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10 自動車リサイクル業務の共同化

10 自動車リサイクル業務の共同化

 自動車メーカーが,自動車リサイクル法施行に伴いリサイクルに係る業務を共同で行うことは,独占禁止法上問題ないと回答した事例

1 相談者

 国内自動車メーカー

2 相談の要旨

(1) 国内の自動車メーカー12社が,自動車リサイクル法施行に伴い,自動車リサイクルに係る業務の効率化のため,

[1] フロン類,エアバッグ類については,12社が共同で「有限責任中間法人自動車再資源化協力機構」を設立し,回収,破壊,その他リサイクル処理に係る契約,事務処理等の業務を一括して行う

[2] ASR(Automobile Shredder Residue:自動車破砕残さ〔カーシュレッダーダスト〕)については,2グループ(4社及び8社のグループ)ごとに,回収その他リサイクル処理に係る契約,事務処理等の業務を一括して行う

ことは,独占禁止法上問題ないか。

(2) メーカー12社以外の輸入業者等のこれらの共同事業への参加・退出は自由である。また,年間販売台数が1万台以下の場合は,指定再資源化機関(自動車リサイクル促進センター)にリサイクル処理を委託することにより,共同事業に参加することができる。

(3) ASRの回収等について2グループに分ける理由は,グループ間においてリサイクル率の向上,リサイクル処理費の低減等の競争を促進するためである。

(4) 自動車リサイクル法において,自動車所有者が支払ったリサイクル料金について剰余金が生じた場合には,自治体が行う不法投棄等への対応,離島からの共同搬出のための費用への資金協力(一定金額以上の剰余の場合,将来のリサイクル料金の割引に使用)等,その使途が限定されている。

(5) リサイクル関連事業者の数は,

[1] フロン類回収業者約26,000社,解体業者約5,000社,破砕業者約140社

[2] フロン類破壊業者数社,エアバッグ類リサイクル業者数社,ASRリサイクル業者(ASRからエネルギー,有用金属を取り出し,『残さ』を極小化した上埋立処分する。)約20社

である。

3 独占禁止法上の考え方

(1) 事業者が共同事業としてリサイクル・システムを構築する場合,独占禁止法上問題となるかどうかの判断に当たっては,当該共同事業が,製品市場及びリサイクル市場にどのような影響を与えるものであるかが検討される。[リサイクルガイドライン 第1(リサイクル・システムの共同構築について)]

(2) 本件の必要性及び合理性
フロン類,エアバッグ類及びASRについて自動車メーカー等ごとに分別回収,保管,配送等のリサイクル処理を行うことは,作業及び管理が極めて煩雑で事実上困難であり,また,自動車リサイクル法の規定(メーカー等によるリサイクル料金・リサイクルに関する収支の公表,剰余金の使途制限等)の下で,メーカー側の引取業務が一括化されることは,費用が節減でき,結果として自動車所有者が支払うリサイクル料金が抑制される効果が生じることとなる。

(3) 本件については,次の状況から競争を阻害するものではないと考えられ,独占禁止法上問題ないと考えられる。

[1] リサイクルに要する費用のうち,フロン類破壊,エアバッグ類リサイクル処理,ASRリサイクル処理等の費用はメーカー間で共通化するが,これら費用の自動車の販売価格に占める割合は小さく,自動車販売市場における競争を阻害するものではない。

[2] 以下の点から,リサイクルの分野においても競争性が確保されている。

ア 自動車所有者が支払うリサイクル料金は,各自動車メーカー等が個別に設定する。

イ フロン類回収料金,エアバッグ類回収料金は,自動車メーカー等ごとに設定され,ASRリサイクル処理料金については,自動車メーカー等の2グループごとに設定される。

ウ フロン類破壊業者,エアバッグ類リサイクル業者及びASRリサイクル業者については,いずれも比較的大規模の業者であり,また,自動車以外の廃棄物についても処理を行っている。

エ 自動車メーカー等の本件共同事業への参加・退出は自由であり,排他的なシステムではなく,また,取扱量が少ない自動車メーカー等は,指定再資源化機関(自動車リサイクル促進センター)にリサイクル処理を委託することにより,共同事業に参加することができる。

4 回答の要旨

 自動車メーカーが,フロン類,エアバック類及びASRのリサイクル処理等を共同で行うことは,独占禁止法上問題ない。
 ただし,自動車メーカー等の間で,具体的なリサイクル料金等を決定すること,フロン類破砕業,エアバッグ類リサイクル業及びASRリサイクル業における新規参入者を不当に排除すること等を行わないよう注意する必要がある。

<参考> 自動車リサイクル法の概要(使用済自動車の再資源化等に関する法律)(平成17年1月全面施行)

自動車メーカー,輸入業者の義務

  •  製造等した自動車が使用済みとなった際発生する(1)フロン類,(2)エアバッグ類,(3)シュレッダーダスト(ASR)の引取り
  •  自動車所有者から徴収するリサイクル料金の設定・公表,フロン類及びエアバッグ類回収料金の設定・公表
  •  リサイクルに関する収支(リサイクル料金収入,フロン類,エアバッグ類,ASR別の費用等)の公表

自動車所有者の義務

  •  使用済みとなった自動車の引取業者(自動車販売業者・整備業者等)への引渡し
  •  リサイクル料金の負担(新車購入時(既存の車は法施行後最初の車検時))

引取業者等の義務

  •  引取業者…使用済み自動車の引取り,フロン類回収業者への引渡し
  •  フロン類回収業者…フロン類の回収,自動車メーカー等への引渡し
  •  解体業者…エアバッグ類の回収,自動車メーカー等への引渡し
  •  破砕業者…フロン類,エアバッグ類回収後の自動車の破砕,ASRの自動車メーカー等への引渡し

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