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事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容が記録されている物件の取扱指針

事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容が記録されている物件の取扱指針

令和2年7月7日
公正取引委員会

第1 はじめに

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律(令和元年法律第45号)が令和元年6月に成立したことにより,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)に事業者の調査協力の度合いに応じて課徴金の減算率を算定する制度が導入された。これに伴い,事業者が調査協力を効果的に行うために外部の弁護士に相談するニーズがより高まると考えられる。そのため,新たな課徴金減免制度をより機能させるとともに,当該相談に係る法的意見についての秘密を実質的に保護し,適正手続を確保する観点(注1)から,公正取引委員会は,独占禁止法第76条第1項の規定に基づく公正取引委員会の審査に関する規則(平成17年公正取引委員会規則第5号。以下「審査規則」という。)により,公正取引委員会の行政調査手続(注2)において,所定の手続により一定の条件を満たすことが確認された事業者と弁護士との間で秘密に行われた通信の内容を記録した物件は,審査官その他の当該事件調査に従事する職員(以下「審査官等」という。)がその内容に接することなく,事件の終結を待つことなく当該事業者に還付すること(以下「本取扱い」という。)とした。そこで,本取扱いの手続を明確にし,本取扱いの透明性及び事業者の予見可能性を確保する観点から,本指針を策定することとした。

(注1)独占禁止法第76条第2項において,同条第1項の規定により事件の処理手続について規則を定めるに当たっては,当該手続の適正の確保が図られるよう留意しなければならないと規定されている。
(注2)公正取引委員会の独占禁止法違反被疑事件の調査手続には,行政調査手続(排除措置命令等の行政処分の対象となり得る独占禁止法違反被疑事件を審査するための手続)と犯則調査手続(刑事処分を求める告発の対象となり得る独占禁止法違反被疑事件を調査するための手続)の2つがあるが,本取扱いは,行政調査手続を対象としているものであり,犯則調査手続は対象としていない。

第2 本取扱いの内容(審査規則第23条の2,第23条の3関係)

 本取扱いは,課徴金減免対象違反行為(注3)の疑いのある行為(以下「課徴金減免対象被疑行為」という。)に関する法的意見について事業者(注4)と弁護士(注5)との間で秘密に行われた通信(以下「特定通信」という。)の内容を記録した物件であって適切に保管されていること等の要件を満たすことが確認されたものは,審査官等がその内容に接することなく,留置の必要がなくなったものとして速やかに還付するものである。
 当該確認は,課徴金減免対象被疑行為に係る事件(以下「特定被疑事件」という。)において,審査官が物件の所持者(注6)に対して提出命令(独占禁止法第47条第1項第3号の処分をいう。以下同じ。)を行うに際し,当該物件の所持者から文書により本取扱いの求めがあった物件について行う(以下,当該求めがあって留置した物件を「特定物件」と,当該求めに係る事業者を「特定行為者」という。)。

(注3)新たな課徴金減免制度の対象とされている独占禁止法第7条の2第1項(独占禁止法第8条の3において読み替えて準用する場合を含む。)に規定する違反行為をいう。
(注4)課徴金減免対象被疑行為が独占禁止法第8条の3において読み替えて準用する独占禁止法第7条の2第1項の規定に係るものであるときは,当該行為をした事業者団体の構成事業者をいう。
(注5)弁護士法(昭和24年法律第205号)の規定による弁護士(弁護士法人を含む。以下同じ。)であって,課徴金減免対象被疑行為をした事業者から独立して法律事務を行う者をいう。当該事業者と雇用関係にある弁護士(以下「組織内弁護士」という。)は,当該事業者から独立して法律事務を行う場合に該当しない。ただし,組織内弁護士が,課徴金減免対象被疑行為の発覚等を契機として,当該事業者からの文書による指示により,当該事業者の指揮命令監督下になく,独立して法律事務を行っていることが明らかな場合には,当該指示があった後は,当該事業者から独立して法律事務を行う場合に該当する。また,外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法(昭和61年法律第66号)に規定する外国弁護士及び外国法事務弁護士(外国法事務弁護士法人を含む。)(以下これらを総称して「外国弁護士等」という。)は,審査規則第23条の2第1項の弁護士には含まれない。
(注6)課徴金減免対象被疑行為をした事業者又はその役員若しくは従業員に限る。

1 特定通信の内容を記録した物件
 特定通信は,課徴金減免対象被疑行為に関する法的意見について課徴金減免対象被疑行為をした事業者が弁護士に対して秘密に行った相談又はそれに対して当該弁護士が秘密に行った回答である。
 当該事業者が法人の場合にあっては,当該事業者の役員又は従業員(以下「役員等」という。)であって通信の時点において当該事業者を代表して弁護士に相談する職責にあった者と弁護士との間の秘密に行われた通信(当該事業者を代表して弁護士に相談する職責にあった者を介して行われた課徴金減免対象被疑行為に関係する当該事業者の役員等と弁護士との間の秘密に行われた通信を含む。)が,特定通信に当たる。
 本取扱いの対象となる物件は,特定通信の内容を記録した物件であり,当該事業者又は当該事業者から相談を受けた弁護士が,特定通信が行われた日以降に作成若しくは取得した文書等(最初の特定通信の際に既に作成又は取得したもので実際に用いたものを含む。)又はそれらを一の集合物にまとめたものである(注7)。
 具体的には,例えば,次のものである。
・ 特定行為者から弁護士への相談文書
・ 弁護士から特定行為者への回答文書
・ 弁護士が行った社内調査に基づく法的意見が記載された報告書
・ 弁護士が出席する社内会議で当該弁護士との間で行われた法的意見についてのやり取りが記載された社内会議メモ

(注7)課徴金減免対象被疑行為についての社内アンケート調査結果や役員等へのヒアリング記録等,事実を主たる内容とする文書等は含まれない。

2 適切な保管(審査規則第23条の3第1項関係)
 特定物件が本取扱いにより還付されるには,適切に保管されていたことが必要となる。具体的には,次のいずれも満たす場合には適切に保管されていたものと認められる。
(1) 表示(審査規則第23条の3第1項第4号,第5号関係)
 特定物件の表面その他の見やすい箇所に特定通信の内容を記録したものである旨の表示がされていること(当該物件が複数の文書等を一の集合物にまとめたものとして綴り等に保管されている場合にあっては,当該綴り等にその旨を識別できる表示がされていること。)。
 これに該当する表示は,例えば,次のものである。
・ 特定通信の内容を記録した文書等がまとめられて綴られたファイルの背表紙に「公取審査規則特定通信」と記載があること。
・ 特定通信の内容を記録した文書の表紙に「公取審査規則第23条の2第1項該当」と記載があること。
(2) 保管場所(審査規則第23条の3第1項第5号関係)
 特定物件が事業者として管理する特定の保管場所(弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等が管理する場所に限る。)において保管され,特定物件を保管していた場所と特定物件以外の物件を保管していた場所とが外観上区分されていたこと。
 これに該当する保管方法は,例えば,次のものである。
・ 特定通信の内容を記録した物件が保管されていることを表示した,法務部門が管理する書架に保管され,当該箇所に特定通信の内容を記録した物件以外の物件が保管されていなかったこと。
(3) 内容を知る者の範囲(審査規則第23条の3第1項第5号関係)
 特定物件の内容を知る者の範囲がそれを知るべき者(事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者又はその職責にあった者等(注8))に制限されていたこと。
 これに該当する知る者の範囲は,例えば,次のものである。
・ 特定通信の内容を記録した物件の内容を知る者の範囲が法務部門の役員等に制限されていたこと。

(注8)当該事業者を代表して弁護士に相談する職責にあった者を介して弁護士に相談した課徴金減免対象被疑行為に関係する当該事業者の役員等を含む。

3 申出書及び概要文書の提出
(1) 申出書の提出(審査規則第23条の2第1項関係)
 本取扱いの求めをする物件の所持者は,本取扱いの求めをする物件について提出命令を受けるに際し,本取扱いを求める文書(以下「申出書」という。)を審査官に対して提出するものとする。
(2) 概要文書の提出(審査規則第23条の2第2項関係)
 特定行為者は,災害等により期限内に概要文書の提出ができないことについて特別の事情がある場合を除き,提出命令を受けた日から2週間以内に,特定物件(複数の文書等を一の集合物にまとめたものとして綴り等に保管されている場合にあっては,当該文書等)について,次のアからカまでの事項を特定通信ごとに記載した文書(以下「概要文書」という。)を公正取引委員会(判別官及び審査官)に対して提出するものとする。
ア 特定物件の標題
イ 特定物件の作成又は取得の日
ウ 特定通信をした者の氏名,特定通信をした時に所属していた組織及び部署の名称並びに役職名
エ 特定物件を共有した者の氏名,特定物件を共有した時に所属していた組織及び部署の名称並びに役職名
オ 特定物件の保管場所
カ 特定物件の概要(作成又は取得経緯等)

4 その他
(1) 特定被疑事件に関連する外国競争法への対応に係る外国競争法に関する法的意見について特定行為者と外国弁護士等との間で秘密に行われた通信の内容を記録した物件については,当該事件に関連する一次資料や事実調査資料(後記第4の2(2)イ(ア)及び(イ))が含まれているなど当該事件の調査に必要であると認められる場合を除き,提出命令の対象としない。
(2) 本取扱いの求めがあった物件が他の行政機関等の調査等のために提出等されていたとしても,本取扱いの手続に影響を及ぼすものではなく,本取扱いの要件を欠くこととはならない。
 また,本取扱いの求めがあった物件の内容が,外国弁護士等に共有されていたとしても,新たな課徴金減免制度をより機能させることに資する観点からその共有の必要性が認められ,特定通信の内容の秘密を保持するための措置が講じられていると認められるときは,本取扱いの要件を欠くこととはならない。

3 審査官による手続(審査規則第23条の2第1項関係)

 審査官は,提出命令に際し,本取扱いの求めを受けたときは,当該求めのあった物件について,表示及び保管の状況を確認する。審査官は,これらが,外観上,前記第2の2(1)及び(2)を満たすと認める場合,当該物件について,前記第2の3(1)の申出書の提出を受け,当該物件を封筒等に入れて封をした上で,提出命令を行うものとする。
 審査官は,提出命令を行った後(立入検査(独占禁止法第47条第1項第4号の処分をいう。以下同じ。)において提出命令を行った場合にあっては,当該立入検査終了後),遅滞なく,当該申出書とともに,当該物件を,その封を解くことなく判別官に引き継ぐものとする。

4 判別手続等(審査規則第23条の3,第23条の4関係)

1 判別官の指定等
 公正取引委員会は,特定被疑事件ごとに,公正取引委員会事務総局官房の職員から判別官を指定するものとする。
 公正取引委員会は,審査官等として当該特定被疑事件の調査に関する事務に従事したことのある職員を判別官として指定せず,当該特定被疑事件において判別官の指定を受けたことのある職員を当該特定被疑事件の調査に従事させないものとする。

2 判別手続
 判別官は,特定物件について,封を解いた上で,後記(1)及び(2)の確認をする手続(以下「判別手続」という。)を行うものとする。また,判別官は,判別手続を行うために必要があると認めるときは,特定行為者に対し,資料の提出その他の必要な協力を求めるものとする。
 審査官等は,特定物件(後記(2)イの確認において提出等されたものに対応するものを除く。)について,後記(1)及び(2)の確認を行っている間及び当該確認がされたときは,当該特定物件を閲覧せず,又は謄写しないものとする。
(1) 第一次判別手続
 判別官は,特定物件について,特定物件に提出命令が行われた日から原則として2週間以内に次のアからウまでの確認を行うものとする。
ア 申出書の記載内容の確認
 申出書について,その記載内容に誤りがないことを確認する。
イ 概要文書の提出の確認
 特定行為者が,災害等の特別の事情がある場合を除き,提出命令を受けた日から2週間以内に,概要文書を公正取引委員会(判別官及び審査官)に提出していることを確認する。
ウ 適切な保管の確認
 特定物件が,前記第2の2(1)を満たすことを確認する。
(2) 第二次判別手続
 判別官は,前記(1)アからウまでの確認ができた特定物件について,第一次判別手続が終わった日から原則として6週間以内に次のアからオまでの確認を行うものとする。
ア 特定通信の内容が記録されたものであることの確認
 特定物件が,特定通信の内容が記録されたものであることを確認する。
イ 対象外文書等の確認
 特定物件について,特定通信に当たらない内容が記録された文書等(以下「対象外文書等」という。)が含まれていないこと又は対象外文書等が含まれている場合には,特定行為者から公正取引委員会(判別官)に対して対象外文書等の写しの提出等があったことを確認する。
 対象外文書等とは,例えば,次のものである。
(ア) 一次資料
 役員等の手帳やノート,会合の内容が記載されたメモ,出張決裁文書等
(イ) 事実調査資料
 課徴金減免対象被疑行為に関与したとされる役員等に対して行ったヒアリング記録,課徴金減免対象被疑行為に関する社内アンケート調査結果等
(ウ) 他法令等に関する法的意見の内容を記載した文書等
 独占禁止法以外の法令の規定又は独占禁止法の課徴金減免対象被疑行為以外の規定に関する法的意見について,特定行為者が弁護士に対して行った相談又はそれに対する当該弁護士が行った回答を記載したもの
ウ 検査を妨害すること等に関するものではないことの確認
 特定物件について,課徴金減免対象違反行為を行うこと若しくは行うことを容易にすること又は検査を妨害することその他違法な行為を行うことに関するものではないことを確認する。
エ 適切な保管の確認
 特定物件が,前記第2の2(2)及び(3)を満たすことを確認する。
オ 概要文書の記載内容の確認
 概要文書について,その記載内容に誤りがないことを確認する。

3 特定行為者への確認等
 判別官は,前記2(1)アからウまで又は同(2)アからオまでのいずれかの該当性が明らかでない場合には,その旨を特定行為者に対して連絡し,当該特定物件の取扱いについての対応(記載内容の誤りに関するもの等を含む。)を確認するものとする。この確認等は,判別手続の期間内に行うものとする。

5 還付手続等(審査規則第23条の3,第23条の4関係)

1 還付手続
(1) 判別官は,前記第4の2(1)アからウまで及び同(2)アからオまでの確認ができた特定物件について,封筒等に入れて封をする。
(2) 前記(1)の特定物件については,前記(1)の確認ができた旨を特定行為者に対して通知し,留置の必要がなくなったものとして速やかに還付するものとする(注9)。

(注9)対象外文書等のうち,一次資料(前記第4の2(2)イ(ア))等について,審査官が特定被疑事件の実態解明のために当該一次資料等の写しの提出(前記第4の2(2)イ)では足りず,その原物が必要と判断した場合,当該原物を含む特定物件について前記(2)の還付が行われたとき,特定行為者に対して当該原物の分離を求めた上で,審査官は当該原物について提出命令を行うこととなる。

2 審査官への引継ぎ等
(1) 審査官への引継ぎ
 判別官は,前記第4の3の確認等の結果,前記第4の2(1)アからウまで又は同(2)アからオまでのいずれかの確認ができなかった場合にあっては,当該確認ができなかった特定物件を審査官に引き継ぐものとする。
(2) 特定行為者への通知等
 判別官は,前記(1)の引継ぎをしたときは,その旨及びその理由を,遅滞なく,特定行為者に対して通知するものとする。

3 特定行為者による還付の請求への対応
(1) 還付の請求
 判別官が審査官に引継ぎをした特定物件について,特定行為者が,対象とする特定物件,理由等を文書により明らかにした上で還付を請求した場合,審査官は,留置の必要について検討を行うものとする。
(2) 還付
 前記(1)の検討の結果,留置の必要がなくなったものについては,特定行為者に速やかに還付するものとする。
(3) 特定行為者への通知
 前記(1)の検討の結果,留置の必要があると判断した物件については,特定行為者による還付の請求を却下する旨を,遅滞なく,文書により当該特定行為者に対して通知する。その文書には,当該却下に対して,審査規則第22条第1項の規定に基づく異議の申立て又は行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)の規定により取消訴訟を提起することができる旨を教示する記載をするものとする。

6 閲覧又は謄写の手続(審査規則第23条の5関係)

 特定行為者から,特定物件についての閲覧又は謄写の求めがあるときは,事件の審査又は判別手続における判別官の確認に支障を生じない範囲で,提出命令の翌日以降に,日程調整を行った上で,判別官が指定する場所において,判別官又はその事務を補助する者の立会いの下,これを認めるものとする。

第7 電子データへの対応

 本取扱いの求めのあった電子データ(電子メール等のデータを含む。以下同じ。)(以下「特定データ」という。)は,原則として,物件と同様に取り扱うものとする。ただし,電子データの性質等を踏まえ,適切な保管等については,後記1から5までのとおりとする。

1 適切な保管
 次のいずれも満たす場合には適切に保管されていたものと認められる。
(1) 表示
 特定データのファイル名(電子メールの場合は件名)に特定通信の内容を記録したものである旨の表示がされていること。
 これに該当する表示は,例えば,次のものである。
・ 特定通信の内容を記録した電子データのファイル名に「公取審査規則特定通信」と記載があること。
・ 特定通信の内容を記録した電子メールの件名に「公取審査規則第23条の2第1項該当」と記載があること。
(2) 保存箇所
 特定データが事業者として管理する特定の保存箇所(弁護士に相談することを事務として取り扱う部署又は役員等が管理する箇所に限る。)において保存(電子メールの場合は特定のメールアカウントで管理)され,特定データを保存していた箇所と特定データ以外の電子データを保存していた箇所とがデータの保存箇所であるフォルダの名称等によって区別されていたこと。
 これに該当する保存方法は,例えば,次のものである。
・ 特定通信の内容を記録した電子データが保存されていることを表示した,法務部門が管理するフォルダに保存され,当該フォルダに特定通信の内容を記録した電子データ以外の電子データが保存されていなかったこと。
(3) 内容を知る者の範囲
 特定データの内容を知る者の範囲がそれを知るべき者(事業者を代表して弁護士に相談する職責にある者又はその職責にあった者等(注10))に制限されていたこと。
 これに該当する知る者の範囲は,例えば,次のものである。
・ 特定通信の内容を記録した電子データの内容を知る者の範囲が法務部門の役員等に制限されていたこと。

(注10)当該事業者を代表して弁護士に相談する職責にあった者を介して弁護士に相談した課徴金減免対象被疑行為に関係する当該事業者の役員等を含む。

2 申出書及び概要文書の提出
(1) 申出書の提出
 本取扱いの求めをする特定データを複製した記録媒体(必要に応じてクライアントPC等の本体。以下同じ。)の所持者は,当該記録媒体について提出命令を受けるに際し,申出書を審査官に対して提出するものとする。
(2) 概要文書の提出
 特定行為者は,特定データを複製した記録媒体について提出命令を受けた後,当該記録媒体について複製した記録媒体の交付を受け,災害等により期限内に概要文書の提出ができないことについて特別の事情がある場合を除き,当該交付を受けた日から2週間以内に,当該特定データに係る次のアからカまでの事項を特定通信ごとに記載した概要文書を公正取引委員会(判別官及び審査官)に対して提出するものとする。
ア 特定データのファイル名(電子メールの場合は件名)
イ 特定データの作成又は取得の日(電子メールの場合は送信又は受信の日)
ウ 特定通信をした者の氏名,特定通信をした時に所属していた組織及び部署の名称並びに役職名(電子メールの場合は送信者及び受信者の氏名等)
エ 特定データを共有した者の氏名,特定データを共有した時に所属していた組織及び部署の名称並びに役職名(電子メールの場合は送信者及び受信者並びに同報者の氏名等)
オ 特定データの保存箇所
カ 特定データの概要(作成又は取得経緯等)

3 審査官による手続等
 審査官は,特定データが,前記1(1)及び(2)を満たすと認める場合,当該特定データについて,他の電子データと別の記録媒体に複製した上で,提出命令を行う(注11)。この場合において,審査官は,当該記録媒体を封筒等に入れて封をするものとする。
 審査官は,提出命令を行った後(立入検査において提出命令を行った場合にあっては,当該立入検査終了後),遅滞なく,特定行為者から提出のあった申出書とともに,当該記録媒体を,その封を解くことなく判別官に引き継ぐものとする。

(注11)他の電子データの複製に当たって,特定データを分離して複製することができない場合がある。この場合,特定行為者は,申出書とともに,特定データが保存されているフォルダを記載した文書を提出するものとする。審査官等は,判別手続中には特定データを印刷又は閲覧しないものとする。

4 判別手続
 特定データの判別手続は,原則として,前記第4の2と同様に行うほか,次の(1)から(4)までによるものとする。
(1) 判別官は,特定行為者が特定データを複製した記録媒体の交付を受けた日から原則として2週間以内に第一次判別手続を行う。
(2) 判別官は,判別手続を行うために必要があると認めるときは,特定行為者に対し,特定データを閲覧可能にしたもの(以下「閲覧可能文書等」という。)の提出を求める。この提出に当たっては,審査官が,閲覧可能文書等について提出命令を行い,当該閲覧可能文書等を封筒等に入れて封をした後,その封を解くことなく速やかに判別官に引き継ぐ。
(3) 判別官は,判別手続を行うために必要があると認めるときは,特定行為者に対し,特定データを特定するための情報(ハッシュ値(注12),電子メールにおけるメッセージID,電子データの容量等)の提出を求める。
(4) 特定データを複製した記録媒体に対象外文書等に相当する電子データ(以下「対象外データ」という。)が含まれている場合には,対象外文書等の写しの提出等があったことの確認に代えて,判別官は,次のア又はイの確認等を行う。
ア 当該対象外データと同一性が確保された電子データの提出等があったことを確認すること。
 この提出等に当たっては,当該対象外データと同一であることを示す文書の提出があったことを確認すること。
イ 特定データを複製した記録媒体に記録された対象外データに限り,審査官等の閲覧及び印刷が可能になる状態にすること(特定行為者が前記アの提出等に代えてイによることを申し出た場合に限る。)。

(注12)ハッシュ値とは,ハッシュ関数と呼ばれる一定の数式により求められる値であり,同一の電子データから同一の値が得られるため,電子データの同一性の確認に用いることとなる。

5 還付手続
(1) 判別官は,特定データの判別手続において前記第4の2と同様の確認及び前記4(2)から(4)までによる確認等ができた記録媒体及び閲覧可能文書等について,封筒等に入れて封をする。
(2) 前記(1)の記録媒体及び閲覧可能文書等については,前記(1)の確認等ができた旨を特定行為者に対して通知し,留置の必要がなくなったものとして速やかに還付するものとする。

第8 供述聴取における本取扱いの対象となる物件等に係る配慮

 供述聴取(任意の供述聴取及び独占禁止法第47条第1項第1号の規定に基づく審尋をいう。)において,特定被疑事件の調査に従事する審査官等は,聴取対象者に対し,原則として,判別手続中の物件及び本取扱いにより還付された物件に記載された特定通信の内容について聴取を行わないものとする。

関連ファイル

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