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10 輸送用機械の資材及び部品の共同購入

10 輸送用機械の資材及び部品の共同購入

 競争関係にあるメーカーが合理化を推進するために,共同で資材及び部品の購入を行うことは,独占禁止法上問題ないと回答した事例。

1 相談者

 A社(輸送用機械メーカー)

2 相談の要旨

(1) 輸送用機械メーカーであるA社,B社,C社及びD社(以下「A社ら4社」という。)は,輸送用機械甲の資材及び部品の共同購入を計画している。A社ら4社の甲の販売市場におけるシェアの合計は,約4割であり,このほかE社が約4割となっている。

(2) 共同購入の目的は,資材購入のスケールメリットによるコストの削減,資材及び部品の共通化を推進し,互換性を高めることによる効率化の推進等により現下の不況に対処することである。
 この共同購入の対象品目は,A社ら4社の自社設計品ではなく,資材及び部品の専門メーカーが汎用品又はそれに準ずるものとして製造する普及品のうち30品目としている。
 資材及び部品の購入先との具体的な交渉方法は,現在各社が取引している資材及び部品メーカーから見積り合わせを行い,価格,供給能力,品質等を総合勘案の上決定するが,供給量の確保,供給能力等の関係から共同購入の取引先は複数とすることを考えている。

(3) A社ら4社の共同購入の資材及び部品メーカーへの影響については,資材及び部品メーカーのA社ら4社への依存度は,最も大きなところで約12%であるが,大半は1%以下となっている。
 なお,A社ら4社の甲の製造に要する資材及び部品の購入額に占める共同購入対象資材及び部品の購入額の割合は,7~8%である。

(4) A社ら4社は,A社ら4社以外の輸送用機械メーカーが,共同購入の趣旨に賛同し,参加を希望する場合には,これを妨げないとしている。ただし,A社ら4社は,E社の参加はあり得ないとみている。

3 独占禁止法上の考え方

 A社ら4社は,資材及び部品の共同購入を行おうとするものであることから,本件は,不当な取引制限の観点から検討する。

(1) 事業者が,他の事業者と共同して資材及び部品の購入を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,不当な取引制限に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(不当な取引制限)]

(2) 一般に,製品の販売分野における参加者のシェアが高く,製品製造に要するコストに占める共同購入の対象となる資材及び部品の購入額の割合が高い場合には製品の販売分野において,また,共同購入の対象となる資材及び部品の需要全体に占める共同購入参加者のシェアが高い場合には当該資材及び部品の購入分野について,独占禁止法上問題が生じる。

ア 本件相談においては,製品の販売分野についてみると,[1]A社ら4社の製品製造に要する資材及び部品の購入額に占める共同購入による購入額の割合は7~8%と低く,製品製造コスト全体に占める割合は更に低くなること,[2]その他の生産活動,販売活動等については各社独自に実施すること,[3]共同行為に参加していない有力なメーカーが存在することから,製品の販売分野における競争に与える影響は小さく,独占禁止法上問題ないものと考えられる。

イ また,資材及び部品の購入分野についてみると,[1]共同購入の対象となる資材及び部品は汎用品等であること,[2]当該資材及び部品のメーカーのA社ら4社への依存度が低いことからすれば,当該資材及び部品の需要全体に占めるA社ら4社の共同購入に係るシェアの合計は低くなるものと考えられることから,独占禁止法上問題ない。

4 回答の要旨

 A社ら4社が輸送用機械甲の資材及び部品について共同購入を行うことは,独占禁止法上問題ない。

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