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(令和6年6月5日)令和5年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組

(令和6年6月5日)令和5年度における下請法の運用状況及び中小事業者等の取引公正化に向けた取組

令和6年6月5日
公正取引委員会

第1 下請法の運用状況

1 下請法違反行為に対する勧告等

(1) 勧告件数

 令和5年度の勧告件数は13件。
 勧告の対象となった違反行為類型の内訳については、下請代金の減額が6件、返品が2件、買いたたきが1件、購入等強制が3件、不当な経済上の利益の提供要請が4件、やり直し等が1件となっている(注)。


(注)1件の勧告事件において複数の違反行為類型について勧告を行っている場合があるので、違反行為類型の内訳の合計数と勧告件数とは一致しない。

 

【勧告件数及び自発的申出件数(勧告相当案件)の推移】

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(注)自発的申出の詳細については後記3参照。

(2)指導件数 

 令和5年度の指導件数は8,268件。


【指導件数の推移】

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2 下請事業者が被った不利益の原状回復の状況

 令和5年度においては、下請事業者が被った不利益について、親事業者174名から、下請事業者6,122名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額37億2789万円相当の原状回復が行われた。  


【原状回復額の推移】

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【原状回復を行った親事業者数・原状回復を受けた下請事業者数の推移】

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3 下請法違反行為を自発的に申し出た親事業者に係る事案

 公正取引委員会は、親事業者の自発的な改善措置が下請事業者が受けた不利益の早期回復に資することに鑑み、公正取引委員会が調査に着手する前に、違反行為を自発的に申し出、かつ、下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置等、自発的な改善措置を採っているなどの事由が認められる事案については、親事業者の法令遵守を促す観点から、下請事業者の利益を保護するために必要な措置を採ることを勧告するまでの必要はないものとして取り扱うこととし、この旨を公表している(平成20年12月17日公表)。
 令和5年度においては、前記のような親事業者からの違反行為の自発的な申出は39件であった。また、同年度に処理した自発的な申出は39件であった。

 令和5年度においては、親事業者からの違反行為の自発的な申出により、下請事業者2,158名に対し、下請代金の減額分の返還等、総額7770万円相当の原状回復が行われた(前記2記載の金額に含まれている。)。


【自発的な申出の件数等】

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第2 中小事業者等の取引公正化に向けた取組

 公正取引委員会は、令和3年12月27日、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」が取りまとめられたことを踏まえ、令和4年3月30日、「令和4年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を策定し、適正な価格転嫁の実現に向けて、従来にない取組を進めてきた。その上で、令和5年3月1日、当委員会は、新たに「令和5年中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を策定し、適切な価格転嫁の実現に向けて、更なる取組方針を取りまとめた。具体的には、①独占禁止法の執行強化、②下請法の執行強化等、③独占禁止法及び下請法の考え方の周知徹底等を実施してきたところ、令和5年度における具体的な取組内容及び今後の取組は以下のとおり。

<特設ウェブサイト>
「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化施策パッケージ」
に関する公正取引委員会の取組
https://www.jftc.go.jp/partnership_package/index.html

 

1 労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針

 現下の急激な物価上昇を乗り越え、持続的な構造的賃上げを実現するためには、特に我が国の雇用の7割を占める中小企業がその原資を確保できる取引環境を整備することが重要である。その取引環境の整備の一環として、令和5年11月29日、内閣官房及び公正取引委員会の連名で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を策定・公表した。

 指針の公表後、指針がより実効的なものとなるよう、全国8ブロックで指針の内容・活用方法に関する企業向けの説明会を実施した。また、地方版政労使会議の機会も活用しながら、周知徹底に努めているところである。

 その上で、発注者と受注者の双方が指針に記載の「12の行動指針」に沿って対応することが重要であり、今後、指針の実施状況についてフォローアップのための特別調査を実施する。 

 

2 独占禁止法の執行強化

(1) 独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査の実施

 公正取引委員会は、令和4年3月30日、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関する緊急調査(以下「緊急調査」という。)の中心となる対象業種として22業種を選定し、同年6月には受注者8万名に対し、同年8月には発注者3万名に対し、それぞれ書面調査を開始し、同年12月27日、緊急調査の結果を取りまとめ、公表した。

 令和5年においては、令和4年の緊急調査の結果等を踏まえ、11万名を超える事業者に対して「独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査」を行い、令和5年12月27日に結果を取りまとめ、公表した。調査の結果、独占禁止法Q&A(公正取引委員会ウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」のQ20)に該当する行為が認められた事業者8,175名に注意喚起文書を送付した。回答者数に占める注意喚起文書送付対象者数の割合については、令和4年の緊急調査では21.2%(注意喚起文書送付対象者数4,030名/回答者数18,998名)であったのに対し、今般の特別調査では17.1%(注意喚起文書送付対象者数8,175名/回答者数47,725名)と4.1ポイント減少した。

 また、令和5年11月8日に公表した「価格転嫁円滑化に関する調査の結果を踏まえた事業者名の公表に係る方針について」に基づき、事業者名公表に係る個別調査の対象となり得ると認められる発注者に対し、事業者名の公表があり得る旨を予告した上で個別調査を実施し、当該個別調査の結果、令和6年3月15日、相当数の取引先に対して協議を経ない取引価格の据置き等が確認された事業者10名について、独占禁止法第43条の規定に基づきその事業者名を公表した。 

(2) 荷主と物流事業者との取引に関する調査の実施

 公正取引委員会では、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から、独占禁止法に基づき「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」を指定し、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を継続的に行っている。

 当委員会は、令和4年9月に荷主3万名に対し、令和5年1月に物流事業者4万名に対し、それぞれ書面調査を開始し、現下の労務費、原材料価格、エネルギー等のコスト上昇分の協議を経ない取引価格の据置き等が疑われる事案について、荷主101名に対する立入調査を実施した。そして、同年6月1日、調査結果を取りまとめ、公表した。同調査においては、独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主777名に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付した。 

 また、令和5年においても荷主と物流事業者との取引に関する調査を実施しており、同年9月29日に荷主を対象とした調査票を3万通送付し、令和6年1月12日に物流事業者を対象とした調査票を4万通送付した。今後、書面調査等の結果を踏まえ、同年6月上旬に調査結果を取りまとめ、公表する。 

 

3 下請法の執行強化等

(1) 重点業種における立入調査の実施

 公正取引委員会は、令和5年5月30日、令和4年度における下請法の処理状況等を踏まえ、令和5年度における下請法上の重点立入業種として、情報サービス業、道路貨物運送業、金属製品製造業、生産用機械器具製造業及び輸送用機械器具製造業の5業種を選定した。

 また、当委員会は、令和5年度には、これらの業種の事業者に対し、187件の重点的な立入調査を実施した。

(2) 下請法違反行為の再発防止が不十分な事業者に対する取組の実施

 公正取引委員会及び中小企業庁は、令和4年5月20日、下請法違反行為の再発防止が不十分と認められる事業者に対し指導を行う際に、取締役会決議を経た上での改善報告書の提出を求めていくこととした。当委員会は、令和5年度においては、14件の改善報告書の提出を求めた。

(3) 法違反等が多く認められる業種における取引適正化に向けた取組強化の把握

 法違反等が多く認められる27業種における取引適正化に向けた取組強化の把握のため、令和5年9月20日、公正取引委員会及び中小企業庁は、事業所管省庁と連名により、当該業種の関係事業者団体に対して、傘下企業による法遵守状況の自主点検の実施を要請し、令和6年1月18日、法遵守状況の自主点検フォローアップ結果として取りまとめた。


4 独占禁止法及び下請法の考え方の周知徹底 

(1) 法律上問題となり得る取引価格の据置きに関する考え方の周知

 公正取引委員会は、令和4年1月26日、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」(平成15年公正取引委員会事務総長通達第18号。以下「下請法運用基準」という。)を改正するとともに、同年2月16日、当委員会ウェブサイトに掲載している「よくある質問コーナー(独占禁止法)」に新たにQ&Aを追加し、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの上昇分を取引価格に反映せず、従来どおりに取引価格を据え置くことは、下請法上の買いたたき又は独占禁止法上の優越的地位の濫用の要件の一つに該当するおそれがあることを明確化した。

 当委員会は、上記の下請法運用基準及び独占禁止法Q&Aについて、関係省庁とも連携しつつ、事業者、事業者団体等向けの周知徹底を図っている。

 また、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」等を踏まえ、下請法上の買いたたきの解釈・考え方が更に明確になるよう、令和6年5月27日、運用基準の改正を行った(令和6年4月1日から同月30日まで意見公募手続を実施)。

(2) 相談対応の強化

 公正取引委員会は、相談窓口において、下請法及び優越的地位の濫用に係る相談を受け付けている。令和5年度においては、下請法に関する相談が16,204件、優越的地位の濫用に関する相談が4,813件の合計21,017件の相談に対応した。また、令和3年9月8日、「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」を設置したところ、当該相談窓口ではフリーダイヤル経由で電話相談に対応している。

 当委員会及び中小企業庁は、令和4年に中小事業者等が匿名で情報提供できる「違反行為情報提供フォーム」を設置し、買いたたきなどの違反行為が疑われる親事業者に関する情報を受け付けているところ、令和5年度は、当委員会に対して891件の情報が寄せられた。

 当委員会では、令和5年12月27日、労務費という理由で価格転嫁の協議のテーブルにつかない事業者等に関する情報を広く受け付けるため、受注者が匿名で情報提供できる「労務費の転嫁に関する情報提供フォーム」を設置し、令和6年3月末までに69件の情報が寄せられた。

「違反行為情報提供フォーム」

(買いたたきなどの違反行為が疑われる親事業者に関する情報提供フォーム)

https://www.jftc.go.jp/soudan/jyohoteikyo/kaitataki.html

「労務費の転嫁に関する情報提供フォーム」

https://www.jftc.go.jp/soudan/jyohoteikyo/romuhitenka.html
 また、当委員会は、令和3年9月8日以降、中小事業者等からの要望に応じ、下請法及び優越的地位の濫用について基本的な内容を分かりやすく説明するとともに相談受付を行うためのオンライン相談会を実施している。令和5年度においては、4件のオンライン相談会を実施した。
 さらに、当委員会は、商工会議所及び商工会の協力の下、独占禁止法相談ネットワークを運営しており、独占禁止法及び下請法に関する中小事業者からの相談に適切に対応することができるように、全国の商工会議所及び商工会が有する中小事業者に対する相談窓口(約2,200か所)を活用し、相談を受け付けている。令和5年度においては、相談窓口を利用する中小事業者の独占禁止法及び下請法に対する理解を助けるため、中小事業者向けリーフレット(「1分で分かる!独禁法」)等の参考資料を全国の商工会議所及び商工会へ配布した。
 当委員会は、引き続き、相談対応の強化を進めていく。
 「不当なしわ寄せに関する下請相談窓口」
                                 ゼ  ロ ゼロ   1 1 0 番
電話番号 0120-060-110

※固定電話のほか、携帯電話からも御利用いただけます。
※公正取引委員会の本局又は地方事務所等の相談窓口につながります。
【受付時間】10:00~17:00
(土日祝日・年末年始を除く。)

(3) 不当なしわ寄せ防止に向けた普及啓発活動の拡充・強化

ア 下請取引適正化推進月間に関する取組

 公正取引委員会は、中小企業庁と共同して、毎年11月を「下請取引適正化推進月間」と定め、下請取引適正化の推進に関する講習を実施するなどの普及啓発活動を実施している。令和5年度においては、各種媒体を通じた広報やポスターの掲示に加え、下請取引適正化推進講習会テキストの内容を繰り返し習得できる動画を配信した。 また、「下請取引適正化推進月間」を効果的にPRすることを目的として、キャンペーン標語についての一般公募を実施し、「「見直そう」 その一言で 救われる」を令和5年度の特選作品として選定した。

イ コンプライアンス確立への積極的支援

 公正取引委員会は、令和5年度において、①下請法等に関する基礎知識を習得することを希望する者を対象とした基礎講習(講習会30回、講習動画の配信)、②下請法等に関する基礎知識を有する者を対象とした事例研究を中心とした応用的な内容に関する応用講習(講習動画の配信)、③業種ごとの実態に即した分かりやすい具体例を用いて説明を行う業種別講習(講習動画の配信)、④事業者団体が開催する研修会等への出講(講師派遣104回)を実施した。

ウ 親事業者に対する下請法遵守のための年末要請

 年末にかけての金融繁忙期においては、下請事業者の資金繰り等について厳しさが増すことが懸念されることから、公正取引委員会及び経済産業省は、下請法の遵守の徹底等について、公正取引委員会委員長及び経済産業大臣の連名の文書で要請している。令和5年度においては、関係事業者団体約1,700団体に対し、令和5年12月8日に要請を行った。

エ 下請代金の支払の適正化に向けた取組

 公正取引委員会は、手形、一括決済方式又は電子記録債権(以下「手形等」という。)を下請代金の支払手段として用いる場合には、下請事業者の利益を保護する観点から、業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案して、ほぼ妥当と認められるサイトの基準について、繊維業は90日、その他の業種は120日とし、親事業者がこれを超える長期の手形等を支払手段として用いる場合、割引困難な手形(一括決済方式又は電子記録債権の場合は支払遅延)に該当するおそれがあるとして、その親事業者に対し、指導してきた。
 今般、当委員会は、改めて業界の商慣行、近年の金融情勢等を総合的に勘案し、手形等が下請代金の支払手段として用いられた場合の指導基準及び指導方針を変更し、ほぼ妥当と認められるサイトの基準について、業種を問わず60日にすることとし、令和6年2月28日から同年3月28日まで、関係各方面から意見を募集した。パブリックコメントで頂いた意見を踏まえ、令和6年4月30日に成案を公表した。今後、半年程度の周知期間を置いて、同年11月1日から運用を開始する予定である。

オ 下請取引等改善協力委員への意見聴取 

 公正取引委員会は、下請法等の効果的な運用に資するため、各地域の下請取引等の実情に明るい中小事業者等に下請取引等改善協力委員を委嘱している。令和5年度における下請取引等改善協力委員(定員)は153名である。令和5年度においては、下請取引等改善協力委員から、労務費、原材料価格、エネルギーコストの上昇に伴う下請代金の見直しなどについて意見聴取を行った。

関連ファイル

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問い合わせ先

公正取引委員会事務総局経済取引局取引部
下請取引調査室 電話03-3581-3374(直通)(第1関係)
企業取引課 電話03-3581-3373(直通)(第2関係)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/
(下請法に係る相談・申告等 https://www.jftc.go.jp/soudan/jyohoteikyo/kaitataki.html

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