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経済分析報告書及び経済分析等に用いるデータ等の提出についての留意事項

経済分析報告書及び経済分析等に用いるデータ等の提出についての留意事項

令和4年5月31日
公正取引委員会
 

第1 はじめに

1 本留意事項の目的

 近年、独占禁止法違反被疑事件の調査や独占禁止法第4章に係る企業結合(会社等の株式取得・所有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転及び事業譲受け等をいう。)の審査(以下「企業結合審査」という。)において、事業者等が、自らの主張を裏付けるために、コンサルティング会社や大学等に所属する経済学等に関する専門家に委託するなどによって実施した経済分析の結果をまとめた報告書(以下「経済分析報告書」という。)を公正取引委員会に提出するケースが出てきている。また、今後、これ以外の場合においても独占禁止法の適用に関連して経済分析が実施されることが想定される。適切な内容の経済分析報告書が適時に提出された場合には、公正取引委員会が、事業者等の主張の内容を的確に理解し、評価することが可能となり、ひいては事案をより実態に即して判断することができるようになり、さらにはより迅速に事件の解明や企業結合審査の結論がもたらされる場合もある。
 公正取引委員会が、事業者等から提出された経済分析報告書をどのような場合に適切な内容のものであると評価するかについて明らかにすることは、審査の透明性や予見可能性を高めるため、事業者等にとって有益である。このような観点から、公正取引委員会は、これまでの独占禁止法違反被疑事件の調査や企業結合審査において事業者等から提出された経済分析報告書及び公正取引委員会の経済分析に関する実務を踏まえ、また、国際的収れんの観点から、いくつかの海外当局において公表されている経済分析及びデータの提出に関するベストプラクティス等も参照し、本留意事項を策定することとした。
 本留意事項は、事業者等から公正取引委員会に対して提出される経済分析報告書が踏まえていることが望ましいと考えられる原則・構成等をまとめるとともに、公正取引委員会が独自に経済分析を実施するために依頼するデータの提出や、公正取引委員会と事業者等との間の経済分析報告書に関する意思疎通に当たっての留意事項の内容を整理している。
 事業者等は、本留意事項を踏まえて経済分析報告書を提出することによって、当該経済分析報告書の説得力を高められる可能性があると考えられる。また、経済分析報告書が本留意事項を踏まえていなかったとしても、その内容が認められないというものではない。
 

2 本留意事項における経済分析の定義

 本留意事項における経済分析とは、事業者等の行為が市場、競争者、需要者等に与える影響及びその程度を明らかにしたり、事業者等の主張の根拠を示したりするために、経済学等に基づいて理論的又は実証的に実施された分析を指し、質問票の送付等を通じて得られた回答の集計データに基づいたものも含まれる。

3 本留意事項の適用範囲

 本留意事項は、これまでに公正取引委員会に対して事業者等から経済分析報告書が提出された実績を踏まえ、独占禁止法違反被疑事件の調査又は企業結合審査に関連して、事業者等が公正取引委員会に対して経済分析報告書を提出する場合や公正取引委員会が独自に経済分析を実施するために依頼するデータを提出する場合に適用される(以下本留意事項が適用される案件を「対象案件」という。)。しかしながら、対象案件以外についても、事業者等が、公正取引委員会に対して経済分析報告書を提出する場合や、公正取引委員会が独自に経済分析を実施するために依頼するデータを提出する場合には、本留意事項に準じることが望ましい。
 また、適用対象となる事業者等は、公正取引委員会に対して経済分析報告書又は公正取引委員会が独自に経済分析を実施するために依頼するデータを提出する全ての事業者等であり、独占禁止法違反被疑事件の事件関係人及び企業結合審査の当事会社だけにとどまらず、違反被疑事件の参考人、競争者・需要者等の第三者が含まれる(以下総称して「関係事業者等」という。)。

第2 公正取引委員会に提出する経済分析報告書の作成に当たっての留意事項

1 経済分析についての原則

 公正取引委員会に提出される経済分析報告書に含まれている経済分析が満たすことが望ましい四つの原則は、以下のとおりである。

⑴ 関連性

 経済分析は、対象案件において問題となる行為や関連する市場の特性を考慮したものであるなど、対象案件と関連性を有するものであること。

⑵ 明確さ・透明性

 経済分析は、それに基づく主張が明確であると同時に、可能な限り、経済学等に関する専門家でなくても理解できるようなものであること。また、競争制限のメカニズム(セオリーオブハーム)等の論点、経済分析を実施するに当たって用いられた手法及び仮定、それらを用いることを正当化する根拠(経済分析を実施するに当たって用いられた仮定と事案の性質との整合性の説明及び関係する参考文献等を含む。)、分析の結果、導かれる結論等が明確に説明されているものであること。

⑶ 整合性・頑健性

 経済分析は、関連する主張の他の根拠(関係事業者等の内部文書、関係者の供述等)との整合性の程度について検討されているものであること。また、経済分析の結果について、頑健性(注1)が確認されていること。
(注1)用いられた手法、仮定、データ等に関して小さな変更があったとしても、同様の結果を得られる程度をいう。

⑷ 再現可能性

 定量的な経済分析は、第三者によって分析結果が再現できるものであること。すなわち、公正取引委員会が同じ手法・データを用いて分析結果を再現できるように、分析に用いられたデータやプログラミングコード等の必要な情報が添付されていること。

2 経済分析報告書の構成に関する留意事項

 公正取引委員会に提出する経済分析報告書の構成に関する留意事項は、以下のとおりである。

⑴ 非専門家向けの要約

 公正取引委員会の意思決定には、経済学等に関する専門家以外の者も関与するため、そのような者も内容を理解できるような要約が添付されているべきである。

⑵ 経済分析報告書本体

 経済分析報告書本体には以下の内容が含まれているべきである。

ア 分析の目的

 分析の目的は、対象案件に関する競争制限のメカニズム等の論点となっている事項又は独占禁止法上の評価に関連するものとなっており、その内容が、明確に説明されていること。

イ 分析に用いられたデータに関する説明

 定量的な分析を実施した場合、用いられたデータに関して、以下の事項についての具体的な説明がされていること。

  • データの入手方法
  • 分析を実施するためのデータを作成する前の未加工のデータ(以下「生データ」という。)を作成・収集した主体・時期・目的・方法
  • 分析に用いた最終的なデータセットを作成するまでの、生データからの加工や外れ値(注2)の除去等のデータクリーニングや欠損値の補完に係る作業方法
  • 各変数の明確な定義、各変数の単位、データ内で用いられているコード、データの統計的母集団、記述統計(観測数、平均値、最大値、最小値等)

 また、データの粒度やサンプルサイズ等について、経済分析で当該データを用いる上での利点・欠点があれば、説明されることが望ましい。さらに、分析に用いることが適切と考えられるデータが利用できなかった場合において、それに代わるデータを用いた場合には、当該データを代替的に用いることの妥当性に関して説明されることが望ましい。
(注2)外れ値とは、他の値から大きく外れた値のことをいう。

ウ 選択された分析手法

 選択された分析手法について、当該手法が選択された理由、分析の目的との関連性、置かれている仮定、その仮定が置かれた理由等が、明確に説明されていること。また、当該手法が対象案件で用いられる上での利点・欠点、代替的な手法の有無といった事項が明確に説明されていることが望ましい。加えて、選択された分析手法が、利用可能なデータに関する制約、審査等の対象となる市場・制度の特性、経済学の先行研究、国内外の類似する事案で用いられた経済分析等を踏まえたものである場合、分析結果の説得力が高くなる可能性がある。

エ 分析結果及び解釈

 分析結果について、どのような分析結果であったか、また、独占禁止法上の評価に当たってどのような意味があるのかなど、分析結果の解釈に係る説明がなされていること。加えて、頑健性を確認するために複数の仮定又は手法に基づいた分析結果が報告されていることが望ましい。
 なお、分析結果の解釈について、論理的な飛躍があった場合、モデルに置かれた仮定が踏まえられていなかった場合、また、実施可能な頑健性に係る分析の結果が報告されていなかった場合には、当該分析結果の説得力が低くなる可能性がある。

オ 引用した参考文献や国内外の関連する事案に係る情報

 経済分析報告書本文で引用した、参考文献の出版年、著者名、題名等や国内外の関連する事案の公表年、事案名等の情報は、経済分析報告書本文の最後に一覧化されているか、あるいは引用ごとに脚注に記載されていること。

カ 経済分析報告書の作成の経緯等に係る情報

 経済分析報告書の作成の経緯(経済分析を担当した者又は当該者が所属する組織と関係事業者等との利害関係を含む。)並びに経済分析を担当した者の氏名及び略歴について、報告されていることが望ましい。

⑶ 附属資料

 通常、分析に用いられたデータ、プログラミングコード、アンケート調査の質問票等について、別途提出が必要である。また、データに係る詳細な説明、頑健性に係る分析の結果、数学的証明等は、経済分析報告書本体とは切り離して、附属資料として提出することが望ましい。

3 経済分析に関するガイダンス

 対象案件で用いられる経済分析には、折れ線等のグラフを用いてデータを可視化するような分析2つの商品の価格差について統計学的検定を行う又は相関係数を計算するといったような統計分析、価格等に関する回帰分析や需要関数の推定等の計量経済学を用いた分析(以下「計量経済分析」という。)、事業者や消費者といった経済主体の行動を説明した数理モデル(以下「理論モデル」という。)を用いた経済分析等、分析に必要なデータの種類・量、分析の前提となる仮定の種類・強弱、分析の難易度・厳密さ等が異なる多種多様な分析手法がある。対象案件ごとに、分析の目的の重要性や、データの利用可能性、過去の類似事案での利用実績等を考慮して、分析手法の選択が行われている。以下では、計量経済分析、理論モデルを用いた経済分析及び質問票を用いた調査について、特に留意すべき事項を説明する。

⑴ 計量経済分析

 計量経済分析は、経済モデルにデータを当てはめて分析することによって、関係事業者等の行為の影響及びその程度や、対象案件に係る市場の特性等を明らかにすることが可能になり、有益なものである。計量経済分析を実施し、公正取引委員会に提出する場合には、以下の事項に留意すべきである。

ア 内生性等への対処に係る説明

 同時決定バイアス(注3)、欠落変数バイアス(注4)等の内生性バイアス(注5)や、多重共線性(注6)、標本選択バイアス(注7)等の発生し得る問題について、どのような理由で問題が生じ得るのか、その影響は何か、それに対してどう対処したのか等の説明が含まれなければ、当該分析結果の説得力が低くなる可能性がある。また、操作変数(注8)を用いる場合には、当該操作変数が選ばれた理由を説明すべきである。
(注3)同時決定バイアスとは、例えば、市場における価格と数量は、需要曲線と供給曲線によって同時に決定されるにもかかわらず、価格を説明変数、数量を被説明変数として回帰分析を行ってしまった結果、推定された係数に生じるバイアスのことをいう。
(注4)欠落変数バイアスとは、被説明変数と相関がある妥当な変数が経済モデルに含まれていないことによって、推定量に生じるバイアスのことをいう。
(注5)内生性バイアスとは、ある説明変数が経済モデルの誤差項と相関を持つことによって、推定量に生じるバイアスのことをいい、同時決定バイアスや欠落変数バイアスは内生性バイアスに含まれる。
(注6)多重共線性とは、重回帰分析等において説明変数同士が高い相関関係にあることをいう。多重共線性があると、説明変数の係数についての推定結果が不安定になることが知られている。
(注7)標本選択バイアスとは、母集団から特定の条件を満たす一部の集団が選択されている又は抜け落ちている標本を抽出して推計した結果、推定量に生じるバイアスのことをいう。
(注8)操作変数とは、説明変数とは相関するが、誤差項とは相関しない変数のことをいい、内生性の問題に対処するために用いられる。

イ  分析結果の報告

 分析結果の報告に当たっては、学術論文にみられる標準的な形式で報告が行われることが望ましく、例えば、回帰分析の結果は、全ての関係する変数について、推定された係数のみならず、標準誤差(注9)、p値(注10)、区間推定(注11)の結果等が含まれることが望ましい。
(注9)標準誤差とは、説明変数の係数の推定結果のばらつきの程度に関する推定値のことをいう。
(注10)p値とは、それ以上小さくなると、設定した帰無仮説が棄却されなくなる限界の有意水準のことをいう。
    なお、有意水準とは、設定した帰無仮説を棄却するか否かについての基準となる確率をいう。
(注11)区間推定とは、標本のばらつきや推定の信頼度を考慮して、ある程度の幅を持たせた範囲で説明変数の係数の値を推定することをいう。

ウ プログラミングコード等の提出

 公正取引委員会が、提出されたあらゆる分析を再現できるよう、計量経済分析の実施に当たって使用したプログラミングコードは、データクリーニングのために用いたもの、最終的なデータセットを作成するために用いたもの、分析を実施するために用いたもの等に関わらず、全て提出されること。また、提出されるプログラミングコードについては、それぞれのプログラムの内容を第三者が理解できるように適宜コメントが付されていると同時に、計量経済分析に用いたソフトウェアの名称及びバージョンに係る情報が報告されるべきである。
 なお、プログラミングコードの提出の際には、最終的なデータセットを作成する過程で生成された中間生成物としてのデータセットも併せて提出が必要になる場合がある。

⑵ 理論モデルを用いた経済分析

 経済学に基づく議論には、理論モデルを用いた経済分析の提出(既存の理論モデルを用いたものを含む。)が有益となることがある。理論モデルを用いた経済分析の評価においては、置かれている仮定が、関係事業者等の行為、対象案件に係る市場の特性等とどの程度適合するかが重要となることから、理論モデルを用いた経済分析の提出に当たっては、全ての仮定及びそれらの仮定を置いた理由が明確に説明され、また、全ての主要な結果は、仮定からそれらが導かれるまでの過程が、可能な限り明確かつ詳細に証明されるべきである。
 この場合においても、結果の頑健性について議論されるべきである。また、理論モデルにおける特定の変数に関して、当該変数に当てはめられる数値の違いによって結果がどのように変化するのかといった数値シミュレーションを提出することが有益となる場合もある。

⑶ 質問票を用いた調査等

 一定数の需要者・事業者等に対する質問票の送付(いわゆるアンケート調査を含む。)又はヒアリングの実施を通じて得られた回答集計データに基づいた経済分析を実施する場合には、分析結果に加えて、以下についての説明も提出すべきである。

  • 調査の実施主体及び実施プロセス
  • 調査対象の選定方法(サンプルの抽出法を含む。)
  • 調査対象に対して提示された質問事項(質問票を含む。)
  • インタビューに基づく経済分析の場合、インタビューを実施する者に与えられる指示事項
  • 集計結果を整理した表

4 対象案件とは別に実施された経済分析等について

 本留意事項の内容は、対象案件に使用することのみを目的として実施された経済分析を念頭に置いているが、関係事業者等が自らの主張を裏付けるために、財・サービスの仕様等の最適化や事業の効果検証等を目的として、対象案件とは別に実施された経済分析等を公正取引委員会に提出する場合においても、基本的には本留意事項の記載と同様のことが当てはまる。特に、対象案件とは別に実施された経済分析等を公正取引委員会に提出する場合には、当該経済分析等とそれに基づく対象案件の主張との関連性が明確でなければ、その説得力は低くなる可能性があり、場合によっては公正取引委員会によって考慮されないこともある。また、本留意事項に照らして不足する点があれば、それらの内容を加えた上で提出することが望ましい。
 さらに、同一の対象案件を調査又は審査する他の競争当局に対して説明するために実施した経済分析を公正取引委員会に提出することが、関係事業者等にとって有益となる場合がある。ただし、他の競争当局における調査又は審査において説明する場合と同じ経済分析の結果を公正取引委員会の調査又は審査に用いることの妥当性について、前提条件の異同といった観点からの説明が加えられていることが望ましく、公正取引委員会からこの点について説明を求めたり、日本に関するデータ等に限定した上で再度の経済分析の実施を求めたりする場合がある。

第3 公正取引委員会が、対象案件について、独自に経済分析を実施するために依頼するデータの提出に当たっての留意事項

 公正取引委員会が、対象案件について、独自に経済分析を実施するために関係事業者等に必要なデータを求める(以下「データリクエスト」という。)場合がある。その場合、関係事業者等は公正取引委員会にデータの提出を行うに当たって以下に従うことが望ましい。
 なお、公正取引委員会に対して提出されたデータについては、関係事業者等から公正取引委員会に提出された他の情報と同様に、国家公務員法(昭和22年法律第120号)及び独占禁止法に基づく守秘義務が適用される。

1 データリクエストの内容

 公正取引委員会がデータリクエストにおいて求めるデータは、販売実績データや月次の損益計算書等、一般に、関係事業者等が投資家向けなどとして対外的に公表している財務データ等の情報よりも詳細なものが中心である。公正取引委員会が求めるデータの期間は、市場の状況の変化等にもよるが、少なくとも過去数年分にわたることが通常である。例えば、月次データの場合、5年分以上の長期間のデータを求めることが多い。関係事業者等がどのようなデータを所有し、管理を行っているかを把握するため、まずは、直近1か月分のデータ等、経済分析に通常必要となるデータよりも期間を限定したデータの提出を関係事業者等に求めることがある(以下「サンプルデータリクエスト」という。)。

2 データの加工・変数・コード

 データの提出に当たって、以下の点に留意することが必要である。

  • データの提出は、一般に、提出準備に時間を要することが多いため、公正取引委員会が経済分析実施のためにデータリクエストやサンプルデータリクエストを行った場合には、関係事業者等は可能な限り優先的に提出準備を進めることが、関係事業者等と公正取引委員会の双方にとって望ましい。
  • データの提出に当たっては、公正取引委員会が必要と判断する場合には、可能な限り生データを提出すること。同時に、データを提出する際は、データに含まれる個人情報について可能な範囲で取り除くなど、個人のプライバシーを保護する適切な措置を講じるべきである。
  • データの内容の説明・加工等に係る情報は可能な限り詳細に記載されること。一方で、公正取引委員会がその内容を確認、把握するのに時間が掛かることから、可能な限り速やかに提出されるべきである。
  • データ内で用いられている変数については、単位が明らかにされること。例えば、価格や数量等に係るデータについて「0」やマイナスの値などが入力されている場合など、通常とは異なる特殊な処理が行われている可能性がある値については、可能な限り説明が付記されることが望ましい。
  • 店舗や工場ごとにデータの構造等(注12)が異なる場合には、サンプルデータの提出時に全てのデータ構造を網羅するような形で提出されることが望ましい。また、過去にデータの構造等に変更が加えられた場合には、たとえ公正取引委員会がサンプルデータリクエストで直近1か月分のデータの提出を求めている場合であっても、変更が加えられる前の月のデータも提出することが望ましい。
  • データの項目やデータ内で用いられている製品名や取引先等についてのコードについては、定義の説明を付記したり、関係事業者等の内部で用いられている既存のコードブック等を添付したりすることが望ましい。
    (注12)データの構造等とは、データの項目、週次、月次等の頻度等をいう。

第4 公正取引委員会との意思疎通

 関係事業者等は、経済分析報告書の作成及び提出に当たって、独占禁止法違反被疑事件の調査や企業結合審査について必要な手続に従い、手続上許容される範囲で、公正取引委員会との間で意思疎通を可能な限り早期に、かつ十分に行うことが、関係事業者等と公正取引委員会の双方にとって有益である。

1 早期の意思疎通

 公正取引委員会が経済分析報告書を評価するに当たっては、再現可能性や頑健性を確認する必要があり、時間を要することから、関係事業者等は、経済分析報告書を可能な限り早期に提出することが望ましい。
 経済分析報告書が早期に提出された場合には、公正取引委員会事務総局官房総務課経済分析室の対象案件を担当する者(以下「公正取引委員会の経済分析担当者」という。)が、提出された経済分析報告書をより的確に理解し、適切に評価することができ、提出された経済分析の有用性が高まると考えられる。一方、経済分析の提出時期が遅くなるほど、そのような時間が不十分となり、提出された経済分析報告書が公正取引委員会に考慮されにくくなる可能性が高くなると考えられる。
 同様に、審査等の過程で、公正取引委員会の経済分析担当者との会合で経済分析の内容を説明・議論する場合には、可能な限り、当該会合の前に十分な時間的余裕を持って、説明資料等を提出することが望ましい。そのことによって、当該会合における意思疎通をより有益なものとすることが可能になると考えられる。

2 十分な意思疎通

 関係事業者等は、公正取引委員会の経済分析担当者との間で、競争制限のメカニズム等の論点に関し、意思疎通を十分に行うことで、関係事業者等が実施することが有用な経済分析等についての理解を深めることができ、同様に、公正取引委員会の経済分析担当者も、関係事業者等の主張をより良く理解できると考えられる。
 このような十分な意思疎通は、経済分析のためのデータの提出を含め、効率的・効果的な経済分析の実施及び提出を可能とし、審査等のあらゆる段階で有用である。
 そのような経済分析に関する意思疎通を適切に行うため、公正取引委員会との会合に、関係事業者等の側において経済分析を担当する者と公正取引委員会の経済分析担当者が同席できるよう、事前に公正取引委員会との間で連絡を取ることが望ましい。

 

関連ファイル

問い合わせ先

公正取引委員会事務総局官房総務課経済分析室
電話 03-3581-4919(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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