令和6年6月20日
公正取引委員会事務総局
東北事務所
第1 独占禁止法違反事件等の処理状況
1 独占禁止法違反事件等の処理状況
公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。また、IT・デジタル関連分野や農業・漁業分野における独占禁止法違反被疑行為など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に取り組んでいる。
そして、公正取引委員会は、一般から提供された情報(申告)、自ら探知した事実等を検討し、必要な審査を行い、審査の結果、違反行為が認められたときは、違反行為をした事業者等に対し、違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち、価格カルテル・入札談合・受注調整、優越的地位の濫用等については、違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。また、違反被疑行為について公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認められるときは、確約手続を適用し、事業者と協調的な問題解決を図っている。
2 最近の独占禁止法違反事件等の処理状況(優越的地位の濫用事案で注意したもの及び不当廉売事案で迅速処理したものを除く。)
最近の5年間における東北地区の独占禁止法違反事件等の処理状況は、次のとおりである。
処理内容/年度 |
R1
年度
|
R2 |
R3 |
R4 年度 |
R5 年度 |
||
審査件数
|
前年度からの繰越し
|
1 |
1 |
2 |
1 |
1 |
|
年度内新規着手
|
2 |
3 |
9 |
3 |
2 |
||
合計
|
3 |
4 |
11 |
4 |
3 |
||
処理件数
|
法的措置 |
排除措置命令等 |
0 |
1 | 0 |
0 | 0 |
その他 |
警告(注2) |
1 |
0 |
0 | 0 | 0 | |
注意(注3) |
2 |
1 |
10 |
3 |
2 |
||
打切り(注4) |
0 |
0 | 0 | 0 | 0 | ||
小計 |
3 |
1 |
10 |
3 |
2 |
||
合計 |
3 |
2 |
10 |
3 |
2 |
||
次年度への繰越し
|
1(注5) |
2 |
1 |
1 |
1 |
(注1)「法的措置」とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定であり、一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共になされている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは、排除措置命令を採るに足る証拠が得られないが、違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは、違反行為が認められない等により、審査を打ち切る場合をいう。
(注5)一つの事件において、複数の措置を採っているため、審査件数の合計から処理件数の合計を差し引いて得られる件数とは一致しない。
3 独占禁止法違反事件等の概要
(1) 優越的地位の濫用
公正取引委員会は、優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には、効率的かつ効果的な調査を行い、独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には、未然防止の観点から注意するほか、独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。
令和5年度においては、東北地区で2件の注意を行ったところ、その事例は以下のとおりである(注)。
(注) 次の各事例は、独占禁止法違反につながるおそれがあったものである。
ア ホームセンターを営むAは、納入業者に対し、
(ア)棚替えに伴い棚から外れた商品及び廃番になった商品を値引きして販売する際に、当該商品の値引き分の負担を要請し、あらかじめ定めた支払代金から減額して支払っていた。
(イ)新規開店、改装開店、売場変更及び棚替えに際し、従業員等の派遣を要請し、他社商品を含む商品の陳列作業を行わせているにもかかわらず、日当や交通費等の納入業者が従業員等を派遣するために通常必要となる費用を負担していなかった。
(ウ)買取条件で仕入れた商品について、商品の入替えにより棚から外れた際や商品が廃盤になる際に、返品によって納入業者に通常生ずべき損失を負担することなく返品していた。
イ 農産物販売事業等を営むBは、運送業務を委託する物流事業者に対し、業務遂行上必要としない商品の購入を要請していた。
(2) 不当廉売
公正取引委員会は、申告のあった小売業に係る不当廉売事案については、迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売事業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売事業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い、問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。
迅速に処理するとの上記方針の下、令和5年度においては、石油製品等の小売業について、不当廉売につながるおそれがあるとして東北地区で29件の注意を行った。
(3) その他
次の各事例は、記載された行為が行われていた疑いがあり、独占禁止法違反につながるおそれがあったため、注意を行った。
ア 酒類の製造販売業を営むCは、自社が製造販売する酒類について、直接又は卸売業者を通じて小売業者に対し、自社が設定する希望小売価格を下回る価格で販売しないよう要請していた。(再販売価格の拘束)
イ 行政書士の団体Dは、会員が遵守すべき規程において、会員の顧客獲得活動及び広告宣伝活動を制限していた。(事業者団体による顧客獲得活動及び広告宣伝活動の制限)
第2 企業結合関係届出及び協同組合届出の状況
1 企業結合関係届出
独占禁止法では第4章において、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。
公正取引委員会は、これらの規定に従い、企業結合審査を行っているところ、最近5年間における東北地区の企業結合関係届出の状況は、次のとおりである。
R1
年度
|
R2 |
R3 |
R4 年度 |
R5 年度 |
|
株式取得届出受理
|
0 |
0 |
2 |
1 |
1 |
合併届出受理
|
0 |
0 | 0 | 0 | 0 |
分割届出受理
|
0
|
0 | 0 | 0 | 0 |
共同株式移転届出受理
|
0
|
0 | 0 | 0 | 0 |
事業譲受け等届出受理
|
0
|
1 | 0 |
1 | 0 |
合計
|
0 |
1 |
2 |
2 |
1 |
2 協同組合届出
中小企業等協同組合法は、同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し、同法第7条第1項第1号に規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには、その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
最近5年間における東北地区の協同組合届出件数は、次のとおりである。
R1
年度
|
R2 |
R3 |
R4 年度 |
R5 年度 |
20 |
7 |
9 |
6 |
12 |
第3 広報・広聴活動
公正取引委員会は、独占禁止法等の普及・啓発及び競争政策の運営に資するため、次のような広報・広聴活動を行っている。
1 独占禁止政策協力委員制度
競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため、独占禁止政策協力委員制度を設置しており、公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに、独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
令和5年度においては、(1)中小企業の取引適正化/優越的地位の濫用規制・下請法の規制、(2)競争環境の整備に係る調査・提言、(3)広報・広聴活動、(4)地域経済の実情と競争政策上の課題、(5)公正取引委員会に対する期待等についての意見聴取をそれぞれ行った(注)。
(注)聴取した意見の概要は、他の地区のものと合わせて令和6年5月24日に公表されている。
2 有識者との懇談会等
各地の有識者と公正取引委員会の委員等との懇談会及び講演会を通して、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広く意見及び要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため、毎年、全国各地において有識者との懇談会を開催している。
東北地区では、令和5年度は福島市において、消費者団体、報道機関及び学識経験者と公正取引委員会委員との懇談会を開催するとともに「成長と分配の好循環の実現と公正取引委員会の役割」をテーマに講演会を開催した。
このほか、東北事務所長と各地の有識者との懇談会を開催しており、令和5年度は青森県三沢市、盛岡市、宮城県岩沼市、秋田市及び秋田県能代市の計5か所において開催した。また、青森県、宮城県及び秋田県の弁護士会との懇談会を開催した。さらに、公正取引委員会委員及び事務総長が、仙台市及び福島市の事業者の工場等を訪問し、事業実態の説明を受けるとともに、労務費、原材料価格、エネルギーコストの転嫁状況等について意見交換を行った。
3 独占禁止法説明会等
公正取引委員会は独占禁止法等の違反行為の未然防止を図るため、説明会・講習会等を自ら主催しているほか、各種業界団体等から要請を受けて講習会等へ講師を派遣している。
東北地区では、事業者団体等からの要請を受けて、令和5年度は独占禁止法に関する説明会等を12回実施した。また、入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を35回実施したほか、事業者団体からの要請を受けてインボイス制度への対応に係る独占禁止法等において問題となり得る行為についての説明会を2回実施した。
このほか、令和5年度は、働き方改革等の課題について、各地域で地方公共団体や労使を交えて話し合う場として全都道府県に設置されている「地方版政労使会議」につき、令和6年2月から3月にかけて開催された東北地区(福島県を除く。)の同会議に出席し、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の説明を行った。
4 独占禁止法教室(出前授業)
将来を担う中学生、高校生、大学生等を対象に、市場経済の仕組みや競争の機能について説明するなどし、競争の必要性・重要性、独占禁止法の役割等について理解してもらうことを目的として、公正取引委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。
東北地区では、令和5年度は、中学生向け独占禁止法教室を4回、高校生向け独占禁止法教室を1回、大学生等向け独占禁止法教室を5回それぞれ開催した。
5 消者者セミナー
一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層理解を深めてもらうことを目的として、地域の一般消費者を対象としたセミナーを開催しているほか、公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会等に派遣している。
東北地区では、令和5年度は、消費者団体からの要請を受けて、仙台市(4か所)、山形県東田川郡三川町、福島市、福島県郡山市、同県いわき市及び同県相馬郡飯館村の計9か所において、消費者セミナーを開催した。
6 一日公正取引委員会
7 相談業務
公正取引委員会は、法運用に対する理解を深め、違反行為の未然防止を図るため、相談を受け付けている。
最近5年間における東北地区の相談受付件数は次のとおりである。
R1 |
R2 |
R3 |
R4 年度 |
R5 年度 |
|
独占 |
304 |
284 |
232 |
222 |
283 |
下請法 |
196 |
185 |
158 |
197 |
287 |
合計 |
500 |
469 |
390 |
419 |
570 |
関連ファイル
(印刷用)(令和6年6月20日)令和5年度における東北地区の独占禁止法の運用状況等について
(156 KB)
問い合わせ先
第1に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局東北事務所第一審査課
電話 022-225-8421(直通)
第2及び第3に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局東北事務所総務課
電話 022-225-7095(直通)
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