否することにより新規参入を断念させ、当該事業分野の事業者の数を制限し、又は加入に当たり参入しようとする事業者の事業活動を不当に制限する条件を付すことになるおそれがある。

[3] 事業活動を遂行するために必要な公的機関からの融資等の手続に、需給調整、事業者間の利害調整等の観点から、当該事業分野の事業者団体に関与させること。
 このような行政指導により、当該事業者団体が、新規参入者からの申請を拒否することにより新規参入を断念させ、当該事業分野の事業者の数を制限し、又は参入しようとする事業者の事業活動を不当に制限する条件を付すことになるおそれがある。

(2)価格に関する行政指導

 公正かつ自由な競争を維持・促進するためには、商品又は役務の価格設定が事業者の自主的な判断に委ねられる必要があり、行政機関は、法令に具体的な規定がない価格に関する行政指導により公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害されることのないよう十分留意する必要がある。例えば、次のような行政指導は、独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがある(独占禁止法第三条、第八条第一号・四号・五号、第一九条)。

[1] 価格の引上げ又は引下げについて、その額・率(幅)等目安となる具体的な数字を示して指導すること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、示された目安まで価格を引き上げ、又は引き下げることを決定することになるおそれがある。なお、ここでいう決定とは、明示的に決定し、又は合意することだけをいうのではなく、暗黙の了解又は共通の意思が形成されることも含まれる(以下同じ。)。

[2] 価格が低下している状況等において、安値販売、安値受注又は価格の引下げの自粛を指導すること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、価格の維持又は引上げを決定することになるおそれがある。

[3] 構成事業者の個々の取引における価格等通常各事業者の営業上の秘密とされている事項について事業者団体を通じて報告を求めること。
 このような行政指導により、当該事業者団体が取りまとめに当たり価格を決定することになるおそれがある。

[4] 製造業者若しくは流通業者又はそれらの団体に対して、小売価格等その取引の相手方の販売価格を安定させるよう指導すること。
 このような行政指導により、再販売価格維持行為を誘発することになるおそれがある。

[5] 個々の事業者が自主的判断で決めることとされている価格について事前届出制が採られている場合に、目安となる具体的な数字を示して届出事項について指導したり、事業者間又は事業者団体で調整をさせたり、事業者団体に一括して届出をさせたり、事業者団体を経由して届出をさせること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、届出事項である価格について決定することになるおそれがある。

(3) 数量・設備に関する行政指導

 公正かつ自由な競争を維持・促進するためには、数量・設備に関する事業活動が事業者の自主的な判断に委ねられる必要があり、行政機関は、法令に具体的な規定がない数量・設備に関する行政指導により公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害されることのないよう十分留意する必要がある。例えば、次のような行政指導は、独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがある(独占禁止法第三条、第八条第一号・三号・四号)。

[1] 生産・販売数量、輸入・輸出数量、減産率(幅)、原材料の購入数量等について目安となる具体的な数字を示して指導すること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、数量等について決定することになるおそれがある。

[2] 短期の需給見通し等具体的な目安を示して生産・販売数量、輸入・輸出数量、設備の新増設等に関する事業計画を提出させること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、示された目安に応じた事業計画を作成し、それに従って事業活動を行うことを決定することになるおそれがある。

[3] 構成事業者の個々の取引における数量等通常各事業者の営業上の秘密とされている事項について事業者団体を通じて報告を求めること。
 このような行政指導により、当該事業者団体が取りまとめに当たり、構成事業者の生産・販売数量、輸入・輸出数量等を決定することになるおそれがある。

[4] 短期の需給見通しの作成に当たって、事業者間又は事業者団体において、供給計画に関する意見交換等を行わせること。
 需給見通しを作成するに当たって、行政機関が個別の事業者から聴取する限りでは問題はないが、このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、生産・販売数量等を決定することになるおそれがある。

[5] 設備投資又は設備廃棄の時期又は規模に関し輪番制等の具体的な目安を示して指導すること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、設備投資等について決定することになるおそれがある。

[6] 個々の事業者が自主的判断で決定することとされている生産・販売数量、輸入・輸出数量、設備の新増設等について事前届出制が採られている場合に、具体的な目安を示して届出事項について指導したり、事業者間又は事業者団体で調整をさせたり、事業者団体に一括して届出をさせたり、事業者団体を経由して届出をさせること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、届出事項である数量等について決定することになるおそれがある。

(4) 営業方法、品質・規格、広告・表示等に関する行政指導

 営業方法、品質・規格、広告・表示等は、事業者が創意工夫を発揮して行う重要な競争手段であり、行政機関は、法令に具体的な規定がない営業方法、品質・規格、広告・表示等に関する行政指導により、これらの事項についての事業者の活動が不当に制限され、公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害されることのないよう十分留意する必要がある。
 法令の遵守、不正行為の防止等の社会公共への配慮、取引の透明性の確保、保健衛生の向上、安全性の向上等の観点から行政機関が営業方法、品質・規格、広告・表示等に関して、具体的に制限したり、事業者又は事業者団体に対して自主規制を行うよう指導することがある。また、商品の生産若しくは流通又は役務の供給の合理化のために、行政機関が品質・規格等に関して、具体的に制限したり、事業者又は事業者団体に対して標準化を図るよう指導することがある。これらの行政指導は、原則として、独占禁止法との関係において問題となるものではないが、当該行政指導を受けて事業者が共同して、又は事業者団体が決定した基準等が、需要者の利益を不当に害し、又は構成事業者等にその遵守を強制するものであれば、事業者又は事業者団体の当該基準等の決定は独占禁止法上問題となることから、行政機関は、この点に十分留意する必要がある。
 また、行政機関が営業方法、品質・規格、広告・表示等に関して指導する場合において、事業者が共同して、又は事業者団体が、当該行政指導を受けて価格等の取引条件についてまで決定すれば、遵守を強制するものでなくても、当該決定は独占禁止法上問題となるので、この点についても十分留意する必要がある。

3 許認可等に伴う行政指導についての独占禁止法上の考え方

 事業分野によっては、参入・退出、価格、数量、設備等に関して、許認可等により規制が行われていることがある。このような許認可等による規制は、法令に規定された要件のみに基づき行われるべきであり、行政機関は、当該要件を超えた観点を加えて許認可等の運用をすることにより事業者の自由な事業活動が制限され、公正かつ自由な競争が制限され、又は阻害されることのないよう十分留意する必要がある。また、参入・退出、価格、数量、設備等について法令の規定により届出が義務付けられている場合もあるが、届出を許認可等の申請と事実上同様に取り扱うことにより、これらの事項について事業者の自由な事業活動を制限することも同様である。
 行政機関が法令に規定された許認可等の運用に当たって行政指導を行う場合であっても、当該行政指導の内容や方法によっては、事業者又は事業者団体による独占禁止法違反行為を誘発する場合があり、行政機関は、特に、許認可等を背景とする行政指導は、事実上強制力を有しやすいことに留意する必要がある。行政機関が法令に規定された要件に照らして事業者の許認可等の申請内容の変更等を個別に指導すること自体は、独占禁止法との関係において問題を生じさせるものではないが、事業者又は事業者団体に対し許認可等の申請内容又は手続に関与するよう指導する場合には、事業者又は事業者団体による独占禁止法違反行為を誘発するおそれがある(独占禁止法第三条、第八条第一号・三号・四号)。
 例えば、次のような行政指導は、独占禁止法との関係において問題を生じさせるおそれがある。

(1) 参入の許認可等の申請に際し、当該事業分野の既存事業者若しくは事業者団体の同意を得ることを求め、又は参入の条件についてこれらのものと調整するよう指導すること。
 このような行政指導により、当該既存事業者が共同して、又は事業者団体が、参入の同意を拒否することにより新規参入を断念させ、当該事業分野の事業者の数を制限し、又は参入しようとする事業者の事業活動を不当に制限する条件を付すことになるおそれがある。

(2) 参入の許認可等の申請に際し、既存事業者との利害調整の観点から、当該事業分野の事業者団体に加入するよう指導すること。
 このような行政指導により、当該事業者団体が、加入を拒否することにより新規参入を断念させ、当該事業分野の事業者の数を制限し、又は加入に当たり参入しようとする事業者の事業活動を不当に制限する条件を付すことになるおそれがある。

(3) 複数の事業者から参入の許認可等の申請がある等の場合に、申請事業者間又は当該事業分野の事業者団体等において調整するよう指導すること。
 許認可等の要件の一つとしていわゆる需給調整条項が法令に規定されている場合であっても、このような指導を受けて申請事業者間又は当該事業分野の事業者団体等において行われる調整行為は、独占禁止法に違反するおそれがある。

(4) 法律上個々の事業者が自主的な判断で行うこととされている価格等に関する許認可等の申請について、構成事業者の委任を受けて事業者団体が一括して申請するよう指導すること。
 このような行政指導により、事業者団体が許認可等の申請内容について決定することになるおそれがある。

(5) 法律上個々の事業者が自主的な判断で行うこととされている価格等に関する許認可等の申請について、事業者間又は事業者団体で調整をさせ、当該事業分野の事業者団体を経由し、又は既存事業者若しくは事業者団体の同意を得た上で申請するよう指導すること。
 このような行政指導により、事業者が共同して、又は事業者団体が、許認可等の申請内容について決定することになるおそれがある。

 (別添)

 価格カルテルと行政指導に関する政府統一見解(第七二回国会衆議院予算委員会(昭和四九年三月一二日)吉国内閣法制局長官の答弁)

 価格カルテルと行政指導に関する見解として申し上げます。
 第一に、価格は、本来市場における需給関係を基準として、事業者の自由な競争によって決まるべきものでございますから、事業者がカルテルによって価格操作を行なうことは、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二条第六項の「不当な取引制限」に該当いたしまして、認めるべきでないことは当然でございます。
 第二に、一方、最近のように、物価抑制が最大の国民的な課題となっておりますことを考慮いたしますならば、物資所管官庁が価格抑制の観点から、価格に関する行政指導を行なうことは必要やむを得ないものと考えられまして、その根拠は各省設置法に求めることができます。たとえば通商産業省設置法第三条第二号、石油につきましては第三六条の七第一号でございます。
 第三といたしまして、ただ、価格に関する行政指導が認められるとは申しましても、指導を受けました事業者がさらに共同して価格操作を行うことがございまするならば、先ほど一に述べましたと同様に、認めるべきでないことはいうまでもございません。

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