宿泊事業を行っている保養所らが,食材の共同購入を行うことは,独占禁止法上問題ないと回答した事例
1 相談者
A保養所ら(共済組合等が経営する保養所)
2 相談の要旨
(1) A保養所らは,共済組合等が甲地区においてそれぞれ経営している宿泊施設である。A保養所らは,各施設において使用する食材を共同購入することを予定している。
甲地区には,保養所や旅館等多くの宿泊施設が存在する。甲地区の宿泊施設全体に占めるA保養所らの収容人数及び年間利用人数の割合は,数%である。
また,A保養所らの宿泊提供コストに占める共同購入予定食材の購入予定額の割合も数%程度である。
(2) A保養所らは,次の方法により食材の共同購入を行う。
[1] 共同購入品目の対象となる食材の仕入予定数量を保養所ごとに持ち寄り,総仕入予定数量として保養所の連名で提示し,入札又は見積り合わせを行う。
[2] 全保養所の合意で決定した予定価格の範囲内で最低価格を提示した取引業者と各保養所が個別に購入契約を締結する。
[3] 発注及び代金の支払は,各保養所が個別に行う。
(3) 入札及び見積り合わせの参加者については,応募者の中から一定の業務能力(供給能力)が備わっているか否かを勘案して選定を行う。
なお,現在,各保養所と取引を行っている業者については,上記条件にかかわらず無条件で入札・見積り合わせの参加資格を与える。
このような共同購入を行うことは,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 事業者が,他の事業者と共同して,物品・資材の購入価格を決定するなど競争手段を相互に制限することにより,一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,不当な取引制限に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(不当な取引制限)]
(2) 一般に,[1]商品又はサービスの供給分野における参加者のシェアが高く,かつその供給に要するコストに占める共同購入の対象となる品目の購入額の割合が高い場合には商品又はサービスの供給分野において,また,[2]共同購入の対象となる品目の需要全体に占める共同購入参加者のシェアが高い場合には当該品目の購入分野において,独占禁止法上問題が生じる。
(3) 本件については,[1]甲地区宿泊施設全体に占める共同購入に参加する保養所の収容人員及び利用人員の割合は数%であり,また,宿泊提供コストに占める共同購入の予定品目の購入予定額の割合も数%であること,[2]さらに,共同購入の対象となる食材の甲地区における需要全体に占める共同購入参加者のシェアは数%であることから,競争に与える影響は小さく,独占禁止法上問題ないと考えられる。
4 回答の要旨
A保養所らが食材の共同購入を行うことは,独占禁止法上問題ない。