1 「独占禁止法に関する相談事例集」について

⑴公正取引委員会は,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)の運用に当たり,独占禁止法違反行為の未然防止と事業者及び事業者団体(以下「事業者等」という。)の適切な事業活動に役立てるため,各種のガイドラインを公表し,どのような行為が独占禁止法上問題となるのかを明らかにするとともに,事業者等が実施しようとする具体的な行為に関して個別の相談に対応している。
 また,公正取引委員会は,事業者等の独占禁止法に関する理解を一層深めることを目的として,相談者以外にも参考になると考えられる主要な相談の概要を取りまとめ,「独占禁止法に関する相談事例集」(以下「相談事例集」という。)として毎年公表している。本年においても,令和2年度(令和2年4月から令和3年3月までの間)における事業者等の活動に関する主要な相談事例を取りまとめた。

⑵相談事例集には,独占禁止法に関する相談(企業結合に関するものを除く。)であって,他の事業者等にとって今後の事業活動の参考になると考えられる事案を掲載している。相談事例集においては,「事業者等の 活動に係る事前相談制度」(後記2⑴参照。以下「事前相談制度」という。)に基づいて公表した事例を除き,相談者名等を非公表としている。また,相談の要旨等については,分かりやすくするための変更を行っているため,必ずしも実際の事案と一致するものではない。

2 相談制度の概要

(1)「事前相談制度」による相談

 公正取引委員会は,平成13年10月から事前相談制度を実施している。事前相談制度とは,申出の要件を満たした相談に対して書面により回答し,申出者名並びに相談及び回答の内容を原則公表するものである。

(2)「事前相談制度」によらない相談

 公正取引委員会は,相談者の負担軽減,相談者の秘密保持に配慮し,事前相談制度によらない相談(以下「一般相談」という。)も受け付けている。一般相談は,電話,来庁等で相談内容の説明を受け,原則として口頭で回答するもので,迅速に対応するとともに,相談内容等については非公表としている。

3 独占禁止法に関する相談件数

 令和2年度(令和2年4月から令和3年3月までの間)においては,事前相談制度による相談はなく,一般相談は2,110件であった。一般相談の内訳は,事業者の活動に関する相談が1,966件,事業者団体の活動に関する相談が144件である。
 令和2年度における相談を内容別に整理すると,下表のとおりである。

<相談内容別件数>(企業結合に関する相談を除く。)                      (単位:件)
 
令和元年度 令和2年度
「事前相談制度」による相談 0 0
  事業者の活動に関する相談 0 0
  事業者団体の活動に関する相談 0 0
一般相談 2,038 2,110
事業者の活動に関する相談 1,870 1,966
  ○流通・取引慣行に関する相談 1,623 1,776
  (うち優越的地位の濫用に関する相談) (1,098) (1,219)
  ○共同行為・業務提携に関する相談 95 76
  ○技術取引に関する相談 14 17
  ○共同研究開発に関する相談 14 9
  ○その他 124 88
事業者団体の活動に関する相談 168 144
合計 2,038 2,110

4 過去の相談事例

 公正取引委員会は,事業者等から公正取引委員会に寄せられた相談のうち主要な相談事例について,公正取引委員会ウェブサイト上に掲載している。

(相談事例集)      https://www.jftc.go.jp/dk/soudanjirei/index.html
(事前相談制度に係る回答)https://www.jftc.go.jp/soudan/jizen/soudan/index.html

5 主要なガイドライン

 事業者等の活動に関する主要なガイドラインは,次のとおりである。
⑴ 私的独占関係
○ 排除型私的独占に係る独占禁止法上の指針(平成21年10月)
⑵ 流通・取引慣行関係
○ 流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(流通・取引慣行ガイドライン)(平成3年7月)
⑶ 事業者団体関係
○ 事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針(事業者団体ガイドライン)(平成7年10月)
○ 公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針(平成6年7月)
○ リサイクル等に係る共同の取組に関する独占禁止法上の指針(平成13年6月)
○ 資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方(平成13年10月)
⑷ 企業結合関係
○ 企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針(平成16年5月)
⑸ 不公正な取引方法等関係
○ 不当廉売に関する独占禁止法上の考え方(平成21年12月)
○ 優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(平成22年11月)
○ 役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針(平成10年3月)
○ フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について(平成14年4月)
○ デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方(令和元年12月)
○ フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(令和3年3月)(注)
○ スタートアップとの事業連携に関する指針(令和3年3月)(注)
○ 知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針(平成19年9月)
○ 共同研究開発に関する独占禁止法上の指針(共同研究開発ガイドライン)(平成5年4月)
○ 標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の考え方(パテントプールガイドライン)(平成17年6月)
○ 適正な電力取引についての指針(平成11年12月)(注)
○ 適正なガス取引についての指針(平成12年3月)(注)
○ 農業協同組合の活動に関する独占禁止法上の指針(平成19年4月)
(注)公正取引委員会と他省庁の共同ガイドライン

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