書籍とフィギュアのセット商品を対象とした再販売価格維持契約は,独占禁止法の適用除外となる『著作物』に該当せず,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例
1 相談者
A社(大手出版社)
2 相談の要旨
A社は,自社の書籍のマーケティングの一環として,書籍に登場するキャラクターのフィギュア(漫画やアニメのキャラクターなどの立体造形物)を作成し,当該書籍とフィギュアのセット商品として販売することを検討している。その際,当該セット商品についても書籍として再販売価格維持契約の対象に含めることとしたいが,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 独占禁止法第23条第4項により再販売価格維持行為が独占禁止法の適用除外とされる「著作物」は,昭和28年の再販制度導入時に定価販売慣行があった書籍,雑誌,新聞及びレコード盤の4品目並びにレコード盤と機能・効用が同一である音楽用テープ及び音楽用CDの2品目の計6品目に限定される(平成4年4月15日公表文。平成13年8月1日審決)。
(2) 上記,独占禁止法の適用が除外される「著作物」を,玩具類,DVDビデオ,CD-ROM,化粧品,Tシャツ等の独占禁止法の適用が除外されない商品(以下「非適用除外品」という。)と一体としてセット商品として販売すること自体は,直ちに独占禁止法に違反するものではない。
しかしながら,「著作物」と非適用除外品を併せたセット商品は,独占禁止法の適用除外とされる「著作物」とはいえず,このような商品を再販売価格維持契約の対象とすることは独占禁止法に違反するおそれがある。
また,書籍・雑誌の場合,取次会社と書店との間で締結されている再販売価格維持契約上,「定価」と表示のある商品を同契約の対象としていることから,非適用除外品と併せたセット商品を販売する場合には「定価」との表示ではなく,「価格」,「メーカー希望小売価格」等の表示を用いる必要がある。なお,音楽用CDの場合も,DVDビデオなどの非適用除外品と併せたセット商品を販売する場合には再販売価格である旨の表示ではなく,「価格」「メーカー希望小売価格」等の表示とする必要がある。
4 回答の要旨
書籍とフィギュアのセット商品は,独占禁止法の適用除外とされる「著作物」に当たるものではなく,再販売価格維持契約の対象とすることは,独占禁止法上問題となるおそれがある。
なお,書籍について,このようなセット商品の販売に当たっては「定価」ではなく「価格」,「メーカー希望小売価格」等の再販売価格維持契約の対象外であることを示す表示を用いるなど注意する必要がある。
<参考>
(株)ソニー・コンピュータエンタテインメントに対する審決(平成10年(判)第1号) 平成13年8月1日
「昭和28年の独占禁止法改正により導入された同法第23条第4項による著作物の再販適用除外制度は,当時の書籍,雑誌,新聞及びレコード盤(著作物4品目)の定価販売の慣行を追認する趣旨で導入されたものとされている。そして,公正取引委員会では,その後,音楽用テープ及び音楽用CDについては,レコード盤とその機能・効用が同一であることからレコード盤に準じるものとして取り扱い,著作物4品目を含む,これら6品目に限定して著作物再販制度の対象とすることとし,その旨公表されている(平成4年4月15日公表文「レコード盤,音楽用テープ及び音楽用CDの再販適用除外の取扱いに関する公正取引委員会の見解」)。
ゲームソフトについては,昭和28年の独占禁止法改正当時には存在しておらず,また,上記著作物4品目のいずれかとその機能・効用を同一にするものではないし,著作物再販制度が独占禁止法上原則として違法として禁止される再販売価格維持行為に対する例外的措置であることからすると,これを再販適用除外の対象とすべき著作物に該当するものということはできない。」
「著作権法上の著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義される(著作権法第2条第1項第1号)のに対し,独占禁止法の規制の対象となる「著作物」とは市場において実際に流通する個々の商品であるところ,書籍,雑誌及び新聞は著作権法上の著作物の「複製物」に当たり,また,レコード盤並びにこれに準ずる音楽用テープ及び音楽用CDは著作権法上の「商業用レコード」(著作権法第2条第1項第7号)であって,著作物の「複製物」に当たるのであり,著作物再販適用除外の対象となる「著作物」と著作権法上の「著作物」とが概念を異にすることは明らかである。また,前記の著作物の再販適用除外制度の立法経緯や立法趣旨に照らしても,独占禁止法第23条第4項の「著作物」を著作権法上の著作物と同様に解すべきであるとする根拠は見当たらない。」