令和元年9月26日
 公正取引委員会
 公正取引委員会は,特定アルミ缶(注1)及び特定スチール缶(注2)の製造販売業者(別表1)らに対し,本日,独占禁止法の規定に基づき排除措置命令,課徴金納付命令等を行った。
  本件は,特定アルミ缶及び特定スチール缶の製造販売業者が,独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたものである。
 (注1)「特定アルミ缶」とは,別表2の交渉窓口会社が調達に係る交渉を行うビール大手4社等向けの飲料用アルミ缶をいう。
 (注2)「特定スチール缶」とは,別表3の交渉窓口会社が調達に係る交渉を行うビール大手4社等向けの飲料用スチール缶をいう。
第1 特定アルミ缶及び特定スチール缶の製造販売業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について
1 違反事業者,排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者並びに課徴金額
⑴ 特定アルミ缶
番号  | 
        違反事業者名  | 
        排除措置命令  | 
        課徴金納付命令  | 
        課徴金額  | 
       
1  | 
        ユニバーサル製缶株式会社  | 
        ○  | 
        ○  | 
        103億5671万円  | 
       
2  | 
        東洋製罐株式会社(注6)  | 
        ○  | 
        ○  | 
        100億3525万円  | 
       
3  | 
        大和製罐株式会社  | 
        -  | 
        -  | 
        -  | 
       
合計額  | 
        203億9196万円  | 
       |||
⑵ 特定スチール缶
番号  | 
        違反事業者名  | 
        排除措置命令  | 
        課徴金納付命令  | 
        課徴金額  | 
       
1  | 
        北海製罐株式会社  | 
        ○  | 
        ○  | 
        33億5276万円  | 
       
2  | 
        東洋製罐株式会社(注6)  | 
        ○  | 
        ○  | 
        19億7884万円  | 
       
3  | 
        大和製罐株式会社  | 
        -  | 
        -  | 
        -  | 
       
合計額  | 
        53億3160万円  | 
       |||
(注3)違反事業者名については,以下「株式会社」の記載を省略する。
 (注4)表中の「○」は,排除措置命令又は課徴金納付命令の対象事業者であることを示している。
 (注5)表中の「-」は,排除措置命令又は課徴金納付命令の対象事業者ではないことを示している。
 (注6)東洋製罐は,平成25年4月1日に,それまで東洋製罐グループホールディングスが営んでいた特定アルミ缶及び特定スチール缶の製造販売に係る事業を承継したものであり,平成25年3月31日までは東洋製罐グループホールディングスが本件の違反事業者であった。
2 違反行為の概要(詳細は別添排除措置命令書参照)
⑴ 特定アルミ缶
  ア ユニバーサル製缶,東洋製罐,大和製罐及び東洋製罐グループホールディングスの4社は,遅くとも平成22年5月頃以降(東洋製罐グループホールディングスにあっては平成25年3月31日までの間,東洋製罐にあっては同年4月1日以降),特定アルミ缶について,安値により商権(注7)を奪い合わず,販売価格を維持する旨の合意の下に
   (ア) 別表2の「交渉窓口会社」欄記載の事業者に見積価格を提示する場合には,商権を奪うような低い見積価格を提示せず,必要に応じて,見積価格等に関する情報交換又は調整を行う
   (イ) 特定アルミ缶の原材料価格等が変動した場合には,特定アルミ缶の販売価格の改定の方針を決定するとともに,当該販売価格の改定幅,改定時期等に関する情報交換又は調整を行う
    などしていた。
  イ これら4社は,前記アの合意をすることにより,公共の利益に反して,特定アルミ缶の販売分野における競争を実質的に制限していた。
  (注7)「商権」とは,違反事業者がそれぞれ別表2又は別表3の「特定購入会社」欄記載の事業者に特定アルミ缶又は特定スチール缶を販売する取引をいう。
  
 ⑵ 特定スチール缶
  ア 北海製罐,東洋製罐,大和製罐及び東洋製罐グループホールディングスの4社は,遅くとも平成22年6月頃以降(東洋製罐グループホールディングスにあっては平成25年3月31日までの間,東洋製罐にあっては同年4月1日以降),特定スチール缶について,安値により商権を奪い合わず,販売価格を維持する旨の合意の下に
   (ア) 別表3の「交渉窓口会社」欄記載の事業者に見積価格を提示する場合には,商権を奪うような低い見積価格を提示せず,必要に応じて,見積価格等に関する情報交換又は調整を行う
   (イ) 特定スチール缶の原材料価格が変動した場合には,特定スチール缶の販売価格の改定の方針を決定するとともに,当該販売価格の改定幅,改定時期等に関する情報交換又は調整を行う
    などしていた。
  イ これら4社は,前記アの合意をすることにより,公共の利益に反して,特定スチール缶の販売分野における競争を実質的に制限していた。
3 排除措置命令の概要
 前記2の違反行為ごとに,それぞれ,次のとおり排除措置命令を行った。
 ⑴ 排除措置命令の対象事業者(以下「名宛人」という。)は,それぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければならない。
  ア 前記2の合意が消滅していることを確認すること。
  イ 今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定アルミ缶又は特定スチール缶について,安値により商権を奪い合わずに販売価格を維持する行為を行わず,自主的に,取引を行い,販売価格を決定すること。
  ウ 今後,相互に,又は他の事業者と,特定アルミ缶又は特定スチール缶の見積価格及び販売価格に関する情報交換を行わないこと。
 ⑵ 名宛人は,それぞれ,前記⑴に基づいて採った措置を,自社を除く名宛人及び大和製罐に通知するとともに,別表2又は別表3の「交渉窓口会社」及び「特定購入会社」欄記載の事業者(キリン株式会社にあっては,キリンホールディングス株式会社)に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
 ⑶ 名宛人は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定アルミ缶又は特定スチール缶について,安値により商権を奪い合わずに販売価格を維持する行為を行ってはならない。
 ⑷ 名宛人は,今後,それぞれ,相互に,又は他の事業者と,特定アルミ缶又は特定スチール缶の見積価格及び販売価格に関する情報交換を行ってはならない。
 ⑸ 名宛人は,それぞれ,特定アルミ缶又は特定スチール缶の販売活動に関する独占禁止法の遵守についての,当該商品の営業に関わる自社の役員及び従業員に対する定期的な研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなければならない。
4 課徴金納付命令の概要
課徴金納付命令の対象事業者は,令和2年4月27日までに,それぞれ前記1の「課徴金額」欄記載の額(総額257億2356万円)を支払わなければならない。
第2 食缶の製造販売業者に対する注意について
大和製罐,東洋製罐及び北海製罐の3社が,食缶(食品〔飲料を除く。〕又はペットフードの缶詰の容器として用いられる金属缶をいう。)の取引に関して,価格に関する情報交換等を行っていた事実が認められたことから,公正取引委員会は,当該行為が独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)の規定の違反につながるおそれがあるものとして,これら3社に対し,本日,注意を行った。
関連ファイル
(印刷用)(令和元年9月26日)飲料用アルミ缶及びスチール缶の製造販売業者らに対する排除措置命令,課徴金納付命令等について
(令和元年9月26日)別表2(特定アルミ缶に係る交渉窓口会社及び特定購入会社)
(令和元年9月26日)別表3(特定スチール缶に係る交渉窓口会社及び特定購入会社)
(令和元年9月26日)参考3-4(参照条文及び課徴金制度概要)
(令和元年9月26日)別添(排除措置命令書(特定アルミ缶及び特定スチール缶))
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