機械メーカーが,自社による機械の製造を取りやめ,競争者からOEM供給を受けることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社及びY社(機械メーカー)
2 相談の要旨
(1)X社及びY社(以下「2社」という。)は,機械Aのメーカーである。
我が国の機械Aの製造販売分野におけるシェアは,X社が約50パーセント(第1位),Y社が約30パーセント(第2位)である。また,2社以外の競争者として,シェア約20パーセント(第3位)を有するP社が存在する。
(2)機械Aは,家庭等において日常的に使用される商品である。近年,機械Aの市場規模は縮小し続けており,年間販売台数は10年前と比べて約半分に減少している。
(3)機械Aについては,機械メーカー以外の事業者による中古品の販売が活発であり,中古品の年間販売台数は新造品の年間販売台数を大きく上回っている。機械Aの中古品は新造品よりも安価な価格帯で販売されている。
また,機械Aと用途においてほぼ代替する商品として,機械Bが存在する。機械Bは,機械Aと比較して安価かつ手軽に利用できることから,一定数のユーザーから機械A購入の際の比較検討対象とされている。機械Bの年間販売台数は機械Aの年間販売台数を大きく上回っている。
(4)機械Aについては,近い将来,環境規制の強化が予定されており,規制基準を満たす機械の新規開発に多額の投資が必要となると見込まれている。
(5)Y社は,機械Aの市場規模の縮小に伴い機械A事業の採算が大きく悪化している中,機械の新規開発に多額の投資を行うことはできないと判断し,自社による機械Aの製造を取りやめることを決定した。その上で,Y社は,次のとおり,X社が製造している機械AのOEM供給を受けて,Y社のブランドで販売することを検討している。
ア X社は,Y社仕様の機械Aの完成品を製造し,Y社に販売する。
イ 2社は,従来どおり,それぞれ独自に機械Aを販売し,互いに販売価格,販売数量,販売先等には一切関与しない。
- 本件の概要図
このような2社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1)事業者が,契約,協定その他何らの名義をもってするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野における競争を実質的に制限することは,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項)として問題となる(同法第3条)。
(2)本件は,Y社が,X社から機械Aの全量OEM供給を受けるものであり,2社は,我が国における機械Aの新造品の製造販売分野において合算で約80パーセントのシェアを有するが,
[1] 機械Aより安い価格帯で販売される機械Aの中古品及び機械Bといった隣接市場からの競争圧力を受けており,機械Aの新造品の販売価格の維持・引上げに対する牽制力となっていること
[2] 約20パーセントのシェアを有する有力な競争者が存在すること
[3] 2社は,本件取組後もそれぞれ独自に機械Aを販売し,互いに販売価格,販売数量,販売先等には一切関与しないこと
から,我が国の機械Aの製造販売分野における競争を実質的に制限するものではなく,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
Y社が,自社による機械Aの製造を取りやめ,X社からOEM供給を受けることは,独占禁止法上問題となるものではない。