令和7年5月15日
公正取引委員会
はじめに
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号。以下「フリーランス・事業者間取引適正化等法」という。)は、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備等を目的として、令和5年4月28日に成立し、令和6年11月1日に施行された。
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に向けた所要の準備を行ってきたほか、同法の周知等の法違反行為を未然に防止するための各種の施策を実施するとともに、同法に違反する疑いのある行為の発見に努め、違反行為が認められた業務委託事業者に対しては、同法に基づき迅速かつ適切に対処することとしている。
公正取引委員会における令和6年度におけるフリーランスに係る取引の適正化に向けた取組及びフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況は、以下のとおりである。
なお、フリーランスに係る取引のうち、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)が適用される取引については、フリーランス・事業者間取引適正化等法に係る取組に加えて、下請代金支払遅延等防止法に係る取組も行っている。
第1 フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に向けた準備
1 フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に伴い必要となる関係政令等の整備
⑴ 特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令
フリーランス・事業者間取引適正化等法第5条第1項の政令で定める期間を1か月とすること等を内容とする「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」が制定された(令和6年政令第200号。令和6年5月31日公布、同年11月1日施行)。
⑵ 公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法第3条第1項に規定する明示をするときに示さなければならない事項を定めること等を内容とする「公正取引委員会関係特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行規則」を制定した(令和6年公正取引委員会規則第3号。令和6年5月31日公布、同年11月1日施行)。
2 フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に伴う「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関す
る法律の考え方」の策定等
フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に伴い、公正取引委員会は、厚生労働省と共同して、同法の運用の統一を図るとともに、法運用の透明性及び事業者の予見可能性を確保し、違反行為の未然防止に資するため、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」を策定し、令和6年5月31日に公表した。また、当委員会は、法運用の透明性を確保するため、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律と独占禁止法及び下請法との適用関係等の考え方」を策定し、令和6年5月31日に公表した。
さらに、当委員会は、同法第2章違反事件に係る対応として、同法に基づく勧告を行った場合、事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等を公表することなどを令和6年10月1日に公表した。
3 フリーランス・事業者間取引適正化等法関係業務の担当部署の設置
公正取引委員会は、令和6年4月1日、フリーランス・事業者間取引適正化等法に関する普及啓発活動、フリーランス及び発注事業者からの相談への対応、同法違反行為が疑われる事業者に対する調査・措置など、同法に関する幅広い業務を担当する「フリーランス取引適正化室」を設置した。
なお、令和7年4月1日、5つの地方事務所において、同様の業務を担当する「フリーランス課」を設置した。
第2 フリーランスに係る取引の適正化に向けた取組
1 フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)
フリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に向けた特定受託事業者に係る取引の状況の把握、同法に関する周知等の取組の一環として、公正取引委員会及び厚生労働省は、令和6年5月から6月にかけて、関係府省庁と連携して「フリーランス取引の状況についての実態調査(法施行前の状況調査)」を実施し、同年10月18日に調査結果を取りまとめた。
2 フリーランス・事業者間取引適正化等法の普及・啓発
⑴ フリーランス・事業者間取引適正化等法に係る説明会等
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の内容を広く周知するため、事業者及び事業者団体を対象として、当委員会主催の説明会を実施しており、令和6年度においては、合計40回の説明会を実施した。
また、公正取引委員会は、事業者団体等が開催する説明会等に、当委員会事務総局の職員を講師として派遣しており、令和6年度においては、これらの説明会等に職員を138回派遣した。
⑵ フリーランス・事業者間取引適正化等法に係る広報活動
ア パンフレットの作成・配布
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の内容を分かりやすく説明した特定受託事業者及び業務委託事業者向けパンフレットを関係省庁と協力して作成し、当委員会のウェブサイトに掲載したほか、説明会・講師派遣の際に配布した。
イ 広報用動画の作成・配信
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法に対する特定受託事業者及び業務委託事業者の理解を深めることを目的として、同法の内容を解説する動画を作成し、当委員会のウェブサイト上及び公正取引委員会YouTube公式チャンネル
(https://www.youtube.com/c/JFTCchannel/)に掲載し、配信した。令和6年度においては、延べ約15万回視聴された。ウ ウェブサイトの活用
公正取引委員会は、当委員会のウェブサイトに「フリーランスの取引適正化に向けた公正取引委員会の取組」を設け、パンフレット、動画等の資料、フリーランス・事業者間取引適正化等法に関するQ&A等を掲載した。また、同法の考え方についての相談窓口や違反被疑事実についての申出窓口を当委員会のウェブサイトに設置した。
エ 広報活動の集中的な実施
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法の令和6年11月1日の施行に向けて、同法の認知度を高めるとともに、違反行為の未然防止を図るため、同年6月17日以降、イラストレーター兼漫画ブロガーのBUSON(ブソン)氏のオリジナルキャラクター「しきぶちゃん」とタイアップし、当委員会のウェブサイトにおける同法の特設ウェブサイトの開設、インターネット広告、鉄道車内のビジョン広告等の各種の媒体を活用した広告の掲載等の広報活動を集中的に実施した。
3 フリーランス・事業者間取引適正化等法に係る相談対応
公正取引委員会では、地方事務所等を含めた全国の相談窓口において、年間を通して、フリーランス・事業者間取引適正化等法に係る相談を受け付けている。令和6年度においては、5,018件の相談に対応した。
また、令和2年11月から、フリーランスが契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口「フリーランス・トラブル110番」が設置されているところ、当該窓口の運営に当たっては、当委員会も関係省庁として連携している。令和6年度において、「フリーランス・トラブル110番」では12,323件の相談に対応した。
第3 フリーランス・事業者間取引適正化法第2章の運用状況
1 フリーランスとの取引に関する調査の実施状況等
⑴ フリーランスとの取引に関する調査
公正取引委員会は、フリーランス・事業者間取引適正化等法違反行為を受けた特定受託事業者にとって、自らその事実を申し出にくい場合もあると考えられることから、特定受託事業者からの情報提供を受動的に待つだけではなく、能動的に調査を実施し、違反被疑行為に関する情報収集を積極的に行うこととしている。その一環として、令和6年度において、問題事例の多い業種に係る発注事業者3万名を対象に「フリーランスとの取引に関する調査」を実施した。
⑵ フリーランス・事業者間取引適正化等法の違反被疑行為についての申出
フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づき、特定受託事業者は、業務委託事業者・特定業務委託事業者に同法違反と思われる行為があった場合には、公正取引委員会等に対してその旨を申し出ることができる。令和6年度においては、フリーランス・事業者間取引適正化等法の規定に違反する事実があるとして公正取引委員会に申出がされた件数は92件であった。
2 フリーランス・事業者間取引適正化等法違反被疑事件の処理状況
⑴ 新規着手件数
令和6年度においては、新規に着手したフリーランス・事業者間取引適正化等法違反被疑事件は137件であった。
⑵ 処理の状況
令和6年度においては、公正取引委員会は、96件のフリーランス・事業者間取引適正化等法違反被疑事件を処理し、このうち、54件について違反行為又は違反のおそれのある行為(以下総称して「違反行為等」という。)があると認め、指導を行った(このうち45件については、後記⑶のとおり、その概要を公表した。)。令和6年度における主な指導事例の概要は別紙のとおりである。
⑶ フリーランス・事業者間取引適正化等法に基づく指導の公表
公正取引委員会は、これまでに得た情報を踏まえ、特定受託事業者との取引が多い業種であるゲームソフトウェア業、アニメーション制作業、リラクゼーション業及びフィットネスクラブの事業者について集中的に調査を行った結果、フリーランス・事業者間取引適正化等法第22条の規定に基づき、45名の事業者に対して、契約書や発注書の記載、発注方法、支払期日の定め方等の是正を求める指導を行い、令和7年3月28日、その概要を公表した。
関連ファイル
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