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9 資材購入のための電子商取引サイトの設立

9 資材購入のための電子商取引サイトの設立

 電子商取引サイト運営会社が提供する電子商取引サイトを利用して,同運営会社の出資会社が競争事業者と資材購入を共同して行うことは,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例。

1 相談者

 A社(電子商取引サイトの運営会社)

2 相談の要旨

(1) A社は,電子商取引サイトの運営等を行う事業者であり,化学製品の甲製品メーカーであるB社や他の業種の事業者など数社の出資を得て設立された。B社は,甲製品市場の有力な事業者である。
 なお,A社の役員及び従業員は,すべて出資会社からの出向である。

(2) A社は,甲製品の製造に要する資材の調達のための電子商取引サイト(以下「調達サイト」という。)の設置を検討しており,当該サイトでは購入業者が,必要とする資材をサイト上で公開して,販売業者を募り,最も低い販売価格を提示した販売業者と取引する,いわゆるオークションなどを行うことを予定している。
 また,A社は,オークションにおいて,購入業者が共同して必要とする資材を取りまとめて購入できるシステムを導入することを検討しており,B社に加えて,甲製品市場の有力な事業者であるC社に参加してもらうことを考えている。例えば,B社が同サイト上で100ロットを購入する場合に,C社の購入数量100ロットを加えた合計200ロットを購入数量とすることで,購入ロットを大きくし,これまでよりも低い価格で調達できるというものである。
 また,A社は,上記システムを円滑に行うために,C社にもA社に出資して調達サイトに参加してもらいたいと考えている。

(3) 甲製品の製造に要する資材の多くは,甲製品の製造という用途のための資材であることから,甲製品以外の製品に転用ができず,汎用性がない。甲製品の製造に要する資材の購入市場においては,B社とC社のシェアの合計は6割を超えている。
 また,甲製品については,その製品の性格から販売地域がある程度限定されていることから,B社とC社はほとんど競争関係にはない。
 以上のような調達サイトを設けることは,独占禁止法上問題ないか。

3 独占禁止法上の考え方

 A社が提供する調達サイトにおいて,事業者は甲製品の製造に要する資材を共同して購入することから,本件は,不当な取引制限の観点から検討する。

(1) 事業者が,他の事業者と共同して資材の購入を制限する等相互にその事業活動を拘束し,又は遂行することにより一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には,不当な取引制限に該当し,違法となる。[独占禁止法第3条(不当な取引制限)

(2)
ア 共同購入については,一般に,製品の販売分野における参加者のシェアが高く,製品製造に要するコストに占める共同購入の対象となる資材の購入額の割合が高い場合には製品の販売分野において,また,共同購入の対象となる資材の需要全体に占める共同購入参加者のシェアが高い場合には当該資材の購入分野について,それぞれ独占禁止法上問題が生じる。
イ 相談の場合におけるオークションは,A社が提供する調達サイト上で,B社及びC社(以下「2社」という。)が甲製品の製造に要する資材を取りまとめて購入するものであることから,共同購入の一形式と考えられる。
 2社は,甲製品の製造に要する資材の購入市場において6割のシェアを占めるところ,2社が本件調達サイトを利用して当該資材を購入するのが一般的な場合には,当該資材の共同購入を行うことにより2社が市場支配力を行使することとなるおそれが強く,当該資材の取引における競争が制限され,独占禁止法上問題となるおそれがある。
 なお,2社は甲製品の販売についてほとんど競争関係にはないことから,共同購入による甲製品の販売市場の競争に与える影響は小さいものと考えられる。

(3) また,共同購入を行わない場合においても,A社が提供する調達サイトには,甲製品の製造に要する資材の取引に関する情報が集まることとなる。このため,C社がA社に出資して役員又は従業員を派遣する場合には,A社に出向している役員等を通じて,当該資材の購入数量,購入価格等について,2社間で相互に情報が交換され,共通の意思が形成されるおそれがある。このような場合には,当該資材の取引における競争が制限されるおそれがあり,独占禁止法上問題となる。
 ただし,A社,B社及びC社それぞれの間において,厳格な情報遮断のための措置を講じた上で,2社が,個別にA社が提供する調達サイトにおいてオークション方式によって資材購入を行うことは,独占禁止法上問題ないと考えられる。

4 回答の要旨

(1) C社が調達サイトに参加してB社と相談のオークションによる共同購入を行うことは,購入しようとする資材の取引市場における競争を制限し,独占禁止法上問題となるおそれがある。

(2) 共同購入を行わない場合であっても,C社がA社に出資して役員又は従業員を派遣する場合には,当該役員又は従業員を通じて出資会社間で相互に情報が交換されることにより,当該資材の購入数量,購入価格等についての共通の意思が形成される場合には,当該資材の取引における競争が制限されるおそれがあり,独占禁止法上問題となるので,A社,B社及びC社それぞれの間において,厳格な情報遮断のための措置を講じる必要がある。

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