独占禁止法審査手続に関する指針

平成27年12月25日
公正取引委員会決定
改正 令和2年7月7日

はじめに

 公正取引委員会は,今般,行政調査手続(注1)の適正性をより一層確保する観点から,これまでの実務を踏まえて行政調査手続の標準的な実施手順や留意事項等を本指針において明確化し,独占禁止法違反被疑事件の行政調査(以下「事件調査」という。)に携わる職員に周知徹底することとした。また,同様の観点から,調査手続の透明性を高め,事件調査の円滑な実施に資するよう,本指針を定めて公表することにより,その内容を広く一般に共有することとしたものである。(注2)

(注1)公正取引委員会の独占禁止法違反被疑事件の調査手続には,行政調査手続(排除措置命令等の行政処分の対象となり得る独占禁止法違反被疑事件を審査するための手続)と犯則調査手続(刑事処分を求める告発の対象となり得る独占禁止法違反被疑事件を調査するための手続)の二つがあるが,このうち,本指針は,公正取引委員会の行政調査手続を対象としている。

(注2)本指針の策定・公表に併せて,公正取引委員会の行政調査手続における標準的な実施手順等について,本指針の内容を踏まえて事業者等向けに作成した資料(「独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続の概要について」〔平成27年12月公正取引委員会〕。以下「事業者等向け説明資料」という。)を公表している。

第1  総論

1  独占禁止法の目的と公正取引委員会の使命
 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)は,私的独占,不当な取引制限,不公正な取引方法等の行為を禁止し,事業活動の不当な拘束を排除すること等により,公正かつ自由な競争を促進し,もって,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的としている。
 独占禁止法の目的を達成するため,公正取引委員会が設置されており,市場における基本ルールである独占禁止法を厳正・的確に執行し,競争秩序を早期に回復するための措置を講ずることが公正取引委員会に求められている。
 公正取引委員会は,独占禁止法違反の有無を明らかにし,違反行為を排除するために必要な措置等を命じるため,違反被疑事業者等(注3)に対する調査権限を付与されており,行政調査手続において,法令に基づき手続の適正性を確保しつつ,罰則により間接的に履行を担保するという間接強制権限に基づいて立入検査,提出命令,留置,出頭命令及び審尋,報告命令等の処分を行う。このほか,違反被疑事業者等の任意の協力に基づく供述聴取,報告依頼等により事件調査を行う。

(注3)「違反被疑事業者等」とは,違反が疑われる事業者(個人事業主を含む。),事業者団体,その役員及び従業員等の事件関係人のほか,参考人を含む。

2  公正取引委員会における事件調査の体制と監督者の責務
(1) 公正取引委員会は,独占禁止法第47条第2項の規定により職員を審査官として指定し,事件調査に当たらせている。公正取引委員会において,事件調査は審査局が担当しており,審査局長が,審査管理官の助けを得て,審査長又は上席審査専門官に命じて,これを行わせる。審査長及び上席審査専門官は,担当事件において,審査官等(審査官その他の事件調査に従事する職員をいう。以下同じ。)を指揮・監督する。

(2) 審査局長,審査管理官,審査長及び上席審査専門官(審査統括官の置かれている地方事務所においては審査統括官)は,自ら本指針に従って事件調査に携わるとともに,指揮下の審査官等に対して,本指針に従った事件調査を実施するよう指導・監督する。また,審査長,上席審査専門官等は,違反被疑事業者等から,直接又は代理人を通じて,調査手法についての申入れその他担当事件に関して意見があった場合,誠意をもってこれに対応するものとする。ただし,これらの意見に拘束されるものではない。

3  事件調査に携わる職員の心構え
 事件調査に携わる職員は,以下の点に留意して業務を遂行するものとする。

(1) 事件調査における心構え
 事件調査に携わる職員は,独占禁止法の目的を常に念頭に置き,独占禁止法の厳正・的確な執行という公正取引委員会の使命を十分に果たすため,冷静な判断力と実態解明への確固たる信念をもって,着実に事件調査を実施しなければならない。

(2) 綱紀・品位・秘密の保持
 事件調査に携わる職員は,国民の信用・信頼を確保するため,常に綱紀・品位の保持に努めるとともに,業務の遂行に当たって知り得た秘密を漏らしてはならない(独占禁止法第39条)。

(3) 適正な手続の遵守
 事件調査に携わる職員は,違反被疑事業者等に対して法令上の権限を行使する立場にあること及び手続の適正性を確保することが重要であることを自覚しなければならない。事件調査に当たっては,違反被疑事業者等の理解と協力が得られるよう,当該事件調査に係る手続について必要な説明を行うとともに,威迫,強要等と受け取られるような態度で接することなく,常に法令の規定に従った適正な手続に基づいてその権限を行使しなければならない。

(4) 効率的・効果的な事件調査と多面的な検討
 事件調査に携わる職員は,違反被疑事業者等の説明に真摯に耳を傾けるとともに,効率的・効果的な事件調査によって事案の実態を解明するよう努めなければならない。また,違反被疑事実の立証に当たっては,物的証拠その他当該被疑事実に関する十分な証拠を収集するよう努めるとともに,聴取対象者の供述については,予断を排して慎重かつ詳細に聴取し,その内容の合理性,客観的事実との整合性等について十分に検討した上で,その信用性について判断しなければならない。

第2  事件調査手続

1  立入検査
(1) 根拠・法的性格
 公正取引委員会は,独占禁止法第47条第1項第4号の規定に基づき,違反被疑事業者等の営業所その他必要な場所に立ち入り,業務及び財産の状況,帳簿書類その他の物件を検査すること(以下「立入検査」という。)ができる。また,同項第3号の規定に基づき,事件調査に必要と考えられる帳簿書類その他の物件について,その所持者に提出を命じ,当該物件を留めて置くことができる。
 独占禁止法第47条に規定される立入検査その他の処分は,違反被疑事業者等に調査応諾の行政上の義務を課し,その履行が罰則(独占禁止法第94条)によって担保されているという意味で間接強制力を伴ったものである。したがって,罰則が適用されることがあるという意味において違反被疑事業者等が,これに応じるか否かを任意に判断できる性格のものではないが,相手方があえてこれを拒否した場合に直接的物理的に実力を行使して強制し得るものではない。なお,正当な理由なくこれを拒否した違反被疑事業者等には罰則が適用されることがある。
 また,独占禁止法第47条の規定に基づく間接強制力を伴う立入検査ではなく,違反被疑事業者等の事業所等に赴き,相手方の任意の協力に基づいて資料の提出等を依頼する場合もある。

(2) 立入検査時の手続・説明事項
 立入検査に際して,審査官は,立入検査場所の責任者等に対し,身分を示す審査官証を提示した上で,行政調査の根拠条文(独占禁止法第47条),事件名,違反被疑事実の要旨,関係法条等を記載した告知書(公正取引委員会の審査に関する規則〔平成17年公正取引委員会規則第5号。以下「審査規則」という。〕第20条)を交付し,検査の円滑な実施に協力を求めるとともに,検査に応じない場合には罰則(独占禁止法第94条)が適用されることがある旨を説明する。また,併せて,事業者等向け説明資料を手交する。
 なお,違反被疑事業者等の事業所等に赴き,相手方の同意の下で資料の提出等を依頼する場合には,審査官等は,相手方に対し,身分証明書等を提示した上で,当該事件調査の趣旨及び独占禁止法第47条の規定に基づくものではなく相手方の任意の協力に基づいて行うものであることを説明した上で,相手方の同意を得て行う。

(3) 立入検査の対象範囲
 立入検査は,違反被疑事業者等の営業部門,経理部門等その名称にかかわらず,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した場所に対して行うものであり,従業員の居宅等であっても,違反被疑事実に関する資料が存在することが疑われ,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した場合には立入検査の対象となる。

(4) 物件の提出及び留置に係る手続
ア  物件の提出命令は,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した範囲で行うものであり,個人の所有物のように,一般にプライバシー性の高いもの(手帳,携帯電話等)であっても,違反被疑事実の立証に資する情報が含まれていることが疑われるため,審査官が事件調査に必要であると合理的に判断した場合には提出を命じる。
 なお,提出を命じる際には,当該物件の原物について現状のまま提出を命じる。サーバ,クライアントPC等に保存された電子データ(電子メール等のデータを含む。)については,記録媒体に複製及び保存したもの(必要に応じてクライアントPC等の本体)の提出を命じる。
イ  物件の提出を命じ,留め置く際には,提出命令書及び留置物に係る通知書に対象物件の品目を記載した目録を添付する(審査規則第9条及び第16条)。当該目録には,帳簿書類その他の物件の標題等を記載するとともに,所在していた場所や所持者,管理者等を記載して,物件を特定する。留め置くに当たっては,立入検査場所の責任者等の面前で物件を1点ずつ提示し,全物件について当該目録の記載との照合を行う。
ウ  立入検査当日における提出物件の謄写の求めについては,違反被疑事業者等の権利として認められるものではないが,日々の事業活動に用いる必要があると認められるものについて,立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で認めるものとする。また,違反被疑事業者等からの求めがあれば,事件調査に支障を生じない範囲で,立入検査の翌日以降に,日程調整を行った上で,公正取引委員会が指定する場所において,提出物件(留置物)の閲覧・謄写を認める(審査規則第18条)。日程調整を行うに当たっては,違反被疑事業者等ができる限り早期に閲覧・謄写することができるよう配慮する。
 なお,謄写の方法については,違反被疑事業者等所有の複写機だけではなく,デジタルカメラ,スキャナー等の電子機器を用いることも認められる。
エ  留置物のうち,留置の必要がなくなったものについては,これを速やかに還付する(審査規則第17条)。

(5) 立入検査における弁護士の立会い
 立入検査において,審査官は,立入検査場所の責任者等を立ち会わせるほか,違反被疑事業者等からの求めがあれば,立入検査の円滑な実施に支障がない範囲で弁護士の立会いを認めるものとする。ただし,弁護士の立会いは,違反被疑事業者等の権利として認められるものではないため,審査官は,弁護士が到着するまで立入検査の開始を待つ必要はない。

2  供述聴取
(1) 根拠・法的性格
 供述聴取には,任意の供述聴取及び間接強制力を伴う審尋がある。任意の供述聴取は,聴取対象者の任意の協力に基づいて供述の聴取を行うものであり,審尋は,独占禁止法第47条第1項第1号の規定に基づいて,聴取対象者に出頭を命じた上で供述の聴取を行うものである。審尋の場合には,聴取対象者が正当な理由なく出頭せず又は陳述をせず若しくは虚偽の陳述をした場合には罰則(独占禁止法第94条)が適用されることがある。

(2) 供述聴取時の手続・説明事項
ア  任意の供述聴取
(ア) 任意の供述聴取は,審査官等が,直接又は違反被疑事業者等若しくは代理人を通じて,聴取対象者の都合を確認し,その都度,任意の協力に基づいて行う供述聴取である旨を明確にした上で,聴取対象者の同意を得て行う。
(イ) 任意の供述聴取を行うに当たって,審査官等は,冒頭(供述聴取が複数回に及ぶ場合は初回の冒頭),聴取対象者に対し,身分証明書等を提示した上で,任意の供述聴取である旨及び任意の供述聴取であっても事案の実態を解明して法目的を達成するためには自らの経験・認識に基づき事実を話してもらう必要がある旨を説明する。また,審査官等は聴取対象者に対して,任意の供述聴取に協力が得られない場合には別途審尋の手続に移行することがある旨を,必要に応じて説明する。
イ  審尋
(ア) 独占禁止法第47条の規定に基づき,聴取対象者に出頭を命じて審尋する場合は,その都度,出頭命令書を送達して行う(審査規則第9条)。出頭命令書には,法的根拠,出頭すべき日時及び場所並びに命令に応じない場合の罰則(独占禁止法第94条)について記載する。
(イ) 審尋を行うに当たって,審査官は,冒頭,聴取対象者に対し,審査官証を提示した上で,その法的性格(独占禁止法第47条の規定に基づくものである旨)を説明するとともに,陳述を拒み又は虚偽の陳述をした場合には罰則(独占禁止法第94条)が適用されることがある旨を説明する。
ウ  任意の供述聴取に係る事前連絡時又は審尋に係る出頭命令時に,審査官等は,聴取対象者に対し,直接又は違反被疑事業者等若しくは代理人を通じて,事業者等向け説明資料のウェブ掲載場所を伝えるとともに,聴取対象者が事前に同資料の内容を確認していない場合には,当該聴取対象者に対する初回の供述聴取の開始時に,事業者等向け説明資料を手交する。
エ  供述聴取を行うに当たって,審査官等は,必要に応じて,あらかじめ聴取対象者に対し,供述を録取した書面は,意見聴取手続(独占禁止法第49条等)において,閲覧・謄写の対象となる可能性がある旨及び閲覧・謄写制度の趣旨・目的等(目的外利用が認められない旨を含む。)(注4)について説明する。

(注4)意見聴取の通知を受けた事業者等が,意見聴取手続において閲覧・謄写した供述調書等の内容をもって,自社従業員に対する懲戒等の不利益取扱い,他の事業者に対する報復行為等を行う可能性があるときは,「第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるとき」(独占禁止法第52条第1項)に該当し,公正取引委員会は当該供述調書等の閲覧・謄写を拒むことができる。このように,意見聴取の通知を受けた事業者等が閲覧・謄写した内容を意見聴取手続又は排除措置命令等の取消訴訟の準備以外に利用することは目的外利用となるため,閲覧・謄写の申請書の様式には,申請者が目的外利用はしないことを約す一文が置かれている。

(3) 供述聴取における留意事項
ア  供述聴取を行うに当たって,審査官等は,威迫,強要その他供述の任意性を疑われるような方法を用いてはならない。また,審査官等は,自己が期待し,又は希望する供述を聴取対象者に示唆する等の方法により,みだりに供述を誘導し,供述の代償として利益を供与すべきことを約束し,その他供述の真実性を失わせるおそれのある方法を用いてはならない。
イ  供述聴取時の弁護士を含む第三者の立会い(審査官等が供述聴取の適正円滑な実施の観点から依頼した通訳人,弁護士等を除く。),供述聴取過程の録音・録画,調書作成時における聴取対象者への調書の写しの交付及び供述聴取時における聴取対象者によるメモ(審査官等が供述聴取の適正円滑な実施の観点から認めた聴取対象者による書き取りは含まない。)の録取については,事案の実態解明の妨げになることが懸念されることなどから,これらを認めない。
ウ  審査官等は,聴取対象者が課徴金の減免に係る事実の報告及び資料の提出(独占禁止法第7条の4第1項から第4項まで〔独占禁止法第8条の3において読み替えて準用する場合を含む。〕)を行った事業者の役員及び従業員等である場合において,当該聴取対象者からの求めがあったときは,供述聴取終了後その場で,当該聴取対象者による供述内容に係るメモの作成を認めるとともに,当該メモの作成のために必要な範囲で当該聴取対象者からの質問に応じるものとする。

(4) 聴取時間・休憩時間
ア  供述聴取は,1日につき8時間(休憩時間を除く。)までを原則とし,聴取時間が1日につき8時間を超える場合には,聴取対象者の同意を得るものとする。また,やむを得ない事情がない限り,深夜(午後10時以降)に及ぶ聴取は避けなければならない。
イ  供述聴取において,聴取が長時間となる場合には,審査官等は,聴取対象者の体調等も考慮した上で,休憩時間を適時適切に確保する。
 なお,休憩時間は,原則として聴取対象者の行動を制約せず,審査官等が指定した休憩時間内に,聴取対象者が弁護士等の外部の者と連絡を取ることや記憶に基づいてメモを取ることを妨げないものとする。ただし,例えば,複数の関係者を対象として,同日の近接する時間に聴取を実施する場合など,休憩時間に聴取対象者が他の事件関係者と接触し,供述内容の調整(口裏合わせ等)が行われるなどのおそれがあるときは,例外的に,審査官等が付き添う。
 また,食事時間等の比較的長めの休憩時間を取る場合には,供述聴取に支障が生じない範囲で,聴取対象者が必要に応じて弁護士等に相談できる時間となるよう配慮しつつ適切な時間を確保するようにする。
ウ  審査官等は,供述聴取を行ったときは,聴取時間及び休憩時間について記録する。 

(5) 調書の作成・署名押印の際の手続
ア  審査官等は,聴取対象者が任意に供述した場合において,必要があると認めるときは,供述調書を作成するものとする。また,審査官は,独占禁止法第47条の規定に基づいて聴取対象者を審尋したときは,審尋調書を作成しなければならない(審査規則第11条及び第13条)。
イ  審査官等は,違反被疑事実の立証に当たって,それまでに収集した様々な物的証拠や供述等を総合的に勘案した上で,当該事件に関係し,かつ,必要と認める内容について,聴取対象者の供述内容を正確に録取し,供述調書又は審尋調書を作成する。聴取対象者が供述したことを速記録のように一言一句録取することは要しない。
ウ  審査官等は,供述調書又は審尋調書を作成した場合には,これを聴取対象者に読み聞かせ,又は閲覧させて,誤りがないかを問い,聴取対象者が誤りのないことを申し立てたときは,聴取対象者の署名押印を得て完成させる。聴取対象者が,自ら供述した内容についての増減変更(調書の記載の追加,削除及び訂正)の申立てをしたときは,審査官等は,その趣旨を十分に確認した上で,当該申立ての内容を調書に記載し又は該当部分を修正し,聴取対象者の署名押印を得る。また,聴取対象者が誤りのないことを申し立てたにもかかわらず,署名押印を拒絶したときは,審査官等は,その旨を調書に記載するものとする(審査規則第11条及び第13条)。

3  報告命令
(1) 根拠・法的性格
 公正取引委員会は,独占禁止法第47条第1項第1号の規定に基づき,違反被疑事業者等に対し,事件調査に必要な情報について,報告を求めること(以下「報告命令」という。)ができる。これに違反して,違反被疑事業者等が報告をせず又は虚偽の報告をした場合には罰則(独占禁止法第94条)が適用されることがある。
 なお,独占禁止法第47条の規定に基づく間接強制力を伴う報告命令ではなく,違反被疑事業者等の任意の協力に基づいて報告を依頼する場合もある。

(2) 報告命令時の手続
 独占禁止法第47条の規定に基づき,違反被疑事業者等から報告を徴する場合は,報告命令書を送達して行う(審査規則第9条)。報告命令書には,報告書(回答)の様式を添付した上,法的根拠,報告の期限及び命令に応じない場合の罰則(独占禁止法第94条)について記載する。
 なお,違反被疑事業者等の任意の協力に基づいて報告を依頼する場合には,原則として,書面(報告書〔回答〕の様式を添付し,報告の期限を記載した報告依頼書等)を送付して行う。

4  審査官の処分に対する異議申立て,任意の供述聴取に関する苦情申立て
 独占禁止法第47条の規定に基づいて審査官がした立入検査,審尋等の処分を受けた者が,当該処分に不服があるときは,処分を受けた日から1週間以内に,その理由を記載した文書をもって,公正取引委員会に異議の申立てをすることができる(審査規則第22条)。
 また,任意の供述聴取については,聴取対象者等が,聴取において本指針「第2 2 供述聴取」に反する審査官等の言動等があったとする場合には,当該聴取を受けた日から1週間以内に,書面により,公正取引委員会に苦情を申し立てることができる。
 審査官等は,常に適正な手続に基づいてその権限を行使すべきであり,異議や苦情を申し立てられるような対応を行わないことが求められるが,仮に異議や苦情を申し立てられた場合には,当該申立てに係る調査に,誠実に対応するものとする。

関連条文(抜粋)

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)
【秘密保持義務】
第三十九条 委員長、委員及び公正取引委員会の職員並びに委員長、委員又は公正取引委員会の職員であつた者は、その職務に関して知得した事業者の秘密を他に漏し、又は窃用してはならない。

【調査のための強制処分】
第四十七条 公正取引委員会は、事件について必要な調査をするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋し、又はこれらの者から意見若しくは報告を徴すること。
二 鑑定人に出頭を命じて鑑定させること。
三 帳簿書類その他の物件の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出物件を留めて置くこと。
四 事件関係人の営業所その他必要な場所に立ち入り、業務及び財産の状況、帳簿書類その他の物件を検査すること。
[2] 公正取引委員会が相当と認めるときは、政令で定めるところにより、公正取引委員会の職員を審査官に指定し、前項の処分をさせることができる。
[3] 前項の規定により職員に立入検査をさせる場合においては、これに身分を示す証明書を携帯させ、関係者に提示させなければならない。
[4] 第一項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

【排除措置命令に係る意見聴取】
第四十九条 公正取引委員会は、第七条第一項若しくは第二項(第八条の二第二項及び第二十条第二項において準用する場合を含む。)、第八条の二第一項若しくは第三項、第十七条の二又は第二十条第一項の規定による命令(以下「排除措置命令」という。)をしようとするときは、当該排除措置命令の名宛人となるべき者について、意見聴取を行わなければならない。

【証拠の閲覧・謄写】
第五十二条 当事者は、第五十条第一項の規定による通知があつた時から意見聴取が終結する時までの間、公正取引委員会に対し、当該意見聴取に係る事件について公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠の閲覧又は謄写(謄写については、当該証拠のうち、当該当事者若しくはその従業員が提出したもの又は当該当事者若しくはその従業員の供述を録取したものとして公正取引委員会規則で定めるものの謄写に限る。以下この条において同じ。)を求めることができる。この場合において、公正取引委員会は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、その閲覧又は謄写を拒むことができない。
[2] 前項の規定は、当事者が、意見聴取の進行に応じて必要となつた証拠の閲覧又は謄写を更に求めることを妨げない。
[3] 公正取引委員会は、前二項の閲覧又は謄写について日時及び場所を指定することができる。

【検査妨害等の罪】
第九十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第四十七条第一項第一号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による事件関係人又は参考人に対する処分に違反して出頭せず、陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、又は報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者
二 第四十七条第一項第二号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による鑑定人に対する処分に違反して出頭せず、鑑定をせず、又は虚偽の鑑定をした者
三 第四十七条第一項第三号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による物件の所持者に対する処分に違反して物件を提出しない者
四 第四十七条第一項第四号若しくは第二項又は第五十六条第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避した者

公正取引委員会の審査に関する規則(平成十七年公正取引委員会規則第五号)
(審査官の行う処分)
第九条 審査官は、法第四十七条第二項の規定に基づいて同条第一項に規定する処分をする場合は、次の各号に掲げる区分に応じ当該各号に掲げる文書を送達して、これを行わなければならない。
一 事件関係人又は参考人に出頭を命じて審尋する場合 出頭命令書
二 前号に掲げる者から意見又は報告を徴する場合 報告命令書
三 鑑定人に出頭を命じて鑑定させる場合 鑑定命令書
四 帳簿書類その他の物件の所持者に当該物件の提出を命ずる場合 提出命令書
2 前項の文書には、次の事項を記載し、毎葉に契印しなければならない。
一 事件名
二 相手方の氏名又は名称
三 相手方に求める事項
四 出頭命令書又は提出命令書については出頭又は提出すべき日時及び場所
五 命令に応じない場合の法律上の制裁
3 提出命令書には、提出を命じる物件を記載し、又はその品目を記載した目録を添付しなければならない。

(審尋調書)
第十一条 審査官は、法第四十七条第二項の規定に基づいて同条第一項第一号の規定により事件関係人又は参考人を審尋したときは、審尋調書を作成し、これを供述人に読み聞かせ、又は供述人に閲覧させて、誤りがないかどうかを問い、供述人が増減変更の申立てをしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
2 供述人が前項の調書に誤りのないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。
3 前項の場合において、供述人が署名することができないときは、他人に代書させ、押印することができないときは、指印するものとする。ただし、署名を他人に代書させた場合には、代書した者がその事由を調書に記載して署名押印しなければならない。
4 第二項の場合において、供述人が署名押印を拒絶したときは、その旨を調書に記載するものとする。

(供述調書)
第十三条 委員会の職員は、事件関係人又は参考人が任意に供述した場合において、必要があると認めるときは、これを録取した供述調書を作成するものとする。
2 前二条の規定は、前項の調書について準用する。

(留置調書)
第十五条 審査官は、法第四十七条第二項の規定に基づいて同条第一項第三号の規定により提出物件を留め置いたときは、留置調書を作成しなければならない。
2 前項の調書には、事件名、所有者及び差出人の氏名、職業及び住所又は就業場所並びに留置の年月日及び場所を記載しなければならない。
3 第一項の調書には、留置物の品目を記載した目録を添付しなければならない。

(留置物に係る通知等)
第十六条 審査官は、法第四十七条第二項の規定に基づいて同条第一項第三号の規定により提出物件を留め置いたときは、差出人に対し、当該物件を留め置いた旨を文書で通知しなければならない。
2 前項の文書には、前条第三項の目録の写しを添付しなければならない。
3 留置物の所有者から請求があったときは、前条第三項の目録の写しを交付しなければならない。

(留置物の還付・仮還付)
第十七条 留置物で留置の必要がなくなったものは、事件の終結を待たないで、これを還付しなければならない。
2 留置物は、所有者又は差出人の請求により、仮にこれを還付することができる。

(提出命令の対象物件についての閲覧及び謄写)
第十八条 法第四十七条第一項第三号の規定により帳簿書類その他の物件の提出を命じられた者は、当該物件を閲覧し、又は謄写することができる。ただし、事件の審査に特に支障を生ずることとなる場合にはこの限りではない。
2 前項の規定による閲覧又は謄写をさせる場合、当該物件の提出を命じられた者の意見を斟酌して、日時、場所及び方法を指定するものとする。

(被疑事実等の告知)
第二十条 審査官は、法第四十七条第二項の規定に基づいて同条第一項第四号の規定により検査をする場合には、次に掲げる事項を記載した文書を関係者に交付するものとする。
一 事件名
二 法の規定に違反する被疑事実の要旨
三 関係法条

(審査官の処分に対する異議の申立て)
第二十二条 法第四十七条第二項の規定に基づいて審査官がした同条第一項各号に規定する処分を受けた者は、当該処分に不服のあるときは、処分を受けた日から一週間以内に、その理由を記載した文書をもって、委員会に異議の申立てをすることができる。
2 委員会は、異議の申立てに理由があると認めるときは、異議を申し立てられた処分の撤回、取消し又は変更を審査官に命じ、これを申立人に通知するものとする。
3 委員会は、異議の申立てを却下したときは、これを申立人に通知しなければならない。この場合においては、その理由を示さなければならない。

関連ファイル

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