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平成28年 委員長と記者との懇談会概要(平成28年10月)

平成28年 委員長と記者との懇談会概要(平成28年10月)

1 日時 平成28年10月19日(水曜) 13時30分~14時15分(於 公正取引委員会)

2 概要

(1)委員長からの説明

 はじめに,平成28年7月から9月の第二四半期における最近の公正取引委員会の法執行等の状況について紹介したい。
 独占禁止法に関しては,警告を含めて4件の措置を採っており,これらのうち「東日本高速道路株式会社東北支社が発注する東日本大震災に係る舗装災害復旧工事の入札参加業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令」については,本年2月29日に検事総長に告発した事案に係る行政上の措置である。
 下請法に関しては,株式会社ファミリーマートと株式会社シジシージャパンに対して勧告を行っている。また,勧告以外の指導件数は,第二四半期において2,046件であり,今年度累計で3,796件と,かなりの数に上っている。
 消費税転嫁対策特別措置法に関しては,2件の勧告を行っており,勧告以外の指導件数は,第二四半期で76件であり,今年度累計では179件となっている。
 企業結合に関しては,第二四半期における届出件数が77件,このうち第一次審査で終了したものが63件,第一次審査中のものが13件,第二次審査に移行したものが1件となっている。第二次審査に移行した案件は,「東洋製罐グループホールディングス株式会社によるホッカンホールディングス株式会社の株式取得」であり,本年9月16日に第二次審査に移行している。
 外国企業が関係する企業結合については,第二四半期において,日本企業と外国企業の統合計画に係る届出が3件,外国企業同士の統合計画に係る届出が15件,合計で18件となっている。今年度の累計では,日本企業と外国企業の統合計画に係る届出が7件,外国企業同士の統合計画に係る届出が18件,合計25件となっている。
 現在,第二次審査中の案件は,「東洋製罐グループホールディングス株式会社によるホッカンホールディングス株式会社の株式取得」のほか,「出光興産株式会社による昭和シェル石油株式会社の株式取得」,「JXグループと東燃ゼネラルグループの経営統合」,「新日鐵住金株式会社による日新製鋼株式会社の株式取得」及び「株式会社ふくおかフィナンシャルグループによる株式会社十八銀行の株式取得」がある。
 次に,第二四半期において,制度面の検討や競争政策上の課題等について取りまとめて公表した案件を3件紹介する。
 一つ目は,「課徴金制度の在り方に関する論点整理」である。本年6月に課徴金の在り方を検討している独占禁止法研究会において論点整理がなされ,これに関して7月中旬から8月末の約1か月半を募集期間として意見募集を実施した。9月以降は意見募集により寄せられた意見も踏まえつつ,各論点について,同研究会において検討を進めていただいているところである。
二つ目は,「携帯電話市場における競争政策上の課題について」である。この報告書では,端末価格を通信料金から大幅に割り引くといったMNOの販売方法の見直しが望ましいこと,期間拘束・自動更新付契約についてはスイッチングコストの関係から必要最小限にすることが望ましいことなどについて指摘している。また,MNOが端末購入に係る割賦契約の総額を機種ごとに固定することにより,実質的に販売店における端末の販売価格を拘束する場合や,アプリ市場においてOS提供事業者やアプリ提供事業者が端末メーカー等に対して自社アプリのデフォルト設定やホーム画面への配置を義務付けることなどにより新規参入や技術革新を阻害する場合には,独占禁止法上問題となる可能性があるといったことについても指摘している。携帯電話市場において通信料金等が競争によって適正な水準となることが消費者の利益につながると考え,この報告書をまとめたところである。
三つ目は,「介護分野に関する調査報告書について」である。この報告書は,[1]株式会社等の多様な事業者の新規参入が可能となる環境の整備,[2]補助制度・税制等におけるイコールフィッティングを確保し事業者が公平な条件の下で競争できる環境の整備,[3]混合介護の弾力化の実現により事業者の創意工夫が発揮され得る環境の整備,[4]情報公開・第三者評価の充実により利用者の選択が適切に行われ得る環境の整備について提言を行っている。これらの提言を踏まえ介護分野における活発な競争が促進されることにより,介護サービスの供給量が増加し,介護サービスの質・利用者の利便性の向上が図られ,事業者の採算性の向上と介護労働者の賃金増につながっていく可能性があるのではないかと考えている。

(2)質疑応答

(問)介護分野の調査報告書に関し,こういった調査報告書については,独占禁止法上,どのように位置付けられるのか。
(答)独占禁止法第1条は「公正且つ自由な競争を促進し,事業者の創意を発揮させ,事業活動を盛んにし,雇傭及び国民実所得の水準を高め,以て,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」と規定しており,公正取引委員会はその目的を達成することを任務としている。公正取引委員会は,公正かつ自由な競争を促進するという業務を行うため,競争制限的な行為を違法行為として摘発したり,企業結合に関する事前審査を行うほか,規制によって自由な競争が制限されている分野について,その規制の見直しについて意見を提示し,所管省庁に要請を行うことも重要な任務だと考えている。このような観点から,以前からもいろいろな提言を行っている。競争政策の立場からこのような提言を行って考え方を示すのは公正取引委員会の職責を果たすために必要なことだと考えている。
 一方で,公正取引委員会には,介護制度の見直しを行うなどの権限はないため,あくまでも競争当局の立場から意見を述べているものであり,それを踏まえて制度をどうするのか検討を行うのは,それぞれの制度を所管している官庁ということになる。
(問)「携帯電話市場における競争政策上の課題について」の公表後,何らかの措置が必要となる状況は生じているのか。
(答)公正取引委員会としては,調査の結果,問題となり得る行為を指摘したところであり,現状においては,それぞれの市場でどのような活動がなされているのかモニターしているところである。

以上

 [配布資料]

課徴金制度の在り方に関する論点整理(平成28年7月13日公表資料)

携帯電話市場における競争政策上の課題について(概要)(平成28年8月2日公表資料)

介護分野に関する調査報告書について(平成28年9月5日公表資料)

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