1 本件の概要
(1) 本件は,日本短資(株),山根短資(株)及び名古屋短資(株)の3社が,低金利政策の長期化や即時グロス決済の導入等の短期金融市場の変化に対して,重複部門,拠点の統合等による経営の効率化及びより強固となる財務基盤を背景に積極的な業務展開を図るために合併するものである。
(2) 短期金融市場は,金融機関が資金決済取引を行うインターバンク市場と,一般事業会社及び金融機関が短期的な資金運用を行うオープン市場とに大別される。
インターバンク市場はコール市場(有担保・無担保)と手形市場とに,オープン市場は譲渡性預金(CD)市場,コマーシャルペーパー(CP)市場,短期国債証券(TB)市場,債券レポ(貸借取引)市場等に大別されるものの,短期資金を取り扱うという点では同一の機能を果たしており,代替性が認められる。
2 独占禁止法上の考え方
(1) 一定の取引分野
本件においては,インターバンク市場及びオープン市場のそれぞれにおいて一定の取引分野が成立するものと判断した。
(2) 競争への影響
本件合併においては,以下の事情を総合的に勘案すれば,(1)で画定した取引分野における競争を実質的に制限することとはならないと判断した。
ア インターバンク市場
当事会社のインターバンク市場における取扱高シェア(短資会社6社ベース)は,合併後45%強で,その順位は第1位となる。
しかしながら,次のような状況が認められる。
(ア) 主要な資金の取り手である都市銀行は,即時グロス決済制度の導入前から,短資会社を経由しないで金融機関同士で直接行う資金決済取引(以下「DD取引」という。)を増加させている。DD取引の規模は,コール市場における取引高の3割程度に上っており,今後もさらに増加するものと見込まれ,これらDD取引の競争圧力が存在する。
(イ) 最近では,上記のような市場環境を踏まえ,大口取引先からの手数料の値下げ圧力が強くなっていることから,短資会社の仲介手数料の引下げ競争が進んでいる。
(ウ) 手形市場では,日銀が手形オペの参加資格を銀行や系統金融機関にも広げたことから,新規参入がなされている。
イ オープン市場
オープン市場における主要な取引(CD,CP,TB等)の取扱高について,銀行,証券会社等金融機関を含めた全市場参加者ベースのシェアをみると,当事会社のシェアは,市場全体で15%弱にとどまる。
また,オープン市場においては,短資会社は,他の市場参加者と同じくディーリング取引の当事者の1つとして参加するものであり,都市銀行や大手証券会社といった有力な競争者が多数存在する。