11 工法の特許に係る部品等の購入先の制限

 住宅メーカーが,自ら保有する工法に関する特許を工務店にライセンスする際に,当該工法で住宅を施工する際には,推奨メーカー製の部材を使用することを義務付けることは,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例

1 相談者

 A社(住宅メーカー)

2 相談の要旨

(1) A社は甲地域に拠点を置く住宅メーカーであり,新たな住宅施工の工法(X工法)を開発し,当該工法に関して多数の特許権を取得している。

(2) A社は,甲地域を中心に工務店とこれら特許についてライセンス契約を結び,X工法の普及を図っており,現在,甲地域で営業する工務店の5割(約300店舗)がA社からライセンスを受けてX工法で住宅の施工を行っている。

(3) X工法は,断熱材,サッシ,調湿剤等の部材について一定の基準を満たすものを使用しなければならないところ,A社は,各部材について特定のメーカーと別途契約を結び推奨メーカーと認定し,ライセンシーにはこれら推奨メーカーが生産した部材を使用するよう指導している。

(4) B社ほか10社は,A社とライセンス契約を結び,X工法で住宅を施工している工務店である。B社ら10社は,当初は推奨メーカーから部材を調達していたが,最近,他のメーカーから同性能の部材をより低い価格で調達し,X工法による住宅を他社よりも30%程度低い価格で販売し始めた。

(5) このような状況において,A社は,これら工務店との契約更新の際に,部材の調達先を推奨メーカーに限ることとし,それ以外のメーカーから調達する場合には,ライセンス契約を解除することを検討しているが,独占禁止法上問題ないか。
 なお,他のメーカーの供給する部材はA社の特許権を侵害するものではない。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 特許ライセンス契約において,契約対象技術の効用を保証することが原材料,部品等の品質の制限その他の制限によっては達成が困難な場合において,契約対象技術の効用を保証するために必要な範囲内で,原材料,部品等の購入先を制限することは,原則として不公正な取引方法に該当しない。[特許ノウハウガイドライン 第4-4(4)ア]

(2) 工法など方法に係る特許のライセンス契約において,ライセンシーに対して,当該方法の実施において使用する原材料,部品等に関して一定の制限を課すことは,制限の内容が,契約対象技術の効用を保証するなど合理的な目的達成のための必要最小の範囲に止まる限りは,直ちに独占禁止法上問題となるものではない。

(3) しかしながら,本件については,A社は,ライセンシーに対して特定メーカーの部材の使用を義務付け,その他メーカーの製品の使用を禁止するものであり,当該工法の効用を達成するための必要最小限の制限とは認め難い。加えて,当該工法による住宅の販売価格を維持するなど,競争制限を目的としてこのような制限が行われる場合には,独占禁止法に違反するおそれがある(拘束条件付取引)。

4 回答の要旨

 A社が,自らの有する工法に関する特許について,工務店にライセンスする際に,当該工法で施工する住宅に使用する部材について,推奨メーカーの製品を使用することを義務付けることは,独占禁止法上問題となるおそれがある。

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