新聞発行業者が,自社が発行する日刊新聞と別会社が発行する雑誌をセット商品として定価販売すること及び1年間購読する長期購読者向けにセット割引定価を設定することは,独占禁止法上問題となるものではないと回答した事例
1 相談者
X社(新聞発行業者)
2 相談の要旨
(1) X社は,日刊新聞の発行を業とする者である。
(2) X社は,自社が発行する日刊新聞の購読者向けに,自社が発行する日刊新聞とY社が発行する雑誌をセット商品として定価販売するとともに,以下の条件で,日刊新聞と雑誌それぞれに割引定価を設定し,セット商品のみを対象に,当該割引定価を合算したセット割引定価で販売することを検討している。
ア 割引定価を設定するセット商品の購読期間を1年間とし,1年間分の購読料を一括前払いで支払うこと
イ 支払手段はクレジットカードとすること
なお,日刊新聞の定価からの割引幅は,X社及び新聞販売店に利益が出る範囲となっている。
このようなX社の取組は,独占禁止法上問題ないか。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 新聞,書籍,雑誌,レコード盤,音楽用テープ及び音楽用CDの6品目の著作物を発行する事業者が,再販売価格を決定し,これを維持するためにする正当な行為は,独占禁止法の規定が適用されない(独占禁止法第23条第4項)。これは,前記著作物同士をセット商品として販売するときも同様であり,本件のように,X社が,いずれも前記著作物に該当する日刊新聞と雑誌をセット商品として定価販売することは,独占禁止法上問題となるものではない。
(2) 新聞発行業者が,地域又は相手方により,定価を割り引いて新聞を販売することは,独占禁止法上問題となるが,正当かつ合理的な理由がある割引についてはこの限りではない(「新聞業における特定の不公正な取引方法」(平成11年7月21日公正取引委員会告示第9号)第1項)。
ア 1年間購読する長期購読者を対象としていること
イ 1年間分の購読料をクレジット決済により一括前払いとしていること
ウ X社及び新聞販売店に利益が出る割引幅であること
を総合的に勘案すれば,X社がセット割引定価を設定することは,正当かつ合理的な理由のある割引と考えられ,独占禁止法上問題となるものではない。
4 回答の要旨
X社が,自社が発行する日刊新聞とY社が発行する雑誌をセット商品として定価販売すること及び1年間購読する長期購読者向けにセット割引定価を設定することは,独占禁止法上問題となるものではない。