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(令和7年5月1日)令和6年度における独占禁止法違反事件の処理状況について

(令和7年5月1日)令和6年度における独占禁止法違反事件の処理状況について

令和7年5月1日
公正取引委員会

はじめに

 公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。
 令和6年度においては、大手損害保険会社らによる企業等向け損害保険の価格カルテル等、給食サービス提供事業者による中学校スクールランチ調理等業務の入札談合、機械式駐車装置メーカーらによる受注調整、漁業協同組合等による水産物の生産者(組合員)に対する全量出荷要請、医療機器メーカーによる抱き合わせ販売等に厳正に対処したほか、デジタル分野においてGoogle LLCによる競争者に対する取引妨害等の疑いの事案、物流取引の分野において管工機材・住設機器等の大手卸売事業者による物流事業者に対する優越的地位の濫用の疑いの事案について確約手続を利用し、効率的かつ効果的に対処した。また、大手食料品メーカーによる食品の再販売価格の拘束の疑い等について警告の措置を採り、機動的に対処した。
 さらに、昨今の労務費・原材料費・エネルギーコスト等の急激なコスト上昇に伴う受注サイドの中小事業者等からの発注サイドの事業者に対する価格転嫁の要請に関連して、発注サイドの事業者による優越的地位の濫用につながるおそれがある行為に対して独占禁止法違反行為の未然防止の観点から注意を行うなど中小事業者等に不当に不利益を与える行為に迅速に対処した。
 令和6年度における独占禁止法違反事件の処理状況は、次のとおりである。

第1 審査事件の概況

1 法的措置等の状況

(1) 排除措置命令等の状況

 令和6年度においては、独占禁止法違反行為について、延べ61名の事業者に対して、21件の排除措置命令を行った。排除措置命令21件の内訳は、価格カルテル4件、入札談合6件、受注調整6件、不公正な取引方法5件となっている。これら21件の市場規模は、総額921億円超である。
 また、令和6年度においては、独占禁止法違反被疑行為について、3名の事業者に対して、3件の確約計画の認定を行った(注1)。違反被疑行為の内訳は、私的独占1件(競争者に対する取引妨害等を含む)、優越的地位の濫用1件、抱き合わせ販売等1件となっている。

(注1) 確約計画の認定は、確約手続に係る通知を受けた事業者から申請された確約計画を公正取引委員会が認定するという、独占禁止法に基づく行政処分である。公正取引委員会は、認定した確約計画に従って確約計画が実施されていないなどの場合には、当該認定を取り消し、確約手続に係る通知を行う前の調査を再開することとなる。

図1 法的措置(注2)件数等の推移

(注2) 法的措置とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定のことである。一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。

(注3) 私的独占と不公正な取引方法のいずれも関係法条となっている事件は、私的独占に分類している。

(注4) その他のカルテルとは、数量、販路、顧客移動禁止、設備制限等のカルテルである。


⑵ 警告等の状況

   令和6年度においては、違反の疑いのある行為が認められた8件について、関係事業者に対し、事前説明を行った上で警告・公表を行った(事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限:1件、不当廉売:2件、再販売価格の拘束:2件、優越的地位の濫用:3件)。

図2 排除措置命令・確約計画の認定・警告等の件数の推移

(注5) 事案の概要を公表したものに限る。


(3) 課徴金納付命令の状況

 令和6年度においては、延べ33名の事業者に対して、総額37億604万円の課徴金納付命令を行った。  

 一事業者当たりの課徴金額の平均は1億1230万円(注6)であった。

(注6) 一事業者当たりの課徴金額の平均については、1万円未満切捨て。

表1 課徴金額等の推移

(注7) 課徴金額については、千万円未満切捨て。

2 申告の状況

 令和6年度において、独占禁止法の規定に違反すると考えられる事実について、公正取引委員会に寄せられた報告(申告)の件数は、3,038件であった。

 申告が書面で具体的な事実を摘示して行われるなど一定の要件を満たした場合には、申告者に対して措置結果等を通知することとされているところ、令和6年度においては、2,774件の通知を行った。

図3 申告件数の推移

3 課徴金減免制度の状況

 公正取引委員会は、事業者が自ら関与したカルテル・入札談合・受注調整について、その違反内容を当委員会に自主的に報告した場合、課徴金が減免される制度(以下「課徴金減免制度」という。)及び課徴金減免申請の申請順位に応じた減免率に、課徴金減免申請を行った事業者(調査開始日より前に最初に課徴金減免申請をした者を除く。)の事件の真相の解明に資する程度に応じた減算率を付加する制度(以下「調査協力減算制度」という。)を運用している。

 令和6年度において、課徴金減免制度に基づき、事業者から自らの違反行為に係る事実の報告等が行われた件数は、109件であった(平成18年1月の制度導入時から令和6年度末までの累計は1,682件)。 
 また、令和5年度においては、価格カルテル・受注調整・入札談合事件4件における延べ13名の課徴金減免制度の適用事業者について、これらの事業者の名称、減免の状況等を公表した(注9)。このうち、4事件計9名の事業者に調査協力減算制度を適用した。

(注8) 公正取引委員会は、法運用の透明性等を確保する観点から、課徴金減免制度が適用された事業者について、課徴金納付命令を行った際に、当委員会のウェブサイトに、当該事業者の名称、所在地、代表者名及び免除の事実又は減額の率等を公表することとしている(ただし、平成28年5月31日以前に課徴金減免申請を行った事業者については、当該事業者から公表の申出があった場合に、公表している。)。
 なお、公表された事業者数には、課徴金減免申請を行った者であるものの、①独占禁止法第7条の2第1項に規定する売上額(課徴金の算定の基礎となる売上額)が存在しなかったため課徴金納付命令の対象になっていない者及び②算出された課徴金額が100万円未満であったため独占禁止法第7条の2第1項ただし書により課徴金納付命令の対象になっていない者のうち、公表することを申し出た事業者の数を含めている。
 ウェブサイト https://www.jftc.go.jp/dk/seido/genmen/kouhyou/index.html

表2 課徴金減免申請件数の推移

(単位:件)
年度 R2 R3 R4 R5 R6 累計
(注9)
申請
件数
33 52 22 156 109 1,682

(注9) 課徴金減免制度が導入された平成18年1月4日から令和7年3月末までの件数の累計。

表3 課徴金減免制度の適用状況

(単位:件、延べ事業者数)
年度 R2 R3 R4 R5 R6 累計
(注12)
課徴金減免制度が適用された法的措置件数
(注10)(注11)
16 184
課徴金減免制度が適用された
事業者数
17 10 22 13 53 489

(注10) 本表における法的措置とは、排除措置命令及び課徴金納付命令であり、一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共に行われている場合には、法的措置件数を1件としている。

(注11) 排除措置命令のみを行い課徴金納付命令は行わなかったものの、当委員会のウェブサイトに課徴金減免申請を行った旨を公表することを申し出た事業者が存在する事件又は当該事業者を含む。

(注12) (注8)を参照。課徴金減免制度が導入された平成18年1月4日から令和7年3月末までの件数又は事業者数の累計。

表4 調査協力減算制度の適用状況

(単位:件、事業者数)
年度 R2 R3 R4 R5 R6 累計
調査協力減算制度が適用された
法的措置件数
13 19
調査協力減算制度が適用された
事業者数
29 42

4 確約手続の運用について

 確約手続は、独占禁止法違反被疑行為の迅速・効率的かつ効果的な排除により、独占禁止法の効果的な執行に資することを目的として導入され、平成30年12月に施行された。確約手続については、透明性及び事業者の予見可能性を確保する観点から「確約手続に関する対応方針」を策定し、当該対応方針に従って運用してきたところ、導入以来、21件の事件において利用されている。これまでの確約手続の運用経験を踏まえ、より効果的かつ実効的に運用していくため、令和6年7月に、今後、以下の対応を採ることを明らかにした。
 確約措置の履行期間については、違反被疑行為の対象となった製品のライフサイクルやサービスの契約期間、海外当局の対応、競争の確実な回復の観点等を踏まえ、原則として5年以上とし、同様の行為の再発防止をより確実に担保することとした。
 確約措置の履行については、独立性のある外部専門家の客観的な監視を経て実施する方がより確実性が確保されることから、確約措置全体の履行について、外部専門家による監視を積極的に活用することとした。
 また、市場への影響が大きな事案など、特に必要があると認められるときは、独占禁止法第68条に基づき、確約計画の認定を受けた事業者のみならず、取引先事業者、競合他社等に対して、確約措置の履行状況の確認等を行って、確約措置の確実な履行確保を図ることとした。

5 審査の開始及び第三者からの情報・意見の募集

 公正取引委員会は、令和6年11月27日、アマゾンジャパン合同会社らによる独占禁止法違反被疑行為について、審査を開始した旨及び「Amazon.co.jp」における出品者からの情報・意見の募集を行うこととした旨を公表した。

第2 行為類型別の事件概要 

1 私的独占

 令和6年度においては、Google LLCによる私的独占被疑事件について、1件の法的措置(確約計画の認定)を採った。

・ Google LLCに対する確約計画の認定

 公正取引委員会は、Google LLCに対し、Google LLCの次の行為が独占禁止法の規定に違反する疑いがあるものとして、確約手続通知を行ったところ、Google LLCから確約計画の認定申請があり、当該計画が独占禁止法に規定する認定要件に適合すると認め、当該計画を認定した。

     ○ Google LLCは、平成26年11月1日、ヤフー株式会社との間で締結していた「GOOGLE SERVICES AGREEMENT」

  と題する契約を、自社の子会社であるグーグルアジアパシフィックプライベートリミテッド及びグーグル合同会社を通じて変更し、変更後の契約に

  基づき、遅くとも平成27年9月2日から令和4年10月31日までの間、ヤフー株式会社に対し、モバイル・シンジケーション取引※に必要な

  索エンジン及び検索連動型広告に係る技術の提供を制限することで、ヤフー株式会社がモバイル・シンジケーション取引を行うことを困難にしてい

  た。

※ 検索連動型広告の配信を行う事業者が、ウェブサイト運営者等から広告枠の提供を受け、検索連動型広告を配信するとともに、当該広告枠に配信し

 た検索連動型広告により生じた収益の一部を当該事業者に分配する取引をいう。

(令和6年4月22日 確約計画の認定)

2 価格カルテル等

 令和6年度においては、LPガス容器用バルブの製造販売業者らによる価格カルテル事件、損害保険会社による企業向け損害保険の価格カルテル等事件(6件)について、7件の法的措置(排除措置命令及び課徴金納付命令)を採った。

・ LPガス容器用バルブの製造販売業者らによる価格カルテル事件

 LPガス容器用バルブの製造販売業者らが、共同して、需要者向け販売価格を引き上げる旨を合意していた。

(令和6年6月27日 排除措置命令(5社)及び課徴金納付命令(5社))

(課徴金総額:7億964万円)

・ 損害保険会社による価格カルテル等事件(JERA)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、本件財物・利益保険※について、見積り合わせにおいて各社が提示する保険料の水準を調整すること等によって保険料を引き上げ又は維持する旨を合意していた。

※ 「本件財物・利益保険」とは、株式会社JERAが見積り合わせの方法により発注する財物・利益保険のうち、1回の事故につき保険金の支払限度

 額を1500億円とする保険をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(4社)及び課徴金納付命令(3社))

(課徴金総額:10億6031万円)

・ 損害保険会社による価格カルテル等事件(コスモ)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、本件製油所包括保険※について、見積り合わせにおいて各社が提示する保険料等を調整することによって各社の引受割合及び保険料の水準を維持する旨を合意していた。

※ 「本件製油所包括保険」とは、コスモエネルギーホールディングス株式会社がコスモ石油株式会社の製油所を対象に同社に代わって、見積り合わせの

 方法により発注する地震保険等をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(4社)及び課徴金納付命令(3社))

(課徴金総額:3億3664万円)

・ 損害保険会社による価格カルテル等事件(シャープ)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、本件マリン保険※について、各社の見積保険料を調整することによって保険料の水準を維持する旨を合意していた。

※ 「本件マリン保険」とは、シャープ株式会社を保険契約者とし、保管中又は輸送中のシャープ製品等を補償対象とする損害保険であって、シャープ株

 式会社から指名を受けたマーシュジャパン株式会社により「SHARP GLOBAL STP PROGRAM」という名称で見積り合わせの方法

 により発注されるものをいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(3社)及び課徴金納付命令(2社))

(課徴金総額:2億22万円)

・ 損害保険会社による価格カルテル等事件(京成電鉄)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、本件グループ包括保険※について、予定幹事会社を決定し、予定幹事会社が幹事会社に選定されるようにするとともに、予定幹事会社が定めた見積金額を基にした保険料等で契約できるようにする旨を合意していた。

※ 「本件グループ包括保険」とは、京成電鉄株式会社が「グループ包括保険」の名称により見積合わせの方法により発注する京成電鉄株式会社を保険契

 約者とする鉄道総合財産保険等をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(4社)及び課徴金納付命令(3社))

(課徴金総額:1億2072万円)

・ 損害保険会社による価格カルテル等事件(仙台国際空港)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、令和4年更改契約における本件損害保険※について、見積り合わせにおいて各社が提出する見積りを調整することによって保険料を引き上げること及び地震特約に係る保険期間を1年とする旨を合意していた。

※ 「本件損害保険」とは、仙台国際空港株式会社を保険契約者とする企業財産包括保険等をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(3社))

・ 損害保険会社による価格カルテル等事件(東急)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、令和5年更改契約における本件損害保険※について、見積り合わせにおいて各社が提出する見積りを調整することによって保険料を引き上げ又は維持する旨を合意していた。

※ 「本件損害保険」とは、東急株式会社を保険契約者とする企業財産包括保険等をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(4社))

〇 金融庁及び一般社団法人日本損害保険協会に対する要請

  損害保険会社らによる独占禁止法違反行為の多くは、共同保険の組成過程において行われていたこと等を踏まえ、独占禁止法違反行為の未然防止の観点から、共同保険の組成・利用に関し、損害保険会社、損害保険代理店又は保険契約者において留意すべき独占禁止法上の考え方及び競争政策上の考え方等を取りまとめるとともに、独占禁止法遵守について、金融庁にあっては、損害保険会社等に対し、一般社団法人日本損害保険協会にあっては、会員に対し、それぞれ、周知徹底するよう要請した。

3 入札談合

 令和6年度においては、名古屋市が発注する中学校スクールランチ調理等業務の入札参加業者による入札談合事件、青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務の入札参加業者らによる入札談合事件、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構等が発注する損害保険の入札参加業者による入札談合事件(3件)、山形県が発注する豚熱ワクチンの入札等の参加業者による入札談合事件について、6件の法的措置(排除措置命令及び課徴金納付命令)を採った。

・ 名古屋市が発注する中学校スクールランチ調理等業務の入札参加業者による入札談合事件

 名古屋市発注の中学校スクールランチ調理等業務の入札参加業者は、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

(令和6年5月22日 排除措置命令(6社)及び課徴金納付命令(6社))

(課徴金総額:3億9296万円)

〇 公益社団法人日本給食サービス協会に対する要請

  公益社団法人日本給食サービス協会の会員を含む違反事業者により独占禁止法違反行為が行われたことから、今後、同協会の会員事業者が同様の行為を行うことのないよう、同協会に対し、独占禁止法の遵守について会員事業者に周知徹底するよう要請した。

・ 青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務の入札参加業者らによる入札談合事件

 青森市が発注する新型コロナウイルス感染症患者移送業務の入札参加業者らが、

ア 受注予定者を決定し、受注予定者以外の者は、受注予定者が受注できるように協力すること

イ 受注予定者は、受注予定者以外の者に受注した当該業務の一部を委託すること

を合意していた。

(令和6年5月30日 排除措置命令(4社))

○ 青森市に対する申入れ等

  本件審査の過程において、入札における公正かつ自由な競争を確保する上で、青森市の対応として適切とはいえないものや、独占禁止法違反行為を誘発又は助長するおそれがある行為が認められたことから、公正取引委員会は、青森市に対し、改善要請を行うとともに、当該行為と同様の行為が再び行われることのないよう適切な措置を講ずることを申し入れた。

○ 一般社団法人日本旅行業協会に対する申入れ

  本件審査の過程において、一般社団法人日本旅行業協会の会員である違反事業者5社が、同協会東北支部青森県地区委員会の会合の際に、独占禁止法違反行為に係る行為を行っていた事実が認められた。

  公正取引委員会は、一般社団法人日本旅行業協会に対し、同協会の会員によって同様の独占禁止法違反行為が行われることのないよう、①同協会の会員、役員及び事務局職員に対して、本件排除措置命令の内容を周知すること、②独占禁止法の遵守についての行動指針を作成し周知徹底すること及び③独占禁止法の遵守についての研修を実施することを申し入れた。

・ 損害保険会社らによる入札談合事件(JOGMEC)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社、東京海上日動火災保険株式会社及び共立株式会社は、共同して、本件備蓄基地保険※について、三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社が事前に想定した引受保険料及び引受割合で受注できるようにしていた。

※ 「本件備蓄基地保険」とは、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(以下「JOGMEC」という。)が一般競争入札の方法により発注する、

 JOGMECが管理する国家石油・石油ガス備蓄基地等を対象とする企業財産包括保険等をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(4社)及び課徴金納付命令(2社))

(課徴金総額:3億1715万円)

・ 損害保険会社による入札談合事件(警視庁)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、警視庁が希望制指名競争入札の方法により発注する任意自動車保険について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

(令和6年10月31日 排除措置命令(3社)及び課徴金納付命令(1社))

(課徴金総額:1962万円)

・ 損害保険会社による入札談合事件(東京都)

 三井住友海上火災保険株式会社、損害保険ジャパン株式会社及び東京海上日動火災保険株式会社は、共同して、東京都発注の病院賠償責任保険※について、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

※ 「東京都発注の病院賠償責任保険」とは、東京都が希望制指名競争入札の方法により発注する都立病院を対象とする病院賠償責任保険をいう。

(令和6年10月31日 排除措置命令(3社)及び課徴金納付命令(1社))

(課徴金総額:1698万円)

・ 山形県が発注する豚熱ワクチンの入札等の参加業者による入札談合事件

 山形県が発注する豚熱ワクチンの入札等の参加業者が、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

(令和7年3月13日 排除措置命令(2社)及び課徴金納付命令(2社))

(課徴金総額:456万円)

〇 一般社団法人全国動物薬品器材協会に対する要請

  本件審査の過程において、一般社団法人全国動物薬品器材協会の会員となっている山形県動物薬品器材協会の会員である違反事業者3社が、山形県動物薬品器材協会の会合という名目で独占禁止法違反行為に係る話合いを行っていた事実等が認められた。

  公正取引委員会は、豚熱ワクチン及び動物用ワクチンを含む動物用医薬品の卸売業に関連する全国団体である一般社団法人全国動物薬品器材協会に対し、 動物用医薬品の卸売業者によって本件と同様の独占禁止法違反行為が行われることを未然に防止する観点から、本件の概要及び独占禁止法の遵守について、会員である各都道府県の動物薬品器材協会を通じて、動物用医薬品の卸売業者に周知徹底するよう要請した。

4 受注調整

 令和6年度においては、公益社団法人山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンの入札参加業者による受注調整事件、機械式駐車場メーカーらによる受注調整事件(2件)について、3件の法的措置(排除措置命令及び課徴金納付命令)を採った。

・ 公益社団法人山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンの入札参加業者による受注調整事件

 公益社団法人山形県畜産協会が発注する動物用ワクチンの入札参加業者が、受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。

(令和7年3月13日 排除措置命令(延べ2社)及び課徴金納付命令(延べ1社))

(課徴金総額:111万円)

・ 機械式駐車装置メーカーらによる受注調整事件

 機械式駐車装置メーカーらは、特定地下式PS設置工事又は特定エレベーター方式PS設置工事※について、供給予定者を決定し、供給予定者が供給できるようにしていた。

※ 「特定地下式PS設置工事」とは、建設業者が確認申請図に基づく見積り合わせの方法により発注する水平循環方式分離式の機械式駐車装置の設置

 工事(機械式駐車装置の入替工事を除く。)をいう。

※ 「特定エレベーター方式PS設置工事」とは、建設業者が確認申請図に基づく見積り合わせの方法により発注するエレベーター方式パレット型の機

 械式駐車装置の設置工事(機械式駐車装置の入替工事を除く。)をいう。
(令和7年3月24日 排除措置命令(延べ5社)及び課徴金納付命令(延べ4社))

(課徴金総額:5億2613万円)

〇 公益社団法人立体駐車場工業会に対する要請

  本件審査の過程において、違反事業者のうち複数の会社の営業担当者が、公益社団法人立体駐車場工業会の広報委員会の委員を務めることで他社の営業担当者と関係を築き、互いに連絡を取り合うなどして、違反行為に関与していた事実が認められた。

  公正取引委員会は、今後、公益社団法人立体駐車場工業会の会員が営む機械式駐車装置に関する事業において、独占禁止法違反行為が行われることがないように、同工業会に対し、独占禁止法の遵守について会員事業者に周知徹底するとともに、同工業会の広報委員会等の組織において会員各社の営業担当者が構成員になることなどによって、これらの者の間で営業情報について連絡を取りやすい関係が生じ得ることにも留意して、組織運営において適切に対応するよう要請した。

5 事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限

 令和6年度においては、日本プロフェッショナル野球組織による事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限被疑事件について、1件の警告を行った。

・ 日本プロフェッショナル野球組織に対する警告

 日本プロフェッショナル野球組織は、構成員である球団に対し、選手契約交渉の選手代理人とする者について、弁護士法(昭和24年法律第205号)の規定による弁護士とした上で、各球団に所属する選手が、既に他の選手の選手代理人となっている者を選任することを認めないようにさせていた。

 日本プロフェッショナル野球組織は、令和6年9月2日、前記の行為を取りやめる旨を決定※した。

※ 公正取引委員会が令和6年8月から審査を開始し、前記の独占禁止法違反被疑事実について問題点を指摘し、早期の取りやめの検討を求めたことを

 受けて行われたものである。

(令和6年9月19日 警告)

6 不公正な取引方法

(1) 優越的地位の濫用

 令和6年度においては、橋本総業株式会社による優越的地位の濫用(物流特殊指定(注13)違反)被疑事件について、1件の法的措置(確約計画の認定)を採った。

(注13)物流特殊指定とは、特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法(平成16年公正取引委員会告示第1

      号)を指す。

・ 橋本総業株式会社に対する確約計画の認定

 公正取引委員会は、橋本総業株式会社(以下「橋本総業」という。)に対し、橋本総業の次の行為が独占禁止法の規定に違反する疑いがあるものとして、確約手続通知を行ったところ、同社から確約計画の認定申請があり、当該計画が独占禁止法に規定する認定要件に適合すると認め、当該計画を認定した。
     ○ 橋本総業は、遅くとも平成29年7月以降、物流特殊指定の備考第2項に規定する特定物流事業者に該当する事業者(以下「本件物流事業者」と

  いう。)に対して、次の行為を行っている。
         ⑴  一部の本件物流事業者に対し、当該物流事業者の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず、あらかじめ定めた代金の額から  

               ア 「お支払割戻金」と称して、当該額に一定率を乗じて得た額を減じている。

               イ 当該代金を当該物流事業者の金融機関口座に振り込む際の手数料を減じている。
     ⑵     一部の本件物流事業者に対し、長時間の運送業務について、同種又は類似の内容の運送業務に対し通常支払われる額に比し著しく低い額となる

    運賃で委託している。
      ⑶  一部の本件物流事業者との間で、あらかじめ当該物流事業者との間で当該業務時間を超える部分の本件運送業務に係る運賃について取り決めて

   いないことにより、当該業務時間を超える部分の本件運送業務を無償で行わせている。
      ⑷  一部の本件物流事業者に対し、委託内容に含まれていない特定の附帯作業※2について、あらかじめ当該物流事業者との間で取引の条件を取り

    決めることなく、当該物流事業者に無償で行わせている。

※1 「法定時間外労働」とは、労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条第2項に規定する1日当たりの労働時間を超える労働をいう。

※2 「附帯作業」とは、本件物流事業者が、①橋本総業の配送センターにおいて保管場所から運送する物品を取り出す作業、 ②当該物品を本件物流事

  業者の車両に積み込む作業、③橋本総業の取引先の事業所等において当該物品を当該車両から取り卸す作業及び④橋本総業の取引先から返品される

  こととなった物品を回収する作業をいう。

(令和6年12月12日 確約計画の認定)

 

 また、株式会社イトーキによる優越的地位の濫用(物流特殊指定違反)被疑事件、株式会社ダイゼンによる優越的地位の濫用被疑事件、株式会社アトレによる優越的地位の濫用被疑事件について、3件の警告を行った。

・ 株式会社イトーキに対する警告

 株式会社イトーキは、オフィス家具の運送、搬入、組立て、据付け及び搬出の業務(以下「本件運送業務」という。)を委託する物流事業者(以下「本件物流事業者」という。)※1に対して、

⑴ 時間外費※2の対象を納品場所での業務に要した時間に限ることにより、納品場所以外での業務

⑵ 本件運送業務に係る特定の附帯業務※3

を無償で行わせている疑いがある。

※1 物流特殊指定の備考第2項に規定する特定物流事業者に該当する事業者をいう。

※2 基礎作業時間を超えて行われた業務に支払われる加算額をいう。

※3 本件物流事業者が、オフィス家具を車両に積み込む業務及びオフィス家具の梱包材等の残材を引き渡す業務をいう。

(令和6年11月28日 警告)

・ 株式会社ダイゼンに対する警告

 株式会社ダイゼンは、遅くとも令和4年6月以降令和6年11月3日までの間、自社に継続して商品を納入する取引をしている事業者(以下「納入業者」という。)に対し、次の行為を行っていた事実が認められた。

⑴ 自社の店舗で行う新規開店セール、毎年9月の決算セール、毎年12月の歳末セール等に際し、協賛金の名目で、あらかじめ負担額の算出根拠、使

 途等を明確にすることなく、その提供を通じて納入業者が販売促進効果等の利益を得ることができないにもかかわらず、金銭を提供させていた。

⑵ 自社の店舗の新規開店又は改装開店に際し、商品の陳列等の開店準備作業を行わせるため、あらかじめ派遣の条件について明確にすることなく、そ

 の派遣を通じて納入業者が販売促進効果等の利益を得ることができないにもかかわらず、従業員等を派遣させていた。

(令和6年12月13日 警告)

・ 株式会社アトレに対する警告

 株式会社アトレは、自社の運営する商業施設への出店に係る取引において、出店者との契約で自社が「JRE POINT」と称するポイントサービスの運営費用を負担することをあらかじめ合意していたにもかかわらず、令和6年7月頃、自己の取引上の地位が出店者に優越していることを利用して、当該取引条件について、令和7年4月1日以降の当該運営費用の一部を出店者に負担させる内容に一方的に変更した疑いがある。

(令和7年3月5日 警告)

 

 このほか、令和6年度においては、優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして41件の注意を行った(別添参照)。


⑵ 拘束条件付取引

 令和6年度においては、熊本県漁業協同組合連合会による拘束条付取引事件、佐賀県有明海漁業協同組合による拘束条付取引事件について、2件の法的措置(排除措置命令)を採った。

・ 熊本県漁業協同組合連合会による拘束条付取引事件

 熊本県漁業協同組合連合会(以下「熊本県漁連」という。)は、
⑴ 次の行為を行うことにより、15漁協管内の海苔生産者に対し、乾海苔の系統外出荷を行わないようにさせている。
    
ア 遅くとも平成30年10月頃以降、毎年、15漁協管内の海苔生産者に対し、15漁協を介して、「製品については全量組合出荷を前提とし、系

  統共販体制を遵守します。」という規定を含む「誓約書」を提示して、これに署名又は押印した上で当該海苔生産者が所在する区域を管轄する漁協に

  提出することを要請している。

    イ 遅くとも平成30年10月頃以降、毎年、15漁協に対し、「全量系統共販体制を前提として生産者へ指導を行う。」という規定を含む「覚書」を

  提示して、これに記名及び押印した上で提出することを要請している。
    ウ 前記ア及びイ要請により、15漁協管内の海苔生産者に対し、生産した乾海苔の全量を、当該海苔生産者が所在する区域を管轄する漁協に出荷さ

  せている。
⑵ 次の行為を行うことにより、15漁協管内の海苔生産者に対し、熊本県漁連が実施する入札に付したものの応札されなかった乾海苔の系統外出荷を

 行わないようにさせている。
    ア 熊本県漁連が15漁協管内の海苔生産者に提出を要請している前記⑴アの「誓約書」には、出荷した乾海苔が無札品になった場合、処分を系統団

  体に一任する旨の規定が含まれている。
    イ 前記⑴アのとおり要請することにより、15漁協管内の海苔生産者に対し、生産した乾海苔のうち、熊本県漁連が実施する入札に付したものの応

  札されなかった乾海苔について、熊本県漁連に処分を一任させ、これを当該海苔生産者に返却しないこととしている。

(令和6年5月15日 排除措置命令)

・ 佐賀県有明海漁業協同組合による拘束条付取引事件

 佐賀県有明海漁業協同組合(以下「佐賀有明漁協」という。)は、
⑴ 次の行為を行うことにより、佐賀有明漁協管内の海苔生産者に対し、乾海苔の系統外出荷を行わないようにさせている。
    
ア 遅くとも平成30年10月頃以降、毎年、同漁協管内の海苔生産者に対し、平成30年度から令和2年度までにあっては「製造した乾海苔は、全

  量組合に出荷します。」、令和3年度以降にあっては「製造した乾海苔は、全量組合に 出荷するよう努めます。」という規定を含む「乾海苔共販にか

  かる誓約書」を提示して、これに署名又は押印した上で同漁協に提出することを要請している。
    イ 前記アの要請により、同漁協管内の海苔生産者に対し、生産した乾海苔の全量を同漁協に出荷させている。
⑵ 次の行為を行うことにより、佐賀有明漁協管内の海苔生産者に対し、佐賀有明漁協が実施する入札に付したものの応札されなかった乾海苔の系統外

 出荷を行わないようにさせている。
    ア 佐賀有明漁協が同漁協管内の海苔生産者に提出を要請している前記⑴アの「乾海苔共販にかかる誓約書」には、出荷した乾海苔が消却対象品にな

  った場合には処分を佐賀有明漁協に一任する旨の規定が含まれている。
    イ 佐賀有明漁協は、前記⑴アのとおり要請することにより、同漁協管内の海苔生産者に対し、生産した乾海苔のうち、同漁協が実施する入札に付し

  たものの応札されなかった乾海苔について、同漁協に処分を一任させ、これを当該海苔生産者に返却しないこととしている。

(令和6年5月15日 排除措置命令)

〇 水産庁に対する要請

 公正取引委員会は、水産庁に対し、独占禁止法や水産庁策定の「水産物・水産加工品の適正取引推進ガイドライン」の遵守を全国の漁業協同組合等に対して改めて周知徹底するよう要請した。


⑶ 抱き合わせ販売等

 令和6年度においては、ASP Japan合同会社による抱き合わせ販売等事件について、1件の法的措置(排除措置命令)を採った。

・ ASP Japan合同会社による抱き合わせ販売等事件

 ASP Japan合同会社(以下「ASP Japan」という。)は、ASP Japanが医療機関向けに販売しているフタラール製剤※を用いる内視鏡洗浄消毒器にバーコードリーダーを取り付けるとともに、ASP Japanが製造販売するフタラール製剤の容器に二次元コードを貼付し、当該バーコードリーダーによって二次元コードを読み取らなければASP Japanの内視鏡洗浄消毒器の洗浄消毒機能が作動しないようにすることにより、ASP Japanの内視鏡洗浄消毒器を使用している医療機関に対し、不当にASP Japanの内視鏡洗浄消毒器の供給に併せてASP Japanが製造販売するフタラール製剤を購入させている。

※ 消化器内視鏡を含む医療器具の化学的殺菌・消毒のために内視鏡洗浄消毒器に投入するなどして使用される消毒剤であって、フタラール0.55w/v%を含有する医療用医薬品をいう。

(令和6年7月26日 排除措置命令)

 

 また、シスメックス株式会社による抱き合わせ販売等被疑事件について、1件の法的措置(確約計画の認定)を採った。

・ シスメックス株式会社に対する確約計画の認定

 公正取引委員会は、シスメックス株式会社(以下「シスメックス」という。)に対し、シスメックスの次の行為が独占禁止法第19条(不公正な取引方法第10項(抱き合わせ販売等))の規定に違反する疑いがあるものとして、確約手続通知を行ったところ、シスメックスから確約計画の認定申請があり、当該計画が独占禁止法に規定する認定要件に適合すると認め、当該計画を認定した。

 ○ シスメックスは、遅くとも令和元年8月頃以降、令和6年7月頃までの間、特定血液凝固測定装置※により「Dダイマー」又は「FDP」を測定

  する際に用いる試薬に関して、他社製の試薬を使用できるにもかかわらず、特定血液凝固測定装置では自社が製造販売する指定試薬のみを使用させ

  るものとすることを基本方針として定めて、病院等に対して、特定血液凝固測定装置を供給するに当たり、自社が製造販売する指定試薬のみを使用

  することを条件として、特定血液凝固測定装置の供給に併せて当該指定試薬を購入するようにさせていた。

※ シスメックスが、平成30年12月から製造販売するプロダクト名にCNが付く「CNシリーズ」と称する血液凝固測定装置をいう。

(令和7年2月13日 確約計画の認定)


⑷ 再販売価格の拘束

   令和6年度においては、株式会社関家具による再販売価格の拘束事件について、1件の法的措置(排除措置命令)を採った。

・ 株式会社関家具による再販売価格の拘束事件

 株式会社関家具(以下「関家具」という。)は、遅くとも令和2年2月頃以降、次の行為を行うことにより、取引先小売業者に「Ergohuman」の商標が付された椅子(以下「エルゴヒューマン」という。)を関家具が定めた「参考売価」と称する小売価格 (以下「参考売価」という。)で販売するようにさせていた。

⑴ エルゴヒューマンを参考売価で販売する旨に同意した取引先小売業者にのみ販売する方針に基づき、エルゴヒューマンの取引を新たに開始する取引

 先小売業者からは、エルゴヒューマンを参考売価で販売する旨の同意を得るとともに、エルゴヒューマンの参考売価を引き上げる際には、その都度、

 取引先小売業者から、引上げ後の参考売価でエルゴヒューマンを販売する旨の同意を得ていた。
⑵ 取引先小売業者のインターネット上におけるエルゴヒューマンの販売価格を監視すること及び取引先小売業者から参考売価を下回る価格でのエルゴ

 ヒューマンの販売(以下「値引き販売」という。)を行っている他の取引先小売業者に関する苦情を受けることにより、値引き販売を行っている取引先

 小売業者が判明した場合、当該取引先小売業者に、参考売価で販売するよう要請していた。
⑶ 前記⑵の要請にもかかわらず値引き販売を継続した取引先小売業者に対しては、エルゴヒューマンの出荷価格の引上げを行うなどしていた。

(令和6年12月19日 排除措置命令)

 

 また、日清株式会社による再販売価格の拘束被疑事件及び株式会社九州シジシーによる再販売価格の拘束被疑事件について、2件の警告を行った。

・ 日清株式会社に対する警告

⑴ 日清食品株式会社(以下「日清食品」という。)は、自ら製造販売する即席麺に関して、かねてから小売業者※1が販売する定番売価※2及び特売売

 価※3の基準(以下「基準価格」という。)を設定していたところ、 令和4年6月及び令和5年6月の取引先卸売業者に対する出荷価格の引上げに向

 けて、それぞれ基準価格の改定を行った。

⑵ 日清食品は、本件5商品※4について、前記⑴の改定後の基準価格を基に定番売価及び特売売価をそれぞれ設定した上で(以下、当該設定した価

 格を総称して「提示価格」という。)、 小売業者に提示価格を遵守させるという方針の下、令和4年2月及び令和5年2月以降、小売業者に対して、

 自ら以下の行為を行うとともに、取引先卸売業者をして以下の行為をさせている。

  ア 通常時において、他の小売業者にも同様の要請を行っている旨を伝えたり、又は、要請を受け入れるまでは特売の条件を出せない※5旨を示唆し

  たりするなどして、提示価格まで定番売価を引き上げることを要請することにより、 前記⑴の各出荷価格の引上げ以降、提示価格で販売するように

  させている。

  イ 特売時において、提示価格で販売することを前提に特売の条件を出すようにするなどして、提示価格まで特売売価を引き上げることを要請するこ

  とにより、前記⑴の各出荷価格の引上げ以降、提示価格で販売するようにさせている。

※1 「小売業者」とは、日清食品が製造販売する即席麺を販売している小売業者のうち、コンビニエンスストアを除く者をいう。

※2 「定番売価」とは、小売業者が特売を行わない期間である「通常時」に設定する小売売価をいう。

※3 「特売売価」とは、小売業者が特売を行う期間である「特売時」に設定する小売売価をいう。

※4 「本件5商品」とは、日清食品が製造販売する即席麺のうち、「カップヌードル」、「カップヌードルシーフードヌードル」、「カップヌードルカ

  レー」、「日清のどん兵衛きつねうどん」及び「日清焼そばU.F.О.」のブランドが付されたものであって レギュラーサイズのものをいう。

※5 「特売の条件を出す」とは、小売業者が特売を行う際、卸売業者から小売業者に対して販売する価格を一時的に引き下げ、その引下げ分を日清食品

  が負担することをいう。

(令和6年8月22日 警告)

・ 株式会社九州シジシーに対する警告

 株式会社九州シジシー(以下「九州シジシー」という。)は、遅くとも令和3年4月以降、CGC商品※1の一部について、九州地区及び沖縄県に所在する取引先小売業者等※2(以下「取引先小売業者」という。)に対して、下限売価※3を示し、当該下限売価について取引先小売業者から同意を得るとともに、取引先小売業者が下限売価を下回る価格で販売している場合には販売価格を下限売価以上に引き上げるように要請するなどして、下限売価以上で販売するようにさせている疑いがある。

※1 「CGC商品」とは、九州シジシー等が製造事業者に製造委託するなどし、「CGC」のブランドを付すなどした食料品、日用品等の商品をい

  う。

※2 「九州地区及び沖縄県に所在する取引先小売業者等」とは、CGCグループの加盟事業者のうち、九州地区及び沖縄県に所在する者をいう。

※3 「下限売価」とは、取引先小売業者がCGC商品を小売販売する際の下限の価格をいう。

(令和7年3月18日 警告)


⑸ 不当廉売

  令和6年度においては、沖縄県沖縄市及び同県中頭郡(なかがみぐん)北中城村(きたなかぐすくそん)において給油所を運営する石油製品小売業

 者(2社)による不当廉売について、独占禁止法に違反するおそれがある行為が認められたことから、警告(2件)を行った。

・ 沖縄県沖縄市及び同県中頭郡北中城村において給油所を運営する石油製品小売業者に対する警告

 永山石油株式会社及びエッカ石油株式会社の2社は、それぞれ、沖縄県沖縄市及び同県中頭郡北中城村に所在する給油所において、令和6年2月1日から同年6月30日までのうちの一定期間、レギュラーガソリンについて、その供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、当該給油所の周辺地域に所在する他のレギュラーガソリンの販売業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある。

(令和6年11月7日)

 

 また、令和6年度においては、酒類、石油製品、家庭用電気製品等の小売業に係る不当廉売の申告に対し迅速処理(注14)を行い、不当廉売につながるおそれがあるとして253件の注意を行った。
加えて、「ガソリン等の流通における不当廉売、差別対価等への対応について」の改定(令和4年11月11日)も踏まえて、繰り返し注意を受けた事業者に対する取組の強化として、①複数の給油所を運営している場合にあっては、事案に応じて本社の責任者に対して注意を行うとともに、②注意後の販売価格、仕入価格等について報告を求めるフォローアップ調査を実施した。
(注14) 原則として、申告のあった不当廉売事案に対し可能な限り迅速に処理する(原則2か月以内)という方針に基づいて行う処理をいう。

令和6年度の不当廉売事案の注意件数(迅速処理によるもの)

(単位:件)
  酒類 石油製品 家電製品 その他 合計
注意件数 18 186 48 253

図4 不当廉売事案の注意件数の推移

⑹ 競争者に対する取引妨害

  令和6年度においては、株式会社MCデータプラスによる競争者に対する取引妨害事件について、1件の法的措置(排除措置命令) を採っ

 た。

・ 株式会社MCデータプラスによる競争者に対する取引妨害事件

 株式会社MCデータプラスは、自社が提供するグリーンサイトと称する労務安全サービス(建設業向けクラウドサービス)の優位性が低下するリスクを回避するためには、 グリーンサイトに登録された作業員情報等を労務安全サービスを提供する事業に新規に参入してきた他社に流出させないことが不可欠であるとの認識の下、グリーンサイトのユーザーが求める他社の労務安全サービスに移行可能な形式で、作業員情報の提供の要請があった場合に、当該ユーザー自らが登録した作業員情報であるにもかかわらず個人情報の保護を理由にするなどし、合理的な理由なく当該作業員情報の提供を拒むなどして、グリーンサイトのユーザーが他社の労務安全サービスへの切替えをしないようにさせている。

(令和6年12月24日 排除措置命令)

 

 (※)その他の事例として、農業分野において、農業協同組合が、組合員に対し、共同利用施設の利用の条件として、契約により全量出荷等を義

   務付けることは、独占禁止法違反につながるおそれがあるとして注意を行った事例があるほか、 漁業分野において、漁業協同組合が、組合

   員が水産物を系統外出荷した場合に、組合員から手数料を徴収していることが独占禁止法違反につながるおそれがあるとして注意を行った

   事例などがある。

第3 タスクフォースの取組状況等

1 IT・デジタル関連分野

 公正取引委員会は、IT・デジタルタスクフォースを設置し、当該分野における独占禁止法違反被疑行為に係る情報に接した場合に、専門的な検討・分析、効率的な調査を実施することとしている。
 また、同分野における独占禁止法違反被疑行為に係る情報を広く受け付けるため、平成28年10月に専用の情報提供窓口を設置している。令和6年度における当該情報提供窓口における情報受付件数は110件となっている。令和2年度以降の各年度における情報受付件数は以下のとおりである。

 表6 IT・デジタル関連分野における情報受付件数

(単位:件)
年度 R2 R3 R4 R5 R6
情報受付
件数
182 140 139 83 110

2 優越タスクフォース

 公正取引委員会は、平成21年に優越的地位濫用事件タスクフォース(以下「優越タスクフォース」という。)を設置し、優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には、効率的かつ効果的な調査を行い、濫用行為の抑止・早期是正に努めることとしている。
 優越タスクフォースにおいては、優越的地位の濫用行為に係る全国から寄せられる情報及び自ら収集した情報に基づいて、一元的に当該行為の類型に特化した調査を行うことで事例の蓄積や処理方法の向上を図り、これらを積極的に活用することにより、優越的地位の濫用事案を効率的に処理できるようにしている。
 令和6年度においては、優越タスクフォースが中心となって、独占禁止法違反の疑いがある事案について3件の警告(株式会社イトーキに対する警告、株式会社ダイゼンに対する警告及び株式会社アトレに対する警告)を行ったほか、昨今の労務費、原材料費、エネルギーコスト等の急激なコスト上昇を受けた受注サイドの事業者からの発注サイドの事業者に対する価格転嫁の要請に関連した発注サイドの事業者による行為、荷主と物流事業者との取引における荷主の行為等について優越的地位の濫用に該当するおそれがあるとして41件の注意を行った。
 令和2年度以降の各年度における優越的地位濫用事件処理件数は以下のとおりである。

 表7 優越的地位濫用事件処理件数

(単位:件)
年度 R2 R3 R4 R5 R6
警告件数
注意件数 47 46 55 67 41

3 その他の分野

 公正取引委員会は、前記1・2のIT・デジタルタスクフォース、優越タスクフォースのほか、農業分野タスクフォース、公益事業タスクフォース等を設置している。また、専用の情報提供窓口を設置しており、令和6年度における当該情報提供窓口における情報受付件数は、農業分野が48件、電力・ガス分野が41件となっている。

 【情報提供窓口の電話番号等】
<電話番号>
IT・デジタル関連分野 03-3581-5492
農業分野        03-3581-3387(※)
電力・ガス分野     03-3581-1760
※ 農業分野については、上記のほか、各地方事務所・支所にも窓口を設置している。

<情報提供フォーム>
https://www.jftc.go.jp/application/zzza092.html
※ IT・デジタル関連分野、農業分野、電力・ガス分野とも共通のアドレス

第4 独占禁止法違反に係る行政処分に対する取消請求訴訟

 令和6年度当初において係属中の排除措置命令等取消請求訴訟は7件(東京地方裁判所6件、東京高等裁判所1件)(注15)であり、同年度中に新たに4件の排除措置命令取消請求訴訟が東京地方裁判所に提起された。
 令和6年度当初において東京地方裁判所に係属中であった6件のうち2件については、同裁判所が請求を棄却する判決をし、これに対し、控訴がなされ、当該2件は控訴審からは1件の事件として併合され、東京高等裁判所に係属中である。その余の4件については、令和6年度末時点において引き続き東京地方裁判所に係属中である。
 令和6年度当初において東京高等裁判所に係属中であった1件は、同裁判所が控訴を棄却する判決をし、これに対し、上告受理申立てがなされ、令和6年度末時点において最高裁判所に係属中である。
 これらの結果、令和6年度末時点において係属中の排除措置命令等取消請求訴訟は10件であった。

(注15) 排除措置命令等取消請求訴訟の件数は、訴訟ごとに裁判所において番号が付される事件の数である。

第5 審決取消請求訴訟

 令和6年度当初において係属中の審決取消請求訴訟の件数(注16)は8件であり、これらのうち、同年度中に東京高等裁判所が原告の請求を棄却した判決が2件(いずれも原告が上告又は上告受理申立てをした。)、最高裁判所が上告棄却又は上告不受理決定をしたことにより終了したものが5件あった(別表第8表参照)。
 この結果、令和6年度末時点では3件の審決取消請求訴訟が係属中である。

(注16) 審決取消請求訴訟の件数は、第一審裁判所において番号が付される事件の数である。

関連ファイル

(印刷用)(令和7年5月1日)令和6年度における独占禁止法違反事件の処理状況についてpdfダウンロード(874 KB)

(印刷用)(令和7年5月1日)別添pdfダウンロード(113 KB)

(印刷用)(令和7年5月1日)概要pdfダウンロード(567 KB)

問い合わせ先

第1から第4までに関する問い合わせ 公正取引委員会事務総局審査局管理企画課
電話 03-3581-3381(直通)
第5に関する問い合わせ 公正取引委員会事務総局官房総務課(審判・訟務担当)
電話 03-3581-5478(直通)
ホームページ https://www.jftc.go.jp/

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