4 医療用医薬品の物流部門に係る業務提携

 医薬品メーカー2社が,医療用医薬品の物流部門を共同化することは,ファイアウォールを設置することにより情報が遮断され,提携両社間の製造・販売部門における競争関係が確保される場合には,直ちに独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 A社及びB社(共に医薬品メーカー)

2 相談の要旨

(1) A社及びB社は,医薬品の製造・販売を行う会社であり,医療用医薬品Xの販売市場におけるシェアは,A社が40%,B社が20%である。A社及びB社は,それぞれ物流会社を設立し,病院等に医療用医薬品Xを供給している。

(2) 医療用医薬品Xについては,大規模災害など緊急時の迅速かつ安定的な供給が要請されるところ,A社及びB社はそのためのインフラとして,共同配送・保管を内容とした次のような物流部門の業務提携を検討しているが,独占禁止法上問題ないか。

ア 両社は,それぞれの物流会社に,両社の製品について常時一定量の在庫を置く。

イ 両社は,病院等から注文を受けると,当該病院等の最寄りの物流会社に連絡し,当該物流会社は,注文のあった製品について所定の数量を当該病院等に納入する。

ウ 両社は,自社の納入数量等の情報が,物流会社を通じて,相手方にも利用可能とならないように,相互に当該物流会社との間に,情報遮断のための措置(ファイアウォール)を講ずる。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 本件は競争事業者間の業務提携であり,不当な取引制限(独占禁止法第3条後段)の観点から,医療用医薬品Xの販売に係る一定の取引分野における競争が実質的に制限されるか検討する。

(2) 医療用医薬品Xの販売市場における,本件提携後におけるA社及びB社の販売シェアの合計は約60%となる。
 しかしながら,

ア 本件については,提携の対象が共同配送・保管に限られ,医療用医薬品Xの供給に要する費用に占めるこれらの費用は5%にとどまり,両社間の価格競争の余地が無くなるとまでは認められないこと,

イ また,共同配送等を通じて自社の販売情報が相互に利用できる場合,これらは競争を回避するための手段として用いられるおそれがあるが,本件については,情報遮断のための措置を講じるとしており,この措置が確実に実施されるのであれば,このようなおそれがあるとは認められないこと

 などから,医療用医薬品Xに係る一定の取引分野における競争が実質的に制限されることはなく,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

4 回答の要旨

 本件A社及びB社間での業務提携については,提携の対象が両社の配送・保管の共同化に限られ,また,共同化に伴い物流会社に提供される両社の販売情報についても,情報遮断のための措置が確実に講じられるのであれば,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

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