協同組合が行う共同あっせん事業において、組合員の価格情報等を取りまとめ、組合内で共有した上で営業活動に用いる取組について、独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X協同組合(建設廃棄物の中間処理事業者の協同組合)
2 相談の要旨
⑴ X協同組合は、中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)の規定に基づき設立された、建設廃棄物の中間処理事業を営む事業者を組合員とする協同組合であり、大規模事業者を含まないなど独占禁止法第22条各号の規定で定める同法の適用除外の要件を満たしている組合である。
⑵ 建設廃棄物の中間処理事業とは、建設廃棄物の排出が見込まれる建設事業者、解体事業者等(以下「排出事業者」という。)から依頼を受け、建設現場から排出される産業廃棄物を回収してリサイクル等を行う事業である(以下、同事業を行う事業者を「中間処理事業者」という。)。
⑶ X協同組合は、排出事業者が委託先である中間処理事業者を容易に選定できるように、排出事業者の近傍の組合員の処理施設の所在地や、おおよその処理可能数量を排出事業者に提示する共同あっせん事業を行っている。
⑷ X協同組合の組合員は、その保有する処理施設が所在する県土木事務所の管轄地区内において排出事業者から中間処理業務を受注することが多い。当該管轄地区内に処理施設を有する中間処理事業者にはX協同組合の組合員と同等以上の規模の事業者が複数存在し、当該管轄地区内に処理施設を有する中間処理事業者全体に占めるX協同組合の組合員の数は半数に満たない。
⑸ X協同組合は、排出事業者の中間処理業務の委託先選定の利便性を高め、組合員の同業務の受注実績を高めることを目的として、前記⑶の共同あっせん事業に、組合員が希望するおおよその処理価格の提示を追加することを検討している。
⑹ 検討している共同あっせん事業(以下「本件取組」という。)の概要は次のとおりである。
ア X協同組合は、統一の営業窓口(共同あっせん窓口)を設け、排出事業者に対して営業活動を行う。営業活動を行うに当たり、X協同組合は、各組合員のおおよその処理可能数量、処理価格等を聴取して取りまとめ、組合内で共有した上で排出事業者に伝える。
イ X協同組合は、組合員間で担当地区の割当てを行わず、各組合員の価格設定に関与しない。また、排出事業者は、X協同組合の統一の営業窓口が示した組合員に関する資料を見て委託先を自由に選定する。
ウ 各組合員は、直接、排出事業者との間で実際に収受する処理料金を協議して決定し、契約を締結する。処理料金の授受も両者の間で行う。
エ 受注した組合員が処理能力の限界などから排出事業者の排出する建設廃棄物を中間処理できないことが判明した場合、X協同組合は直ちに別の組合員をあっせんするなどし、組合員に発注した排出事業者が中間処理ができなくなることのないように努める。
オ X協同組合は、組合員が排出事業者から直接中間処理業務を受注することを妨げない。
本件取組は、独占禁止法上問題となるか。
○本件取組の概要図

3 独占禁止法上の考え方
⑴ 独占禁止法第22条の規定により、一定の組合の行為は同法の適用が除外される。すなわち、同条各号の適用除外の要件を備える協同組合が、設立準拠法に基づいて共同経済事業を行うときには、「組合の行為」として、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合を除いて、独占禁止法の適用が除外される。
⑵ 本件取組は、X協同組合が各組合員のおおよその処理価格等を取りまとめ、それを組合内で共有した上で排出事業者に提示するものであるから、組合員間で価格等重要な競争手段の具体的な内容に関して、相互間での予測を可能にするような効果が生じるおそれがあるとも考えられるが、
ア 受注した組合員が中間処理を行えないことが判明した場合には、X協同組合がその処理が行えるよう別の組合員をあっせんするなど、共同あっせん事業としての実態を備えることから、X協同組合の設立準拠法である中小企業等協同組合法に基づく共同経済事業として行われるものであり、「組合の行為」として認められること
イ(ア) 各組合員が処理料金を決定すること、また、各組合員は共同あっせん事業以外の方法によっても自由に受注できること
(イ) 組合員が主に受注する地区内に処理施設を有する建設廃棄物の中間処理事業者には、X協同組合の組合員と同等以上の規模の事業者が複数存在し、当該地区内に処理施設を有する同事業者全体に占めるX協同組合の組合員の数が半数に満たないこと
から、一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合に当たるおそれは低いと考えられること
ウ 会員間で差別的な取扱いをするなど不公正な取引方法に該当する行為は、行われないこと
から、独占禁止法の適用が除外される。
4 回答
本件取組は、独占禁止法上問題となるものではない。