11 競合する洗浄剤メーカー間における供給装置の譲渡

 洗浄剤メーカーを会員とする団体が,環境保全の観点から,メーカーから需要者に無償で貸与している洗浄剤を供給するための装置を,メーカー間で譲渡する仕組みを設けることについて,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例

1 相談者

 X協会(洗浄剤メーカーを会員とする団体)

2 相談の要旨

(1)X協会は,洗浄剤Aのメーカーを会員とする団体であり,我が国において洗浄剤Aのメーカーである大半の事業者が,X協会の会員となっている。

(2)需要者は,洗浄剤Aをメーカーから一旦購入した後,洗浄剤Aの不足が生じる度に継続的に購入しており,洗浄剤Aはメーカー間で品質等にほとんど差がないことから,頻繁に購入先のメーカーを切り替える傾向にある。

(3)需要者が洗浄剤Aを適切に使用するには,洗浄剤Aを供給するための装置(以下「供給装置」という。)が別途必要となるところ,洗浄剤Aの取引では,メーカーが,需要者との取引開始時に,供給装置を購入して,需要者に対して無償で貸与する慣行が存在する。
 供給装置は繰り返し使用できるため,洗浄剤Aのメーカーによる供給装置の購入コストの大きさは洗浄剤Aの総販売原価と比べるとごく僅かであると推定され,洗浄剤Aの販売価格の決定に当たってほとんど考慮されていない。

(4)需要者は,メーカーにかかわらず貸与された供給装置を用いることが仕様上は可能であるが,現在は,需要者が洗浄剤Aのメーカーを切り替える際,切替え後のメーカーは,需要者に対し,供給装置を新たに無償で貸与している。
 このため,切替え前のメーカーが無償貸与していた供給装置は,切替え前のメーカーに返却された後,そのほとんどが耐用年数の到来前に廃棄されているという問題が生じている。

(5)そこで,X協会は,環境保全の観点から,需要者が洗浄剤Aのメーカーを切り替える際,以下の方法によって,切替え前のメーカーから切替え後のメーカーに供給装置を譲渡する仕組みを設けること(以下「本件取組」という。)を検討している。
 ア 本件取組には,X協会の会員であるか否かを問わず,洗浄剤Aのメーカーであれば参加することが可能であり,会員の参加も任意である。
 イ 切替え後のメーカーは,洗浄剤Aのメーカーを切り替えることが決まった段階で,切替え前のメーカーに対して連絡を取り,メーカー間で供給装置を譲渡する。
 ウ メーカー間で供給装置を譲渡した後,需要者は引き続き,無償で供給装置の貸与を受けることができる。
 エ メーカー間の譲渡を有償又は無償のどちらとするかは未定であるが,仮に有償とする場合でも,譲渡価格は当事者であるメーカー間で決定するほか,メーカー間で洗浄剤Aの販売価格や供給装置の購入価格を互いに共有しない。
 本件取組は,独占禁止法上問題ないか。

  • 本件の概要図

平成30年度相談事例集事例11概要図

3 独占禁止法上の考え方

(1)リサイクル等に対する事業者の共同の取組に対して独占禁止法上の問題の有無を検討するに当たっては,その社会公共的な目的からみた必要性について十分考慮する必要がある。ただし,その必要性を考慮するとしても,事業者間のリサイクル等に係る共同行為を通じて,製品市場やリサイクル市場における競争秩序に悪影響を及ぼす場合には,独占禁止法上の問題が生じることになる(リサイクルガイドライン はじめに)。

(2)本件取組は,事業者団体であるX協会が,環境保全の観点から,洗浄剤Aのメーカーが需要者に無償で貸与する供給装置を,メーカー間で譲渡する仕組みを設けるものであるところ,
 [1] 洗浄剤Aの販売価格が共有されないことに加え,洗浄剤Aのメーカーによる供給装置の購入コストの大きさは,洗浄剤Aの総販売原価と比べるとごく僅かであると推定され,洗浄剤Aの販売価格の決定に当たってほとんど考慮されていないため,洗浄剤Aの製品市場に与える影響は小さいこと  
 [2] 供給装置の譲渡を有償とする場合でも,X協会が譲渡価格を決定せずに,切替え後のメーカーと切替え前のメーカーの当事者間で供給装置の購入価格を共有することなく譲渡価格を決定するため,供給装置の購入市場に与える影響は小さいこと
 [3] X協会の会員であるか否かを問わず,洗浄剤Aのメーカーであれば参加することが可能であり,会員の参加も任意であるため,会員や非会員を問わず,洗浄剤Aのメーカーが本件取組から不当に排除されるおそれはないこと
から,洗浄剤Aの製品市場及び供給装置の購入市場における競争秩序に悪影響を及ぼすものではなく,事業者団体による共同行為として独占禁止法上問題となるものではない。
 なお,本件取組に係る供給装置のリサイクル市場は存在しない。

4 回答の要旨

 X協会が,環境保全の観点から,メーカーから需要者に無償で貸与している供給装置を,メーカー間で譲渡する仕組みを設けることは,独占禁止法上問題となるものではない。

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