令和7年10月31日
公正取引委員会
公正取引委員会は、トヨタ自動車東日本株式会社(以下「トヨタ自動車東日本」という。)に対して調査を行ってきたところ、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反する事実が認められたので、本日、下請法第7条第3項の規定に基づき、トヨタ自動車東日本に対して勧告を行った。
また、下請法第4条第1項第1号(受領拒否の禁止)に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反する事実が認められたので、本日、勧告と併せて指導を行った。
さらに、トヨタ自動車東日本の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ自動車」という。)に対して申入れを行った。
1 違反行為者の概要
| 法 人 番 号 | 6021001040127 |
| 名 称 | トヨタ自動車東日本株式会社 |
| 本店所在地 | 宮城県黒川郡大衡村中央平1番地 |
| 代 表 者 | 代表取締役 石川 洋之 |
| 事業の概要 | 自動車等の製造販売等 |
| 資 本 金 | 68億5096万4556円 |
2 勧告の概要等
⑴ 違反事実の概要
ア トヨタ自動車東日本は、資本金の額が3億円以下の法人たる事業者に対し、自社が製造を請け負う自動車部品等の製造を委託している(以下この受託事業者を「下請事業者」という。)。
イ トヨタ自動車東日本は、自社が製造を委託した自動車部品の製造に用いる下請事業者所有の金型、治具その他道具類(以下「金型等」という。)を自己の承諾なしには廃棄させないようにしていたところ、遅くとも令和6年4月1日から令和7年3月31日までの間、当該部品の発注を長期間行わないにもかかわらず、下請事業者に対し、合計440個の金型等を自己のために無償で保管させることにより、下請事業者の利益を不当に害していた(下請事業者10名)。
ウ(ア) トヨタ自動車東日本は、自動車の量産に用いた自動車部品のうち、故障等による交換に必要な数のみ製造する体制(以下「補給体制」という。)に移行したものについて、補給体制に移行してから一定の年数が経過し、かつ、直近の製造数が一定の基準以下にとどまる場合には、下請事業者とあらかじめ協議の上、当該自動車部品が製造打切りになるまでに必要と考えられる数を一括で製造させ、自社又は下請事業者が在庫を保管する制度(以下この制度の対象となる自動車部品を「一括生産部品」という。)を採用している。
(イ) トヨタ自動車東日本は、下請事業者に対して納期を定めずに一括生産部品の製造を委託しており、下請事業者は、一括生産部品の製造が完了した際にその旨をトヨタ自動車東日本に報告しているところ、トヨタ自動車東日本は、下請事業者が保管している一括生産部品について、顧客からの受注状況に応じて、自社が必要とする都度、下請事業者に納品を指示して、自社が必要とする数の一括生産部品を受領する方法を採っている。
(ウ) トヨタ自動車東日本は、前記(イ)の方法を採ることにより、遅くとも令和5年8月1日から令和7年3月31日までの間、下請事業者から一括生産部品の製造が完了した旨の報告を受けた後、速やかに当該一括生産部品を受領すべきであったにもかかわらず、下請事業者に対し、合計777個の一括生産部品を自己のために無償で保管させることにより、下請事業者の利益を不当に害していた(下請事業者7名)。
エ トヨタ自動車東日本は、下請事業者と協議の上、下請事業者に対し、令和7年5月30日、無償で金型等及び一括生産部品を保管させていたことによる費用に相当する額として941万5337円を支払っている。
⑵ 勧告の概要
ア トヨタ自動車東日本は、次の事項を取締役会の決議により確認すること。
(ア) 前記⑴イ及びウの行為が下請法第4条第2項第3号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反するものであること
(イ) 今後、自己のために経済上の利益を提供させることにより、下請事業者の利益を不当に害さないこと
イ トヨタ自動車東日本は、今後、下請法第4条第2項第3号に掲げる行為に該当し、同項の規定に違反する行為を行うことがないよう、自社の発注担当者に対して金型等及び自動車部品の適切な管理に特に留意した下請法の研修を行うなど社内体制の整備のために必要な措置を講ずること。
ウ トヨタ自動車東日本は、次の事項を自社の役員及び従業員に周知徹底すること。
(ア) 下請事業者に対し、自己のために提供させていた役務に要した費用相当額を支払ったこと
(イ) 前記ア及びイに基づいて採った措置
エ トヨタ自動車東日本は、次の事項を取引先下請事業者に通知すること。
(ア) 下請事業者に対し、自己のために提供させていた役務に要した費用相当額を支払ったこと
(イ) 前記アからウまでに基づいて採った措置
オ トヨタ自動車東日本は、前記アからエまでに基づいて採った措置を速やかに公正取引委員会に報告すること。
3 指導の概要等
⑴ 違反事実の概要
ア トヨタ自動車東日本は、下請事業者に対し、納期を定めずに一括生産部品の製造を委託していたところ、下請事業者から一括生産部品の製造が完 了した旨の報告を受けた後、速やかに当該一括生産部品を受領すべきであったにもかかわらず、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、遅くとも令和5年8月1日から令和7年3月31日までの間、合計777個の一括生産部品について、それぞれ納品指示を行い下請事業者から納品されるまで受領していなかった(下請事業者7名)。
イ トヨタ自動車東日本は、前記アの一括生産部品を全て受領し、下請事業者に対し、遅くとも令和7年5月30日までに、一括生産部品777個の下請代金相当額として93万1032円を支払っている。
⑵ 指導の概要
所要の改善措置を採るとともに、今後、下請法の規定に違反する行為を行わないこと。
⑶ トヨタ自動車東日本は、前記⑵に基づいて採った改善措置について、速やかに、文書をもって公正取引委員会に報告すること。
4 トヨタ自動車への申入れの概要
トヨタ自動車が作成したマニュアルが前記2⑴イ並びにウ及び3⑴アの行為が発生した重大な原因の一つであると認められることから、公正取引委員会は、トヨタ自動車に対し、今後、トヨタ自動車グループにおいて下請法の規定に抵触する行為が再発することのないよう、当該マニュアルの見直しを含めた
改善措置を講じることを申し入れた。
※ トヨタ自動車は、既に改善策の検討に取り組んでいる。
関連ファイル
(令和7年10月31日)トヨタ自動車東日本株式会社に対する勧告等について
(479 KB)
問い合わせ先
公正取引委員会事務総局東北事務所下請課
電話 022-225-8420(直通)
公正取引委員会事務総局経済取引局取引部下請取引調査室
電話 03-3581-3374(直通)
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